著者
本田 剛 林 雄一 佐藤 喜和
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-16, 2008-06-30
被引用文献数
4

農業被害を引き起こすイノシシの行動を明らかにするため,被害を受ける農地と森林の境界となる林縁周辺で捕獲した個体を対象とし,季節及び時間ごとの環境選択を解析した.2004~2005年の5~11月にイノシシを6頭捕獲・追跡し,標高及び植生に対する選択性を一般化線形混合モデルにより調べた.このうちの1個体は森林外で一度も確認されず,林縁から1,000 m以上離れた林内まで利用した.一方,森林外を利用した5個体のイノシシの内,4個体は林縁周辺を集中的に利用した.森林外を利用した個体の環境選択を季節及び時間別にみると,春夏期の日中は低標高地と森林内を好み,夜間は低標高地と森林外を選択的に利用した.森林外の利用地は主に農地と耕作放棄地であった.以上のことから,農地を加害するイノシシの捕獲は,林縁周辺で実施することが効果的であると結論した.<br>
著者
今林 広樹 石巻 優 馬屋原 昂 佐藤 宏樹 山名 早人
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-12, 2017-03-22

医薬品や遺伝子などの機密性の高いデータに対する各種処理をクラウドなどの第三者のサーバ上で行う場合,第三者のサーバからの機密情報漏洩が懸念される.解決策として,機密情報そのものではなく匿名化したデータを第三者のサーバに保存し各種処理を行う方法が考えられるが,医療分野など,処理の正確性が求められる分野では匿名化を採用することが困難である.この問題を解決するため,本稿では,完全準同型暗号(FHE: Fully Homomorphic Encryption)を用いてデータを秘匿した状態で各種処理を行うことを考える.そして,各種処理の対象として頻出パターンマイニングを取り上げる.FHEを用いた各種処理を行ううえでの問題は,膨大な時間・空間計算量を要する点である.FHEの頻出パターンマイニング手法への適用例としては,Aprioriアルゴリズムを対象としたLiuらのP3CCがあるが,やはり膨大な時間・空間計算量を要する.これに対して本稿では,1) 暗号文パッキングによる暗号文数の削減,および2) 暗号文キャッシングによるサポート値計算の高速化によって,時間・空間計算量を削減する手法を提案する.実験評価では,10,000トランザクションのデータセットにおいて,P3CCの430倍の高速化と94.7%のメモリ使用量削減を達成した.
著者
石沢 千佳子 佐藤 諒 西田 眞
出版者
The Institute of Image Information and Television Engineers
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.J319-J322, 2013

Portable storage media, such as universal serial bus (USB) ash drives, are used to carry digital data. However, a great deal of data leaks as a result of users forgetting to delete data copied to a personal computer from portable storage media. We propose a technique to detect the remains of copy content files by analyzing the clipboard and directory logs obtained from a personal computer. Our experimental result suggests that the technique can be used to accurately detect files containing copy left behind.
著者
大島 登志一 佐藤 清秀 山本 裕之 田村 秀行
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.699-705, 1999-12-31 (Released:2017-02-01)
参考文献数
12
被引用文献数
4

This paper introduces a collaborative shooting game - "RV-Border Guards," which uses Mixed Reality (MR) technologies. This system is designed to emphasize MR-specific features for entertainment. Three players wearing HMDs cooperatively battle with virtual invaders flying around them in the MR space. Each player is armed with a virtual gear such as a helmet and a gun, and can intuitively interact with the MR space using easy gestures. Total reality of the MR space is carefully tuned. This project tries to achieve a novel multi-player entertainment, which has never been realized without MR technologies.
著者
大澤 千鶴 杉山 方樹 岡山 政由 岡山 義雄 佐藤 祐造
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
健康医学 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.147-151, 1988-07-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
8

「人間ドック」において尿中食塩濃度測定の意義を追求する目的で,人間ドック受診者と,食事指導を十分に行なっている糖尿病外来患者と比較し検討した。栄養指導の行われている糖尿病外来患者は尿中食塩濃度が低く,尿中食塩濃度の低い群は,あきらかに肥満度も低かった。「ソルトテープ」を用いた短時間で簡易に実施可能な尿中食塩濃度測定は,人間ドックにおける検査項目としてきわめて有用であると考えられる。
著者
長谷 一矢 横田 弘 佐藤 靖彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.270-282, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

日本の最北端にある稚内港には,古代ギリシャ建築を彷彿させる北防波堤ドームがある.1936年に竣工したドームは,1981年の全面改修を経て,現在,再び劣化が顕在化してきた.ドームは構造が特殊で点検診断範囲が広大であり,対策の検討においては,部材性能の評価や補修範囲の決定方法が課題となった.そこで,広大な点検診断領域を格子状のエリアに細分化し,変状に基づき設定した5段階の劣化度で格付けした「劣化度マップ」を考案した.劣化度マップの活用により,広域変状の定量的な把握,鉄筋腐食状況の把握,エリア単位の合理的な予防保全のための補修が可能となる.本論文は,北防波堤ドームの維持管理をとおして,多面的な観点から作成する劣化度マップの考え方を整理し,劣化度マップに基づく補修判定の有効性を考察するものである.
著者
玉木 啓文 佐藤 宏樹 堀 里子 澤田 康文
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.10, pp.1305-1312, 2018-10-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

Similar-appearing press-through package (PTP) sheets (also known as blister packs) that contain different medicines may result in incorrect medication due to confusion errors. To evaluate the significance of this problem and to identify the factors that may lead to such errors, we conducted a questionnaire survey for pharmacists. Three hundred and eighty-two pairs of PTP sheets with similar appearance were included in the questionnaire. Factors related to color (sheet color at the front of the sheet 90.9%, color of tablet/capsule 57.1%, print color at the front of the sheet 45.9%) were most frequently selected as influencing the perceived similarity of the reported pairs, followed by tablet/capsule shape (46.2%), sheet size (32.4%), and mark and character positioning on sheets (6.8%). In the pairs of similar PTP sheets, pairs manufactured by the same pharmaceutical company accounted for 15%. The frequency of confusion errors or near-errors due to similar appearance of PTP sheets was highest at the time of collecting PTP sheets from the medicine shelf and returning the sheets to the medicine shelf, followed by the time of inspection of prepared medicines and medication instructions. The questionnaire results also indicate that patients themselves can confuse similar PTP sheets and take the wrong medicine. Further quantitative studies are needed to clarify the key factors that cause confusion errors due to similar appearance and to identify potential remedial measures.
著者
今石 宣之 秋山 泰伸 佐藤 恒之
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

半導体や酸化物などの高品位単結晶の製造のために,単結晶育成炉内の融液の流れを正確に理解し,合目的的に制御する技術を開発することが要求されている。このなかで,自然対流に関する理解はかなり深まっているが,表面張力対流(マランゴニ対流)およびマランゴニ対流と自然対流の共存対流についての基礎的理解が不足している。マランゴニ対流は,微小重力環境における流体運動の基礎科学としても重要である。本研究では,マランゴニ対流の基礎的理解を深めるため,通常の流体と異なる表面張力の温度係数σT (σT≡∂σ/∂T)を持つ溶融苛性ソーダ(NaOH)の微小液柱内に生じるマランゴニ対流,および溶融NaNO_3の液柱内に生じるマランゴニ対流と自然対流の共存流について,実験および数値解析による検討を行い,下記の結果を得た。1)溶融NaOHの表面張力を,最大泡圧法を用いて測定し,融点(600K)〜T^*=725Kの温度域ではσT>0,T^*以上の温度域ではσT<0となることを明らかにした。2)T^*以下の低温域では,表面液が定温度点から高温度点へと向かう方向に流れるマランゴニ対流が観察された。実測した流速分布等は,数値解析結果と良く一致した。3)T^*以上の温度域では,通常の流体におけるマランゴニ対流と同様に,高温度点から定温度点へ向かって流れる表面流が観察され,数値解析結果と良く一致した。4)加熱板温度がT^*の近傍に設定される場合,温度および温度差に依存して,液柱内には2〜4個のロールセルが発生する。このマルチロールセル流れの発生機構は数値解析の結果,定量的に説明できた。5)液中を水平に置いた場合に生じるマランゴニ対流と自然対流との共存流の解析用の3次元数値解析コードを開発し,NaNO_3融液に対して解析を行い,実験結果を説明した。
著者
佐藤,和雄
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2002, 2002-07-23

Force measurement test of a standard model HB-2 was conducted at the high enthalpy shock tunnel HIEST. The result obtained at lowest enthalpy condition, in which real gas effect is supposed to be negligible, was compared with the blowdown type hypersonic wind tunnel HWT1 and a good agreement was obtained at zero angle of attack. Real gas effect was also studied by changing stagnation enthalpy up to 11MJ/kg and the significant decrease in axial force with increase in stagnation enthalpy was observed.
著者
佐藤 恭道 戸出 一郎 雨宮 義弘 Yasumichi SATO Ichiro TODE Yoshihiro AMEMIYA 鶴見大学歯学部 鶴見大学歯学部 鶴見大学歯学部 Tsurumi University School of Dental Medicine Tsurumi University School of Dental Medicine Tsurumi University School of Dental Medicine
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.139-142, 2008-04-10

江戸時代,庶民文芸が発達すると,民間の識字率は高くなり,読書欲も旺盛になってきた.一方医療については,医師の治療を受けることが出来なかった庶民は,様々な民間療法で対処してきた.今回我々は江戸時代中期,佐渡奉行や江戸町奉行などの要職を歴任した根岸鎮衛の著した随筆『耳嚢』にみられる口腔疾患治療について検索した.『耳嚢』には著者が見聞した当時の風俗や奇談などと共に民間療法が記されている.その記述は内科疾患から皮膚病,眼病,精神疾患など多岐にわたっている.口腔疾患の治療については,呪いの類も含めて7種類の治療法が記載されている,これらの記述は著者が,満足に医療を受けられない困窮した庶民を見て,多くの治療法を記したのではないかと考えられた.また,本書は江戸時代における庶民の歯科医療状況を知る上で貴重な一文献であると考えられた.
著者
佐藤 洋一
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.s1, pp.s5-s8, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
7

本稿で焦点を当てるのは、デジタルアーカイブコレクションの存在を機に2016年6月に発生し、現在まで活動を続けているインディペンデントで自発的なゆるやかな調査体の様態である。デジタル化された米国所蔵のアーカイブ写真を通じて知り合った人々が、SNS上のコミュニケーションをもとに連携し、撮影地の同定調査を軸にした活動過程を記述する。主体となった人々の関心と動機、活動の範囲、成果の範囲を確認しながら、この種の方法による可能性を考えたい。