著者
宮津 和弘 佐藤 忠彦
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.113-146, 2019-03-29 (Released:2019-10-07)
参考文献数
34

心理会計のもとでは,経済学の原理である金銭の代替可能性が完全には成立しておらず,同じ金銭的価値の財でも,消費者の使用目的や購買状況に応じて,異なる価値基準を有する.本研究では,心理的状況の変化を心的負荷と在庫金額という二つの潜在指標で捉えてモデル化し,消費者の内面的要因が来店間隔に与える影響を解明する.これにより,一見非合理的とも思える消費者の購買行動を,行動経済学の観点から理解する.本提案モデルでは,心理的状況を閾値変数とした閾値型モデルに消費者の異質性を階層ベイズの枠組みで取り込み,マルコフ連鎖モンテカルロ法で推定する.小売店舗のID付POSデータを用いて実証分析した結果,消費者の購買行動には心理的状況が影響し,来店間隔の生起メカニズムに差があることを示した.
著者
佐藤 綾
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.83-94, 2018 (Released:2018-10-29)
参考文献数
27

小学校理科では,野外での生物観察など自然との関わり合いの中で児童が問題を見出すことが求められている.一方で,小学校教員や教員を目指す大学生は野外での生物観察の指導に不安を感じていることが指摘されている.本研究では,野外での生物観察を行う単元において,教科書で取り扱われる頻度が高い生物,その中でも特に学生が知らないと感じている生物を明らかにすることで,小学校の教員を目指す大学生が野外での生物観察を指導する自信を高める大学での効果的な支援を探るための基礎資料を提供する.小学校理科の教科書に記載されている生物を調査した結果,全体で190の動物と134の植物が記載されていた.その中で「昆虫と植物」,「身近な自然の観察」,「季節と生物」の野外での生物観察を行う単元で記載されていた動植物は3~6学年全体で記載されている生物の約半数(54.2%)を占めていた.一方で,単元間で共通して見られた生物,出版社間で共通して見られた生物は動物38,植物30のみであった.教員養成学部の大学生を対象とした調査から,教科書に記載されている生物のうち,動物では鳥類,植物では野生草本について,その生物を知らないと回答する学生が多いことが明らかとなった.以上のことから,大学の授業においては,単元間,出版社間で共通して見られる生物をまず取り上げること,特に鳥類と野生草本を授業の材料として取り上げることで,小学校教員を目指す大学生が野外での生物観察を将来指導するための基礎的な知識を効果的に高めることができると考えられる.
著者
井上 一郎 佐藤 一省
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学 (ISSN:03759253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.293-298,a1, 1969-03-05 (Released:2010-10-07)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

翼径, 翼幅の異なるいくつかの平羽根タービンについて実験し, モデルによる解析を行った。循環時間分布の変化は吐出流量および吐出噴流が吸引する流量の違いとして説明できることを示し, さらに混合過程を規格化する因子を見出した。
著者
佐々木 直文 佐藤 直樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.59, 2009

近縁種ゲノムを比較するとゲノムが構造的に安定的な領域(core domain)と流動的な領域(flexible domain)が見いだされる。このうち流動的な領域はゲノムの安定的な構造の間にパッチ状に存在しており、遺伝子の水平移動(HGT)に関連した遺伝子が存在していることが知られている。一方、安定的な領域は遺伝子の並びが比較的保存され、機能的、構造的にゲノムのコアになっていることから、ゲノム再編成の解析に有効であると考えられる。本研究では、進化的に近縁である海洋性シアノバクテリア14種についてゲノム比較を行い、ゲノムの安定的な領域における遺伝子間の距離関係の情報を解析した。その結果、これらの安定的な領域が7つの仮想的な連鎖グループ(VLG)から構成されていることが明らかになった。さらに、これらのVLG間の位置関係を解析した結果、それぞれのVLGが複製開始領域(ori)を基準として決まった位置関係を持っていることが分かった。これらの結果は、ゲノムコア領域がゲノム再編成の情報を持っていることを示唆している。
著者
佐藤 徹治 伊藤 貴大
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.49-54, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
5
被引用文献数
2

本稿では、我が国で近年増加傾向にある限界集落に着目し、地域内および地域間インフラの維持管理・更新費用と当該地域からの全住民の移住に関わる費用等の大小関係から各インフラの維持管理・更新の妥当性、当該地域からの移住の妥当性を評価可能な手法を提案し、千葉県南部の2つの実際の限界集落を対象とする実証分析を行った。実証分析の結果、転居費用等の一時的費用や心理的負担等の永続的な非金銭的費用が永続的な金銭的費用を大きく下回ることを明らかにするとともに、評価手法の適用にあたって不可欠な移住費用およびインフラの維持管理・更新費用の算定方法を示すことができた。
著者
高橋 美希子 淡路 静佳 佐藤 香織 松本 香好美
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0097-C0097, 2004

【はじめに】<BR> 人が立位保持や歩行をする際、唯一地面に接する部位は足部であり、足趾は立位・歩行時の安定性に関与している。足趾筋力が歩行時のバランス、スピード、推進力、感覚に影響を及ぼすとの報告は多いが、我々は、臨床の場面において足底・足部の機能へはほとんどアプローチできていないのが現状である。そこで今回、足趾を中心とする足部への筋力強化が短期間でどこまで歩行時の安定性に影響を与えるかを調査した。<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は2003年10月28日から11月22日の間、当介護老人保健施設(老健)に入所している歩行可能な者(walker,T-cane,Q-cane使用者)11名(男性1名、女性10名、平均年齢84、1±7、5歳)である。疾患の内訳は(脳卒中片麻痺3名、大腿骨頚部骨折3名、変形性腰椎症1名、脳卒中・整形疾患両方に罹患1名、循環器疾患3名)であった。評価項目は、足趾筋力(MMT)、10m歩行速度、歩数、歩容(バランス、スピード、HC・TOの有無)、足部の変形・形状・アーチ、足部・足趾の関節可動域(ROM)、安静時における矢状面・前額面のアライメント、安静立位における足底筋筋緊張、重心線とし、治療前後で比較した。方法は、対象者全員に、椅座位で裸足のまま、股・膝関節90°屈曲位の状態から長方形の薄手のタオルを足趾で引き寄せるよう指導及び実施した。開始から終了までの所要時間を計り、初回と同タイムになったら0、5kgの重錘をタオル上に負荷する。また、この他にゲートボールの球を足底部で前後・左右へ転がす動作も行った。各動作は週5日間継続して行った。歩容・重心線についてはデジタルカメラにて画像解析した。統計処理には、StatView5.0を使用し、Student-t検定を用い、危険率5%以下を有意とした。<BR>【結果】<BR> 足部のROMは左背屈、左右外返しにおいて治療前後で有意に改善した(p<0.05)。足趾のROMでは右拇指・左示指・左中指・左環指のMPjt屈曲、右拇指・右小指・左示指・左環指・左小指のPIPjt屈曲、右示指・右環指のDIPjt屈曲でそれぞれ有意差を認めた(p<0.05)。また、10mの歩数が治療前後で有意に改善した。MMTは、有意差が認められなかった。<BR>【考察・まとめ】<BR> 今回、3週間という短期間で足部及び足趾のROMは有意に改善したが、筋力までの効果は得られなかった。しかし、ほとんどの対象者は歩行スピードの向上や歩行バランスの安定化など、歩容が改善する傾向を示した。今後は、足趾把握筋力の短期効果だけでなく、長期効果や、疾患別の比較などを行い、入所者が安全で効率の良い歩行が出来るよう更に検討していきたい。
著者
佐藤 節子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.290_1, 2017

<p> 埼玉県秩父郡小鹿野町の三田川地区では、毎年行われる鉄砲祭りの始まりに代々伝承されている「三番叟」が上演される。本研究では小鹿野町に伝承されている「三番叟」の特徴をとらえるために現地取材やインタビューをし、収録動画をもとに動作分析を行った。その結果を報告する。また、小鹿野歌舞伎保存会では子供歌舞伎において「三番叟」を上演している。子供歌舞伎の復活とともに繰り広げられた地域活性についても言及する。</p>
著者
湖山 昌男 石山 直欣 渡邊 郁馬 佐藤 亨 腰原 好 牧野 正義
出版者
Japanese Society of Gerodontology
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.126-131, 1992

従来咀嚼能力の測定には様々なものが考案されている。しかしこれらは日常の食生活を考慮した測定方法とは必ずしもいえない。老年者に対する歯科医療の現場では「食べたいものが噛めない」という患者の声は切実であり, 日常の食事における食品と対応した咀嚼能力の判定が必要であると考えられる。そこで今回われわれは, 義歯に対して付着性が低く, 安心して食べることができ, 診療室内で簡単に咀嚼能力を判定できるものとしてゼリーを用い, 日常食品の物性に対応した試料の作製を試みた (G-1ゼリー) 。<BR>試料のゲル化剤には寒天とゼラチンを使用した。外形は13mm角の立方体であり, 一口では飲み込めない大きさを考慮した。物性については柳沢らの「咀嚼筋活動量による食物分類」を用いた。10のランクに分けられた食品群のうち, 実用的な最低ランク2と最高ランク10, そして中間の3つのランクを選び, 5段階の試料を作製した。味については, 一般的に好き嫌いが少ないと思われる柑橘系にした。この試料に対して健常成人10人による官能試験と当科外来患者24人に臨床試験を行った。その結果今回の試料が食品と対応し, 臨床的に簡便で有効な試料であることが確認された。
著者
佐藤 由紀子
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.433, pp.124-133, 2018-07

いつからか「長生きリスク」という言葉が生まれ、人生100年時代への備えが必要になってきている。そんな時代、保険とはどう向き合うべきか?取材・文/佐藤由紀子 イラスト/タケウマ 人生100年といわれる時代。日本人の平均寿命は伸び続け、男性は80・98歳、…
著者
佐藤 千歳
出版者
日中社会学会
雑誌
21世紀東アジア社会学 (ISSN:18830862)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.10, pp.11-27, 2019

<p> 通过分析以宗教事务条例为中心的习近平政府宗教政策,2013年之后中国政府宗教管理政策更规范化了。从杨凤岗"中国宗教市场三色理论"的观点来分析,习近平政府想要消灭中国宗教市场里面的"灰色"空间。同时,地方基层政府落实中央政策的方法更强硬,导致基层政教关系的紧张。体制外基督新教教会"家庭教会"和他们建立的私立学校,经过基层政府的取缔,主动开拓教会地下化的道路或,停止活动。社会主义"后动员时期"的中国,执政党要继续控制民间社会,需要通过改变制度来给民间团体提供"白色"活动空间。</p>
著者
小林 智之 伊東 かおる 横田 祐未 佐藤 達雄 山田 真
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.65-71, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
2

紫外光のうち280~315 nmの波長域であるUV-Bは,様々な病害に対し抵抗性を誘導するとされている.そこで,本研究では,キュウリおよびトマトの育苗期におけるうどんこ病抑制に効果的なUV-B照射条件を検討した.キュウリおよびトマト苗に対し,1日2時間連日の50 mW・m–2ならびに100 mW・m–2の放射照度では,化学農薬による慣行防除と同等のうどんこ病抑制効果が得られた.しかし,100 mW・m–2の放射照度では,葉の萎縮症状を発生させた.UV-B照射時間は,1時間では十分な病害抑制効果は得られなかったものの,2時間と3時間では慣行防除と同等の効果が認められた.以上の結果より,キュウリおよびトマト苗に対する50 mW・m–2かつ2時間連日のUV-B照射により,うどんこ病に対して化学合成殺菌剤に代わる防除手法として活用できると考えられた.
著者
安藤 明伸 潟岡 冴子 鈴木 哲朗 橋渡 憲明 佐藤 陽 村松 浩幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.65-68, 2016

近年,SNSの使用に関わる問題が増加し,大きな課題となっている.情報教育の観点からも,中学生がSNS使用のメリット・デメリットを踏まえて,適切に活用できる判断力を持つことが重要であると考えられる.そこで本研究は,中学生を対象に,SNS使用に関わる判断力を育成するシナリオゲーム型教材の開発を目的とした.開発したシナリオゲーム型教材は,中学生を主人公に,SNSのトラブルをテーマにしたシナリオブックおよびカードで構成し,27種類の展開を設定してサイコロによる偶然性も組みこんだ.中学校2学年220名を対象に1時限の実践をした結果,SNS使用に関わる判断力の向上について,一定の教育的効果を確認できた.
著者
山崎 貴史 中瀬 泰然 小倉 直子 亀田 知明 前田 哲也 佐藤 雄一 高野 大樹 鈴木 明文 長田 乾
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.502-507, 2007-07-25 (Released:2009-02-06)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

急性期延髄梗塞連続114例を対象に臨床症状と画像所見との関連性を解析した. MRI所見は, 内側梗塞 (MMI) と外側梗塞 (LMI) に分類し, 発症年齢はMMI (68.3歳) がLMI (63.1歳) より有意に高齢であった. MMIはさらに錐体限局型と広範囲型に, LMIは背側型, 前腹側型, 後腹側型, 汎腹側型, 前外側型に分類した. MMIでは広範囲型が77.4%, LMIでは後腹側型が45.8%, 背側型が28.8%であった. MMIでは病巣分布にかかわらず顔を除く健側半身の感覚障害が49.1%, LMIの後腹側型で病側顔面と健側半身の感覚障害が55.6%にみられた. MMIは上部病変が66%, LMIは中部病変が66%であった. 上部病変では顔面麻痺, 中部病変で吃逆が高頻度に認められ, 入院時のMRIで偽陰性が有意に多かったことから, 急性発症の顔面麻痺や吃逆を伴う半身の感覚障害を呈するときには延髄梗塞が強く疑われる.
著者
佐藤 李菜 林 武司
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.30-36, 2012-01-05 (Released:2012-02-06)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

近年,多くの自治体で洪水ハザードマップが作成されている.ハザードマップの原図となる浸水想定区域図の作成に使用する地盤高データは50 mメッシュを基本としているが,日本の多くの都市が立地する低平地の地形を表現するには不十分と考えられる.そこで,秋田市茨島地区を対象に,洪水ハザードマップに使用されている浸水想定区域図の地盤高データの精度を検証し,地形情報の精度が浸水想定区域に及ぼす影響を明らかにした.結果,浸水想定区域図の地盤高データには実際の地形との誤差があり,洪水ハザードマップの浸水想定区域に誤差が生じていた.これにより,ハザードマップを使用する側が水害に対するリスク評価を誤って受け取る可能性が指摘された.
著者
田中 隆寛 河合 紀彦 中島 悠太 佐藤 智和 横矢 直和
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会冬季大会講演予稿集 (ISSN:13434357)
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.11B-3, 2015

Applying a conventional image inpainting method only once does not always generate plausible textures, and this problem is usually solved by repeatedly applying image inpainting with manual reselection of failure regions. This paper proposes a method that automatically detects failure regions in a resulting image using a convolutional neural network.