著者
内田 順子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.504-520, 2015

本稿は, 国立歴史民俗博物館が実施している民俗研究のための映像制作を事例として, 「映像を保存・活用する」際の諸課題について考察するものである. 長期的な展望をもって映像を制作し, 保存し, 活用するには, メディア変換などの技術的な問題, 著作権・肖像権などの法的問題, アーカイブの構築などの映像を共有するしくみに関する問題などを解決していく必要がある. 民俗研究を目的として制作された映像は, 研究者と, 研究対象となる地域の人びととの協働によってつくられるものであるため, その協働の関係性は, 映像そのものに色濃く反映される. そのような映像を保存・活用する際には, 著作権・肖像権に関する一般的な検討とは別に, 倫理的な問題として検討しなければならない事柄がある. その点が, 一般的な映像の保存・活用と異なるところである.
著者
内田 香奈子 山崎 勝之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.378-387, 2008-04-01 (Released:2008-07-15)
参考文献数
23
被引用文献数
3 1

本研究の目的は,情動焦点型コーピングの1つである感情表出と抑うつとの因果関係を,予測的研究方法を用いて検討することである。参加者は341名で,質問紙には,怒りと落胆感情に対する2タイプの感情表出(独立的/他者依存的)を測定する感情コーピング尺度 (ECQ) の状況版,問題焦点型コーピングの測定にはGeneral Coping Questionnaire (GCQ) の状況版,抑うつの測定にthe Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D) を用い,5週間をあけ (T1とT2),2度回答した。階層的重回帰分析の結果,女性においてT1の独立的感情表出がT2の抑うつと正に関連していた。また,女性において抑うつが高いほど問題解決を行わないことが示された。独立的感情表出を低め,同時に問題解決を高める介入の可能性について論議された。
著者
横溝 佐夜子 山本 由美 山下 英代 四谷 美和子 水野 千恵 丸山 悦子 荻野 正子 深蔵 紀子 山田 克子 瓦家 千代子 冨岡 和子 内田 真理子 梶田 武俊 辻 郁代 花崎 憲 生野 世方子 吉村 美紀 芥田 暁栄 山野 澄子 奥田 展子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.43-48, 2002-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15

5種の設定した加熱条件下でじゃがいもを加熱した場合の針入度と官能評価について,以下の結果を得た. 1.針入度による硬さの測定では,測定部位,測定時間による差がみられた. 2.設定した5種の加熱での官能評価では,弱火32分が最もやわらかいと評価されたが,総合評価は3分放置では中火20分が,20分放置では強火16分が最もよい評価となり,加熱条件と官能検査項目や放置時間との影響が確認された. 3.官能評価項目を5種の加熱条件での有意差の表れ方で比較すると,加熱条件の影響を受けやすい項目と,受けにくい項目とに分類できることが認められた. 4.5種の加熱条件における硬さの官能評価と針入度の間には,一致した傾向が認められた.
著者
内田 吉文 本多 和彦 吉村 藤謙 間瀬 肇 加藤 英紀 片山 美可 米澤 泰雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1366-I_1370, 2011 (Released:2011-11-09)
参考文献数
7

In the Ise Bay, there is a problem of drifting debris. This study examines the validity to use an Artificial Neural Network (ANN) for the prediction of collection position of the drifting debris. The ANN model predicting the positions of debris generation and debris accumulation is constructed by checking suitable input data and ANN parameters and transfer function. The resulting ANN gives good predictions: 1) The fit ratio of the drifting debris generation positions is 83%; 2) The fit ratio of drifting debris accumulation positions is more than 50%; and 3) In front of Yokkaichi city and southward of Centrair (The central Japan International Airport) are the main places where drifting debris gathers.
著者
田中 真 内田 純平 宮岡 祐一郎 戸川 望 柳澤 政生 大附 辰夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1383-1394, 2005-06-15
参考文献数
13
被引用文献数
11

演算器ごとに専用のローカルレジスタを持たせるレジスタ分散型アーキテクチャを用いると,レジスタ間データ転送を利用することによって配線遅延が回路の性能に与える影響を削減することが可能である.しかし,高位合成のスケジューリングの段階からフロアプラン情報を考慮する必要がある.本論文では,レジスタ分散型をターゲットアーキテクチャとし,(1) スケジューリング,(2) レジスタバインディング,(3) モジュール配置,の工程を繰り返し,(3) から得られたフロアプラン情報を(1),(3) の工程にフィードバックすることによって,解(合成結果)を収束させる高位合成手法を提案する.フロアプラン情報をスケジューリングに反映させるために,フィードバックされた配置情報とタイミング制約に基づいて,レジスタ間データ転送を利用することができるスケジューリング手法を提案する.また,レジスタ分散型に対応したレジスタバインディング手法を提案する.提案バインディング手法では,ローカルレジスタを入力側と出力側で区別し,出力側レジスタで可能な限りデータを保持することにより,総レジスタ数を削減する.提案手法により,フロアプランを考慮したレジスタ間データ転送を用いた回路を解として得ることが可能となる.計算機実験によって,提案手法の有効性を示す.By using a distributed-register architecture, we can synthesize the circuits with register-toregister data transfer, and can reduce influence of interconnect delay. In this paper, we propose a high-level synthesis method targeting a distributed-register architecture. Our method repeats (1) scheduling, (2) register binding, (3) module placement processes, and feeds back floorplan information from (3) to (1) in order to decide which functional units use registertoregister data transfers. Our scheduling algorithm can use register-to-register data transfer based on floorplan and timing constraint. We also propose a register binding algorithm on a distributed-register architecture. We show effectiveness of the proposed methods through experimental results.
著者
内田 博 高柳 茂 鈴木 伸 渡辺 孝雄 石松 康幸 田中 功 青山 信 中村 博文 納見 正明 中嶋 英明 桜井 正純
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.131-140, 2007-11-01 (Released:2007-11-17)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

1994年から2003年にかけて埼玉県中央部の丘陵地帯で,20×20 km,400 km2の調査区を設定して,オオタカの生息密度,営巣環境,繁殖成績,繁殖特性などを調査した.調査地での生息密度は1996年から2003年にかけて100 km2あたり平均12.8から14.0ペアであった.調査地内の隣接最短巣間距離は平均で1.74±0.59 km(±SD,範囲0.79−3.05 km, N=37)であった.営巣樹木は214例のうち,スギが54%,アカマツ30%,モミ13%と常緑針葉樹が97%を占めた.巣の高さは平均14 m,営巣木の69%の高さにあり,胸高直径は平均41 cmであった.巣は林縁から平均68 m,人家から155 m,道路から100 mの距離にあり,人の生活圏に接近していた.繁殖成功率は平均72%で,年により53~87%まで変動があった.巣立った雛は,産卵以降の全巣を対象にした場合平均1.49羽で,繁殖に成功した巣だけの場合,平均2.06羽であった.巣は前年繁殖に使用して,翌年も再使用したものが61%であった.また,9年間も同じ巣を使っているペアもいた.巣場所の再使用率は繁殖に成功した場合65%で,失敗すると50%だった.繁殖に失敗した67例の理由のほとんどは不明(61%)であったが,判明した原因は,密猟3例,人為的妨害4例,巣の落下4例,カラスなどの捕食5例,卵が孵化しなかったもの4例,枝が折れて巣を覆った1例,片親が死亡4例,近くで工事が行われたもの1例などであった.また,繁殖失敗理由が人為的か,自然由来のものであるかで,翌年の巣が移動した距離には有意差があり,人為的であればより遠くへ巣場所は移動した.
著者
内田 彰子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.12, pp.1751-1753, 2011 (Released:2011-12-01)
被引用文献数
1

I am a team doctor of three competition groups including professional cycling team for ten years. The most troublesome issue as a sports doctor is the problem about doping. I cope thanks to a mobile telephone and an e-mail regardless of place and time, but introduce some examples because I still experience many doping “near miss” cases. In addition, there are problems in road competition spots as follows; 1) There are few team doctors. I am pressed by the consultation from plural teams, 2) An unexperienced doctor of the doping knowledge often prescribes prohibited drugs, 3) There are problems with no understanding of the medicine made in foreign countries, Chinese medicine, a generic drug, and supplements which obtained on the internet. I hope that anti-doping education in faculty of pharmaceutical sciences is made mandatory, sports pharmacists taken to the sports spot along increase, and a system and a database to teach local doctors and players quickly will be achieved in future.
著者
中村 慶春 恩田 昌彦 内田 英二 井上 松応 山村 進 松谷 毅 丸山 弘 横山 滋彦 石川 紀行 田尻 孝 山下 精彦 山口 敏和 憚 暁青
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.2848-2852_1, 1996-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15

膵癌を疑われた33例に対して, 十二指腸乳頭括約筋を弛緩させるためにニトログリセリン舌下錠を投与し経口的膵管内視鏡検査を施行した. 最大2錠 (0.6mg) の投与により外径2.2mmの膵管鏡は容易に乳頭を通過しえた (29/33, 87.9%) . 通過不能の4例はすべて膵頭部癌症例で, カニュレーションを深く行えず十分にガイドワイヤーを留置できなかったことが原因であった. 乳頭通過後に膵管内を尾部あるいは病変まで観察できたものが29例中23例であった. 血圧の変動はニトログリセリン非投与群と比し有意差を認めず, 合併症は1例も経験しなかった. ニトログリセリン投与は簡便かつ安全で, 確実に乳頭を開大させることが可能で, 経口的膵管鏡検査において有効な方法と思われた.
著者
山口 直子 伊藤 瑞香 内田 彩子 鈴木 ちひろ 鬘谷 要 NAOKO YAMAGUCHI MIZUKA ITO AYAKO UCHIDA CHIHIRO SUZUKI KANAME KATSURAYA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-12, 2012-03

若者は、着物に対して興味や憧れといった肯定的な意識を持っているが、着物を着るにあたって着心地や着崩れといった様々な障害により着物を着ることが難しい現状にある。本研究では着物を着る上での大きな障害である着崩れのいくつかの要因のうち、主に、素材と着崩れとの関係に着目した。 研究対象とした素材は、綿、絹、ポリエステル、セオα(ポリエステル系新素材)の4種で、まず、顕微鏡による繊維の観察、摩擦測定、KESによる生地の力学特性の測定によって生地の状態を把握した。次に、各種の素材を用いて試験衣を作成し、それを着装し3種の単純動作を行うことで、着崩れの方向並びに量を解析することによって、素材による着崩れ傾向の違いを評価した。また、解析によって"おはしょり"が着崩れの緩衝機構になっていることが示唆されたため、おはしょりの無い試作対丈着物についても製作し比較検討を行った。 その結果、おはしょり有りの着物では、セオαの着崩れが最も少ない一方、綿の着崩れ量が大きいことが分かった。おはしょり有りとおはしょり無しを比較した場合はおはしょり無しの方が着崩れが目立ったが、セオαにおいておはしょり有りでは見られなかった新たな着崩れが生じ、おはしょりが着崩れに与える影響は素材によって異なることも明らかとなった。
著者
三浦 苑子 内田 雅也 平野 将司 山内 良子 吉津 伶美 草野 輝彦 古賀 実 有薗 幸司
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.195-201, 2013-09-30 (Released:2013-10-25)
参考文献数
26

トリクロサン(TCS)およびトリクロカルバン(TCC)は、薬用石鹸やシャンプー等様々な製品に幅広く使用され、産業廃水や生活排水を通じて環境中に広がり、水圏の野生生物に影響をおよぼすことが示唆されている。これらの研究は、水域生態系の生物を対象としたものが多く、化学物質の最終到達地点と考えられる海域に棲息する生物を対象とした研究は少ない。そこで本研究では、海産甲殻類アミを用いたTCSおよびTCCの生態影響評価を目的とした。急性毒性試験は、USEPAの試験法(EPA/600/4-90/027F)に準拠し、96時間曝露の半数致死濃度を算出した。成長・成熟試験は、USEPAの試験法(EPA method 1007)に準拠し、14日間半止水式曝露を行った。曝露期間中、生死と脱皮数の観察を行い、曝露終了後、体長、体重及び頭胸甲長を測定し、二次性徴の形態観察から雌雄比を算出した。それぞれの半数致死濃度はTCSで70 µg/L、TCCで12 µg/Lであり、現在報告されているTCSとTCCの水環境中濃度よりも高かった。成長・成熟試験の結果、TCSは0.5 µg/L、TCCが0.05 µg/Lで、各測定項目に有意な減少が認められ、半数致死濃度よりも極めて低濃度であった。本研究の結果、環境中濃度が低濃度であっても、長期的な曝露でアミに対する成長・成熟への影響をおぼすことが示唆され、水域環境への影響が懸念された。