著者
肥田 典子 手塚 美紀 熊坂 光香 三邉 武彦 鈴木 立紀 龍 家圭 山崎 太義 廣澤 槙子 田中 明彦 大田 進 相良 博典 小林 真一 内田 直樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.542-550, 2015

気管支喘息 (喘息) は気道の慢性炎症,可逆性のある気流制限,気道過敏性亢進と繰り返し起こる咳,喘鳴,呼吸困難で特徴づけられる閉塞性呼吸器疾患である.喘息予防・管理ガイドライン2012では吸入ステロイドが長期管理薬の中心に位置づけられ,治療目標として健常人と変わらない日常生活が送れること,喘息発作が起こらないこと,非可逆的な気道リモデリングへの進展を防ぐこと等が掲げられており,ガイドライン導入後の喘息死は確実に減少している.しかし,アドヒアランス不良による喘息発作による救急外来受診は少なからず存在し,入院治療を要する例もある.これまでに長期間の喘息治療薬の休薬が呼吸機能検査に及ぼす影響を検討した報告は多くあるが,短期間休薬の影響については検討が不十分である.今回,症状安定期の喘息患者において喘息治療薬を短期間休薬し,休薬前後での呼吸機能の変化を検討したので報告する.健康成人15名および喘息患者20名についての呼吸機能検査 (forced vital capacity; FVC,forced expiratory volume in one second; FEV1.0,forced expiratory volume % in one second;FEV1.0%,percent predicted forced expiratory volume in one second; %FEV1.0,V25,V50,peak expiratory flow; PEF) 結果を,2014年4月から7月に昭和大学臨床薬理研究所にて実施した治験のデータより抜粋して解析を行った.喘息患者では吸入ステロイドのみ継続し,治療薬の種類によって中止期間を指示した.長時間作用性β2刺激薬は48時間前から,ロイコトリエン受容体拮抗薬は24時間前から,抗アレルギー薬は72時間前からの休薬とした.各呼吸機能検査値について比較検討した.健康成人では2回目来院時ではFEV1.0%,V50,V25値の有意な増加を認めた.一方喘息患者では2回目の来院時のPEFが有意に低下した.特に喘息治療薬として吸入ステロイド/長時間作用性β2刺激薬配合剤を使用している症例では休薬によるPEF低下率が大きかった.喘息患者では,短期間の治療薬休薬によって自覚症状の増悪がなくてもPEF低下がみられることが確認された.短期休薬によるPEF低下と長期休薬による喘息コントロールの悪化との関連について今後の検討が必要であり,喘息コントロール良好を維持するためには,アドヒアランス向上を目的とした患者教育が重要と考えられた.
著者
石黒 広昭 内田 祥子 小林 梓 東重 満 織田 由香
出版者
北海道大学大学院教育学研究科
雑誌
北海道大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13457543)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.181-223, 2005-12-20

2005年度第一クールの調査目的はファンタジー遊びの中で,子ども達の挑戦的な経験がどのように子ども達を育て,そうした経験が何を発達させるのか調べることであった.第一クールは五月から七月まで行われ,テーマは月探険である.この第一クールからは「こどもクラブ」と呼ばれるメンバー制が採用され,12名の子どもが参加した.そこには年長5名,年中6名,年少1名が参加した.その内,7名が女児で,5名が男児である.大人は6名が参加した.その内,2名は宇宙研究所の研究員という主要な役割を担った.彼女らはプレイショップの始まりでは「こどもクラブ」の先生だが,途中から急に宇宙調査隊員に変身した.彼女たちは子ども達にとっては,現実世界と空想世界をつなぐ媒介者として存在した.劇化の中で,子ども達はいくつかのコンフリクトを経験し,現実と虚構,探険への不安と希望といった曖昧な状態に投げ込まれた.子ども達は劇化の中で自分達で問題を発見し,大人に助けられながらそれを解こうとした.本研究では劇化,集団討論,描画を通して子ども達がどのようにストーリーを組み換え,創作していったのか分析した.
著者
長谷川 昭 中島 淳一 内田 直希 梁田 高広 岡田 知己 趙 大鵬 松澤 暢 海野 徳仁
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.1, pp.128-160, 2012-02-25 (Released:2012-03-05)
参考文献数
120
被引用文献数
6 12

The mechanisms that generate the three main types of earthquake in subduction zones are discussed addressing their relations to geofluids. Studies on the spatial distribution of earthquakes and seismic velocity structure within the subducted slab provide evidence that strongly supports the dehydration embrittlement hypothesis for the generation of intermediate-depth intraslab earthquakes. Detailed imaging of the seismic velocity structure in and around plate boundary zones suggests that interplate coupling is mainly controlled by local fluid over-pressure. Seismic tomography studies show the existence of inclined sheet-like seismic low-velocity zones in the mantle wedge, not only in Tohoku but also in other areas in Japan, which perhaps correspond to the upwelling flow of the subduction-induced convection system. These upwelling flows reach the Moho directly beneath the volcanic areas, suggesting that those volcanic areas are formed by the upwelling flows. Aqueous fluids derived from the slab are probably transported up through the upwelling flows to the arc crust, where they might weaken the surrounding crustal rocks and finally cause shallow inland earthquakes. All of these observations suggest that geofluids expelled from the subducting slab play an important role in the generation of earthquakes in subduction zones.
著者
内田 貴之 佐藤 宏介 井口 征士
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.151-157, 2002

Several methodologies on Mixed Reality displays focus how to represent the occlusion phenomenon among real objects and CG objects. Generally, optical seethrough ways can not represent the correct occlusion phenomenon: a CG object overlaps on the real one translucently. This paper proposes an optical system with Digital Micro Mirror Device (DMD), a new type of optical see-through display which can represent the correct occlusion among the real and virtual images. A DMD consists of some hundred thousands of micro-mirror, that one micro-mirror corresponds to one pixel of the input image, and each mirror can switch its reflective direction. A reflective optical system with DMD, object and eye lenses is able to mix the transparent view of the real scene and another image according to arbitrary pixels with arbitrary mixture rate. Unlike other optical see-through displays with a LCD shutter and a half-mirror, there is an advantage in optical efficiency due to reflective and switching optics.
著者
投野 由紀夫 根岸 雅史 相川 真佐夫 寺内 一 中谷 安男 奥村 学 金子 恵美子 能登原 祥之 石井 康毅 内田 諭 和泉 絵美 大羽 良
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本科研の目的は日本人英語学習者の英語力に関する到達指標の提案およびそのレベル別言語材料の科学的な整備である。これを行うことで、シラバス開発、教科書・教材・タスク開発、テスト開発などに資する一貫した英語資料を提供できる。指標に関してはCEFR-JというCEFR準拠の英語汎用枠に基づいた。言語材料配当は、CEFR準拠教科書コーパス・学習者コーパスを独自に構築し、500以上の文法事項、テキスト特性、エラー特性に関してコーパス解析と機械学習の手法を用いて調査し、文法、テキスト、エラーの各プロファイルとして整備した。
著者
内田安蔵, 吉田文彦 編
出版者
東江堂
巻号頁・発行日
vol.第1巻, 1905
著者
内田 博 高柳 茂 鈴木 伸 渡辺 孝雄 石松 康幸 田中 功 青山 信 中村 博文 納見 正明 中嶋 英明 桜井 正純
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.131-140, 2007
被引用文献数
3

1994年から2003年にかけて埼玉県中央部の丘陵地帯で,20×20 km,400 km<sup>2</sup>の調査区を設定して,オオタカの生息密度,営巣環境,繁殖成績,繁殖特性などを調査した.調査地での生息密度は1996年から2003年にかけて100 km<sup>2</sup>あたり平均12.8から14.0ペアであった.調査地内の隣接最短巣間距離は平均で1.74±0.59 km(±SD,範囲0.79−3.05 km, <i>N</i>=37)であった.営巣樹木は214例のうち,スギが54%,アカマツ30%,モミ13%と常緑針葉樹が97%を占めた.巣の高さは平均14 m,営巣木の69%の高さにあり,胸高直径は平均41 cmであった.巣は林縁から平均68 m,人家から155 m,道路から100 mの距離にあり,人の生活圏に接近していた.繁殖成功率は平均72%で,年により53~87%まで変動があった.巣立った雛は,産卵以降の全巣を対象にした場合平均1.49羽で,繁殖に成功した巣だけの場合,平均2.06羽であった.巣は前年繁殖に使用して,翌年も再使用したものが61%であった.また,9年間も同じ巣を使っているペアもいた.巣場所の再使用率は繁殖に成功した場合65%で,失敗すると50%だった.繁殖に失敗した67例の理由のほとんどは不明(61%)であったが,判明した原因は,密猟3例,人為的妨害4例,巣の落下4例,カラスなどの捕食5例,卵が孵化しなかったもの4例,枝が折れて巣を覆った1例,片親が死亡4例,近くで工事が行われたもの1例などであった.また,繁殖失敗理由が人為的か,自然由来のものであるかで,翌年の巣が移動した距離には有意差があり,人為的であればより遠くへ巣場所は移動した.
著者
内田 尚子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-46, 1999 (Released:2001-04-01)
参考文献数
29
被引用文献数
5 5

DOIはディジタルであるなしに関わらず,あらゆる創作物を識別する。DOIシステムが1997年に公開されて以来,コンテントおよびインターネット技術の関係者から広く支持を得てきた。本稿は,International DOI Foundation (IDF) その他のWebサイトから得た情報やディジタル出版物を参考に,DOIの歴史,DOIシステムの仕組み,今後の開発構想について述べる。
著者
内田 豊昭 足立 功一 青 輝昭 藤野 淡人 横山 英二 小俣 二也 吉沢 一彦 黒川 純 門脇 和臣 庄司 清 真下 節夫 遠藤 忠雄 小柴 健
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.890-896, 1993-05-20
被引用文献数
4 6

1971年8月から1991年7月までの20年間に北里大学病院泌尿器科において経験した経尿道的手術は3,215例であった.その内訳は,前立腺肥大症2,008例,膀胱腫瘍692例,前立腺癌258例,膀胱頸部硬化症167例,尿道狭窄38例,慢性前立腺炎20例,他の泌尿器疾患32例という順であった.このうち下部尿路通過障害を主訴としてTURPを施行した前立腺肥大症2,008例と前立腺癌258例の計2,266例について臨床統計的に検討した.2,266例の年齢は44歳から96歳(平均70.1歳)で,切除時間は最短9分から最長245分(平均73.0分)切除量は最小1gから最大177g(平均27.0g),使用灌流液量は最小4Lから92L(平均25.0L)であった.術後の膀胱カテーテルの留置日数は3日間から44聞間(平均4.1日間),入院日数は最短10日間から最長81日間(平均12.1日間),術中・術後合併症は合計308例(13.6%),輸血症例は305例(13.5%),死亡例は1例(0.04%)に認められた.それぞれの項目につき,疾患別,切除量別,切除時間別に検討したところ,疾患別では前立腺肥大症群が切除量,切除時間,灌流液量,術後カテーテル留置期問,合併症率が高く,前立腺癌群に入院期間と輸血例が多く認められた.また切除時間,切除量が増大するにつれ各項目とも比例増大した.
著者
鈴木 康弘 杉戸 信彦 坂上 寛之 内田 主税 渡辺 満久 澤 祥 松多 信尚 田力 正好 廣内 大助 谷口 薫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.37-46, 2009 (Released:2010-02-24)
参考文献数
16

活断層の詳細位置・変位地形の形状・平均変位速度といった地理情報は,地震発生予測のみならず,土地利用上の配慮により被害軽減を計るためにも有効な情報である.筆者らは糸魚川-静岡構造線活断層帯に関する基礎データと,活断層と変位地形の関係をビジュアルに表現したグラフィクスとをwebGIS上に取りまとめ,「糸魚川-静岡構造線活断層情報ステーション」としてインターネット公開した.本論文は,被害軽減に資する活断層情報提供システムの構築方法を提示する.これまでに糸魚川-静岡構造線北部および中部について,平均変位速度の詳細な分布を明らかにした.この情報は,断層の地震時挙動の推定や強震動予測を可能にする可能性がある.さらに縮尺1.5万分の1の航空写真を用いた写真測量により,高密度・高解像度DEMを作成した.人工改変により消失している変位地形については,1940年代や1960年代に撮影された航空写真の写真測量により再現し,その形状を計測した.写真測量システムを用いた地形解析によって,断層変位地形に関する高密度な解析が可能となり,数値情報として整備された.
著者
小池 将史 内田 雅文 野澤 昭雄
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.134, no.10, pp.1531-1536, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
24

The aim of this research was development of emotion still camera. Emotion still camera is used to record the image of KANSEI of the photographer at the moment of shooting a photograph. Physiological and psychological measurements of the photographer were performed at the moment of the photography. Three situations where photographer generally took a photograph were defined. The three situations had the time factor, the spatial factor and the psychological factor. Blink and peripheral skin temperature (PST) and heart rate (HR) and pupil diameter were measured with camera operation. KANSEI was evaluated by the physiological - psychological indices.  There was more the number of blinks in the time factor than general number of blinks. The average of PST in the time factor fell in comparison with the usual PST of the photographer. The average of HR in the time factor was increased in comparison with others. It was thought that the result was caused by the sympathicotonia of photographer strained by the time factor.
著者
光山 慶一 増田 淳也 山崎 博 桑木 光太郎 北崎 滋彦 古賀 浩徳 内田 勝幸 佐田 通夫
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.143-147, 2007 (Released:2007-05-31)
参考文献数
15

プロピオン酸菌による乳清発酵物は,乳清をエメンタールチーズ由来のプロピオン酸菌で発酵させて製造したプレバイオティクスである.その主要成分である1,4-dihydroxy-2-naphthoic acidはビフィズス菌を特異的に増殖させ,腸内環境を宿主に有益な方向へ導くことが可能である.我々は,本食材が実験大腸炎モデルや潰瘍性大腸炎患者に有用であることを明らかにした.本稿では,これまでに報告されたプロピオン酸菌による乳清発酵物の特性について概説するとともに,潰瘍性大腸炎への治療応用について述べる.