著者
浦口 健介 小桜 謙一 前田 幸英 太田 剛史 土井 彰 假谷 伸
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.1005-1012, 2021-07-20 (Released:2021-08-04)
参考文献数
33

めまいは救急受診の原因で頻度の高い主訴であるが, めまいの中には致死的な疾患や重篤な後遺症を残す疾患が存在し初期対応には注意を要する. 今回, 当院で救急救命科へ搬送され入院した急性期めまい症例について検討した. また, その集計結果を用いて初期研修医に急性期めまい診療についてのフィードバックを行い, 急性期めまい診療について質問紙調査を行った. 救急搬送された急性期めまい症例224例を対象とした. 入院症例については患者背景・随伴症状・診断名について検討した. これらの集計結果を初期研修医に提示するとともに, 初期研修医への急性期めまい診療講義を行い, その前後に質問紙調査を行った. めまい搬送症例は224例であり, 93例 (41.5%) が入院を要した. 入院症例のうち末梢性めまいが38例, 中枢性めまいが29例, 15例がそのほかの全身疾患, 原因不明が11例だった. 中枢性めまいのうち脳血管障害は18例あり, 15例が椎骨脳底動脈系血管障害 (小脳梗塞8例, 脳幹梗塞4例, 小脳出血3例) であった. 42人の初期研修医への質問紙調査では, 急性期めまい診療に興味はあるが十分な理解ができていないことが示された. めまい診療においては鑑別疾患や診断方法などが重要と考え, 本検討内容を救急救命医や初期研修医へフィードバックをすることで, 今後の急性期めまい診療についての情報共有を行うことができた.
著者
谷口 奈美 前田 愛子 冨永 昌周
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.15-0051, (Released:2016-09-06)
参考文献数
12

原発性肢端紅痛症(primary erythromelalgia:PE)は,四肢末端の灼熱痛,発赤,皮膚温上昇を三徴とする難治性臨床症候群である.現状では確立した治療法はない.今回,PEの治療を経験したので報告する.症例は54歳,女性.10年前より温熱刺激による四肢末端の痛み,発赤,灼熱感を自覚するようになった.冷却により一時的に改善したが,痛み制御不良のため紹介受診となった.1日に20回程度の発作的な四肢末端の激しい痛みが出現し,睡眠障害を生じていた.自己免疫疾患,血液疾患は否定され,その症状からPEと診断した.治療は,星状神経節ブロックを施行し,症状の著明な改善がみられた.その後,α1アドレナリン受容体拮抗薬の内服を継続し,症状の改善を維持している.過去の文献から,PEは後根神経節,交感神経節やこれらの末梢神経のナトリウムチャネルの変異があると報告されている.この変異は痛みの感受性変化や血流障害を誘起し,また付随的な局所の発痛物質放出を招き,痛みを遷延化する可能性がある.本症例では交感神経遮断治療が奏効したことから,PEの病態に対する交感神経系の関与が示唆された.
著者
前田 康成
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.13-19, 2020

<p>近年,株価予測について多く研究されている.従来研究では予測対象銘柄の学習データが利用されている.しかし,現実には予測対象銘柄の学習データが存在しないことも多い.そこで,本研究ではベイズ統計に基づいて予測対象銘柄以外の既存データを学習データとして利用する.従来研究では全結合ニューラルネットワークを用いた深層学習を株価予測に適用している.本研究では,ベイズ統計に基づく全結合ニューラルネットワークを用いた深層学習を株価予測に適用する.本研究は従来研究のベイズ統計の視点による拡張研究の一種である.新しい予測方法を提案し,株価予測実験と投資シミュレーションの結果を紹介する.投資シミュレーションの結果に基づいて提案方法の有効性を確認する.</p>
著者
加藤 恭郎 渡辺 孝 前田 哲生 垣本 佳士
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.745-751, 2011

わが国においてスターチ腹膜炎についての認識は低く,パウダーフリーの手術用手袋の普及も進んでいない.今回,虫垂切除後にスターチ腹膜炎を発症し,その後の経過を長期に観察しえた1例を経験したので報告する.症例は16歳女性で,1994年,虫垂炎に対し虫垂切除を行った.術後9日目から小腸通過障害をおこし,12日目に腹腔鏡下癒着剥離術を行った.黄色混濁腹水と腹膜小結節を認めた.腹水の培養は陰性であった.術後発熱と高い炎症反応が続いた.CTで腹水の貯留と腸間膜の肥厚を認めた.手袋のパウダーでの皮内反応が陽性であった.スターチ腹膜炎と判断しステロイド投与を行ったところ炎症反応は低下し,腹水も消失した.その後も小腸通過障害,複数回の腹痛があったがいずれも保存的に軽快した.スターチ腹膜炎が長期にわたり患者のQOLを悪化させた可能性があった.今後パウダーフリーの手術用手袋を普及させる必要があると思われた.
著者
森山 信彰 浦辺 幸夫 前田 慶明 寺花 史朗 石井 良昌 芥川 孝志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】筆者らは理学療法士を中心としたグループで,中四国学生アメリカンフットボール連盟秋季リーグ戦の全試合に帯同し,メディカルサポートを行ってきた。本研究では,外傷発生状況の分析を行い,今後の安全対策の充実に向けた提言につなげたい。【方法】2012年度から2015年度の試合中に生じた全外傷を集計した。外傷発生状況は,日本アメリカンフットボール協会の外傷報告書の形式を用いて記録した。分析項目は外傷の発生時の状況,部位,種類,発生時間帯とした。【結果】本研究の調査期間にリーグ戦に参加したのは7校であり,登録選手数は延べ686名(2012年161名,2013年152名,2014年185名,2015年188名)であった。リーグ戦の開催時期は毎回8月下旬~11月上旬であった。調査対象試合数は57試合であった。調査期間中の外傷の総発生件数は249件(2012年72件,2013年60件,2014年52件,2015年65件)であり,1試合平均の外傷発生件数は4.4件(2012年4.8件,2013年4.3件,2014年3.5件,2015年5.0件)であった。4年間で外傷発生件数には大きな変化がなく推移した。外傷発生時の状況は「タックルされた時」が67件(27%)で最も多く,次いで「タックルした時」が59件(24%),「ブロックされた時」が39件(16%)の順であった。部位は,下腿が70件(28%)で最も多く,以下膝関節が27件(11%),腹部が20件(8%)の順であった。種類は打撲が87件(35%)で最も多く,以下筋痙攣が74件(30%),靭帯損傷が35件(14%)の順であった。時期は,第4クォーターが97件(39%)と最も多かった。【結論】関東地区の大学リーグ戦中に発生した1試合平均外傷発生件数は1.3件で,外傷の38%が靭帯損傷であり,次いで打撲が17%という報告がある(藤谷ら 2012)。本リーグ戦では,1試合平均外傷発生件数が4.4件と,先行研究の3.4倍となり明らかに多くなっている。また,外傷の種類別では,靭帯損傷の発生件数が少ないが,それに代わって打撲の発生が多いことが特徴であろう。打撲については,相手の下半身を狙うような低い姿勢のタックル動作を受ける際に主に大腿部や腹部に強いコンタクトを受けたケースで多く発生していた。近年,米国では「Heads up football」と称した,タックル動作に関する組織的な啓発活動が行われており,理想的なタックル動作として相手の上半身へコンタクトすることを推奨している。わが国においても最近の安全対策への見解を取り入れ,タックル動作を安全に行うための指導を継続して行っていくことが今後重要であると考える。一方で,本研究の解析期間中には,頸髄損傷などで後遺障がいを認めるような重大外傷は発生しなかった。これは,筆者らがリーグ戦への帯同に加えて,オフシーズンに講習会を実施し,安全な動作指導を行っていることが奏功したと考えられる。重大外傷の予防のために,この事業の継続が必要と考えている。
著者
前田 和博 齋藤 康之
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.37-40, 2009
参考文献数
4
被引用文献数
1

本研究は,カラー画像の特徴を用いて楽曲を生成する方法について検討する.展覧会などでは,展示される画像の周囲に流されるBGMが大きな意味を持つことがある.展示される画像と同じ印象を持った楽曲を流すことができたならば,観る者が受ける感銘はより大きくなると考えられる.はじめにK-平均法を用いて画像の領域分割を行い,その領域情報からメロディラインを生成する.次に,メロディラインの持つ平均色などの情報を用いて伴奏部とメロディ部を含む楽曲を生成する.この手順で生成された楽曲は,画像の持つ特徴を含んでいる.
著者
鈴木 幸司 野崎 晃 今野 紀雄 前田 純治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.51-52, 1994-09-20

人間の記憶はコンピュータの記憶システムのように番地指定によって情報を記憶したり取り出したりするのではなく,連想によって情報の記憶・想起が行なわれていると考えられている.したがって,記憶の一部からより関係の深い情報を想起でき,情報間の関係が記憶されている.本研究では,連想記憶を入力パターンX=(x_1,...,x_n)(1)と出力パターンY=(y1,...,yp)(2)の組が(3)のように複数存在するとしたときその入出力関係を記憶することと考える.((X^<(1)>,Y^<(1)>),...,(X^<(q)>,Y^<(q)>))入出力の関係を記憶することが記名過程であり,パターンを入力することでなんらかのパターンを出力をすることが想起過程である.このような連想記憶には,多くの研究があり相関学習と直交学習による連想記憶がその代表的なモデルである.また,ニューラルネットワークによる連想記憶も活発に研究されている.相関学習による連想記憶は,入力パターンが互いに直交しているときに入力パターン相互の干渉を排除でき正し想起が可能となる.また,直交学習による連想記憶では,n次元の入力ベクトルX_1,...,X_k(1k&pre:&pre:n)(4)が一次独立であるとき入力ベクトル相互の干渉を排除でき正しい想起ができる.しかし,連想記憶をパターン認識や画像復元に応用するとき,入力データにノイズは加わることが一般的であり,入力ベクトルの直交性や一次独立が満たされないことが多い.そこで本研究では連想行列をファジー数で表現することによってファジー連想記憶を実現し,その想起特性を評価した.
著者
宮崎 大介 向井 孝彰 前田 有希 村上 進 宮崎 剛
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

インテグラルイメージング方式による3次元像表示と半球凹面鏡による空中像表示、回転ミラーの全周囲走査の組み合わせによる、全周囲から観察可能な空中3次元像形成技術の研究を行った。表示像には、光学系の収差による像の歪みや、光放射方向の不適切さによる像の欠けなどの問題があった。そこで、光学系中にスクリーンを配置して投影像を撮影し、光学シミュレーションと比較して、像形成の特性を解析した。また、凹面鏡の形状を計測し、光学シミュレーションに測定結果を適用することで、精度の高い光学系の設計を行った。試作システムにより全周囲から観察可能な3次元空中像の形成を行い、提案手法の有効性を確認することができた。
著者
前田耕作 山根聡著
出版者
河出書房新社
巻号頁・発行日
2002
著者
目崎 登 前田 清司 家光 素行 相澤 勝治
出版者
帝京平成大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,性ホルモンの合成組織として骨格筋に着目し,その合成経路が運動により亢進することにより,性ホルモン合成の亢進に寄与するという仮説を立証することを目的とする.上記の研究課題を明らかにするために,骨格筋における性ホルモン合成酵素の発現の有無と局所性ホルモン代謝動態について検討した(研究課題I).さらに,運動による骨格筋内の性ホルモン産生経路を明らかにするために,運動が骨格筋内の性ホルモン合成酵素に及ぼす影響とその性差について検討した(研究課題II).その結果,骨格筋における性ホルモン産生機序に着目し,骨格筋内の性ホルモン合成酵素の遺伝子・タンパク発現が存在することを確認し,骨格筋には性ホルモン代謝経路が存在し,局所にて性ホルモンを産生する器官となりうる可能性を明らかにした(研究課題I).また,骨格筋内の性ホルモン合成酵素の遺伝子・タンパク発現には性差があり,運動刺激に対するそれらの発現応答にも性差があるという結果を得たことから(研究課題II),運動による骨格筋の適応機序に局所の性ホレモン代謝が関与している可能性が示された.それゆえ,運動による性ホルモン作用は,内分泌経路の他に,末梢組織(骨格筋)における局所の性ホルモン産生が重要な役割を果たしている可能性が示された.
著者
前田 正子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.26-36, 2012-04-30 (Released:2013-07-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

家族のない人や地域とのつながりを持たない人が増えている中で,人々は困難に直面したとき,最後に役所にくる.しかし,年金や介護などの既存の社会保障制度や福祉制度だけでは,人々の複合的な問題は解決しない.人々の安心感を保障するためには既存の制度に加え,これまで家族が担ってきた対人サービスを社会的に供給することが必要になる.実際に子育て支援の現場では,親を孤立させないために行政と市民やNPOとの連携によってきめ細やかな支援が行われている.だが,家族的ケアを社会的に供給すべきかどうかという点にも議論があるだろう.また,その供給に同意が得られたとしても,何を誰がどう供給するか,それは誰が担い,財源はどう確保するのか,自助・共助・公助の役割分担をどうすべきかといった議論が必要になるだろう.
著者
菊池 千草 堀 英生 前田 徹 松永 民秀 鈴木 匡
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.477-483, 2011-03-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

One of the Specific Behavioral Objectives (SBOs) of pharmaceutical education model-core curriculum is as follows: “Understand patient's state of mind and be sensitive to patient's feelings”. We performed learning through simulation of diabetes drug therapy as a means to achieve the objective and evaluated the educational effects of the learning. The simulation was performed and a questionnaire survey was conducted among the 4th-year students of the 6-year curriculum before and after simulation. The score of “level of understanding patient's feelings” was significantly increased after simulation (p<0.001). In addition, the score tended to be associated (R2=0.192) with an increased score in two factors that affect patients' self-care action: “Consciousness of diabetes mellitus” (β=0.251, p=0.062) and “Time and effort for drug therapy” (β=0.248, p=0.065). The main topics of discussion about the simulation included “Lack of sense of critical illness”, “Lifestyle”, “Dose regimen” and “Necessity of support from patients' family and others close to them”. Therefore, the learning through simulation diabetes drug therapy was effective to understand patients' states of mind because students learned the importance of some factors affecting self-care action.
著者
立花 綾香 加地 剛 七條 あつ子 高橋 洋平 中山 聡一朗 中川 竜二 前田 和寿 早渕 康信 香美 祥二 苛原 稔
出版者
日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.155-159, 2016-05

純型肺動脈閉鎖(pulmonary atresia with intact ventricular septum:以下PAIVS)の治療方針の決定には右室の大きさ,肺動脈の閉鎖様式に加え,冠動脈が右室内腔と繋がる異常交通(類洞交通)の有無や程度が重要とされる.今回胎児期に類洞交通を評価できたPAIVSの一例を経験したので報告する.超音波検査にて胎児の右室が小さいことを指摘され妊娠23週に紹介となった.初診時の超音波検査にてPAIVSと診断した.また右室心尖部に心筋を貫通する両方向性血流を認め,類洞交通の存在が疑われた.その後冠動脈を起始部から系統的に描出することで,左冠動脈前下行枝からの大きな類洞交通であることを確認した.右室が高度の低形成でかつ大きな類洞交通があることから単心室修復が必要となることが予想された.児は出生後,心臓超音波検査,心臓血管造影にて同様の診断がなされ,単心室修復に至った.胎児超音波で冠動脈を起始部から系統的に観察することで,類洞交通の評価が可能となりそれにより,出生前から治療方針の検討ができ,家族への説明に有用であった.
著者
前田 真之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.141, no.8, pp.995-1000, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Over the past few decades, the effectiveness of antibiotics has been diminished owing to the emergence of antimicrobial resistance resulting from the overuse of antibiotics. Antimicrobial stewardship aims to improve the appropriateness of antibiotic use to reduce antimicrobial resistance and benefit patients. Antimicrobial stewardship requires structural prerequisites for implementing antimicrobial stewardship programs (ASPs), such as the presence of a multidisciplinary antimicrobial stewardship team (AST), to ensure appropriate antimicrobial use at healthcare facilities. However, manpower shortage for ASTs in most Japanese hospitals has resulted in limited implementation of ASPs. Our study provided a directive for promotion of comprehensive ASPs including various outcome measures. Our findings would provide useful benchmarks for hospitals planning to implement ASPs in Japan as well as around the world. This review provides a framework for evaluating the outcome measures and benchmarks of ASPs based on our study.
著者
前田 更子
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 = The Journal of history (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.155-187, 2021-01

敬虔なカトリックの女性信者は、ライシテに価値を見いだすフランス共和国で何を考え、どのように生きたのだろうか。それが国民統合の使命を担った公立学校の教師だったとするとさらに問題は複雑であろう。本稿では、アルプスの山岳地帯を拠点とし、主に両大戦間期に活動した女性カトリック・グループ「ダビデ」を取り上げる。彼女たちのネットワークは雑誌や図書館制度、巡礼を通して全国に広がり、一九二〇年代末には公立小学校に勤務する女性教員の一割ほどを惹きつけた。共和国の小学校教師としての使命を果たしつつ信者として生き抜くことは、ダビデにとって両立可能であり相互補完的でさえあった。共和国とカトリシズムはともに、彼女たちに人との親密なつながりをもたらし、自己を主張し防衛する手段をも与えた。本稿では、第三共和政期フランスの小学校教師の日常世界を明らかにし、宗教の社会的意義をジェンダーの視点から考察する。This article considers the ideas and activities of the Davidées, a group of Catholic female teachers who worked in public schools. This is firstly an attempt to clarify the daily lives of female teachers in rural France during the Interwar period, and secondly an effort to present one case to help us understand how pious individuals adapted to the modern nation state that promoted laïcité as a national principle. The historical sources employed in this study are chiefly letters written by Marie Silve and Marthe Lagarde, who were leading members of the Davidées, records of the interviews of Marie Silve by the Catholic intellectuals Jean Guitton and Emmanuel Mounier, and the monthly Aux Davidées, published by the group itself. The Davidées were created in 1916 in the sanctuary of Notre-Dame du Laus, located in the Southern Alps, where six female teachers, who were newly graduated from the teacher-training college in Digne, met with the veteran teacher Mélanie Thivolle. These women were fervent Catholics, but at the time in the sphere of elementary educators there was, on the one hand, a powerful leftist teachersʼ union that would not recognize the teachersʼ faith, and, on the other hand, the Catholic church that condemned public schools as "schools of the devil" and encouraged the faithful to join private schools. Given these circumstances, the women founded the Davidées in order to fulfill their duties as public school teachers and at the same time to keep and even enhance their faith. The Davidées network, which valued their occupation and faith equally, gradually spread throughout the nation via their periodicals, library system and pilgrimages, and by the end of the 1920s they had attracted to their ranks approximately 10% of the female elementary teachers working in public schools. Carrying on their faith while fulfilling their mission as public school teachers for the Republic was for the Davidées something that could not only coexist, but in fact be complementary. Furthermore, both the Republic and Catholicism provided them intimate links to various people and gave them the means to advocate for and protect themselves. This article attempts to throw new light on the previous understanding of teachers in the time of the Third Republic from the viewpoints of religion and gender.