著者
岡崎 貴裕 前田 聡彦 井上 誠 北薗 貴子 柴田 朋彦 尾崎 承一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.124-128, 2009 (Released:2009-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

移植後に発症する慢性移植片対宿主病の発現病態としては稀とされる多発性筋炎を経験した.症例は55歳,女性.T細胞リンパ腫にて実姉よりHLA一致,血液型一致の同種骨髄移植をうけた約2年後に,脱力感を主訴に近医を受診するも改善せず当院を紹介され入院した.筋力低下,筋痛,CPK値,炎症所見,筋電図より多発性筋炎と診断されたが,徒手筋力テストでの筋力低下は近位筋のみならず遠位にも及んでおり,定型的多発性筋炎の障害様式との相違がみられた.筋生検では筋萎縮や大小不同が見られたが細胞浸潤に極めて乏しい所見が得られた.治療は,プレドニゾロン(1 mg/kg/日)を開始するとともに速やかに自覚症状およびCPK値の改善を認め,原疾患である慢性移植片対宿主病に対してミゾリビン150 mg/日を追加投与することによりステロイドの漸減も可能となった.過去の報告では筋組織所見で強い細胞浸潤を認めるとした報告が多いが,慢性移植片対宿主病の病勢制御のための長期間の免疫抑制剤投与や,ステロイド治療が奏効している結果を考慮すると,細胞浸潤の有無は必ずしも筋炎の診断に決定的な根拠とはなり得ないことが示唆された.
著者
寺田 進志 前河 泰正 永野 翔大 田中 淳
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies (ISSN:09153586)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.35-53, 2023-01-31

The purpose of this study is to identify and resolve problems and issuesfrom student teacher evaluations and general reviews in order to improve andenhance the teacher training course in the Health and Physical Education courseat Osaka International University. To achieve this, we reviewed the overallevaluations of student teachers from 2019 to 2021 and analyzed general reviewswith AI text mining. It was determined that we should improve the knowledgeand ability of the Health and Physical Education course and student guidance tomeet a prescribed standard. Student teachers should be instructed on improvingtheir material development and teaching practice, and be encouraged to teachwith enthusiasm, earnestness, and be more involved with their students.
著者
宮前 剛 松浦 幹太
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.260-267, 2019-10-14

暗号資産の代表であるBitcoinは,トランザクション分析技術の急速な進歩に伴い,追跡困難性が低下している.そのような状況の中,追跡困難性とスケーラビリティを両立する匿名暗号資産プロトコルMimblewimbleが注目されている.しかし,現時点でMimblewimbleはメッセージングに関して多くの課題を抱えている.そこで,我々は,Mimblewimbleのメッセージングの課題を解決するために,Mimblewimble自身を拡張してブロックチェーン形式の追跡困難メッセージングを実現するMWmessageを提案する.本稿では,まずMimblewimbleの仕組みと特徴およびそのメッセージングに関する課題を整理した上で,課題を解決するためのMWmessageの仕組みを説明する.特に,メッセージの改竄を困難にするためのメッセージハッシュの仕組みと,Mimblewimbleのスケーラビリティを犠牲にすることなく追跡困難メッセージングを実現するためのメッセージへの有効期限付与の仕組みに焦点を当てる.最後に,MWmessageを一般の匿名メッセージングシステムとして机上評価する.
著者
伊藤 寿英 長尾 能雅 前川 厚子 植村 政和
出版者
修文大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

2019年12月に中国武漢でCOVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大の報告があり、瞬く間に世界中にパンデミックをもたらした。わが国では2020年2月末頃から感染トレンドが増減し、生活全般、社会経済のインフラ、病院運営、看護マネジメントにも計り知れない変化をもたらした。本研究は、N大学病院における2018年から2021年までのCOVID-19蔓延前後で2期に分け、看護インシデントとDPCデータを統合した分析を行う。看護環境の変化、看護事故、インシデントの背景要因について遡り観察を行い、リアルデータに基づいた患者安全と看護の価値を創生するアウトカム評価方法を明らかにする。
著者
前島 伸一郎 岡本 さやか 岡崎 英人 園田 茂 大沢 愛子
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.322-332, 2016-12-25 (Released:2017-01-18)
参考文献数
53
被引用文献数
2

視床病変では,運動障害や感覚障害などの神経症状だけでなく,失語症や半側空間無視,記憶障害など多彩な神経心理学的症状をしばしば伴う.一方,失語症を伴わない読み書きの障害が単独でみられることは少ない.読み書きの障害を生じる視床の局在病変として明らかにされているのは,背内側核(DM核)と外側腹側核(VL核),後外側腹側核(VPL核)であり,それぞれ大脳皮質の前頭葉,運動関連領野,感覚野へ投射する.既報告例の多くで,SPECT検査が実施され,同側の頭頂葉や前頭葉,側頭葉の皮質・皮質下に局所脳血流の低下による機能的病変が示されている.
著者
栁澤 翔士 前川 督雄
出版者
四日市大学
雑誌
四日市大学論集 (ISSN:13405543)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.85-103, 2022-10-01 (Released:2022-11-18)

In recent years, it has become commonplace to use motion capture to create the movements of characters created in 3DCG when making movies, animations, and computer games. The purpose of this report is to provide an overview of motion capture as well as to explore examples of motion capture applications using an inertial motion capture system.
著者
山名 哲郎 高尾 良彦 吉岡 和彦 味村 俊樹 角田 明良 勝野 秀稔 前田 耕太郎
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.371-379, 2014 (Released:2014-05-31)
参考文献数
40
被引用文献数
6 2

【はじめに】便失禁はQOLに大きな影響を及ぼす排便障害の一つであるが,これまで有効な治療法が確立されていないのが現状である.仙骨神経刺激療法は便失禁に対する有効性が認められ,欧州では1994年から,米国でも2011年に承認され使用されている.本邦でも本治療法の導入が望まれ,このたび承認申請にむけた前向き多施設共同研究を行ったのでその結果を報告する.【方法】便失禁の頻度が週2回を超える患者を仙骨神経刺激療法の適応とし,各施設の治験審査委員会の承認を得た上で,インフォームドコンセントのもとに治験を行った.最初に仙骨神経刺激用のリード埋め込みを行い,体外式刺激装置による2週間の試験刺激で50%以上の症状改善を認めた症例に,体内埋め込み型刺激装置(InterStim II,米国Medtronic社)を留置した.便失禁の症状は患者自身による排便日誌をもとに評価した.肛門内圧検査は術前および術後1ヵ月,3ヵ月,6ヵ月の時点で施行した.術前と比較して便失禁回数/週が50%以上減少した場合に治療有効と判定した.【結果】2011年1月から11月の間に治験に参加した22人の患者にリード埋め込み術を施行した.便失禁の原因は不明(特発性)10例,直腸術後8例,分娩外傷2例,その他2例であった.試験刺激による症状改善が50%未満であった直腸癌術後の1例はリードを抜去,症状改善が50%以上であった21例(男性9例,女性12例,平均年齢66.6歳)に刺激装置の埋め込みを行った.術後6ヵ月のフォローアップの時点で85.7%の症例が治療有効と判定された.平均便失禁回数/週は術前が14.9回,術後6ヵ月が3.1回と有意に減少した(p=0.0135).肛門内圧検査では術前の肛門管最大静止圧の平均値が28.4mmHg,術後6ヵ月の平均値が39.1mmHgと有意に上昇した(p=0.0026).リード埋め込みおよび刺激装置埋め込みによる重篤な合併症は認められなかった.【結語】便失禁に対する仙骨神経刺激療法は安全で有効な治療法である.
著者
高橋 克伸 徳久 銀一郎 前川 正幸 高木 一広 清田 幸宏
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.1770-1774, 1992-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
28

We observed a nine-year-old boy who suffered from a so-called Brodie's abscess involving the adjacent metaphysis and epiphysis of the distal tibia, communicating through the growth cartilage of the epiphyseal plate. The patient presented himself with the mild symptoms and subtle clinical findings that are characteristic of Brodie's abscess, which is usually confined to the metaphyseal, and occasionally to the epiphyseal, bone. Initially, he was treated by surgical evacuation of the abscess and with intravenous antibiotics, and then by oral andtibiotics. The pathogenic organism was Staphylococcus aureus. At follow-up 10 months after treatment, he had normal results without any evidence of a growth disturbance. As far as we know, there have been 27 previously reported cases of Brodie's abscess traversing the epiphyseal plate. We believe that surgical evacuation of the lesion, followed by antibiotics, is an appropriate treatment for some children presenting themselves with this condition.
著者
本田 芳大 武田 和也 岡崎 鈴代 中村 恵 天野 雄太 山根 有希子 端山 昌樹 前田 陽平 愛場 庸雅 猪原 秀典
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.522-530, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
22

副鼻腔真菌症の大部分は予後良好な非浸潤型副鼻腔真菌症であるが,まれに免疫が低下した患者において重症化し,致死的となる浸潤型副鼻腔真菌症が知られている。今回,われわれはびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)の化学療法中,骨髄抑制期に発症した副鼻腔炎に対し上顎洞開放を行い,その後より急速に進行した浸潤型副鼻腔真菌症を経験した。症例は69歳女性。DLBCLに対する化学療法施行後,骨髄抑制期に発熱性好中球減少症となった。経過中に右眼痛とCT検査にて右上顎洞に新規陰影の出現を認め,紹介受診となった。初診時,副鼻腔真菌症を疑い外来にて上顎洞開放を行った。上顎洞内に菌塊を認めたため除去し,明らかな菌塊の残存がないことを確認して,軟膏ガーゼを挿入した。第4病日にガーゼを抜去し,鼻内を観察すると,右鼻腔内全体に白色の粘膜病変を認め,真菌の増殖が疑われた。第5病日には右鼻腔粘膜の広範な黒色壊死を認めた。その後のCT検査にて下直筋の腫脹と眼窩内脂肪織の濃度上昇を認め,眼窩内浸潤が疑われた。内視鏡下鼻副鼻腔手術を行い,抗真菌薬全身投与継続の方針とした。その後,眼球運動障害は残存するものの明らかな増悪はなく,鼻腔内所見も著変なく経過し,第98病日に転院となった。骨髄抑制が遷延した状態で上顎洞を開放し,ガーゼパッキングを行ったことが広範な真菌浸潤をきたす一因となった可能性があり,骨髄抑制時の処置・手術にはその後の管理を含め細心の注意を払う必要があると考えられた。
著者
柴田 謙 高前田 伸也
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.19, 2023-01-13

近年,マルチコアCPUが主流となってきたが,現在主流の言語はシングルコアが主流の時代に設計された物が多く,並列実行を行って動作速度の向上を行うためには多くの場合で特別なライブラリや構文が必要になり,簡単に並列実行が行えるとはいえない.このマルチコアの利点を生かすため,特別な構文なしで並列実行を規定として行うプログラミング言語「Coa」を開発した.提案するプログラミング言語Coaは,並列実行を既定とするが,単につねに並列実行を行うとするとデータレース問題が生じる.この問題を避けるため,CPUのアウト・オブ・オーダ実行がデータ間の依存関係を検出するのと同様に,変数の依存関係を自動検出し,データレースが生じないように自動的に実行順序と並列性を制御する.このため,内部で並列実行を行いつつも外から見た振舞いは逐次実行と同様となり,プログラムの複雑さを増やさずに実行速度を向上できる.また,処理単位が小さく逐次実行のオーバヘッドが大きい場合に備え,純粋でない関数と指定すれば逐次実行される機能もある.CoaのインタープリタはGoで書かれており,Coaで書かれたソースコードは,goroutineを用いてインタープリタ内で並列実行される.現在,基本演算,繰返し,条件分岐,関数定義などの基本的な機能があり,FizzBuzz問題や情報オリンピックの問題等を解決できる程度の言語機能を実装している.比較実験として,13ファイルのダウンロードとマンデルブロ集合を表示するための計算を,逐次処理と並列処理で実行した.それぞれの実行時間とコード行数を比較し,Coaはコードの複雑さを増すことなく並列実行して処理速度が上がることを確認した.本発表では,Coaの仕組みと特徴,今後の課題を説明する.
著者
前田 薫 生駒 美穂
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.251-258, 2018-10-25 (Released:2018-11-07)
参考文献数
19

【目的】がん患者の痛みを緩和するために,オピオイドを漸増し,結果的に非常に高用量となる症例をしばしば経験する.今回,がん患者のオピオイド投与量に影響する因子について検討した.【方法】2009年1月1日から2014年12月31日までに新潟大学医歯学総合病院緩和ケアチームが関与した患者のうち,20歳以上で固形がんと診断され,オピオイドの処方を開始から死亡まで当院で行った症例について,電子カルテによる後ろ向き調査を行った.オピオイド徐放製剤の量に応じてA群(経口モルヒネ換算で120 mg/日未満),B群(同120 mg/日以上300 mg/日未満),C群(300 mg/日以上)の3群に分け,オピオイド量に影響する因子について検討した.【結果】対象は109名.A群は51名,B群は33名,C群は25名であった.C群では他群に比べ年齢が低く,オピオイドの投与期間が長く,増量幅が大きく,神経浸潤が多かった.【結論】がん患者において,若年,長いオピオイドの投与期間,オピオイドの増量幅が大きいこと,神経障害性痛の要素が,高用量のオピオイド投与に影響する可能性が示唆された.
著者
澤田 珠稀 仁木 一順 大西 二千夏 多田 耕三 西田 明代 土肥 甲二 光在 隆 奥田 八重子 森川 幸次 前 武彦 黒木 光代 高岡 由美 松岡 太郎 芦田 康宏 池田 賢二 上田 幹子
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.175-186, 2022-12-10 (Released:2023-01-06)
参考文献数
12

Advances in information and communication technology (ICT)-especially, the spread of social networking services (SNSs)-have facilitated the dissemination of information and an explosion of health information lacking scientific evidence. Therefore, we believe that community pharmacies are the most suitable bases for distributing health information. In 2019, we launched the health support pharmacy “Toyonaka Model” in collaboration with the pharmaceutical association, municipal government, and university. Touch-panel digital signage (DS) was used for real-time distribution of ever-changing information and a rapid grasp of pharmacy users’ responses to various types of information. Between September 2019 and August 2021, one DS was installed in a pharmacy in each of Toyonaka City’s seven areas along with 14 questions on the usefulness of the delivered information. Respondents answered the 14 questions by a tablet or questionnaire; touch logs for DS were collected. When a pharmacy user consulted with a pharmacist about information delivered via DS, the contents were recorded and described by the pharmacist on a 4-point scale (e.g., “inquiry only,” “went through to execution”). From the 850 completed questionnaires and 61,565 touches, 88.7% of the respondents indicated that the information was useful, and 90.0% expressed interest in receiving more health information in the future. Thus, health information provided by DS may be useful to pharmacy users, as demonstrated by 113 cases in which the pharmacist was consulted regarding such information. In 62 of these cases, there were indications that the DS information might have influenced users’ behavior and intended actions.
著者
立松 正幹 澤崎 正明 前川 友哉 上田 順一
出版者
一般社団法人 エネルギー・資源学会
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.351-356, 2021 (Released:2021-09-10)
参考文献数
8

Recently, many renewable energy sources are connected to power systems. Renewable energy sources such as PV and wind connected to power systems via inverters are called inverter sources. When the percentage of inverter sources increases, the percentage of synchronous generators such as hydro, thermal and nuclear decreases. When many inverter sources are connected to power systems with small capacity which are not synchronously connected to other power systems, the percentage of synchronous generators significantly decreases. Therefore, influences of power system characteristics such as synchronizing power decrease, power system inertia decrease and short circuit capacity decrease are concerned. And influences of power system stability such as transient stability decrease, frequency and voltage fluctuation increase and distortion level increase are also concerned. Previously, power system inertia estimation and power system stability monitoring were done by off-line. Therefore, on-line power system inertia estimation and power system stability monitoring system is newly developed for the purpose of precise understandings of Japanese Eastern (50Hz) and Western (60Hz) power systems.