著者
前田 豊樹 三森 功士 牧野 直樹 堀内 孝彦
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2318, (Released:2018-10-26)
参考文献数
22

これまで温泉治療が様々な疾患に療養効果があることは示されてきたが,一般的にどのような疾病に予防効果があるのかは示されていない.また,温泉入浴の禁忌症は示されているものの,某かの疾病の発症を促進する可能性についても知られていない.このような状況を踏まえて,筆者らは,平成24年度から3カ年間,65歳以上の高齢別府市民2万人を対象に,温泉の利用歴と各種疾患の既往歴に関するアンケート調査を実施し,その解析結果を先頃論文報告した.結果は,性別によって分かれており,温泉入浴が,男性においては,心血管疾患の予防に寄与し,女性では,高血圧に予防的に働くが,膠原病などの発症には促進的に働く可能性などが示唆された.このように,温泉は必ずしもすべての疾患の予防に働くわけではなく,一部促進する場合もあり得ることが伺えた.この疫学調査から伺える予防的効果には,温泉の効能としては期待されてこなかったものやこれまで示されてきた効能に反するものが含まれている.本編では,様々な疾患に対する温泉の予防効果と治療効果のずれという観点から,アンケートによる疫学調査をレビューする形で紹介したい.
著者
前本一男 編
出版者
厚生閣
巻号頁・発行日
vol.第7巻, 1934
著者
佐川 元保 桜田 晃 芦澤 和人 前田 寿美子 中山 富雄 負門 克典 玄馬 顕一 小林 健 鳥居 陽子 竹中 大祐 丸山 雄一郎 三友 英紀 室田 真希子 梁川 雅弘 澁谷 潔 祖父江 友孝 原田 眞雄 三浦 弘之
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.351-354, 2022-10-20 (Released:2022-10-28)

日本肺癌学会肺がん検診委員会は,2022年に「肺がん検診ガイドライン」の改訂を行った.本稿では改訂に至った経過とその概要について解説する.「現行検診」に対する「推奨」は2010年ガイドラインから変化はなかった.全国的な精度管理の徹底や,国全体の死亡率減少効果への寄与度や感度・特異度の測定などに関する評価が必要である.「重喫煙者に対する低線量CT検診」は,欧米において肺癌死亡率減少効果のエビデンスが得られたが,過剰診断,偽陽性,放射線被ばくなどの不利益は無視できない.安易な導入を行って混乱する事態を避けるためには,まずは適切な「実装研究」を行うことにより,日本の社会にどのように導入することが望ましいのかを検討することが重要である.一方,「非/軽喫煙者に対する低線量CT検診」は,現在のところ有効性のエビデンスは十分でないため,それを集積することが第一に重要である.
著者
鳥越 雅隆 前島 圭佑 清永 恭弘 今田 千晴 尾崎 貴士 原中 美環 石井 宏治 柴田 洋孝
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.310-316, 2014-12-30 (Released:2015-02-28)
参考文献数
16

症例は59歳女性.2012年に全身性強皮症と診断された.翌年4月,血栓性微小血管障害症に強皮症腎クリーゼを併発し,更に急性心不全も伴っていた.ACE阻害薬の内服や血液透析,血漿交換などで加療され,また重症心筋障害にはステロイドパルスが奏功した.直後に肺胞出血を生じたが,厳格な呼吸循環管理と上記治療の継続で病状は安定した.重篤かつ多彩な病態に対し集学的治療で救命し得た全身性強皮症の一例を報告する.
著者
小川 晃弘 岡野 光博 土井 彰 前田 幸英 西崎 和則 久保田 聡 古川 仭
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.23-27, 2003-04-01 (Released:2010-03-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

Changes in the sense of smell may be quantitative and qualitative, or possibly even a combination. Quantitative changes may manifest themselves partly as hyperosmia and partly as hyposmia, although hyposmia is much more common. Qualitative changes are segignated a parosmia. Disosmia is a condition in which stimulation of the sense of smell does not result in an adequate olfactory impression, but rather in a distorted sensation, usually unpleasant. The precise mechanism and etiology of parosmia remain to be classified.Recent molecular biological advances enable us to a more accurately assess the prognosis for parosmia or suggest more successful treatment. We present an overview of modern classification or definition of parosmia and related clinical issues requiring greater discussion. We collected 94 parosmic patients from 9 dysosmia clinics and discussed them in this reports.Women over 40 years old are most susceptible to parosmia. Upper respiratory viral disease including common cold, head trauma and also zinc deficiency, are conditions that put patients at high risk for parosmia. About 6% of all patients seen at dysosmia clinics have parosmia. We classified parosmia patients by sites, etiology, and severity.Sites are usually the site of responsible for hyposmia or anosmia. Parosmia patients were divided into organic and functional. The organic type was divided into peripheral, central and mixed peripheral and central. The functional type includes the psychological disorder such as illusions of smell, olfactory hallucination, and the uncinates fits. Etiology was classified as sinonasal disease, upper respiratory disease, head injury, other or miscellaneous. Other categories includes zinc-deficient and drug-inducced. We classified severity as slight, moderate, or severe. Twelve factors, including gender, age, and duration, affect the prognosis of parosmia. We summed up the score for these factors and judged severity. For sever parosmic patients, medical treatment such as medication, local treatment, or surgery must be considered. Major tranquiraizer and surgery should be selected for patients with severe or intractable parosmia.
著者
中村 友紀 天野 ともみ 松井 奈津子 蔵前 仁 中村 清忠 伊藤 誠
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.186-191, 2019-01-25 (Released:2019-01-25)
参考文献数
11

血液培養よりAerococcus urinaeを分離した重症感染性心内膜炎の1症例を経験した。患者は大動脈弁閉鎖不全症による大動脈弁置換術,慢性膀胱炎の既往のある70歳代の男性。来院時の血液培養よりCluster状のグラム陽性球菌を認めた。分離培養を行ったところ血液寒天培地に小型のα溶血性レンサ球菌様のコロニーが発育し,質量分析装置による同定を実施したところA. urinaeと同定された。心エコー検査によって感染性心内膜炎と診断され,VCMやSBT/ABPC,カルバペネム系抗菌薬などによる加療を行ったが,心原性脳梗塞を合併し第26病日に死亡した。A. urinaeはGram染色ではブドウ球菌様の形態を示すのに対し,血液寒天培地上ではα溶血を呈するレンサ球菌様のコロニーとして発育するため,Staphylococcus属やStreptococcus属と誤同定されやすい。高齢者の尿路感染症の原因となりうるほか,稀に敗血症や感染性心内膜炎を引き起こす。本菌による感染性心内膜炎は臨床経過の急激な悪化をたどり,重症化しやすいとの報告がある。血液培養にて本菌を疑う所見を得た際は迅速に同定し,早期に適切な治療を開始することが重要である。その点で質量分析装置による同定は非常に有用であると思われた。
著者
細谷 幸恵 川崎 晋 前田 憲成 稲津 康弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.376-383, 2020-10-15 (Released:2020-11-02)
参考文献数
21

味噌に混入させた大腸菌O157の消長を明らかにするために,市販味噌24検体を対象に複数の保存試験区(5,10,20,30 °C)における大腸菌O157生菌数の変動を寒天平板法およびMPN法により観察した.全保存試験区において,味噌混入下の大腸菌O157は増殖することなく段階的に死滅し,その死滅速度と味噌原料(米,麦,大豆)に関連は見られなかった.一方,味噌検体の水分活性値が大腸菌O157の死滅速度に影響を与える可能性を示した.本結果により,大腸菌O157が意図せず味噌に混入した場合であっても,常温での流通,保存の期間に死滅することから,そのリスクは実質的に無視しうるものであると推察された.

1 0 0 0 OA 接着と酸塩基

著者
前田 重義
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.526-537, 1997-08-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
56
被引用文献数
1 1
著者
森 秀樹 杉澤 学 張 海 前迫 孝憲
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.387-394, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
8
被引用文献数
18

ブロック型のプログラミング言語「Scratch」を用いて,小学校4年生向けにプログラミングの授業をデザインし,実践した.26時間の授業を通じて,画面上でスプライトを動かすなどの制御や繰り返し命令を含めた作品をつくることができた.また,条件分岐やキー入力の判別処理にも8割を超える児童が取り組むことができた.これらの結果から,小学校段階でプログラミングが可能であることを確認できた.
著者
前田 敦司 中西 正和
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.574-583, 1997-03-15

本論文では,幅優先で式の評価を行う新たな計算機アーキテクチャであるキューマシンを提案し,その実行モデルを用いて関数型言語を特殊なハードウェアのサポートのない密結合並列計算機上で効率良く自動並列実行する言語処理系の構築法を述べる.関数型言語においては複数の関数呼び出しを並列に処理することが可能であるが,すべての関数呼び出しの実行が終了するまで待って実行を再開するための同期オーバヘッドが問題となる.また,通常スタックに保持する局所的な実行の文脈をヒープ上に保持する必要があるため,メモリ管理のオーバヘッドも増大する.本論文では,キューマシンの実行モデルを模倣してスタックをキューに置き換えることにより上記のオーバヘッドを大幅に削減することができ,既存の計算機上で並列関数呼び出しが効率良く実現できることを示す.この手法を用いたプロトタイプ言語処理系の実行時間を密結合並列計算機で測定した結果,逐次実行ではCなどの他の(逐次)言語処理系に劣るものの,2CPU以上では他の処理系を上回り,高い台数効果が得られている.
著者
松永 裕樹 高橋 正道 大倉 淑寛 志水 祐介 前原 弘武 北川 幹太 山川 潤 杉山 和宏 三上 学 濱邊 祐一
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.353-358, 2022-10-20 (Released:2022-10-20)
参考文献数
9

外傷性腹部大動脈損傷は稀だが, 死亡率が高く, 迅速な診断・治療が肝要である. 当院はCTと透視装置を備えたハイブリッドERを有し, 移動を伴わず, 蘇生・診断・治療が可能である. ハイブリッドERで, resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (以下REBOA) で出血を制御し, ステントグラフト留置で救命した1例を経験した. 70歳代男性. ワゴン車乗車中の事故で, ショック状態で搬送された. CTで血管外漏出を伴う腹部大動脈損傷がみられた. REBOAを大腿動脈からZone3に留置し, 出血制御後, 手技中の循環安定のため, 左上腕動脈からの留置に変更した. コイリング, ステントグラフト留置で止血を得た. ハイブリッドERでのステントグラフト治療は, 移動を伴わず迅速な診断・治療が可能である.
著者
酒向 あずみ 左京 瑛奈 松永 浩明 関口 昌利 一色 滉平 越前 宏俊 伊藤 慎 鈴木 祥司 西 功
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.124-134, 2022 (Released:2022-10-13)
参考文献数
17

本邦において外来心臓リハビリテーションに参加する患者集団における服薬アドヒアランスへの影響因子の検討は十分ではない。本研究ではこの集団の服薬継続支援のため、処方薬服用遵守度だけではなく患者の治療に対する自発性等も調査できる構造化対面式アンケート調査法を用いて服薬アドヒアランスの調査と影響因子の探索を行った。35名の患者からUenoらの質問票を用いて得た服薬アドヒアランス評価に関する下位尺度スコアは、「服薬遵守度」(中央値15点)及び「服薬の納得度および生活との調和度」(14点)は高かったが、「服薬における医療従事者との協働性」(8点)と「服薬に関する知識情報の入手と利用における積極性」(7点)が低値であった。また「服薬遵守度」は非就労者で高く(15点)、「服薬における医療従事者との協働性」は有配偶者で高かった(11点)。本研究は予備的ではあるが、今後外来心臓リハビリテーション患者の服薬アドヒアランス向上或いは維持を図るためには、薬剤師が「患者との協働性」を改善するために患者の求める情報の察知に基づく薬物の情報提供を行い、患者の治療への主体的参加への動機付けを高める事が重要であると考えた。