著者
三浦 美佐 吉澤 亮 大和田 滋 平山 暁 伊藤 修 上月 正博 前波 輝彦
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.221-226, 2021-02-18 (Released:2021-04-14)
参考文献数
14

維持透析 (HD)患者は時間的制約,体調不良,易疲労性などにより不活動下に置かれ,合併症の増悪,サルコペニア・フレイルという悪循環に陥りやすい.本邦の多くの透析施設において,患者に軽負担で実施可能な電動エルゴメーターが採用されているが,その身体機能に与える影響を負荷量可変型エルゴメーターと比較検討した報告は少ない.そこで,本研究の目的を,外来透析患者に対する透析中の12週間の運動を,電動エルゴメーターと負荷量可変型エルゴメーターで比較検討することとした.週3回HDを行っている歩行可能な平均年齢71.5±1.6歳の患者15名を,負荷量可変型エルゴメーター (Tex)群8名と電動式エルゴメーター (Elex)群7名に振り分け,透析中の運動を各人の身体能力に応じ,週3回,12週間実施した.介入後にTex群のみが,下肢筋力,運動耐容能が有意に増加した.よって,運動様式により異なる影響があることが示唆された.
著者
赤澤 堅造 一ノ瀬 智子 前田 義信 奥野 竜平
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual60, no.Proc, pp.275-277, 2022 (Released:2023-05-12)

筆者らは認知症に対する楽器演奏,音楽療法に関心があり,エビデンスに関して文献レビューを実施して,楽器演奏が健常者の認知症リスクを減少させる効果があることを報告した.当学会大会でも報告した(第1報(2018),第2報(2019)).筆者らは,演奏初心者でも本格的な演奏が楽しめるアクセシブルな電子楽器サイミスを開発しており,短期であるが,地域の健康な高齢者を対象としたサイミス応用の準備的な研究を実施した.ここで判明したことは,認知症予防のためのプロトコルを策定する必要があることである.最近,健常者,MCI者に対する音楽介入のランダム化比較試験の報告がいくつかあるので,プロトコル策定の手がかりをえるために,「認知機能」に焦点を当て文献レビューを実施した.本発表では,その文献レビュー結果を報告する.
著者
白川 洋一 前川 聡一 西山 隆 岡 宏保 馬越 健介 菊地 聡 大坪 里織
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.8, pp.288-296, 2004-08-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

病院常駐型ドクターヘリが全国7箇所に配備されたが,多くの地域は消防防災ヘリコプターを救急搬送に兼用している。しかし,防災ヘリを用いるピックアップ型ドクターヘリには運用上の問題点が多い。その解決策を模索するため,愛媛県の山間部を管轄する一消防本部(上浮穴消防本部)を対象に,ピックアップ型ドクターヘリの需要および運用条件を詳細に調査した。調査地域(人口15,849名)における2年間(2000~2001年)の搬送1,249件のうち,CPAを除く昼間帯の重症者229例(1年間1万人当り72.2例)を潜在的ヘリ適応とした。域内を44地区に分割し,各地区ごとに事案発生から松山市の高次病院までの陸上搬送時間(走行時間の合計)と,ピックアップ型ドクターヘリによる搬送の推定所要時間を比較した。そのさい,防災ヘリの遅い出足を考慮して,現地消防がヘリ出動を要請するタイミングを(1)覚知時点,(2)救急隊の現着時点,(3)地元医療機関への収容時点の三つと仮定し,それぞれにつき,各地区ごとに最適化された経路を設定した。ヘリ適応例のうち,陸上搬送とヘリ搬送の時間差が20分以上40分未満は,覚知時要請で17.0例(1年間1万人当り,以下同じ),現着時要請で6.3例あった。40分以上は,覚知時要請で9.5例,現着時要請で0.9例あった。地元医療機関収容後にヘリ出動を要請すると,陸上搬送より長くかかる場合が多かった。病院到着までの時間短縮だけが医師の搭乗した救急ヘリ搬送の利点ではないが,その効果を期待できなければ,防災ヘリをピックアップ型ドクターヘリとして利用する動機は弱まる。その解決策は早い要請(119番覚知時にヘリの準備を要請する第一報を送り,現場に到着した救急救命士が患者観察後に続報する)であり,メディカルコントロール体制を基盤にして,簡明なヘリ要請ガイドラインなどシステム整備が不可欠である。
著者
前田 重治
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.149-172, 1967-03-31 (Released:2010-03-15)
参考文献数
5
著者
土手 貴裕 近堂 徹 前田 香織 高野 知佐
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.650-658, 2023-03-15

ITシステムの新たなアーキテクチャとしてマイクロサービスが注目されている.マイクロサービスではシステムが持つ各機能を独立したコンポーネントとして分割し,それらをAPIで疎結合させることで,機能単位での頻繁な改修が容易となり,顧客の要望への迅速な対応が可能となる.しかし,マイクロサービスの導入によりシステム構成が複雑化し,システム状態を把握するための時系列データであるメトリック数も増大するため,障害原因であるコンポーネント(障害原因箇所)の特定が困難となる.本論文では,マイクロサービスにはコンポーネント間でAPI呼び出しによる依存関係があることに着目し,メトリックの定常時からの変化量にコンポーネント間の依存関係を組み合わせることで障害原因箇所を特定する手法を提案する.また,提案手法による障害原因箇所特定システムを開発し,ECサイトを模したマイクロサービスのベンチマークを用いた実験を行った.特定精度および特定に要する時間について評価を行い,これらの結果から提案手法の有効性を示す.
著者
笠井 勝也 西前 出 小林 愼太郎
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.23(第23回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.285-290, 2009 (Released:2011-02-15)
被引用文献数
1

富士山の山小屋が補助金を受けて設置した自己処理型トイレの維持管理コスト確保が困難な状況に陥っている。本研究では,総合パフォーマンス評価による自己処理型トイレの評価,PSM 分析を用いた適正トイレ使用料金の推定,CVM による入山料に対するWTP の推定を通じ,設置場所の環境に適した屎尿処理装置が導入されているか,協力金の設定金額は妥当であるか,入山料徴収制度の実現可能性について検討した。その結果,総合パフォーマンス評価を用いた屎尿処理装置の選定および入山料徴収制度の導入が,富士山における山小屋トイレ維持管理費確保問題の解決に寄与しうることが確認された。
著者
飯田 祐士 前田 明
出版者
日本スポーツパフォーマンス学会
雑誌
スポーツパフォーマンス研究 (ISSN:21871787)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-8, 2023 (Released:2023-03-16)
参考文献数
16

本研究の目的は,大学トップレベルの女子卓球部の体力測定データから,大学女子卓球選手における体力要素の指標を示すこと,競技力にかかわる測定項目を明らかにすること,体力要素向上の一要因と考えられるトレーニングプログラムの一例を示すことであった.示されたデータから,競技力(レギュラーと非レギュラー)との関連性より,立ち幅跳びと20m 走が有効な測定項目であることが明らかとなった.またこれらの測定項目に関連する体力要素向上には,下肢の一般的なレジスタンストレーニングに加え,プライオメトリックスやダンベルを使用したウエイトリフティングエクササイズを用いて,年間を通したトレーニングプログラムを実施することが有効である可能性が示唆された.
著者
内藤 直人 前田 健一 山口 悟 牛渡 裕二 鈴木 健太郎 川瀬 良司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_361-I_370, 2013 (Released:2014-03-14)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Cushioning materials, such as sand cushion placed on rock sheds, are attracting attention as construction devices that can effectively disperse and reduce rock fall energy before rocks collide with rock fall protection works. To support performance-based designs for rock fall countermeasures, the present study estimated rock fall behaviors and impact forces using 2D discrete element method (2D-DEM). As one of the typical behaviors, propagated impact force can exceed impact force of falling mass. We conducted two numerical analysis focused on this phenomenon; monotonic penetration test controlling under constant penetration velocity, and removing falling mass during penetration process for any time. In addition, the effects based on some condition of sand cushion, weight of falling mass and its velocity are examined from the view point of impact force-penetration relationship of sand cushion.
著者
中村 志保 郡司 朋子 木村 愛美 西村 麻衣 菊川 千波 菊地 紗和子 村上 純子 上田 渚 石倉 智子 鶴川 香緒利 横須賀 美紀 奥森 留美子 神前 あい 井上 吐州
出版者
日本視機能看護学会
雑誌
日本視機能看護学会誌 (ISSN:24333107)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.8-10, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
4

目的:甲状腺眼症の斜視手術後患者に対するリハビリテーション( 以下リハビリ) として、効果的で簡易な方法を検討し、 病棟オリジナルの視野チャートを作成した。看護師の指導にて実施したので報告する。 方法:甲状腺眼症による複視のため斜視手術を行った15 名を対象に、視能訓練士の助言を得て作成した視野チャート にて、入院時・手術翌日・退院時に両眼単一視野(以下単一視野)の変化を比較した。またこれを用いた術後のリハビ リ方法を指導し、退院時にアンケートを実施し有用性を評価した。 結果:対象患者全員が、視野チャートを用いたリハビリが分かりやすく、積極的に取り組めたと回答した。入院時と退 院時の単一視野の比較では、14 名が拡大し1 名は明らかな変化がなかった。 考察:視野チャートにより注視目標を明確にでき、簡易的なリハビリが考案できた。また患者がリハビリに積極的に取 り組めた。よって斜視手術後における視野チャートは有効であった。
著者
孫 起和 金岡 祐次 前田 敦行 高山 祐一 高橋 崇真 宇治 誠人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.48-53, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

症例は72歳の男性で,直腸癌同時性肝転移に対して,術前化学療法としてmFOLFOX6+Panitumumab療法を行った後に腹会陰式直腸切断術,肝拡大左葉切除術および肝後上区域部分切除術を施行した.術後7日目に骨盤死腔内への小腸嵌頓による腸閉塞のため回盲部切除術を施行した.術後6カ月目のCTでは右下腹部に20mm大の単発結節を認め,FDG-PETでも同部位に集積を認めた.腹膜播種再発を疑い手術を行ったところ,回腸結腸吻合部の間膜内に腫瘤を認めたため,吻合部を含めた腸管切除術を施行した.病理組織所見では悪性像は認めず,瘢痕組織に囲まれた膿瘍を伴う,縫合糸を取り囲む多核巨細胞を認め,異物肉芽腫と診断した.回盲部切除術を行った際に間膜を閉鎖した縫合糸による異物反応と考えられた.悪性腫瘍術後に再発との鑑別が困難であった縫合糸による腹腔内異物肉芽腫を経験したため報告する.
著者
前澤 仁志 松橋 眞生 吉田 和也 澤本 伸克 美馬 達哉 長峯 隆 別所 和久 福山 秀直
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3+4, pp.258-267, 2009 (Released:2011-06-30)
参考文献数
14

脳磁図は非侵襲的にヒトの脳活動を捉える技術であるが、磁性を帯びた金属がアーチファクトとなり計測を妨げることがある。本研究では18種類の歯科用金属の組成の違いが脳磁図計測へ与える影響、磁気共鳴画像装置(MRI)による高磁場の影響、さらにハンディタイプの消磁器の効果を検証した。それぞれの金属材料を(1)未処理、(2)消磁器による消磁後、(3)MRIによる磁場印加後、(4)再度の消磁後の4つの状態で磁場計測した。各材料を往復運動させた時の磁場を全頭型脳磁図計で計測し1分間の平均パワーを求めた。対照として材料のない状態での状態の磁場を1分間、10回ずつ記録し、平均値+標準偏差の5倍をアーチファクトの判定基準値とした。主成分が強磁性体の8種類のうち状態1から4で基準値以上であった材料は、それぞれ6、5、8、7種類であった。強磁性体でない10種類では、それぞれ1、0、4、2種類であり、状態1での1種類も基準値を6.2%上回るのみであった。以上より、1.強磁性体でない材料では脳磁図計測に大きな影響を及ぼさない可能性が高いこと、2.強磁性体であっても脳磁図計測に支障をきたさない材料も存在すること、3.MRI検査による磁場の印加では磁性体の性質に関わらず材料が磁化する可能性が高いことが示された。この結果は様々な歯科用金属を装着する被験者の脳磁図計測の際に役立つ。
著者
青木 宏明 高橋 秀明 田邉 成 前川 宏一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00225, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
21

塩分を含む地下水の流入による地中RC構造物の鉄筋腐食が報告されている.地中構造には地盤沈下等の外荷重が作用する場合もあり,塩害劣化の影響が重畳した場合の予測は重要性を増してきている.本研究では鋼材腐食させたRC中空円形試験体の8割を地中に埋設した載荷実験を行い,地中拘束下における外荷重の影響を調べた.その結果,地中円形トンネル構造の変形能と耐力は鉄筋腐食の影響はあまり顕著ではないが,先行曲げひび割れに沿って断面を貫通するせん断破壊が生じる場合があることを示した.このせん断破壊形態は,鉄筋の腐食域に非対称性があると,腐食域以外の健全部で起こり得ることを示した.さらに,曲げひび割れに沿う後続のせん断破壊のせん断耐力は,先行の耐力式を下回る場合があり,維持管理における留意点を明らかにした.
著者
中澤 裕美子 前川 貴伸 小穴 慎二 石黒 精 太田 さやか 寺嶋 宙 柏井 洋文 久保田 雅也 堤 義之 中澤 温子 師田 信人 阪井 裕一
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.175-179, 2013 (Released:2013-06-30)
参考文献数
10

多発性硬化症の診断は,病巣が単発性の場合,しばしば脳腫瘍や脳炎・脳症との鑑別が困難になる.今回われわれは延髄に2 cm大の腫瘤性病変を認め,当初脳幹部グリオーマが疑われたが,最終的に多発性硬化症の診断に至った11歳男児例を経験した.患児は下肢痛の出現後,約2週間の経過で四肢麻痺,意識障害,呼吸不全が進行した.急性の臨床経過がグリオーマの臨床経過と合致せず,診断が困難であったため,手術自体の危険性を説明の上,組織生検を施行した.組織像では明らかな腫瘍細胞を確認しなかったこと,及び症状が急性に進行していることから非腫瘍性疾患の可能性を考え,ステロイドパルス療法を施行したところ速やかに回復し,ほぼ障害を残さずに退院した.その後初発から9か月後に他の部位に再発し,臨床的に多発性硬化症の診断に至った.脳幹部の組織生検は容易ではないが,適切な治療法選択の上で極めて重要な役割を果たした.
著者
柳原 尚之 前橋 健二 阿久澤 さゆり 穂坂 賢 藤井 暁 長野 正信 小泉 幸道
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-10, 2022-02-05 (Released:2022-02-08)
参考文献数
31

江戸期及びそれ以前の書物に記載されている酢製造法を調査し,16冊の書物から33件の米酢製造法を抽出した。江戸期の米酢製造法では,現代と比べて汲水歩合が著しく低く,仕込み時期は夏が多く,仕込み期間は1週間から1カ月程度と短いものが多いという特徴がみられた。江戸期書物記載の方法による再現仕込み試験は,江戸期から伝統的製法で壺酢製造を続けている酢製造会社にて行われた。その結果,汲水歩合が現代と同様およそ300%の仕込みでは30日目以降に酢酸発酵を認められたが,汲水歩合がおよそ100~250%の仕込みにおいては,仕込初期に乳酸発酵で 1~2 g/100 mlの乳酸が生成され,9~13 g/100 mlという高いエタノール濃度となって酢酸発酵へは移行しなかった。江戸期には,乳酸を酸味の主体とする発酵物が酢として作られていた可能性が示唆された。