著者
加藤 彩 中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.336-339, 2013 (Released:2014-05-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

繰り返す性器ヘルペスの治療には,抗ヘルペスウイルス薬の継続投与による再発抑制療法が行われているが,漢方薬による治療報告は散見される程度である。今回,繰り返す性器ヘルペスの再発に補中益気湯が奏効した症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。症例は,34歳女性,2回妊娠2回出産。数年前より性器ヘルペスの再発を繰り返し近医にて治療していたが,再発が頻回となり当科を初診した。再発所見の他,全身倦怠感,食欲低下などを自覚し,気虚と考え補中益気湯を7.5g/日投与開始した。服用後2週間で全身倦怠感は消失。徐々に再発回数は減少し一年弱で服用を中止したが,その後も再発は認めなかった。本症例は,全身倦怠感,食欲低下の改善ともに,性器ヘルペスの再発回数も減少していった。性器ヘルペス再発の状態を気虚と考え,補中益気湯で治療は可能と考えられた。
著者
加藤 泰紀
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
no.51, pp.1023-1036, 2022

ネパールにおけるスポーツの開発の枠組みは,大きく3種類に区分できる。第1にスポーツ評議会によるもので,ナショナルチームの指導や一般への普及を目的としている。第2に警察を中心とした武道(柔道,空手)の普及,そして第3に学校での体育科教育である。そして,いずれも日本政府は,積極的に支援に介入してきた。ネパールの学校体育の普及は,1971年に始まった「国家教育体制(5カ年)計画」の中で重視されるようになった。しかしながら,体育を教科の中に位置づけても,実際に体育・スポーツを教えることのできる教師がいないというのが実情であった。そして,その対策の一環として,ビレンドラ・シールドがあった。ビレンドラ・シールドとは,中・高校生のスポーツの集い(日本の高校総体に相当)で,陸上競技とバレーボールが実施されていた。郡大会,地区大会,全国大会と続くこの競技会は,当時の青年海外協力隊の支援なしでは,実現が困難であったと言っても過言ではない。本稿は,1980年代,ビレンドラ国王の名のもとに開催されていた,ビレンドラ・シールドについて,スポーツの開発と国際協力の視点から考察するものである。この競技会は,もちろんネパールの国が主導ではあるものの,日本政府は青年海外協力隊の体育隊員による器具・用具の物質的な援助や,コートの作りかた,審判など大会運営の技術的な支援をも行い続けた。そして,体育隊員のチーム派遣,すなわち各開発地区(当時は5開発地区)教育事務所への配属や,広範囲にわたる地方の小中学校への理数科教師の大量同時派遣が大きく関係していた。本稿では,当時の情報を記述式インタビューによって収集し分析した。その結果,例えばスポーツのルールが勝つための言い争いの材料となっていること,カーストによる差別などが指摘された。その場合,日本人という外国人が関わることで仲裁となり,円滑な競技進行へとつながった。ゆえに,スポーツの開発は,政府レベルといったトップでは体育・スポーツの専門家が,学校現場といった草の根レベルでは,日本の学校やスポーツ教室などでのスポーツ経験者が積極的に関与することで効果的に実施できることが明らかとなった。したがって,スポーツの開発は,単にスポーツの専門家のみで実施するのではなく,日本においてスポーツを経験してきた人たちのサイドワーク的な協力を得ることが重要であると言える。ビレンドラ・シールドそのものは,ネパールの民主化により継続が困難となり消滅してしまった。しかし,当時,この競技会に出場した生徒の多くは,後にネパールスポーツ評議会の一員となり,今日のスポーツ界をリードする存在となっている。
著者
岩崎 恵 庄古 知久 安達 朋宏 内山 まり子 加藤 開 谷澤 秀 中本 礼良 吉川 和秀 小島 光暁
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.403-408, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
6

背景:COVID-19蔓延期の災害対応において,病院クラスター発生は病院機能停止を伴う大きなリスクである。感染者が含まれる多数傷病者受入方法を平時から検討しておく必要がある。目的:大規模災害発生時の多数傷病者受入に伴うCOVID-19クラスター発生の防止。 方法:防災訓練ワーキンググループにてCOVID-19蔓延期の災害対応を検討し,大規模災害発生時の多数傷病者受入方法とPCR検査を施行不能な場合に行う入院時のCOVID-19感染リスク分類のためのトリアージ法を策定する。結果:従来の二次トリアージに加えCOVID-19のリスク評価を行い,以下の4段階に分類するCOVIDトリアージを開発した。カテゴリーⅠ(紺)は発災前PCR陽性または抗原陽性,Ⅱ(紫):はCOVID-19の可能性が高い,Ⅲ(ピンク)はCOVID-19の可能性が低い,Ⅳ(白)は発災前PCR陰性とした。結語:災害拠点病院は潜在的なCOVID-19患者を受け入れるために従来のトリアージに加え,感染リスク別の入室カテゴリーを策定し,後日陽性者が判明した場合でも被害を最小限にする対策を準備しておく必要がある。
著者
加藤 雅代 古村 光夫 橋本 新一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.888-896, 1994-11-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

日本語の発音リズムとされる、モーラ単位の等時性という言語習慣に基づく新しい日本語リズム規則を提案する。まず、母音部エネルギー重心点CEGVをリズムのタイミング点と仮定し、日本語リズムを母音部エネルギー重心点間の時間長D_Gで定義した。発声器官の物理的構造による制約が、等時性を乱す第一の要因であるという仮説を立て、実音声の分析を通じて検証した。分析実験の結果をモデル化することにより定めた本リズム規則は、一つのVCV形音韻連鎖内の音韻情報のみを用いた非常にシンプルな規則ではあるが、発話速度の変化にも対応でき、音声合成のための規則として十分実用に耐えるものである。
著者
仲本 康一郎 岡本 雅史 加藤 祥
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日常的な営為によって生み出される語りと、語りが生成する世界に一貫性を求める私たちの心の習慣をナラティブ・リアリティとしてとらえ、人が語ることでいかにしてリアリティを構築しているかを認知的観点から考察した。具体的には、(1)語りが物語標識によって構造化され、一貫性が生み出されていくこと、(2)単一の物語が複数の話者によって共話的に語られうること、(3)同一の物語が反復的に語られることで変容を受け、かつ同一性を保持することに着目し、語りの展開可能性と反復可能性、さらに複数の話者による共話可能性を架橋する潜在的な物語構造の多相的な分析を行った。
著者
西尾 佳朋 伊藤 邦弘 加藤 三香子 瀧川 友佳子 篠邉 龍二郎 古橋 明文
出版者
特定非営利活動法人 日本睡眠歯科学会
雑誌
睡眠口腔医学 (ISSN:21886695)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.15-20, 2022 (Released:2021-10-01)
参考文献数
27

Objective: We present a case of narcolepsy in a patient with obstructive sleep apnea (OSA) who complained of residual sleepiness without improvement in Epworth sleepiness scale (ESS) after oral appliance (OA) therapy, and who underwent the Multiple Sleep Latency Test (MSLT).Method: The patient was a 48-year-old male who had no significant past medical history and family history, and had been experiencing excessive daytime sleepiness. The initial interview at the Department of Sleep Medicine did not reveal any cataplexy, sleep paralysis, and hypnagogic hallucinations. He was diagnosed with mild OSA (apnea hypopnea index: AHI 10.5/h) based on polysomnography (PSG), and was referred to our department for OA therapy. Excessive daytime sleepiness did not improve after the initiation of OA therapy. Thereafter, follow-up sleep study with PSG and the MSLT were performed.Results: The PSG with OA showed an improvement of OSA in AHI from 10.5 to 3.6/h, and sleep-onset REM sleep period (SOREMP) was not observed. MSLT showed that the mean sleep latency was 4min 6s/five naps, and number of SOREMP was two times; therefore, the patient was diagnosed with narcolepsy type 2. Use of Modafinil 100 mg/day decreased the ESS score from 15 to 4 and improved daytime sleepiness.Conclusion: In patients with OSA and narcolepsy, it is not possible to improve excessive daytime sleepiness by providing treatment for OSA only. Patients who complain of residual sleepiness even after OA treatment should be assessed further for other sleep disorders including hypersomnia.
著者
加藤 春恵子
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
新聞学評論 (ISSN:04886550)
巻号頁・発行日
no.38, pp.74-88, 264, 1989-04-30

This essay raises the question as to how women's sexuality, personality and role are, should be, and could depicted in the mass media. The issue is raised by the introduction of an American active feminist lawyer's theory and practice concerngng pornography. Discussion of the concept, theory and practice of the "freedom of the press" or "freedom of expression" should become more fruitful through realization of the overwhelming power of the "Invisible viewpoint" of the "Japanese WASP man"-highly educated males who do not identify with any discriminaetd against group. This discussion should also be of more value through active listening to the criticism of those people whose viewpoing has been neglected.
著者
加藤 碵一
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.417-424, 2006-09-01 (Released:2008-08-26)
参考文献数
11

Kenji Miyazawa is one of the most popular literary men in Japan. He was well grounded in geology because he was highly educated for geology. Therefore geological issues underwent a good infl uence on his literary productions. For example, he used colors of minerals to represent atmospheric phenomena such as colors of sky, cloud, mist, sunshine etc. However, the past annotations for technical terms of geology in Kenji's literary works are much doubtful from the viewpoint of geologists. I, a geologist, would like to introduce some examples of the investigation about his intended discrepancy between strict description of geological terms and literary expressions. 1. Kenji ventured to adopt technical terms which were not always ordinary in even his days. For example, he used the term“ gastaldite” , blue-colored minerals to express blue ship beacons. But in general“ glaucophane” is used. Kenji used the former in order to make rhythm“ da-da-da” in his poem. 2. Kenji also adopted wrong technical terms purposely. For example, he used“ dihexagonal pyramid” as a crystal form of quartz. He said it is originated from high quartz in rhyolite or dacite, therefore they must be“ hexagonal bipyramid”. Of course he understood the difference between them, however he adopted the former wrong terms purposely because the former term is more beautiful in Japanese linguistic sense. 3. Special pronunciations of technical terms peculiar to Kenji were used. For example, he read Lepidodendron, a plant fossil as“ Rinboku” in Japanese. Today“ Rinboku” is common pronunciation, however it was named“ Urokogi” originally as Japanese name, therefore the latter was also common in Kenji's days.
著者
山内 加奈子 斉藤 功 加藤 匡宏 谷川 武 小林 敏生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.537-547, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
43
被引用文献数
3

目的 地域高齢者における 5 年間の縦断的研究により主観的健康感の低下に影響を及ぼす心理・社会活動要因について明らかにすることを目的とする。方法 愛媛県東温市に在住する65歳以上の高齢者7,413人全員に「高齢者総合健康調査」を実施し,85歳以上または日常生活動作で介助を必要とする者および 5 年間における死亡・異動等を除く4,372人を追跡対象者とし,3,358人を分析対象者とした(追跡率76.8%)。主観的健康感は「普段,自分を健康だと思いますか」に 4 件法で回答を求め,さらに「非常に健康である」,「まあ健康である」を主観的健康感の健康群,「あまり健康でない」,「健康でない」を非健康群に分類した。この 2 群について,5 年間追跡することで,主観的健康感の変化およびそのパターン別の割合を検討した。次に,初回調査時における主観的健康感の健康群を対象とし,5 年後の主観的健康感が健康か非健康かを目的変数として交絡因子を調整の上,初回調査時の老研式活動能力指標,生活満足度尺度 K,認知症傾向,うつ傾向の心理・社会活動指標の各因子との関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討した。結果 5 年間の追跡調査後に,主観的健康感の健康群は男女ともに減少した。追跡期間中に健康を維持した者の割合は,男女とも,前期高齢者では約 6 割,後期高齢者では約 4 割であった。前期高齢者においては,初回調査時の生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.85(95%信頼区間:0.77-0.93),女性で0.79(95% CI: 0.72-0.87)とそれぞれ有意に低く,さらにうつ傾向有のうつ傾向無に対するオッズ比は女性でのみ1.68(95% CI: 1.11-2.56)と有意に高かった。後期高齢者においては,生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.87(95% CI: 0.77-1.00),女性で0.89(95% CI: 0.80-0.99)と有意に低く,さらに老研式活動能力が高いことの低いことに対するオッズ比は,男性で0.80(95% CI: 0.70-0.91),女性で0.88(95% CI: 0.80-0.97)と有意に低かった。結論 本研究から,地域高齢者の主観的健康感の低下を防ぐためには,男女ともに生活満足感を高めることが必要と考えられた。加えて,前期高齢者の女性においてうつ傾向がないこと,および後期高齢者では,男女共に日常生活活動能力を維持することが,主観的健康感の維持のためには重要と考えられる。
著者
加藤 拓巳
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-20-00016, (Released:2020-10-21)
参考文献数
36

Color has long been considered important by both the manufacturing industry and academia because it affects people’s perceptions, emotions, and behaviors. However, the evaluation of purchasing behavior until now has mainly been only in an experimental environment, and there have been concerns that differed from the actual consumer behavior. Therefore, the causal effect of the strong impression of a manufacturer’s brand color on the purchase behavior in the Japanese automobile industry was verified. Covariate was homogenized by propensity score matching based on the online survey, and the causal effect on purchase intention was extracted. As a result, the impression of the brand color had a positive effect on the purchase intention. This effect was estimated to be 5.739 in odds ratio. Commercial brands, logos, emblems, car body colors, dealers, showrooms, and even professional baseball teams were found to be factors that foster brand color.
著者
加藤 昌彦
出版者
東京大学
巻号頁・発行日
2005

博士論文
著者
野口 修 加藤 詞史
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集・実践研究報告集 (ISSN:2433801X)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.73-84, 2021

千葉県我孫子市の手賀沼地域では,大正時代の同時期,白樺派同人の志賀直哉,武者小路実篤,柳宗悦が居住し,独自の創作活動をした。また,彼らと親交の深い芸術家が我孫子を訪ねたり,実際に移住した者もいたことから,この共同体は『我孫子コロニー』と表された。本研究で試みたのは,1.手賀沼地域の3旧邸に関する図面や写真資料,言説を掘り起こして整理・補完し,当時の住環境を復元すること,2.我孫子を起点に3者の住宅変遷を辿り,近代日本住宅史における白樺派建築の位置付けについて考察すること,3.研究で得た知見を基に『我孫子コロニー』を再評価し,3.旧邸跡の保全や活用を目的とした新しい地域計画を実践することである。
著者
加藤 太喜子
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.33-41, 2013 (Released:2018-02-01)

Regulation for use of tissue of aborted human fetuses for research is enforced in countries and international organizations such as World Medical Association and the Council of Europe. For these parties, the use of fetal tissue is permissible when conditions prescribed by the guidelines are met. Common requirements for permissible use are ① approval by the Ethics Committee; ② determination of provision of fetal tissue after the decision of abortion; and ③ consent of the provider. Some guidelines require that the man is not rejecting, but there is also one guideline that accepts only the consent of the woman. In any guidance, the consent by woman is essential. From the perspective of systems of providing information, this paper presents a literature survey of the use of fetal tissue. It was found that ① daily, open exchange of views about provision of fetal tissue is not possible for women; ② women hope and want to know the intended use of the fetal tissue and the overall description of the research; ③ although information needed to grasp the overall idea of the research is sorely lacking, women may make decisions under pressure. On the basis of the results, people who are requested to provide information later are required to provide information that is satisfactory for decision making, instead of unsatisfactory information such as those labeled as“ being offered to know/not being offered to know”. For this reason, the current“ sufficient” explanation should be re-examined as to whether it is truly a satisfactory explanation.
著者
加藤 志織
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.98-111, 2009-06-30

Pietro Aretino non si limito a svolgere un ruolo di importanza nella letteratura e nella politica del Rinascimento, ma fu anche un fine intenditore dell'arte a lui contemporanea. A tale riguardo, essendosi trasferito a Venezia, e noto il suo sodalizio con Tiziano. Questo autore eclettico, attraverso la propria corrispondenza, presento Tiziano a principi e re, cosa che fece non solo con l'illustre pittore veneziano, mettendo in contatto vari artisti con diverse corti. Simili transazioni commerciali erano effettuate tramite la corrispondenza di Aretino. Queste lettere vennero riordinate dall'au-tore stesso per poi essere pubblicate sotto forma di raccolte epistolari. I contenuti di tali lettere pero non si limitavano al solo ambito commerciale, in quanto vi si possono trovare elementi di teoria della pittura, di poetica unitamente a ekphrasis e a panegirici. Questo saggio tratta delle strategie diplomatiche di Aretino in questo ambito sulla base degli elementi che emergono dalle raccolte epistolari rimasteci.
著者
田中 拓 内藤 純行 長島 梧郎 加藤 晶人 上村 美穂 藤原 正三 馬野 由紀 田北 無門 平 泰彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.585-590, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
10

アルコール摂取に伴う意識障害,ならびに迷惑行為は救急医療機関にとって避けられない問題である。今回,2012年1月から2013年9月までの21カ月間に,当院へ救急受診した急性アルコール中毒166例を対象に振り返り,これらについて性別,年齢,エタノール血中濃度,意識レベル,外傷の有無,暴言・暴力の有無について検討した。平均年齢は45.1±19.3歳,男性120人,女性46人であった。エタノール濃度が計測されている症例は129例あり,平均エタノール濃度は207.9±99.6mg/dLであった。約10%の16例で,医療従事者に対する暴言・暴力行為があり,うち4例が警察介入を要した。暴言・暴力などの迷惑行為のあった16例のうち14例は男性であり,平均年齢は36.2±17.4歳と若く,血中エタノール濃度は253.9±85.3mg/dLと高い傾向にあった。急性アルコール中毒は時として重大な転帰をたどることもあり,また,医療従事者にも被害を及ぼすことのある病態である。日常的に多く遭遇する症例であり,適切な対処を院内共通の認識とする必要がある。