著者
丸山 健司 稲荷 優太郎 長谷 俊彦 神田 智之 加藤 秀章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00099, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
22

橋梁の維持管理の観点から,橋梁用積層ゴム支承には長期の供用期間を確保するための高い耐久性が要求される.一方で,供用中のゴム支承の点検ではゴムのオゾン劣化に起因すると考えられる亀裂の発生事例が報告されている.この様な経年変化による損傷を受けたゴム支承の性能や残存耐力を把握することは,ゴム支承の維持管理において重要である.本研究では超高減衰ゴム支承(HDR-S)を対象として,有限要素解析(FEA)によるひずみ分布や,剥離面を有するモデルの解析結果を元にオゾン劣化による亀裂の進展範囲について検討した.さらにオゾン劣化による亀裂を模擬した供試体の破断特性を評価し,ゴム支承形状や亀裂深さと破断特性の関連性について考察した.
著者
荻原 啓文 加茂 智彦 田中 亮造 加藤 巧 遠藤 まゆみ 角田 玲子 伏木 宏彰
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.108-116, 2021 (Released:2021-02-19)
参考文献数
40

【目的】右小脳・脳幹梗塞による中枢性めまいと両側前庭障害を合併した症例に対する前庭リハビリテーションの効果を検討した。【方法】症例は40 歳代男性,めまい・ふらつきの改善を目的として当院を受診した。頭頸部の運動を伴う身体運動によってめまいやふらつきが生じ仕事復帰が困難な状況であった。理学療法士による前庭リハビリテーションと運動指導を実施した。【結果】Dizziness Handicap Inventory (DHI)_Functional,Dynamic Gait Index (DGI),Functional Gait Assessment (FGA) に改善が認められた。【結論】脳血管障害から中枢性めまいを呈した症例に対する前庭リハビリテーションは歩行能力やバランス能力,ADL の改善に有効な可能性があることが示唆された。
著者
加藤 言人 安中 進
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.151-167, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
44

特定の政策において,日本で「左派」や「右派」と呼ばれる政党やその支持者は,欧米における左派や右派とは逆の「ねじれ」た選好を持つことが指摘されてきた。特に金融緩和政策では,緩和拡大に対し,欧米では左派が右派に比べて積極的な傾向がある一方で,日本では左派が反対する動きが根強い。この要因に関しては様々な議論があるが,経験的な検証は行われていない。本稿では日本の有権者を対象にサーベイ実験を行い,情報環境の側面からイデオロギーと金融緩和選好の関係を規定する要因を探る。実験では,特に貧困削減フレームと経済学者の賛成意見が同時に提示された条件下で,左派が右派と同程度かそれ以上に金融緩和を支持する傾向が見られた。結果は,日本におけるイデオロギーと政策選好の関係が欧米とは異なる背景について,情報環境が重要な役割を果たしていることを示唆している。
著者
杉谷 宏樹 一柳 保 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本救急救命学会
雑誌
救急救命士ジャーナル (ISSN:2436228X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.134-139, 2023-10-01 (Released:2023-10-01)
参考文献数
11

【目的】3辺テーピングは効果ありとされているが,報告例が少ない。今回,胸部開放創のある傷病者に対し3辺テーピングが効果的であった2例を経験したので報告する。【症例1】包丁による自傷行為でショック状態の74歳,男性。前胸部の泡沫状の血液を認める吸い込み創に対して,3辺テーピングを実施した。搬送中,意識レベルの改善,呼吸循環の安定,呼吸困難の軽減を認めた。【症例2】イノシシに襲われ,胸部開放創と空気流入音を認める54歳男性に対し,3辺テーピングを実施した。医師への引き継ぎまでバイタルサインの悪化を防ぎ,呼吸困難の軽減を認めた。【考察】3辺テーピングを施した傷病者は,長時間搬送にもかかわらず双方ともバイタルサインが悪化せず,呼吸困難の軽減を認めたことから,3辺テーピングが空気の流入をコントロールし酸素化が改善されたと考える。【結論】これらの経験から,「3辺テーピングは病院前の処置として有用である可能性が示唆される」という結論に至った。
著者
古川 和男 加藤 義夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.467-475, 2002-07-05 (Released:2011-02-09)
参考文献数
22

再生型太陽エネルギーが主力となるのは世紀末であり, 化石燃料との中間は核分裂エネルギーで埋めざるをえない. その安全性・核廃棄物・プルトニウム問題等の決定的改善に向け, 照射損傷なく核反応・熱輸送・化学処理媒体を兼ねる7LiF-BeF2系熔融フッ化物塩を液体核燃料に利用して, トリウム増殖サイクルの熔融塩核エネルギー協働システムを世界に展開すべきである. これは, 黒鉛減速燃料自給自足型の公共施設的小型原発と, スポレーション反応利用で核転換増殖する加速器熔融塩増殖施設からなる. 世紀末の太陽エネルギーへの本格的交代期 (即ち, 核分裂エネルギーの終焉期) には, この協働システムから出る余剰中性子 (核燃料) を利用して経済的に核廃棄物を消滅しつつ, 地球環境・貧困解決のみでなく, 着実な核兵器完全廃絶を目指すことができよう.
著者
福岡 孝則 加藤 禎久
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.423-429, 2019-03-07 (Released:2022-06-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アジア・モンスーン気候下で,都市・国土スケールを対象として展開されるGI適用策の推進手法としてのシンガポールのABC Waters Design Guidelines(ABC-WDG)の内容と実態,及びガイドラインで認証された事例の動向・実効状況から得られた,GI適用策推進に向けた知見は以下の通りである。ABC-WDGは計画・設計や啓蒙のための媒体である一方で,認証制度や人材育成,認証プロジェクトの推進と市民への啓蒙までを3P(市民,行政,民間)で包括的に推進する戦略であることがわかる。シンガポールのABC-WDGは,都市・国土スケールにおけるGI適用策の推進手法としての一つのあり方を示している。

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著者
荒木 不二洋 杉浦 光夫 藤原 大輔 加藤 順二 一松 信
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.183-191, 1968-08-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
3
著者
加藤 章信 鈴木 一幸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.344-351, 2007 (Released:2007-03-05)
参考文献数
46
被引用文献数
2

肝性脳症は重篤な肝障害あるいは門脈大循環短絡に起因する精神神経症状である.臨床的な症状のある顕性脳症には軽症のものから深昏睡まで幅がある.また精神神経症状が明らかでなく定量的精神神経機能検査ではじめて指摘される潜在性肝性脳症がある.顕性の肝性脳症は肝機能異常,肝疾患の既往の有無,精神神経症状,高アンモニア血症,脳波異常,臨床検査成績などから他疾患を鑑別しつつ総合的になされる.潜在性肝性脳症は定量的精神神経機能検査(記号追跡試験,光や音に対する反応時間,成人型知能検査)や,電気生理学的神経検査の脳波,大脳誘発電位(聴覚,視覚)などを組み合わせて行う.
著者
加藤 喜之
出版者
日本基督教学会
雑誌
日本の神学 (ISSN:02854848)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.48-69, 2014 (Released:2016-02-25)

The question this paper asks is whether theology can still claim universality. With the rise of multivalent postmodern theologies and of politically-correct mandates in public space, theology as a discipline ceases to make universal claims. However, a series of recent debates between two radically different thinkers brings a renewed philosophico-theological interest in the universal claim of Christianity. The paper focuses on the debate between Hegelian-Lacanian philosopher Slavoj Žižek and Anglican theologian John Milbank in their attempt to articulate the universal claim of Christianity vis-à-vis the domianant global political economy. The first section discusses the ontological and genealogical bases of their understanding of Christian universality. The fundamentally diverse ontologies of void (Žižek) and of peace (Milbank) are situated in the history of theology. The second section examines the role that the representation of Christ plays in Žižek and Milbank's claim of theological universality in relation to the concept of freedom.
著者
白子 隆志 加藤 雅康 久保田 忍
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.46-52, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
13

当院は,北アルプスに近い岐阜県飛騨地域の中心都市・高山市に位置し,近年登山人口の増加に伴い山岳救急症例が増加してきた。2015年からの5年間に当院に救急搬送された登山を含む山岳救急症例を対象に傷病者背景,受傷機転,重症度,転帰などを後方視的に調査した。山岳救急症例は112例(外傷:80.4%),目的別では,登山100例(89.3%),その他12例(グライダー遭難・山岳スキー・労災など)であった。搬送方法は,ヘリコプターが85例 (75.9%)〔県警60例・防災12例・ドクヘリ11例・自衛隊2例〕であった。平均年齢57歳,男女比87:25で,外国人が7名であった。登山における救急搬送は7〜9月にもっとも多くみられ,外傷症例は78例(78.0%)で,受傷機転は転落・滑落がもっとも多く48例(61.5%),転倒が29例(37.2%)であった。非外傷症例は22例(登山の22.0%)で,うち高山病が8例 (36.4%)であった。外傷症例では,入院・高次医療機関への転院を要する症例において外傷重症度スコアが上昇し,予測生存率は低下した。山岳救助隊・救急隊・病院の連携促進と緊急対応の啓発活動が重要と考えられた。
著者
林田 明香里 加藤 邦拓 太田 高志
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.313-315, 2023-08-23

本研究ではスピーカを取り付けた洋服を実装し,ユーザの動きによるインタラクティブな音楽体験を設計する.具体的には,CD アルバムのジャケット画像が印刷された洋服をユーザが着用すると,洋服上のスピーカからアルバム内の楽曲が再生される.またユーザ同士が肩を組む,あるいはハグといったスキンシップをすることで,お互いの洋服から同じ楽曲が再生されて,音楽を共有できるインタラクションを設計する.提案手法により,ユーザは音楽配信サービス上でダウンロードした音源を物理的に所有できるようになり,洋服を着用することによる視覚的かつ聴覚的な自己表現が可能になる.また,ユーザ同士の自然なコミュニケーションによる楽曲共有を可能にすることが目的である.
著者
則竹(安藤) 寛子 加藤 豊望 梶原 一人 鈴木 徹
出版者
公益社団法人 日本冷凍空調学会
雑誌
日本冷凍空調学会論文集 (ISSN:13444905)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.263-270, 2012-06-30 (Released:2013-06-30)
参考文献数
12

The quality of ice cream surface degrades significantly from alteration of the surface properties due to the repetition of thaw-recrystallizing accompanied with temperature vibration at subzero temperature, a little above the melting temperature. For understanding the phenomena in detail, ice crystals in ice cream after once thawed and recrystallized was observed morphologically, and evaluated quantitatively by fractal analysis. It was shown that the shape of ice crystal recrystallized from once thawed ice cream was modified from round shape to complex shape, of which the degree depended on thawing temperature at subzero temperature. However, the ice crystal retuned gradually into round shape with increasing the holding time at the thawing temperature. These phenomena would be caused by spatial micro distribution of high concentration part which was organized in thawed ice cream by freezing concentration. That is, the complex ice crystal formed in thawed ice cream at subzero temperature would be induced by losing the micro uniformity of concentration.
著者
加藤 克
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.123-132, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

生物学標本の蓄積は,当該種の形態的,地理的分布の歴史的変遷に貢献するが,古い時代に採集された標本には,採集データが付属しない場合があり,有効に利用できないことがある.本研究では,採集年次不明の山階鳥類研究所所蔵ヤマゲラPicus canus標本(YIO-23324)を対象に,付属ラベルの利用年代の考察と採集者のフィールドノートの記載情報を利用してその採集年次情報の復元を試み,研究資源としての標本価値の向上を目的とした.この結果,標本の旧蔵機関である帝国大学で利用されていたラベルの付属から1885年以前の採集標本であること,ラベルに記載されている「ブラッキストン」という採集者名と日本の鳥学の近代化に貢献したThomas Blakistonのフィールドノートの照合から,1881年5月にBlakistonによって採集された標本である可能性が高いことを示した.この結果を援用することで,山階鳥類研究所に所蔵されている帝国大学旧蔵標本のうち,採集年次が判明しない標本の一部についても19世紀収集標本であることを裏付ける情報を整理した.以上の結果に基づき,古い標本を利用した研究の健全な遂行の上では,コレクションヒストリーの解明と,標本情報の再検討研究の継続が必要であることを提言した.
著者
加藤 克
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.61-72, 2018-08-31 (Released:2018-08-31)
参考文献数
18

Value of specimens as research materials is secured by their collection information. This research attempted to restore collection information of a mammal skeletal specimen stored in the National Museum of Nature and Science with insufficient collection data by clarifying its collection history. The specimen was presented to the Tokyo Imperial Museum in 1906 from the Australian Museum, where we found the information for the specimen including the collection locality, cataloging date, collector’s name, and the catalog number of the Australian Museum. The restoration of collection information improved the value of the specimen. And the continuation of the restoration effort like this study contributes to the improvement of the global biodiversity information.