著者
境 徹也 樋田 久美子 原 哲也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.819-823, 2015-11-14 (Released:2015-12-04)
参考文献数
9

患者は71歳の男性.4年前,腰部脊柱管狭窄症による左腰下肢痛に対して,椎弓切除術を受けて痛みは軽快した.その後,痛みが再発したため,当科を受診した.痛みはL5およびS1神経根痛であり,硬膜外ブロックと神経根ブロックの効果は一時的であったため,硬膜外腔内視鏡を行った.L5-S1椎間レベルで癒着があり,左L5椎間孔付近では高度であった.慎重に癒着剥離および局所麻酔薬とステロイド注入を行い,痛みは軽減した.その後の6年間で,下肢の神経根痛の増強時に硬膜外腔内視鏡の繰り返し施行を計6回行った.痛みの軽減も初回と同様に得られ,合併症も起こっていない.
著者
桑原 哲也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

日本の製造企業の国際競争力は、工場の内部で作り出されてきた。そうした工場管理のプロトタイプは、第2次大戦前の紡績工場に見られる。その形成のプロセスを、日露戦争後の鐘淵紡績会社の兵庫工場に於ける、武藤山治の試行錯誤を事例としてつぎのように説明した。第1 鐘紡の問題は、品質の不安定であった。第2 工場を、武藤山治は技術のシステムと社会のシステムからなるシステムとして捉えた。技術システムとしての側面を、各工程の糸切れ調査によって、数値的具体的に把握した。そして、後工程の品質は前工程の品質に規定されることを実証し、トータルシステムとして捉えた。第3 その為にハードウエアと作業方法の標準化を進めた。其れは科学的管理法の実践であった。第4 しかしそれだけでは品質は安定しなかった。それは、工場には常に攪乱要因がもたらされるからである。この攪乱要因の処理は現場の労働者の技能と意欲に規定される。そこで武藤は、労働者の技能を高めるとともに、かれらの社会的心理的欲求を充足して貢献意欲を引き出した。こうして、技術と社会の間に補完関係を作り出した。第5 これによって品質安定は可能となり、こうした管理能力に基づいて、製品の高付加価値化を推進することができるようになった。以上の分析成果により、次の貢献をした。日本企業の生産システムの源流の解明(連続性)、国際的に見た其の個性の析出、日本に於ける科学的管理法の源流の把握、武藤山治にたいする従来の解釈の修正。
著者
榊原 哲也 西村 ユミ 守田 美奈子 山本 則子 村上 靖彦 野間 俊一 孫 大輔 和田 渡 福田 俊子 西村 高宏 近田 真美子 小林 道太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、これまで主として看護研究や看護実践の領域において注目されてきた、看護の営みについての現象学的研究(「ケアの現象学」)の、その考察対象を、医師による治療も含めた「医療」活動にまで拡げることによって、「ケアの現象学」を「医療現象学」として新たに構築することを目的とするものであった。医療に関わる看護師、ソーシャルワーカー、患者、家族の経験とともに、とりわけ地域医療に従事する医師の経験の成り立ちのいくつかの側面を現象学的に明らかにすることができ、地域医療に関わる各々の当事者の視点を、できる限り患者と家族の生活世界的視点に向けて繋ぎ合せ総合する素地が形成された。
著者
石原 哲也 平田 幸一 辰元 宗人 山崎 薫 佐藤 俊彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.180-186, 1997-06-25 (Released:2009-09-16)
参考文献数
30

一過性全健忘 (TGA) の発症機序については, 未だに統一した見解は得られていない.われわれは, 従来の臨床的およびMRI, SPECTによる画像診断的検討に加え, proton MRspectroscopy (1H-MRS) を用い, その成因に関する検討をおこなった.TGAの急性期におけるSPECTでは, 側頭葉内側および基底核を中心とした脳血流の低下が示唆された.一方, 側頭葉内側および基底核部における急性期の1H-MRSでは, 虚血性変化の急性期にみられるようなコリン, クレアチンの低下や乳酸の増加は認めず, 脳細胞の代謝異常または脳機能の低下を示すとされるN-アセチルアスパラギン酸 (NAA) の相対的な低下のみがみられた.この結果から, TGAの発症には必ずしも一過性脳虚血発作と同様なatherothrombo-embolicな機序による脳血流低下のみが関与するものではないことが示唆された.

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著者
北村 仁司 原 哲也 荒木 為博 大平 眞
出版者
日本建築学会
雑誌
建築デザイン
巻号頁・発行日
no.2016, pp.70-71, 2016-08-24
著者
八村 智明 宮原 哲也 大野 博之
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.360-368, 2007-02-10 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

災害発生に伴う廃棄物は多量で雑多なものが短期間に排出される. このため, 通常の処理・処分システムにのらないことが多く, 長期的に放置される場合も見受けられる. 本論では, 現状のデータや知見から, 以下の可能性が示された.1) 災害廃棄物の仮置き場では, 嫌気環境下での有機物の腐敗が発生する可能性が高く, 早期の処理・処分が必要となる. さらに, 嫌気環境下の腐敗と悪臭対策のために, 消臭剤を添加したりすることは, 事態をより悪化させる場合がある. 災害廃棄物は雑多なものが分別されていないことが多く, とくに注意を要する.2) 仮置き場では, 有害重金属が溶出し, 地下水・土壌にそれが濃縮することが懸念される. このため, 早期の処理・処分とともに適切な地下水・土壌汚染対策の実施が必要である.3) 崩壊土砂の中などに長期に放置された災害廃棄物は, その量や状態にもよるが, 重金属類や石油化合物などによる複合的汚染の発生源となったり, 腐敗による火災や有害なガス等が発生したりすることが懸念される.4) 崩壊土砂の中などに長期に放置された災害廃棄物のうち, 地震や火山災害などで燃焼した家屋などは, これら残渣や焼却灰に高濃度のダイオキシン類が含有されている可能性がある.
著者
梶浦 大吾 酒井 啓太 原 哲也
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 自然科学系列 (ISSN:13483323)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.230-247, 2005-03

スカラー場の非最小結合はBrans-Dicke(B-D)理論[1]として知られており,アインシュタインの一般相対性理論の拡張の一つとして,その理論的意味が論じられている.ここでは,スカラー場に加えてベクトル場も非最小結合をしている場合,どのような効果が期待できるかを調べた.簡潔なモデルの下でのベクトル場を導入し,ラグランジアン密度から計量,ベクトル,スカラーを変分して0にして各々方程式を導いた.ベクトル場を導入しても,等価原理は成立しており,粒子の測地線の式は変更されない事が分かった.また弱い近似でベクトル場の効果を調べたが,スカラー場とほぼ同じ形で効果が期待される.
著者
原 哲也 澄川 耕二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.765-774, 2012 (Released:2012-11-13)
参考文献数
19

酸素需給バランスの評価は安全な麻酔管理の第一歩である.特に動脈血酸素飽和度,ヘモグロビン値,心拍出量は重要である.混合静脈血酸素飽和度は酸素運搬量と酸素消費量のバランスを反映し,心拍出量と組み合わせることで,運搬と消費の問題を区別して評価できる.FloTrac/Vigileoシステムは動脈圧の標準偏差から1回拍出量を推定する動脈圧心拍出量モニターである.PreSep中心静脈オキシメトリーカテーテルは混合静脈血酸素飽和度に代わり,中心静脈血酸素飽和度を測定する酸素需給バランスのモニターである.これらの低侵襲モニターを麻酔管理に活用することで,重症患者の安全を確保するとともに,麻酔科医の負担を軽減したい.
著者
桑原 哲也
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.64-92,iii, 1984-01-30 (Released:2010-11-18)
被引用文献数
1 1

The Naigaiwata Co. began the construction of a cotton spinning mill in Shanghai, China, in 1909. Operations began in 1911 as the first mill overseas of the Japanese cotton spinning industry.Naigaiwata entered into the Japanese spinning industry on a full scale in 1905, when it was in the final stage of forming oligopolistic structure. While Naigaiwata sold only a limited volume of cotton yarns in the oligopolistic domestic market, it relied heavily on export. This market strategy was successful during the booming era after the Russo-Japanese War.In 1908 the Chinese cotton yarn market tempoalily shrank under the depression and the devaluation of silver currency. Then Naigaiwata had to shift the main outlets from China to domestic markets. But this move resulted only in a poor financial situation.Facing this crisis Naigaiwata reconfirmed that it could not grow based on a domestic market alone. It was only overseas markets that Naigaiwata was given opportunities to penetrateintre.But the export strategy was not effective enough to establish a reliable status there. Naigaiwata then planned local production in China. It had a good position to accomplish this project as it not only had had business experiences in China but owned strong leadership in executing it. The local mill was so efficiently equipped to be competitive vis-à-vis the imported yarns from India and Japan.The overseas strategy of Naigaiwata was formulated as a creative response to the various constraints to the growth of those late comers under oligopolistic structure of the cotton spinning industry in Japan.
著者
黒住 明正 赤松 由崇 白木 篤 中島 啓一朗 佐伯 正則 西川 悟郎 原 哲也 皆木 省吾
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.260-266, 2010-10-10 (Released:2010-10-22)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

目的:阪神・淡路大震災において被災者の一部は,地震による家屋の倒壊により避難時に義歯を放置・紛失するという状態に陥った.復興のさなか,簡便で効率的な義歯製作法が求められたので,われわれが阪神・淡路大震災において実施した大規模災害時における有床義歯製作の考え方とその製作方法について報告する.材料と方法:通法に従い口腔内のアルジネート印象を採得し,印象用石膏により製作した作業用模型上にて基礎床を作る.上顎 6前歯・下顎 6前歯が一塊となった人工歯と 4臼歯が一塊となったシェル臼歯を口腔内で基礎床と常温重合レジンにより位置決めし,両者の間隙に粉液比を低く低粘稠度に混和した常温重合レジンを流し込み研磨面形態を製作する.最後に粘膜面に暫間軟質裏装材を適応する.考察:本義歯製作方法は,審美性にやや劣り永続的使用に適さないという欠点を有する.しかし,通法と比較して大幅に作業時間が短縮し,復興後のかかりつけ歯科医のコンセプトに従った補綴装置の設計・製作を阻害しないという点を有しており,災害時の歯科救援活動に貢献するものと考える.結論:本義歯製作方法は,大規模災害時において簡便かつ効率的な義歯製作を可能とするものであり,半年程度で現地歯科医療機関の一次的な復興が望める被災地においては特に有効であると考えられる.
著者
鶴田 浩子 田代 淑子 丸茂 貴子 加藤 京子 菅原 哲也 米山 淳子 川井 三恵 金子 昌弘 須賀 万智
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.673-680, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
9

公益財団法人東京都予防医学協会は、人間ドック受診者のサービスの一環として検査終了時に弁当を提供している。2013年度より、食育を目的として弁当のリニューアルと管理栄養士による講話を実施した。併せてアンケートを実施して、結果に基づきサービスを改善するPDCA サイクルを取り入れた。 評価指標は、「満足度」、「講話の参加有無」、「今後も本企画のある人間ドックを受けたいと思うか」の3項目とした。5年間の継続的な取り組みの結果、3項目とも上昇傾向が見られた。PDCA サイクルを回しながら改善の努力を着実に積み重ねたことが、受診者に受け入れられやすい食育の実現につながったと考える。
著者
菅原 哲也 五十嵐 喜治
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.516-520, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2 6

現在,国内で栽培されている日本ナシの主要な栽培品種である ‘幸水’,‘豊水’ について,結実から成熟まで主なポリフェノール成分を定量するとともに,その構成成分とDPPHラジカル消去活性との関係を明らかにした.日本ナシの主要なポリフェノール成分は,‘幸水’ および ‘豊水’ ともに,アルブチンとクロロゲン酸であり,結実時の果実ではポリフェノール含有量が顕著に高く,成熟にともない減少するものの,果実1個体あたりのポリフェノール量には顕著な増加が認められた.また,日本ナシ果実のDPPHラジカル消去活性は,ポリフェノール含有量に比例して増加し,今回分析した成分の中でクロロゲン酸の寄与率が最も高い値を示した.日本ナシ成熟果のDPPHラジカル消去活性はアルブチン,およびクロロゲン酸が多量に蓄積している果皮において最も高い値を示し,続いて果芯において高い値を示した.日本ナシ果実において,ポリフェノールの局在部位は,果実や種子において,紫外線や酸化ストレスに対する防御機構に関与している可能性が示唆された.
著者
原 哲也 穐山 大治 戸坂 真也 趙 成三 澄川 耕二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.531-534, 2004 (Released:2005-05-27)
参考文献数
9

術野の消毒に用いた10%ポビドンヨードによる接触性皮膚炎に対する損害賠償調停申立事件を経験した. 全身麻酔下の手術のために術野を10%ポビドンヨードで消毒し, 拭き取りは行わずに手術を開始した. 終刀後, 右鼠径部に線状小発赤を発見した. 発赤部に対し治療を行うも, 瘢痕を形成し固定した. 退院後, 国と主治医を相手に右鼠径部の病変に対する損害賠償が請求され, 調停の結果, 賠償金の支払いにより和解した. 液状のポビドンヨードとの長時間接触により接触性皮膚炎をきたす可能性がある. 比較的まれな合併症であっても医事紛争に至る例もあり, 日常的な医療行為にも細心の注意が必要である.