著者
柴田 瑠美子 古賀 泰裕
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.99-104, 2012 (Released:2012-05-31)
参考文献数
11

背景:アレルギー疾患の増加には乳児の消化管免疫に関わる微生物の働きの減弱が関連している可能性が指摘されている.そのため,これまでアトピー性皮膚炎における乳酸菌などによるプロバイオティクス効果について多くの検討がなされている.最近,アトピーリスク児におけるオリゴ糖によるプレバイオティクス効果として皮疹発症頻度の低下と腸内ビフィズス菌の増加が報告された.オリゴ糖は難消化性で消化管のビフィズス菌増殖作用がある.目的:オリゴ糖ケストースによる乳幼児アトピー性皮膚炎へのプレバイオティクス効果をRCTにて検討した.方法:食物アレルギーを有する乳幼児アトピー性皮膚炎の便中ビフィズス菌を検査し,12例のビフィズス菌低下児にケストースを12週間投与し,皮疹とビフィズス菌の変化を検討した.29例ではRCTによる効果を同様に検討した.結果:ビフィズス菌は皮疹重症例で低下し,皮疹重症度と逆相関していた.ビフィズス菌低下児へのケストース投与で6週より12週にビフィズス菌増加と皮疹改善効果がみられた.RCTでは,プラセボに比して有意に皮疹重症度の改善がみられ,ビフィズス菌低下群で有意のビフィズス菌増加がみられた.結論:オリゴ糖によるプレバイオティクス効果の機序は明らかでないが,ケストースは腸内細菌叢の健全化と消化管の透過性改善に直接関与する可能性がある.
著者
高山 哲治 五十嵐 正広 大住 省三 岡 志郎 角田 文彦 久保 宜明 熊谷 秀規 佐々木 美香 菅井 有 菅野 康吉 武田 祐子 土山 寿志 阪埜 浩司 深堀 優 古川 洋一 堀松 高博 六車 直樹 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-114, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
62

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群は,PTEN遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体優性遺伝性の希少疾患である.消化管,皮膚,粘膜,乳房,甲状腺,子宮内膜,脳などに過誤腫性病変の多発を特徴とする.巨頭症および20歳代後半までに多発性皮膚粘膜病変を発症することが多い.ときに小児期に多発する消化管病変,自閉スペクトラム症,知的障害が診断の契機となる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある.乳癌,甲状腺癌,子宮内膜癌,大腸癌,腎細胞癌などの悪性腫瘍を合併するリスクが高く,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう,基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
古川 洋章 由井薗 隆也
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-21, 2018 (Released:2018-04-01)

本研究では、分散ブレインストーミングの継続的な創造活動を支援することを目的としている。その方法として、ゲーミフィケーション要素を用いた分散ブレインストーミング支援ツールを提案した。ゲーミフィケーション要素として、アイデア投稿のフィードバック、アバターの生成、アバターの変更、他のプレイヤーとの競争、アバター図鑑、の 5つの機能を実装した。提案機能の有効性を確認するため、「ゲーミフィケーション要素ありツール(GE有)」と「ゲーミフィケーション要素なしツール(GE無)」を用意し、比較を行った。さらに GE有を用いて、 9日間の継続的なブレインストーミングを実施し、内因性モチベーションがアイデア創出に与える影響を調査した。実験の結果、 GE有と GE無では、 GE有がアイデアの量、アイデアの流暢性・独自性にて評価が高かった。また GE有を用いた場合に、同一テーマにて 5日目まで持続してアイデアが創出されることが確認された。
著者
古川 一明
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.179, pp.269-294, 2013-11-15

東北地方の宮城県地域は,古墳時代後期の前方後円墳や,横穴式石室を内部主体とする群集墳,横穴墓群が造営された日本列島北限の地域として知られている。そしてまた,同地域には7世紀後半代に設置された城柵官衙遺跡が複数発見されている。宮城県仙台市郡山遺跡,同県大崎市名生館官衙遺跡,同県東松島市赤井遺跡などがそれである。本論では,7世紀後半代に成立したこれら城柵官衙遺跡の基盤となった地方行政単位の形成過程を,これまでの律令国家形成期という視点ではなく,中央と地方の関係,とくに古墳時代以来の在地勢力側の視点に立ち返って小地域ごとに観察した。当時の地方支配方式は評里制にもとづく領域的支配とは本質的に異なり,とくに城柵官衙が設置された境界領域においては古墳時代以来の国造制・部民制・屯倉制等の人身支配方式の集団関係が色濃く残されていると考えられた。それが具体的な形として現われたものが7世紀後半代を中心に宮城県地域に爆発的に造営された群集墳・横穴墓群であったと考えられる。宮城県地域での前方後円墳や,群集墳,横穴墓群の分布状況を検討すると,城柵官衙の成立段階では,中央政権側が在地勢力の希薄な地域を選定し,屯倉設置地域から移民を送り込むことで,部民制・屯倉制的な集団関係を辺境地域に導入した状況が読み取れる。そしてこうした,城柵官衙を核とし,周辺地域の在地勢力を巻き込む形で地方行政単位の評里制が整備されていったと考えた。
著者
深田 亮 古矢 丈雄 竹内 弥彦 金 勤東 赤坂 朋代 村田 淳
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11907, (Released:2021-01-23)
参考文献数
29

【目的】脊髄後索障害により,脊髄性運動失調を呈した歩行障害に対する理学療法について報告する。【対象】胸椎黄色靭帯骨化症でロンベルグ徴候と歩行障害を呈した73 歳男性である。第10/11 胸椎高位において,胸椎黄色靭帯骨化症に伴う硬膜管の圧排および同部位の脊髄圧排が確認された。不全対麻痺で立位保持,歩行が困難となり,第10/11 胸椎椎弓切除術,12 胸椎頭側1/2 部分椎弓切除術,黄色靱帯骨化切除術が施行された。【方法】術後5 日目から,歩行動作の獲得を目的に自転車エルゴメーター,トレッドミル歩行練習を中心に実施した。【結果】術後13 日目,ロンベルグ徴候は陰性となり,独歩が可能となった。【結語】術後急性期から自転車エルゴメーターやトレッドミル歩行練習を施行したことで,転倒なく独歩で日常生活に復帰できた。
著者
廣幡 健二 古谷 英孝 美﨑 定也 佐和田 桂一 杉本 和隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ca0207, 2012

【目的】 近年,人工膝関節置換術後症例の術後活動レベルは高くなり,日常的移動手段として自転車を利用するだけで無く,余暇活動として荒地以外でのサイクリングも許容されている.当院でも術後に自転車を日常移動手段として求め,利用する症例は多いが,その一方で自転車駆動困難な症例も存在する.自家用の自転車やトレーニング用の固定式自転車において駆動時に必要な術肢膝関節可動域については調査されていない.本研究では,人工膝関節置換術患者の自転車エルゴメータ(cycle ergometer;CE)駆動時おける膝関節屈曲角度を駆動条件毎に調査し,自転車駆動動作の可否を決定する一つの判断基準を作成することを目的とした.【方法】 当院にて2011年6月~2011年9月の期間に片側Total Knee Arthroplasty(TKA)または片側Unicompartmental Knee Arthroplasty(UKA)を施行した症例を対象とした.その他整形外科疾患,中枢神経系疾患の既往を有する者は除外した. 測定項目はCE駆動時膝屈曲角度,CE駆動時自覚的快適度,他動的膝ROMとした.CE駆動時膝屈曲角度の測定にはデジタルインクリノメータ(日本メディックス,デュアラーIQ)を用いた.CEのサドルの位置は,乗車時に1)下死点のペダル上に足部を置き膝15°屈曲となる高さ,2) 膝15°屈曲・足関節最大底屈位にて前足部(MP関節より遠位)が床面に接地する高さ,の2段階とした.ペダルに対する足部の位置は,a)下腿長軸延長線上の踵骨とb)MP関節との2段階とした.上記のサドルと足部の位置を変えた4条件[1-a,1-b,2-a,2-b]にて測定を行った.駆動動作において対象には体幹,骨盤帯での代償動作を行わないように指示し,駆動中の膝最大屈曲角度を測定した.代償動作が著明または駆動困難な場合は,測定を中止した.CE駆動時自覚的快適度は各条件において,「不快」~「快適」4段階のリッカート尺度を用いて聴取した.他動的膝屈曲ROMは背臥位にてゴニオメータを用いて測定した.自覚的快適度から対象を快適群と不快群に分け,その2群の基本属性と各測定項目に対し記述的統計処理を行った.また他動的膝屈曲ROMに対するCE駆動時膝屈曲角度を%ROM(CE駆動時膝屈曲角度/他動的膝屈曲ROM*100)として算出した.【倫理的配慮、説明と同意】 倫理的配慮として,東京都理学療法士会の倫理審査委員会に倫理審査申請書を提出し承認を得た(承認番号:11東理倫第1号).対象者には事前に研究の趣旨を説明し,同意を得た.【結果】 対象は16名(男性4名,女性12名,平均年齢72.4歳,平均術後経過日数58.6日)で,術式はTKA7名,UKA9名であった.全対象の術肢膝屈曲ROMは平均118±10°であった.各条件における測定可能人数とCE駆動時膝屈曲角度は1-a)で16名,79±5°,1-b)14名,90±1°,2-a)13名,91±7°,2-b)10名,104±5°であった.各条件における快適群の人数と,その対象の術側他動的膝屈曲ROM [平均±標準偏差(最小値)]は1-a)で15名,119±10°(105°)であり,1-b)13名,120±9°(110°),2-a)12名,122±8°(110°)で2-b)では快適群2名,不快群8名であり,快適群で133±4°(130°),不快群で119±7°(110°)であった.%ROMは条件1-a),1-b),2-a)の快適群では順に66%,75%,75%であり, 2-b)において快適に駆動できた対象は78%,不快群では87%と高値を示した.【考察】 今回の4つの測定条件では1-a),1-b),2-a),2-b)の順でCE駆動時膝屈曲角度は増加していた.算出した%ROMが75%程度であれば快適にCE駆動が可能であり,90%近くなると不快であった.自転車利用を検討するには,他動的膝屈曲ROMだけでなく,機能的な駆動時の膝屈曲可能ROMを考慮する必要が考えられ,これについては今後も検討が必要である.自転車利用においてサドル高は「両足が地面につく高さ」が推奨されており,今回の結果では条件2-a)にあたる駆動環境が安全性と快適性に優れているのではないかと考えられる.自転車利用困難なTKA,UKA術後患者に対し安全な自転車駆動を達成させるためには,過度なサドル高の調整だけでなく,足部の位置に対する指導も膝関節機能を補う有効な生活指導となると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 人工膝関節術後の症例に対し,適切な自転車駆動方法を指導することは,術後QOLや患者満足度の向上につながると考える.
著者
古川 里一郎 横井 正裕 河村 隆 奥田 一郎 松居 雄毅
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp._1P1-F01_1-_1P1-F01_2, 2008

The small flight robot which made a flapping of wings the model is manufactured. Some kinds of mechanisms of a flapping of wings are examined, wings area is changed, and lift is measured. Furthermore, paying attention to the size and form of a lattice of wings, it analyzes using finite element method using the piece model of an examination manufactured by 3DCAD about lateral bending, longitudinal bending, and torsional.
著者
山本 剛史 松成 宏之 奥 宏海 村下 幸司 吉永 葉月 古板 博文
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.367-375, 2019

<p>ヒスチジン(His)含量の低いイワシ魚粉と His 含量の高いアジ魚粉を50%配合した飼料(FM1,FM2),FM2 の含量に合わせて FM1 に His を添加した飼料(FM1H),イワシ魚粉の配合を15%に削減して大豆タンパク質とコーングルテンに置き換えた低魚粉飼料(LFM)および FM1 と FM2 の含量に合わせて LFM に His を添加した飼料(LFMH1,LFMH2)を平均体重4.7 g のブリに45日間給餌した。最も成長の良かった FM2 区に比べ,FM1 区では若干劣り,低魚粉飼料の3 区の成長はいずれも FM1 より劣った。一方,His を FM2 のレベルに添加した FM1 と LFMH2 を与えたブリでは摂餌が増加し,成長が改善する傾向がみられた。肝臓の遊離アミノ酸組成には飼料の影響はほとんどなかったものの,普通筋では飼料中の含量を反映して His が蓄積する一方で,タウリンやほかのアミノ酸が減少した。以上の結果から,ブリ稚魚において飼料への His の添加効果は限定的であり,特に低魚粉飼料の栄養価を根本的に改善するものではないことが示された。</p>
著者
古内 洋平
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.194, pp.194_95-194_110, 2018-12-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
59

Any government that emerges from repression or conflict faces challenges related to transitional justice. In recent years, the focus of studies on transitional justice has shifted from the prosecution of perpetrators to reparations for victims. For a government that has just emerged from repression or conflict, granting reparations to victims is a major burden in terms of finances and capabilities. There are many examples of governments that have refused to compensate victims or that have discontinued payments after a short time. Yet, an increasing number of governments have continued to grant reparations to victims since the 2000s. What is the reason for such growth? Researchers in several past studies have analyzed the processes by which transitional justice mechanisms are diffused across national boundaries, though most of the studies have focused on the spread of trials against perpetrators and trials associated with truth commissions. Only a small number of studies have addressed the spread of reparations for victims.This paper provides an analysis of the causes for the increase in governments that are granting reparations to victims, with a special focus on the 2000s. I make use of Jelena Subotic’s framework of hijacked justice to explain interactions between international actors and domestic political elites. In the 2000s, domestic political elites appeared, making strategic use of reparations to victims as a means for achieving economic growth and national security. They employed terms like collective reparation and community reparation. Moreover, international actors, including international NGOs and international organizations, began collecting information about countries that were implementing collective and community reparations, suggesting that reparation for victims could be integrated into development projects. In this paper, I refer to this idea as development-centered reparation. Once this idea came to have international influence, it allowed domestic political elites to justify their use of reparations to initiate other policies. The result was an increase in governments granting compensation to victims as a transitional justice mechanism.To ascertain processes such as the one described above, I use primary sources from international organizations and NGOs to investigate international actors’ perceptions of reparation as well as changes in their perceptions. In this paper, I examine Morocco and Colombia as examples of countries that continuously grant reparations to victims and investigate the interactions between international actors and domestic political elites in both countries.
著者
古澤 嘉朗
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.194, pp.194_111-194_124, 2018-12-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
65

A quarter century has passed since the release of the Agenda for Peace in 1992, which, retrospectively, can be marked as the beginning of recent surge in peacebuilding research and practice. The institutionalization of the term “peacebuilding” appears to be a success, as many organizations around the globe incorporated the term framing their own activities in post-conflict and transitional countries. This can be symbolically represented by the establishment of the United Nations Peacebuilding Commission and Peacebuilding Support Office in 2005. On peacebuilding research, major publishers have released books such as Palgrave Advance in Peacebuilding and Routledge Handbook of Peacebuilding, published in 2010 and 2013 respectively, and the peer-reviewed journal entitled Peacebuilding was launched in 2013. So-called “liberal” peacebuilding debate is also taking place between two camps: policy-oriented research and critical research. While former seeks effectiveness of peacebuilding practices, while the latter seeks a quality of peace built as a result of peacebuilding practices. Taking these developments into account, this article will analyze a strategy of peacebuilding policy by looking into terms such as “rule of law” and “legal pluralism.” In this process, the article will look into the police reform and chiefdom police reform in Sierra Leone. The first section of the paper will explain how “rule of law” fits into peacebuilding policy by examining the police reform in Sierra Leone (1998–2005). The second section will explain how “legal pluralism” fits into peacebuilding policy by examining the chiefdom police reform in Sierra Leone (2008–2017). The paper points out that a difference between the two approaches—rule of law and legal pluralism—results from a different conception of the term “policing.” The former is based on the narrow understanding of policing, while the latter is based on the broader understanding. The paper raises following three points. First, the intent of this article is to make a point that revising peacebuilding strategy is necessary in order to improve quality of peace built via peacebuilding practices. Second, the paper argues that, instead of making peacebuilding policy and research into a normative framework and a standard set of assumptions about how post-conflict and transitional countries should be reformed, peacebuilding policy and research need to be context-based. Third, paper also points out that whether peacebuilding policy will be context-based or not will largely be affected by politics surrounding actors engaged in peacebuilding in each case.