著者
藤井 達也 三橋 正枝 古川 柳蔵
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.184-194, 2020-11-30 (Released:2020-11-30)
参考文献数
30

近年,気候問題をはじめとした様々な地球環境問題が益々悪化している。地球環境問題の原因は人間活動の肥大化である。ライフスタイルを変えられるかどうかが問われており,環境配慮行動の実践を繰り返し,ライフスタイルへ定着が急がれる。ライフスタイル変革を促す環境配慮行動を評価するには,人々の多様で潜在化した無意識に生起され,社会的背景・文化的背景,環境,コミュニティなどと関連性を持って成り立っている日常的な行為を把握する必要がある。そこで,本研究では,オントロジー工学に基づき,実世界で起こる日常的な複数連なる行為をモデル化し,感情を含んだ行動の共通概念を明示化することにより,日常的な行為の変容と感情や意識との関係を評価し,推論する方法を検討することを目的とする。日本の複数の地域の小学生を対象として持続可能な暮らしの構築のための木育ワークショップを実施し,参加者へのアンケート,インタビュー及びビデオによる録画したデータに基づき分析を行った。木育ワークショップに参加した子どもの笑顔に着目し,子どもの笑顔に至るまでの行動をパターン化し,オントロジー工学に基づき行為分解木を描くことにより,笑顔に至るプロセスにおけるその人の感情の共通概念を明示化できることが示された。また,笑顔数などの客観的なデータを用いて,日常的な行為の変容と感情や意識との関係を評価することで,ある特定の行為を通した一人当たりの笑顔数が環境意識の高さや環境意識の向上度合によってどの程度になるか推論できる可能性が示唆された。
著者
坪内 佑樹 鶴田 博文 古川 雅大
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.9-16, 2020-11-26

Web サービスのソフトウェア規模は,長年の機能開発により日々増大しており,ソフトウェア開発者によるソフトウェアの変更が難しくなっている.そこで,変更を容易にするために,一枚岩のアプリケーションを分解して分散させるマイクロサービスアーキテクチャが普及している.しかし,マイクロサービス化によりシステムの構成要素数が増大するにつれて,システムの性能を示す時系列データ形式の指標であるメトリックの個数が増大する.そのため,システムの性能に異常が発生したときに,網羅的にメトリックを目視できず,システム管理者がその異常の原因を診断することが難しくなっている.先行手法では,複数の構成要素を横断したメトリック間の因果関係を推定することにより,システム内の異常の伝播経路を推論する.しかし,診断に利用できるメトリックの個数は限定されるため,より原因に近いメトリックが推論結果から除外される可能性がある.本論文では,性能異常の診断に有用なメトリックを網羅的に抽出するために,観測されたすべてのメトリックの次元数を削減する手法である TSifter を提案する.TSifter は,定常性を有するメトリックを除外したのちに,類似の形状をとるメトリックをクラスタリングすることにより,異常の特徴を強く表すメトリックのみを抽出する.本手法により,メトリック数が膨大であっても,その異常の診断に適した有用なメトリックを都度抽出できる.マイクロサービスのテストベッド環境に故障を注入する実験の結果,TSifter は,ベースラインとなる手法に対して,正確性と次元削減率の指標では同等程度の性能を有しながらも,270 倍以上高速に動作することを確認した.
著者
道木 恭子 古谷 健一 牛山 武久 永松 秀樹 堀 達之
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学紀要 (ISSN:13424661)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-6, 2005

女性脊髄障害者81名を対象として産婦人科的問題に関する後方視的調査を実施した。結果、一般では減少傾向にある「膣感染症」が61名(75%)と最も多く、脊髄障害者において膣感染症が多いことから、膣洗浄による治療効果について検討した。洗浄は10%ポピドンヨード50倍希釈液を用い、2週間に1度の間隔で実施した。その結果5例中4例において、膣分泌物中の細菌の減少傾向が認められ、外陰部の発赤、びらん、悪臭などの自覚症状も軽減した。本研究から、膣感染症に対する洗浄の有効性および女性脊髄障害者の健康問題に関する医療者の理解と当事者に対する知識の普及の必要性が示唆された。
著者
高 興和 古屋 正貴
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成28年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.11, 2016 (Released:2016-08-31)

タンザナイトの色の評価については、タンザ ナイトファウンデーションが提唱する"Tanzanite Quality Scale"などが知られている。青系、紫 系と分けているところにタンザナイトならではの 特徴があるが、他の色石同様色の強さ(彩度)が高いものが良いとされている。 この研究ではタンザナイトの色の評価となる 青、紫の強さがどのような要因で決定されるか考察し、色に影響をするものとしては、1)色の 原因であるVの含有量、2)加熱の有無、3)結 晶の方向(オリエンテーション)が考えられた。 実験の結果、非加熱のものでは V の含有量 と色の間に相関関係は見られず、加熱のものでは図1のように V の含有量と色の強さに相 関関係が見られた。また、結晶の方向は色の 強さには関係せず、青か紫かを決定するよう に考えられた。この結果は加熱によって含有 される V による色が十分に発現したことによる と考えられる。また、逆にその V が含有量から 推測されるほどに発現していないことは、非加熱であることを示唆するとも考えられた。 また、市場で"ファンシーカラー・タンザナイト"とも呼ばれるピンクやオレンジ、また緑色のも のについてもその色の原因を調べた。 ピンクやオレンジのものからは青、紫系のもの には見られない高い Mn の含有が確認された。 また同時に V の含有も確認され、加熱によってはより紫になったものも確認された。また、緑のものからは比較的高い濃度の Cr が検出 された。またサンプルの多くは加熱されており、 V の含有量が少ないこともあって加熱後も緑 色のままだった。 このように青、紫系のタンザナイトは加熱の有 無と V の含有量によって、ピンク系のゾイサイ トは Mn、緑系のゾイサイトは Cr による着色であり、それらが複雑に影響し合い、色が発現していることが確認された。 また、今年5月にブロック D の鉱山を視察し た。ブロック D では 100 人規模の大規模な採 掘が行われていたが、機械化はされておらず、 手作業による採掘によってすでに坑道が長さ 800m、深さ 450m に達するまで採掘が進められている。前年に報告を行った、ブロック B で はその半分程であったことから、ブロック D の 採掘の活発さが分かる。 ブロック D から産出するタンザナイトはブロック Bのものに比べ色が強く、また透明度の高いものも多く、その高い品質から上記のような活発 な採掘が行われているものと考えられる。
著者
長澤 勲 古川 由美子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.112-120, 1986-01-15
被引用文献数
2

現在 機械設計の現場では FORTRANなどでかかれた専用的な設計システムが実用されている.近年 多品種少量生産傾向が強まるとともに 保守性 拡張性 多目的性に優れた汎用設計システムの必要性が認識されてきた.このためには 設計の方法論に基づいた設計システムを開発する必要がある.筆者らは 先に 論理プログラミングを用いた拘束条件リタクション法とよぶ計算モデルを提案し これが設計計算のモデルとして優れた表現力をもつことを示した.本研究では この計算モデルを基礎に機械設計のうち基本設計とよばれている部分を対象とした汎用的機械設計計算支援システムを開発した.ここでは まず設計システムを実用化するうえでの問題点と解決策を示し 次に歯車減速機を例にとり設計システムのプログラミング技術について述べている.
著者
古澤 照幸
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.4, pp.25-34, 2004-12

スリル構造についての考察を行った。153名の大学生に「あなたにとってスリルとはどのようなものか」「スリルと考えられる事態にはどのようなものがあるだろうか」という質問をし、自由記述文を得た。各文章を形態素解析し、各文章中の形態素の共起度を計算し、共起度をもとに「キーグラフ」によって2次元グラフを得た。また、形態素の出現頻度の結果を総合すると、スリル感は「安全」に守られた中で生起する、というApterの考えと合致するものも結果の一部として、確認することができた。
著者
あうん し し 上田 俊司 古賀 徹 五島 健太 張 華 新名主 輝男
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.217, 2009

我々は、[3<SUB>3</SUB>](1,3,5)シクロファンを始め、モノフルオロおよびヘキサフルオロ[3<SUB>3</SUB>](1,3,5)シクロファン類の光化学反応によりヘキサプリズマン誘導体を合成する研究を行っている。今回、これらのシクロファン類の無水および含水ジクロロメタン中での光反応をHPLCにより追跡し、かご型光反応生成物を単離・同定するとともに、光反応生成物間の相互関係を調べ、光化学反応機構を総合的に考察したので報告する。
著者
古元 礼子
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.145-152, 2008-10-31 (Released:2008-12-08)
参考文献数
21

甲状腺ホルモン (T3,T4) は発生,成長,代謝において重要な働きをしているが,その作用は甲状腺ホルモン受容体 (TR) を介して発現する.TRは核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド依存性の転写調節因子であり,標的遺伝子の発現を調節する.ヒトのTR遺伝子の異常は甲状腺ホルモン不応症 (RTH) として報告され,αとβの2つのTR遺伝子のうち,TRβ遺伝子の欠損または変異によるホルモン作用の異常である.TRβを優位に発現する下垂体では甲状腺刺激ホルモン (TSH) に対するネガティブフィードバックが破綻する.今回,我々はRTH患者で同定されたTRβ遺伝子の変異を導入した遺伝子改変マウスを解析した.この変異TRβ (TRβPV) はリガンド結合部位のアミノ酸置換のためリガンドが結合できない.TRβPV/PVマウスは血中T3,T4,TSHの著しい上昇を示し,半年齢から下垂体が野生型の2倍以上に増大した.病理組織学的には多発性のTSH産生腫瘍を認めた.コントロールとしてTRβPV/PVマウスと同様に著しいT3,T4,TSHの上昇を示すTRα1-/-,TRβ-/-マウス(TRα1とTRβを欠損する)を解析した。TRα1-/-,TRβ-/-マウスはTSHに対するネガティブフィードバックが破綻し,下垂体からTSHを激しく産生するにもかかわらず,下垂体は正常であった.腫瘍の発生にリガンドの結合しない変異TRβが重要である可能性が示唆された.cDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析より,TRβPV/PVマウスに発生するTSH産生腫瘍ではcdc2,cyclin D1など細胞周期,細胞増殖に関連する遺伝子の発現が上昇していた.TRβPVの機能解析により,リガンドの結合しないTRβPVを介してcyclin D1/CDK/Rb /E2F シグナルが活性化され,腫瘍の発生に関わっている可能性が示唆された.
著者
古橋 正吉 宮前 卓之 上田 伊佐雄
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.p357-365, 1975-03
被引用文献数
2
著者
大古 拓史 野々垣 政史 梶原 史恵 大川 裕行
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.112, 2007

【はじめに】 臨床実習 (以下実習) は,学内で学んだ様々なことを臨床現場で実際に実践する重要な科目である.実習を目前に控えた学生は,実習に対し大きな不安を抱いている.しかし,先行研究は,管理・教育という指導者側からの視点のものが多く,学生側からの視点のものは見あたらない.そこで,学生の実習に対する不安を少しでも解消すること,指導者に対して有益な情報を提供することを目的に実習中の実習生の身体的・精神的活動量を継続的に計測し,若干の考察を加え報告する.<BR>【方法】対象は理学療法学専攻4年実習生2名である.アクティブトレーサー (GMS社製AC-301) を使用し,実習中(7週間)のR-Rと加速度の変化を記録した.記録したR-R間隔の変動に対して周波数解析 (GMS社製MemCalc for Windows) を行い,心臓交感神経・副交感神経活動を観察し精神的活動量の指標とした.加速度は, x,y,z,3方向の合成加速を身体的活動量の指標とした.また,コントロールとして,各被験者の日常生活においても同様の計測を行った.各データ(心拍数,加速度,心臓交感神経・副交感神経活動)は,週単位の平均値を求め比較・検討を行った.なお,本調査は星城大学倫理委員会承認の元に行われた.<BR>【結果】被験者に共通して実習前半は後半と比較して高い心拍数を示した.後半のうちでも7週目の心拍数は高値を示した.交感神経活動は各被検者ともに1,2週目が高く,4週目が最も低かった.逆に副交感神経活動は4週目が最も高く,1,2週目は低かった.また,4週目の交感神経活動は,コントロール群の日常生活レベルに近い値を示した.身体的活動量は実習前半に比べ後半に高値を示した.さらに7週目は6週目に比較して有意に高値を示し,上昇し続ける傾向にあった.<BR>【考察】実習生は実習前半には精神的活動量が身体的活動量を上回る,いわゆる精神的過緊張状態にあり,実習中盤には精神的過緊張が緩み,日常生活での交感神経活動レベルに一致する.そして実習後半にやっと身体的活動量と心拍数が一致することが分かった.実際,実習4週目頃に実習指導者から「気の緩み」を指摘された事実も上記解釈を裏付けるものとなっていた.即ち,実習中盤は精神的緊張が緩む時期であり,実習中で最もミスが起こりやすい時期であると考えられる.実習生はもちろん,実習指導者にとっても注意が必要な時期である.実習生は,実習前半の精神的過緊張状態を少しでも緩和できるように,実習前に知識・技術を高めておく必要がある.実習指導者は,実習前半の実習生の精神的過緊張状態緩和に配慮し,実習半ばでの精神的緊張低下「気の緩み」に注意する必要がある.これらの情報を実習生,指導者双方が意識することでより効果的・効率的に実習をすすめることができる.
著者
古川 章
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.860, pp.21-23, 2020-11
著者
菅 文彦 古川 拓也 舟橋 弘晃 間野 義之
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_1-1_11, 2018 (Released:2018-02-09)
参考文献数
26

Although previous researches have suggested that Team Identification (Team ID) and Place Attachment are positively correlated, the causal relationship between them has not been clarified sufficiently.    In this research we attempted to verify the hypothesis that “inhabitants who have raised the Team ID will raise Place Attachment, compared to the inhabitants who have not raised it.” The investigation method was a longitudinal survey focused on inhabitants of Imabari City, designed to assess the change in the Team ID and Place Attachment.    The results of the two-way ANOVA showed that there was a significant difference between the Place Attachment of inhabitants who had raised the Team ID and those who had not. Place Attachment of the former increased, and thus the hypothesis was supported.    The causal relationship between Team ID and Place Attachment been clarified by this research, however, the existence and the influence of other parameters have not been clarified. In order to clarify the mechanism between Team ID and Place Attachment, accumulation of expert knowledge will be required.
著者
古和 久典 中島 健二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.514-518, 2017-10-25 (Released:2017-12-07)
参考文献数
11

脳出血によって,寝たきりや重度後遺症をきたす患者は,加齢に伴って増えていく.降圧療法の普及に伴い,脳出血危険因子としての高血圧の影響は低下しているものの,高血圧はいまだもっとも影響の強い危険因子である.新たなMRI撮像法を用いることによって,高齢者に多く,脳葉型出血を呈し,高血圧の関与が少なく,再発を繰り返す脳アミロイドアンギオパチーに関連した脳出血の臨床診断や,微小脳出血の検出が可能となり,抗血栓療法を開始する際には,その適応の検討や血圧管理に留意することが必要である.