著者
圦本 尚義
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.49-59, 2017-06-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
44

Oxygen is the third most abundant element in the Universe and the most abundant element of the terrestrial planets. The presence of oxygen in gaseous, ice and dust phases makes oxygen isotopes important tracers of various fractionation processes to form a protoplanetary accretion disk, which are essential for understanding the evolution of building blocks for planet formation. Photodissociation of CO isotopologues in cold interstellar environments forms H2O ice with depletion of 16O component relative to the interstellar CO, but with heritage 17O/18O ratio from the interstellar CO. Dynamic evolution of protoplanetary disk generates H2O enrichments inside snowline of the disk to change from 16O-rich to 16O-poor gaseous environments. Thermodynamics during heating processes reset oxygen isotopic compositions of dust in the disk to the gaseous oxygen isotope values. Therefore, building blocks of planet show oxygen isotope variations with variable 16O component, but with similar 17O/18O ratio each other. Oxygen isotopic compositions of outer planets would be 16O-poor in order of increasing distance from the Sun if outer planet formation started from icy planetesimal accretion.
著者
圦本 尚義
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.2, pp.163-177, 2022-04-25 (Released:2022-05-13)
参考文献数
71
被引用文献数
2

Determining the elemental abundances of the Earth is one of the fundamental interests of the Earth and planetary sciences. The elemental abundances of the bulk solar system, chondrites and bulk Earth are reviewed. The elemental abundances of the bulk solar system resemble those of chondrites, with the exception of atmophile elements. CI chondrite may be most resemblant, but significant improvements in solar photosphere spectroscopy are necessary to reject other chondrites. Volatilities of elements control chemical variations among chondrites. These variations may reflect global thermal structures in the proto-solar disk. Alternatively, the variations may correspond to accretion ratios of chondrite-forming components, which are refractory inclusions, chondrules, and matrix, into the parent bodies. The elemental abundances of bulk silicate Earth can be empirically estimated without referring those of the bulk solar system and chondrites if we use chemical variations of mantle rocks. However, the chemical composition of bulk Earth remains largely uncertain because it is difficult to estimate the chemical compositions of the central core and the lower mantle without formation models of the Earth.
著者
中井 泉 由井 宏治 圦本 尚義 寺田 靖子 阿部 善也
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

昨年6月に地球から約3億4000万kmはなれた小惑星リュウグウに到着したはやぶさ2は、小惑星サンプルを採取し、地球に本年末に帰還する。JAXAのプロジェクトチームの一員として、我々はリュウグウ試料の化学組成を蛍光X線分析により決定し、太陽系の起源・進化の解明に寄与する情報の取得をめざしている。本研究では、分析条件の最適化を行い、来年の6月に実試料を分析しリュウグウの化学組成を正確に明らかにすることをゴールとする。同時にSPring-8の最先端の放射光X線分析も適用し、多角的な元素情報を取得する。後続の研究者へ試料を非破壊・無汚染で提供することも求められていることから難易度の高い分析である。
著者
圦本 尚義
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

<p>今,あなたが解き明かしたい地球化学は,あなたの実験室の分析装置でできそうですか?どこかの実験室に行けばできそうですか?それとも全く新しい分析装置の発明が必要ですか?この発表では最後の質問に「はい」と答える方と議論したい. なぜ最先端分析装置を越える新しい分析装置を発明したいのか?それは,最先端分析装置を発展させるだけでは解き明かせない新しい地球化学を発見しているからだ.新しい分析装置の開発は,新しい物理と新しい化学のコラボレーションで始まり,発明へと進展する.地球化学の発見が分析装置の発明によりなされることがあることを,同位体顕微鏡を例にして議論する.地球化学の難題は,分析装置発明の原動力になりそうだ.</p>
著者
宮城 磯治 圦本 尚義
出版者
The Volcanological Society of Japan
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.349-355, 1995-10-31 (Released:2017-03-20)
参考文献数
32
被引用文献数
4

日本を含む島弧の火山では,しばしば爆発的な噴火が見られる.マグマ中の揮発性成分(主に水)の飽和・発泡・膨張にともなうマグマの急激な放出が,それらの要因である.火山噴火の理解の為には,マグマ含水量,マグマヘの水の溶解度,そして噴火時の脱水過程を理解する必要がある.しかし,噴出時の脱水のため,噴出前の含水量を火山岩から読みとることはきわめて困難である.これまでのところ,斑晶中のガラス包有物の含水量を分析することが,マグマ含水量を見積もるための最も有効な手段であると考えられる.ただし,斑晶中のガラス包有物の大きさは通常直径100μm以下であるため,微小領域の正確な含水量測定法が必要である.そこで本研究では,二次イオン質量分析計を用いた含水量分析の手法を開発した.これまでの研究により,ガラスの組成が異なると水素の二次イオン生成率も変化することが知られており,この手法の問題点であった.しかし本研究では,ガラスのシリカ濃度を用いてその生成率が補正できることを示し,この問題点を克服した.これにより玄武岩質〜流紋岩質ガラスの微小部分(半径約5μm)の含水量を正確(約±0.5wt.%)に分析する手法が確立された.この手法の応用として姶良カルデラの約2万2千年前の噴出物から取り出した斑晶メルト包有物の分析を行ったところ,5~7wt.%の含水量が示された.これはAramaki(1971)の水熱合成実験により得られている水分圧と水の溶解度から推定される含水量と良く一致する.
著者
磯崎 行雄 谷本 俊郎 平田 岳史 圦本 尚義 丸山 茂徳 中村 保夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

現在の環太平洋地域では、いずれも海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでおり、典型的なプレート沈み込み帯型の造山帯をなしている。本研究計画の前半では、その造山帯成長を司る二つの主要なプロセス、すなわち付加体の形成と花崗岩帯の形成についての地質学的研究がなされ、日本列島に分布する顕生代の付加型造山帯の基本構造と形成過程が解明された。また、そこで開発された研究手法は、日本列島からみると太平洋の対岸にあたる北米西岸のカリフォルニア州のコルディレラ造山帯においても適用され、新たな成果をあげた。この一般的な造山帯形成過程に対して、都城型造山運動と命名した。これは超海洋の誕生から消滅に及ぶ一つのウイルソンサイクルの中での一般的プロセスと理解される。一方、これらのプレート沈み込み型造山帯の基本的体制が何時成立したのかについては従来不明であったが、本研究後半では、本邦における最古期岩石群の特徴に着目し、それらの起源が約7-6億年前に超大陸ロディニアが分裂した時に出現したリフト帯にあったことを明らかにした。すなわち、日本列島の成長核になる揚子地塊の海洋側に産する5億8千万年前のオフィオライト(西九州および北上山地)が太平洋の最古断片を代表することをつきとめた。この事実は、先に解明した付加型造山帯の成長極性と調和的で、揚子地塊の太平洋側大陸縁が、もともとの受動的なものから、約4.5億年前に活動的大陸縁に転換したことを示す。一つの超大陸の分裂から大海洋が生まれ、同時にそれをとりまく新しい大陸縁辺のグループが生じる。その海洋が面積を拡大していゆくと、やがて地球の反対側で別の海洋が開き始める頃には、もとの大陸縁はプレート収束帯に進化してゆくという大陸縁造山帯の一般的成長プロセスが、日本列島の研究から導かれたことになる。
著者
圦本 尚義
出版者
アグネ技術センター
雑誌
金属 (ISSN:03686337)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.1024-1028, 2008

最近、隕石中に太陽系誕生以前の物質が含まれていることが明らかになった。この物質は化学組成からでは判別することができず、同位体組成によってのみ特定できる。この物質の研究を進めることにより、太陽系の起源でとぎれていた我々の歴史が宇宙史の中に位置づけられる日が来るだろう。
著者
圦本 尚義
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
1985

identifier:http://hdl.handle.net/2241/4807
著者
伊藤 正一 柳井 佳穂里 サラ ラッセル ジム グリーンウッド 圦本 尚義
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

隕石母天体内での流体(H<sub>2</sub>O)のふるまいは,これまで全く不明瞭であった.これら流体のふるまいに制約を与えるため,近年,リン酸塩鉱物の岩石学的,同位体的研究が盛んに行われてきた(e.g., Jones et al., 2011; Yanai et al., 2012). 本講演では,系統的に,熱変成度の異なるLL4-6のリン酸塩鉱物に含まれる微量結晶水の定量及び水素同位体組成を報告する予定である.
著者
橘 省吾 瀧川 晶 川崎 教行 圦本 尚義
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

太陽系の原材料となったダストは,太陽より前世代の恒星周囲でつくられたダストや,星間空間で破壊され,再生産されたダストと考えられる.これら太陽系原材料となった「太陽型ダスト(恒星周ダストと星間再生産ダスト)」が,太陽系最初期にガスとの酸素同位体交換を経て,地球や隕石の材料である「地球型ダスト」へと変身する過程に注目する.(1) ダストとガスとの酸素同位体交換反応に必要な原始太陽系円盤の物理化学条件を実験より定量的に決定する.(2) 隠された太陽系原材料物質を始原隕石中に発見することにより (1) の過程の証明をめざす.

1 0 0 0 OA 同位体顕微鏡

著者
圦本 尚義
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.134-137, 2006-07-31 (Released:2010-04-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
巻出 健太郎 小林 幸雄 圦本 尚義
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.249-249, 2004

Acfer214中の酸素同位体組成は、個々のCAI中で均一であるが、異なるCAI間に16O-richから16O-poorに至る約50‰の巾に分布している(Kobayashi et.al,2003)。本研究は26Alの存在と酸素同位体組成の不均一の相関を明らかにするため、Acf214中の酸素同位体組成の異なる6つのCAIについて二次イオン質量分析計(Cameca ims-1270)を用いてAl-Mg年代測定を行った。結果すべてのCAIについて26Mgの過剰はなく、26Alの存在と酸素同位体異常の程度に相関はなかった。これらの結果は原始太陽系円盤進化に次のような制約を課す。(1)Al-Mgシステムが時計として働くのであれば、CAI形成は原始太陽系円盤において300万年以上継続しその間酸素同位体不均一が円盤内に残っていた。もしくは、(2) 26Alと酸素同位体の不均一が円盤内に存在してこの両者の分布は相関がなかった。
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.
著者
丸山 茂徳 圦本 尚義 中嶋 悟 礒崎 行雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究を要約すると以下のようになる。(1)一連の記載研究と精密分析(論文数;丸山32、磯崎9、中嶋8、圦本8)。(2)総合化(丸山:Dynamics of plumes and superplumes through time,in Superplumes;Beyond Plate Tectonics,Springer,441-502,2007、磯崎:Plume Winter Scenario for Biosphere Catastrophe,ibid,409-439,Springer)。(3)P/T境界の精密解析(磯崎:掘削試料;6)と化石(太古代1、原生代末1、古生代末5)の記載。(4)35.6億年前(世界最古生命化石)のSIMSスポット分析(δ^<13>C)と化石の認定基準(圦本、発表準備中)。(5)化石認定の新しい指標の開発と応用(中嶋;1、実験結果と認定の新基準(古細菌か真性細菌か)の提案図については投稿準備中)。以上の成果は、これまでの地球史標準モデルを更に精密化し、誕生後徐々に冷却してきた地球システムが起こす物理的必燃として説明しうるが、新たな原因として、銀河内部で起きた3回のスターバーストとの緊密な関係が浮かび上がってきた。これらは日本のみならず世界最前線の研究を更にリードするものである。これらは、地球惑星科学の中の諸分野へ大きな影響を与えるが、地球惑星科学以外の分野である天文学、ゲノム生物学、分子生物学、生命進化学、更に気象学にも大きな影響を与えるだろう。
著者
馬上 謙一 坂口 勲 鈴木 拓 糸瀬 悟 松谷 幸 工藤 政都 石原 盛男 内野 喜一郎 圦本 尚義
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.8, 2013 (Released:2013-08-31)

Nagao et al. (2011) によるはやぶさ試料の希ガス同位体分析は太陽風照射とそれに伴う太陽風起源He/Ne間の分別を明らかにした.しかし,希ガス分析は粒子一粒ごとの結果でありSTEM観察との直接比較を行うには希ガス分析事前にSTEM観察を行うなど,分析方法の工夫が必要である.そこで,我々が開発したポストイオン化二次イオン質量分析装置LIMAS(Laser Ionization Mass Nanoscope)を用いることで,希ガス同位体分析を数十nmスケールの空間分解能で行うことが可能となり得る.本発表では新しい局所希ガス同位体分析手法をもとに,イトカワ表層での太陽風照射の履歴に関して期待される結果について述べる.