著者
橋本 純次 坂田 邦子 三浦 伸也 鈴木 優香理 久保田 彩乃
雑誌
社会構想研究 = Journal of Social Design (ISSN:2433670X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.57-66, 2023-03-31

新型コロナウイルス(COVID―19)に関するテレビ報道は,「災害の影響が特定の地域に限定されない」,「災害現場が特定できない」,「専門家の知見への依存度が高い」,「対応策の『正解』が日々更新される」といった点で従来の自然災害報道とは一線を画すものであった。本稿では,2020 年1月以降に国内のテレビ放送事業者が直面した困難とその解決策について「リスク・コミュニケーション」の概念を端緒として考察する。本稿では,全国のテレビ局を対象としたアンケート調査と6 社9名を対象としたインデプスインタビュー調査を実施し,「不確実性」の高い災害においてテレビ局によるリスク・コミュニケーションの促進がいかなる条件のもと可能か検討した。調査により得られた知見から,「視聴者ニーズ把握の困難」と「科学的根拠の検証能力の不足による専門家依存」というテレビ局の直面する課題を解決するため,「災害報道に関するメタ知識の提供」,「災害/科学技術担当記者の役割の見直し」,「記者のリカレント教育の強化」の3 点を提言した。
著者
清野 哲也 坂田 洋満
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 (ISSN:21889201)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.36-41, 2017-01-31 (Released:2017-08-02)
参考文献数
6

It is pointed out that group learning can foster learners' sociability and enhance their learning motivation. In physical education classes, these effects can be expected by setting an appropriate tasks to carry out in a group. In the case of judo lessons, Maemawariukemi is more technically difficult than Usiroukemi and Yokoukemi. Therefore, the speed to acquire the skill, Maemawariukemi, varies from individual to individual. The purpose of this study is to examine the effects of group learning as an active learning method to learn Maemawariukemi.
著者
坂田 勝彦
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.21-38, 2019-10-01 (Released:2022-04-07)
参考文献数
23

本稿は、ある詩人の半生と作品をもとに、炭鉱労働者にとって﹁文学﹂とはいかなる営みであったか検討することを目的としている。 一九五〇年代から六〇年代にかけて、日本各地では、労働運動と連動した多様なサークルや個人によって、詩や小説、うたごえなど、様々な表現が模索された。とりわけ詩は、労働者にとって当時、もっとも身近な﹁文学﹂であった。そして、炭鉱においては、その過酷な労働環境やエネルギー革命に対する怒りを表現し、社会的な差別や排除の中でなお連帯を模索した実践として、無数の詩が労働者の手で綴られた。 しかし、当時の文化運動の多くと同様に、炭鉱の文化運動もまた、高度経済成長と大衆消費社会の到来とともに衰退していく。そうした中で、石炭産業が崩壊し、炭鉱という場がなくなった後も、元炭鉱労働者の中には様々な形で表現を模索した人々がいた。例えば、かつて炭鉱で働き、そこを追われたある人物は、一度は詩を綴ることを﹁断念﹂しながらも、その後、再び詩を綴るようになる。そのとき、彼にとって詩を綴ることは、日常生活で出会う様々な出来事や感情を対象化し、第二の人生における新たな生き方を模索する実践として、炭鉱で働いていた時代とは別様の意味を持つようになった。 そこで本稿は、﹁社会現象としての文学﹂という視点から、炭鉱労働者にとって詩を綴ることがいかなる意味をもっていたかを検討する。そこからは、それまでとは大きく異なる世界を生きる中で、詩という表現行為が彼らの悩みや苦しみを癒し、第二の人生を歩んでいく上で大きな支えとなってきたことが明らかになる。
著者
坂田 真穂
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.93-105, 2015-03-31

Corporeality in caring is instrumental in making the body of a caring person into a tool, since it allows this person to be united, physically and mentally, with whomever is in his or her care. The corporeality conveys its message through physical work. The caretaker and the person receiving care are influenced physically and mentally through the instrumentality of the body, the ambiguous of subject and object, undivided relation of body and mind, and verbal expressions. In this report, I show my own counseling cases of inner conflict in nurses, administering care, as clinical vignettes. Physical care makes the caretaker experience his or her own existence by helping others, but it may lead to a deep unconscious projection onto a patient. It is worrisome that corporeality in care is fading in medical site becomes more computerized, automated, and intellectual, even when it is important to determine the physical signs of the patient.
著者
島倉 瞳 坂田 勝亮
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3, 2020-01-01 (Released:2020-03-24)
参考文献数
31
被引用文献数
2

顔における肌色は健康や魅力のシグナルになるなど,社会的なコミュニケーションを取るうえで重要な意味をもつことが知られている.東アジア諸国で理想とされる美白感の高い肌は明るさと白さにより表現されることが多いが,両者は異なる概念であるため美白の心理物理的要因が十分に解明されているとはいえない. そこで実験1では日本人女性の平均顔画像を用い,明るさに起因するメトリック明度と白さに影響を及ぼす白色点からの距離を独立に操作することにより,美白感の知覚が顔の明るさと白さのどちらの知覚に規定されるのかを検討した.その結果,美白感は明るさとは異なり,白さに起因する感覚であることが示唆された.実験2では美白感の予測性を明らかにするため,白色点からの距離とこれまで検討されてきた種々の要因を,恒常法による主観的等価点の測定により比較した.回帰分析の結果,美白感の知覚に影響を及ぼす要因は肌のメトリック明度や色相,彩度ではなく,白さを規定する白色点からの距離であることが明らかになった.
著者
清水 智 坂田 修一 福田 聖斗 辛 徳
出版者
東京工芸大学工学部
雑誌
東京工芸大学工学部紀要 = The Academic Reports, the Faculty of Engineering, Tokyo Polytechnic University (ISSN:03876055)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-20, 2020-06-30

既存の電動義手には柔軟性に乏しい、駆動音がする、重いといった問題がある。これらの問題を解決する方法としてアクチュエータに人工筋肉を使用するということが考えられる。人工筋肉には様々な種類があるが、近年注目されているのはMITのHainesらのグループが発表した釣り糸人工筋肉である。この人工筋肉は高出力、低コスト、高い量産性を持つが、動作方法についてはまだ確立されていない。本研究ではペルチェ素子を用いた制御装置を製作し、市販されているロボットハンドに釣り糸人工筋肉と制御装置を組み込み、動作検証を行なった。
著者
三浦 崇寛 浅谷 公威 宮本 由美 清水 愛織 坂田 一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.3K4GS1002, 2022 (Released:2022-07-11)

持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて、環境や人体に危険性のある物質をいち早く検知し対応への取り組みに繋げることは、規制の整備を行う国だけでなく化学物質を利用する企業や研究者にとっても求められている。これまで化学物質のリスクはQSARなどを用いた物性が着目されていたが、環境問題に繋がる環境蓄積性などはマイクロプラスチックを筆頭として物性から推定することが難しい。そこで本研究では、規制内容が近い物質は学術コミュニティにおいて類似の文脈で議論されているという仮定に基づき、有害性のある化学物質に関する論文の引用情報と文書情報を機械学習により分類することで危険度の高い物質について議論している論文とその物質名を抽出する手法を提案する。4つの有害性/環境対応に関するカテゴリに対して実験を行った結果、書誌情報を用いることで有害性に関する論文を網羅的に取得することが可能であり、特に引用表現が物質の危険性予測に有効であることを示した。評価実験では抽出された論文を目視により評価を分類精度の検証を行なった上で、有害性関連論文の数から有害性のある物質推定を行い提案手法が有効であることを示した。
著者
富澤 晃文 力武 正浩 伏木 宏彰 坂田 英明 加我 君孝
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.43-52, 2017-02-28 (Released:2017-06-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1

要旨: 聴覚障害乳児における VRA の条件付け形成月齢を明らかにすることを目的とした検討を行った。中等度~重度難聴の20名を対象に, インサートイヤホン装着下の気導 VRA (および骨導 VRA) による純音聴力測定を実施した結果, 月齢 6 ~ 11ヵ月の期間に19名 (95%) の条件付けが形成された。VRA の測定可能率は, 0 歳 6 ヵ月時点で 1名 (5%), 7 ヵ月で 5名 (25%), 8 ヵ月で 11名 (55%), 9 ヵ月で14名 (70%), 10 ヵ月で 18名 (90%) であった。気導 VRA の反応閾値 (2000Hz) と ABR の V 波閾値の間には強い正の相関 (r = 0.87) がみられ, 両者は近似した。VRA の平均反応閾値と条件付け形成月齢の間にはやや強い正の相関 (r = 0.58) がみられ, 聴力の程度が増すほど条件付け形成月齢が遅れる傾向が示された。一方, 運動発達 (定頸, 座位, 独歩) の遅れは条件付け形成月齢に有意な遅れをもたらさなかった。早期の聴覚補償とハビリテーションの上では, 0歳後半の月齢期に気導/骨導 VRA を重点的に実施した上で他覚的検査とのクロスチェックを行うことが重要と考えられる。
著者
富澤 晃文 遠藤 まゆみ 坂田 英明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.263-269, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
16
被引用文献数
1

聴覚障害乳幼児を対象に VRA (visual reinforcement audiometry)による骨導聴力測定を行った。6 症例(0~2 歳)の気導/骨導 VRA による気骨導差の推定について,他検査との整合性の観点から検討した。トリーチャー・コリンズ症候群,中耳炎併発例の 2 例においては,VRA により気骨導差が示された。70 dB 以下の感音難聴であった 2 例では,VRA による気骨導差はみられなかった。高度・重度感音難聴であった 2 例の骨導 VRA はスケールアウトを示した。骨導聴力が一定レベルまで残存していれば,気導/骨導 VRA の組み合わせにより気骨導差の有無とその程度の推定が可能であった。得られた検査結果は誘発反応・画像などの他覚的検査の所見と概ね整合しており,行動観察的手法によって良側の骨導オージオグラムを得る意義が示された。本手法と他検査とのクロスチェックは,乳幼児における伝音/感音障害の鑑別に有用と思われた。
著者
坂田 晴香 中川 耕三 北澤 健二 山本 澪 森 航大 高柳 和史 菊田 昌義 合田 賀彦 立花 義裕
出版者
日仏海洋学会
雑誌
La mer (ISSN:05031540)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3-4, pp.79-100, 2022 (Released:2022-06-27)

Using data collected from 2004 to 2018, the relationships between fluctuation in water quality and river loads were analyzed in eight areas within Osaka Bay, comprising the A-, B-, and C-type areas as designated by the chemical oxygen demand(COD)environmental quality standards. Different trends were confirmed in each area, related to their location in the bay. Decreasing COD concentrations were observed around the Muko River mouth, while concentrations near the Yodo River mouth, near the Yamato River mouth, and in areas at the center of the bay remained unchanged. These stable trends might be attributable to the high COD concentrations in the inflow water at the inner part of the bay, as well as the in situ COD production in the center of the bay. In summary, changes in water quality reflecting river loads were observed in the inner part of the bay, but the effect decreased toward the center of the bay where in situ production might be greater. Therefore, for the future restoration plan in Osaka Bay, different approaches will be required, depending on the characteristics of the individual sea areas.
著者
浅野 聖也 坂田 一郎 大知 正直 浅谷 公威
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.4N1GS304, 2022 (Released:2022-07-11)

近年、個人貢献度評価のニーズは年を追うごとに高まっている。集団的活動の貢献度評価における問題点として、グループ評価を個人の貢献度に分割していく操作が非常に困難であることが挙げられる。 一方でTwitterのようなSNS上では、特に集客を狙ったプロジェクトの内容・成果に対し、感想や意見、もしくはリアクションといった情報が発信されている。 そこで本研究では、漫才劇場の宣伝投稿のいいね数を特徴量として用いることで、出演芸人ごとの個人貢献度の推定を目指す。具体的には、オンラインゲームのスキルレーティングシステムであるTrueSkillのアルゴリズムを貢献度評価に適用する手法を提案する。 ルミネtheよしもとの宣伝ツイートのいいね数を用いた精度評価実験では、提案手法はお笑いファンによるいいねを除いた場合において特に精度が向上することが示された。また、提案手法によって算出された出演芸人のレート値はM-1グランプリ2021の結果と相関を持つことが確認され、個人貢献度とみなすことができることが示唆された。
著者
坂田 敢海 岡村 遼 横山 拓 勝本 雄一朗
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.31-33, 2022-08-25

本研究は、腱駆動によって髪が逆立つフィギュア・超変シーンを制作した。アニメや漫画などの架空作品では、しばしば変身という表現が登場する。この変身を再現した玩具として、人型のものは少ない。そこで私たちは、漫画「ドラゴンボール」の孫悟空の変身をモチーフに、頭髪が逆立つ瞬間を機械機構をもちいて胸像化した。実現にあたっては、ロボットハンド研究における腱駆動を参照した。本発表では、超変シーンのデザインプロセスについて説明する。
著者
針谷 爽 坂田 理彦 岩原 明弘 伊藤 大聡 中西 美和
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.4_59-4_66, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
10

従来,製品デザインにおいては,ユーザが製品を通してどのような価値を体験したいのかをユーザ調査等によって掴み,それに忠実に応えるよう情報伝達形態をデザインすることが重視されてきた。一方,最近では,開発者側が積極的に発信したいと意図する価値を製品デザインに反映させる試みも見られ,ユーザのニーズを超えた製品デザインに繋がる可能性が期待されている。そこで,本研究では,開発者の意図する製品価値をより的確にユーザに伝えるための情報伝達形態について,家電製品を対象として評価・検討する。まず,開発者及びユーザの両者に対して調査を行い,家電製品に備わる直接的または間接的な情報伝達形態についてパタン化した上で,各パタンに作りこまれた開発者が意図する製品価値がユーザにどの程度伝わっているのかを疎通度として定量化した。次に,この疎通度を用いて,開発者がユーザに与えたいと意図した製品価値をユーザに的確に伝えるためには,どの情報伝達形態のデザインに注力すべきかを導出した。
著者
坂田 利家 倉田 一夫 伊藤 和枝 藤本 一真 寺田 憲司 衛藤 宏 松尾 尚
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.271-277, 1987 (Released:2010-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

行動療法としての食事確立療法に固形食化超低エネルギー食を導入し, 8名の中等度肥満患者の減量効果およびその維持について検討した。全治療期間, すなわち初診時より治療後12カ月までの平均体重減少は-20.6±7.8kg, 入院による併用療法実施期間中では-5.7±0.7kg, 退院後12カ月間の維持期間でも-4.3±2.5kgであった。空腹感および血清脂質類は正常化され, 脂肪細胞容積の縮小と体総脂肪量の減少を認めた。この減量効果とその維持はこれまでのどの成績よりも優れていた。以上の本併用療法による好結果は両療法の治療的相乗効果による。なかでも, 超低エネルギー食を液体食に代えて固形食化したことで, 低エネルギー摂取でも咀嚼法を実施でき, したがって十分な満腹信号を視床下部中枢へ送れたと考えられること, また, 今回用いた栄養組成がβオキシ酪酸の血中濃度を至適に上昇させたため, 空腹感を抑え摂食量を減少させたことなど, これらが認知能の変容を起こさせるのに重要な要因になったと考えられた。