著者
田中 輝明 小山 司
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.979-985, 2009-09-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

単極性うつ病と双極性うつ病では治療アプローチが異なるため,「うつ病」診療においては早期診断が重要な鍵となる.抑うつ症状のみで鑑別することは困難であるが,双極性うつ病では非定型症状や躁成分の混入が診断の手掛かりとなることもある.双極性障害の診断には(軽)躁病エピソードの存在が必須であるが,患者の認識は乏しく,周囲からも注意深く(軽)躁症状の有無を聴取する必要がある.双極性障害のスクリーニングには自記式質問紙票も有用である.また,パーソナリティ障害や薬物依存などの併存も多く,複雑な病像を呈するため注意を要する.双極スペクトラムの観点から,双極性障害の家族歴や抗うつ薬による躁転などbipolarityについても確認することが望ましい.双極性障害の薬物治療としては,エピソードにかかわらず気分安定薬が第一選択であり,有効性や副作用(躁転や急速交代化)の面から,抗うつ薬の使用には慎重さが求められる.
著者
松田 雅弘 高梨 晃 川田 教平 宮島 恵樹 野北 好春 塩田 琴美 小山 貴之 打越 健太 越田 専太郎 橋本 俊彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.679-682, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

〔目的〕股関節外転筋疲労前後の片脚立位時の重心動揺と中殿筋・脊柱起立筋の活動との関係を明らかにすることを目的とした.〔対象〕神経学・整形外科学的な疾患の既往のない健常成人男性22名(平均年齢21.4歳)とした.〔方法〕股関節外転筋疲労前後で片脚静止立位時の重心動揺と筋活動量の変化を計測した.疲労前後の重心動揺と筋活動量を対応のあるt検定,重心動揺と筋活動の関係をpearsonの相関を用いて求めた.〔結果〕疲労後にX方向の重心動揺が有意に増加し,中殿筋の活動は減少,右脊柱起立筋の活動は有意に高まった.右脊柱起立筋の活動の増加と重心動揺に正の相関がみられた.〔結語〕筋疲労により筋の作用に関連する方向の重心動揺が増大し,代償のための筋活動が増加したと考えられる.
著者
小山 由美 田中 美郷 芦野 聡子 熊川 孝三 針谷 しげ子 浅野 公子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.642-650, 2007-12-28 (Released:2010-08-05)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

1999年に田中は人工内耳適応児の言語指導法として, 伝統的な聴能訓練をベースにした方法とは異なるトップダウン方式を提唱した。この方法は補聴器活用に併せて手話と指文字を言語指導に導入し, 言語の意味論レベルの機能の発達を促し, これをベースにトップダウン方式で脳内にことば (speech) の聴覚的辞書を作ることを目的としている。2004年4月以降この方式で指導し, 人工内耳を装用させて2年以上経過を観察してきた17例のうち, 15例は人工内耳装用によって手話コミュニケーションが聴覚口話に自然に移行または移行しつつある。残り2例は聴神経発育不全や slow learner などの問題が関係してまだ満足な成果が得られていないが, このような問題を除けば, これまでの成績は手指法は注意深く導入する限り, 聴覚口話の発達を妨げないことを示している。
著者
小山 洋子 杉浦 慶美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.357-361, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

北海道にある人口4000人弱の小さな村の公共図書館において,ボードゲームの貸し出しを始めた経緯や狙い,また実際の利用状況や反響,運用上の課題について述べる。
著者
垣花 真一郎 安藤 寿康 小山 麻紀 飯高 晶子 菅原 いづみ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.295-308, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
16 7

3-4歳児55名を対象に, かな識字能力の4つの側面の認知的規定因を検討した。識字能力として, 文字音知識, 特殊表記(拗音, 長音, 促音)の読み, 長音単語の表記知識, 読みの流暢性を対象とし, 関わりを検討する認知的要因として, (1)モーラ意識, (2)数唱, (3)非単語復唱, (4)語彙, (5)視知覚技能を対象とした。文字音知識の上位群は, (1)-(5)すべてで下位群を有意に上回っていた。ただし, 文字音知識の群を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果, 独立した寄与をしていたのは, モーラ意識のみであった。特殊表記に関しては, 長音の読みの上位群は下位群に比べ, 非単語復唱の成績が高かったが, 促音, 拗音については関係性が見出せた認知的要因はなかった。長音単語の表記知識は, 語彙との間で相関がみられ, 長音部の表記違い(e.g., さとお)も正答とみなした場合, モーラ意識, 非単語復唱, 視知覚技能との相関が見出された。読みの流暢性に関しては, 数唱, 非単語復唱のほか, 長音単語の表記知識との相関が見出された。本研究の結果は, かな識字に対する各認知的要因の相対的重要性は, 識字の発達に伴い変化することを示唆している。
著者
小山 明日香 内田 圭 中濵 直之 岩崎 貴也 尾関 雅章 須賀 丈
出版者
Pro Natura Foundation Japan
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.27-35, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
15

霧ヶ峰高原は多くの絶滅危惧動植物の生息地であり,国内有数の観光地でもある.しかし近年ニホンジカによるニッコウキスゲの被食被害が深刻化し,対策として複数の防鹿柵が設置されている.本研究では,亜高山帯半自然草原での防鹿柵設置による生物多様性保全効果を検証することを目的に,植物・昆虫調査およびドローン画像解析を行った.結果,植物の開花種数,開花数および絶滅危惧種の開花種数はいずれも柵内で柵外より多く,チョウおよびマルハナバチの種数・個体数も柵内で柵外より多かった.また,ドローン空撮画像をもとに防鹿柵内外のニッコウキスゲの花数を計測し,防鹿柵による保全効果をより広域で視覚化した.本成果は,防鹿柵の設置が観光資源植物および絶滅危惧動植物を保全するうえで不可欠であることを示している.
著者
山岡 伸 小山 達也
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森保健医療福祉研究 = Aomori Journal of Health and Welfare (ISSN:24356794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.8-12, 2020-12-04

[目的] 現在,食事調査は日々の食事の栄養価などの食事摂取状況を把握するために行われている。しかしながら,食事からの栄養価の算出は第二次世界大戦以降の人々の食事を対象としている場合が多く,それ以前の時代の人々の食事はほとんど対象にされていない。したがって,古文書などの史料から,昭和初期以前の食事の栄養価の算出を試みようとした研究はほとんどない。そこで,本研究では,江戸時代における弘前藩の史料である[年中行事御祝献立並三方等御飾]に記載されている食事の描写から栄養価の算出を試み,その結果から,江戸時代の史料が食事の栄養価の算出のための新たな既存資料として利用できるか栄養価の算出方法の検討を行った。[方法] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から一部料理を抜粋し,日本食品標準成分表2015年版(七訂)を用いて,雑煮,田作り,数の子,うちまめの栄養価を算出した。[結果] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から食事の栄養価を算出することができ,雑煮のエネルギーは446kcal,田作りは81kcal,数の子は49kcal,うちまめは46kcalと推定された。[結論] 本研究で算出した各料理の栄養価は,現代の食事調査法の1つである写真法によって栄養価を算出された結果に相当すると考えられる。したがって,江戸時代などの史料からの食事の栄養価の算出は,現代の食事調査の知識を活かすことで可能となることが示唆された。
著者
小山 なつ 等 誠司
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.287-292, 2015 (Released:2016-04-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
小山 英則
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.227-230, 2010 (Released:2010-05-20)
参考文献数
5

終末糖化産物(advanced glycation end-products, AGEs)の主要な受容体であるreceptor for AGEs(RAGE)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜1回貫通型受容体で,AGEや炎症性リガンドとの結合により細胞内活性酸素上昇を初めとする種々の細胞内情報伝達経路を活性化し炎症反応を媒介する.AGE/RAGEは動脈硬化,血管新生反応,血管障害,炎症反応などを介して糖尿病性大血管障害に関与する.ヒト循環血中には可溶性RAGE(sRAGE)が存在し,これには細胞表面から切断されたものと,分泌型を含む.可溶性RAGEは細胞外ドメインを有するため,RAGEのデコイ受容体として作用する可能性が推測され,標的療法の可能性が期待されている.近年可溶性RAGE測定系が開発され,RAGE/sRAGE系の種々の病態における意義が明らかになりつつある.このようにAGE/RAGEは糖尿病性血管障害のバイオマーカー及び治療標的として大変期待されている.
著者
篠塚 真充 小林 久文 小山 晴樹 竹内 大樹 植谷 岳郎
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-076, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】夜間痛を呈する肩関節疾患の治療において夜間痛を把握し,介入の負荷量を調整することが重要となる.しかし,臨床における夜間痛の主観的な把握では治療方針の決定に苦慮することがある.近年,夜間痛を客観的に評価する指標として,前上腕回旋動脈(AHCA)収縮期血流速度(PSV)に着目されている.【目的】夜間痛を呈する腱板断裂例に対し,AHCA血流速度に着目し,夜間痛の増減に合わせて負荷量を調整することで良好な治療成績を得たため報告する.本報告はヘルシンキ宣言に基づき本人に説明と同意を得た.【対象・方法】66歳女性.AHCAのPSVは夜間痛出現時と減少時(出現時から17日後),再燃時(27日後),再減少時(41日後)の4期で超音波診断装置(US)のpulse doppler modeを用いて測定した.夜間痛の分類には,林らの分類を用い,疼痛,機能評価にはVisual Analog Scale(VAS)・DASHscoreを用いた.理学療法は夜間痛出現時に就寝時ポジショニング指導・icing指導を行い,減少時に肩関節周囲筋のリラクゼーションを実施し,再燃後,再度icingを指導した.【結果】夜間痛出現時は林らの分類でType3,VAS 1.5,PSV 28.4cm/s,DASHscore 20.5/100,減少時は林らの分類Type2,VAS 0.5,PSV 15.9cm/s,再燃時は林らの分類Type4,VAS 9.5,PSV 22.3cm/s,DASHscore 14.1/100,再減少時は林らの分類でType1,VAS 0,PSV 12.2cm/s,DASHscore 13.3/100であった.【考察】多田らは腱板断裂症例に対する夜間痛有無のAHCA PSVのCut off値は20.5cm/sと報告している.今回,USを用いることで夜間痛を客観的かつ経時的に観察し治療介入を選択した.その結果,夜間痛が減少したため適切な治療が選択できたと考えた.
著者
小山 治
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、社会科学分野の大学教育(学士課程教育)における学習経験が就職活動・初期キャリアに対してもたらす職業的レリバンス(意義・有効性)を社会調査によって実証的に明らかにすることである。本研究は、①大学4年生に対する聞きとり調査による学習経験に関する指標の抽出、②それを踏まえた大学4年生に対する就職活動に関する質問紙調査の実施、③大卒就業者に対する初期キャリアに関する質問紙調査の実施という流れで遂行された。これらの研究の結果、大学時代の学習経験の一部は就職活動結果や初期キャリアに対して正の関連がある一方で、そうした関連の程度は必ずしも高くはないという点を明らかにした。
著者
古野 真菜実 前田 香奈 今泉 修 神藤 真優 日比野 治雄 小山 慎一
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.63, 2016

人間の肌に蓮の花托(花弁・おしべ・めしべを取り去った部分) をコラージュした画像は「蓮コラ」と俗称されており,肌から多数の蓮の実が覗いている様は体験的に不快を喚起することが知られている。また蓮コラと似た斑点模様を持つ広告やプロダクトに対しても不快感を訴える者がいる。蓮コラや斑点模様が不快を喚起する要因として,嫌悪を感じやすい傾向である「嫌悪感受性」との関連が挙げられている。蓮コラと嫌悪が密接に関わっているならば,蓮コラージュ対象が人間にとって身近であればあるほど不快感が増す可能性がある。また嫌悪的な蓮をある対象にコラージュすると,嫌悪が増幅する現象が蓮コラであると考えられる。よって本研究では蓮コラによる不快現象を確認し,更にその不快感が蓮コラージュ対象の違いによるものだと推察し検討を行なった。人間と動物の蓮コラに対する不快感評定の結果, 蓮コラは蓮単体よりも不快感が強かった。しかし人間と動物の間に不快感の差は見られなかった。この結果は蓮コラージュ対象への心理的距離の近さによって部分的に説明されることが示唆された。本研究は蓮コラや斑点模様による不快の予防と軽減に繋がると考えられる。
著者
小山 信也
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.436-443, 2004-07-05 (Released:2008-04-14)

数論,ゼータ関数論と量子カオス,ランダム行列理論の関わりについて概説する.前半部では量子カオスが数論的であるという意味,そして数論におけるスペクトルの重要性とその研究の方法について概説する.後半部では量子カオスの主要テーマである量子エルゴード性を解説し,それらが数論的多様体に関して解かれてきた歴史を振り返るとともに,最近の結果を報告する.また,ランダム行列理論と数論の関わりを,その端緒から振り返り,末節では最近の結果について述べる.
著者
小山内 秀和 楠見 孝
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.50-61, 2016
被引用文献数
4

物語を読むときに読者が体験する「物語に入り込む」現象を示す概念として,近年「物語への移入」が注目されている。本研究では,Green & Brock(2000)が作成した物語への移入尺度と,さらにそれを元にAppel, Gnambs, Richter, & Green(2015)の提案した短縮版の日本語版をそれぞれ作成し,信頼性と妥当性の検討を行った。調査1(920名)および調査2(275名)の結果,日本語版移入尺度は高い信頼性を持つことが示され,並行して測定したイメージへの没頭尺度や文学反応質問紙(LRQ)との間に正の相関を示し,基準関連妥当性を有することが示唆された。しかしながら,予測された1因子モデルによって確証的因子分析を行った結果,オリジナルの移入尺度の適合度は低いものとなる一方,短縮版尺度の適合度は許容できる結果となった。二つの日本語版尺度は,因子構造についてさらに検討する余地があるものの,今後の心理学,文学研究への応用が期待できるツールと考えられる。
著者
坂本 信道 西村 慎太郎 三ツ松 誠 鈴木 喬 柏原 康人 小山 順子 中川 博夫 小林 健二 三野 行徳 有澤 知世 恋田 知子 荒木 優也 太田 尚宏
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.50, pp.1-16, 2018-01-24

●メッセージ平安時代人の散歩――国際化と辞書――●研究ノート明治27年の長塚村大字渋川の人びと――原発事故帰還困難区域の歴史資料を読む――平田国学と和歌●書評ブックレット〈書物をひらく〉2入口敦志著『漢字・カタカナ・ひらがな 表記の思想』ブックレット〈書物をひらく〉5恋田知子著『異界へいざなう女 絵巻・奈良絵本をひもとく』●トピックス「ないじぇる芸術共創ラボ NIJL Arts Initiative」について第10回日本古典文学学術賞受賞者発表第10回日本古典文学学術賞選考講評バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ収集文書群の調査と活用 ローマでのくずし字講座と講演会の開催について大学共同利用機関シンポジウム2017 「研究者に会いに行こう!――大学共同利用機関博覧会――」平成29年度「古典の日」講演会第41回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介武蔵国多摩郡連光寺村富沢家文書「諸用扣(留)」
著者
小山 光一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.49-78, 2003-06-10