著者
山下 ひろ子 小山田 玲子 奥 直子 西村 正治 石黒 信久
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.210-214, 2011 (Released:2011-10-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

当院職員を対象に,麻疹,風疹の感染防御に十分な抗体価を有していない者(麻疹PA抗体価128倍未満,風疹HI抗体価16倍未満)に麻疹,風疹ワクチン接種を行った.麻疹ワクチン接種後に128倍以上の抗体価を獲得したのは123名中92名(74.8%)で,256倍以上の抗体価を獲得したのは123名中70名(56.9%)であった.風疹ワクチン接種後に16倍以上の抗体価を獲得したのは130名中118名(90.8%)で,32倍以上の抗体価を獲得したのは130名中101名(77.7%)であった.幼児に麻疹,風疹ワクチンを接種した場合の抗体陽転率は95%以上とされているが,医療従事者に麻疹,風疹ワクチンを接種して(単に抗体陽転ではなく)感染防御に有効とされるレベルの抗体獲得を期待する場合,接種後の抗体獲得率は95%よりも低いことに留意するべきである.
著者
池田 敬子 小山 一 鈴木 幸子 辻本 和子
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アミノ酸誘導体など食品や食品由来成分のもつ微生物不活化(消毒)活性を利用したスキンケアによい新しいタイプの消毒薬の開発を念頭に食品由来成分の探索とその作用機構の解析、ならびに実際の応用に向けたウイルス伝播力の解析を行った。塩基性アミノ酸のひとつアルギニンの持つ殺菌作用(ことに緑膿菌への)や梅酢ポリフェノールなどのウイルス不活化作用を見出し、ことに呼吸器感染症起因ウイルスへの消毒作用を明らかにした。また、医療環境を汚染したウイルスの持つ伝播力を汚染後の時間との関係において定量的に解析した。
著者
小山 由
出版者
成城大学
雑誌
常民文化 = Jomin bunka (ISSN:03888908)
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-30, 2014-03

The belief that there is a relationship between personality and ABO blood type has been widely accepted among people in Japan. Many researchers have studied this belief. However, the studies have given the wrong names to and definitions of the belief because they have not focused on its inherent theory. This study aims to show the actual theory for the belief while examming limitations in the previous studies. Further, the current study intends to name and appropriately define the belief. This study identifies two misinterpretations in studies by psychologists while reviewing previous studies, and confirms that those fallacies can also be seen in the interpretation of the concept of totemism. Consequently, this study indicates that the belief about blood type is linked to Claude Levi-Strauss' totemistic classification. The totemistic classification refers to the thinking that distinguishes between the human line and the totem line and matches subjects belonging to the totem line with those belonging to the human line. Based on Claude Levi-Strauss' totemistic classification, this study shows that knowledge of blood transfusions is related to the establishment of the belief about blood type, and that the belief links the relationship between each totem of ABO blood type with the relationship between each human group perceiving people as owners of each blood type. Finally, this study defines the belief as follows: by leveraging the knowledge of blood transfusion, the belief classifies all human beings into four groups according to their respective types of blood based on ABO blood typing, and matches the relationship between each ABO blood type based on blood replacement with the relationship between each human group. This study also names the belief: the classification of people based on blood type.
著者
山本 登朗 小林 健二 小山 順子 恋田 知子 ロバート キャンベル

本冊子は、国文学研究資料館の特別展示として、二〇一七年十月十一日(水)から十二月十六日(土)まで、国文学研究資料館展示室において開催する「伊勢物語のかがやき ―鉄心斎文庫の世界―」の展示解説である。本冊子の作品解説は、国文学研究資料館の基幹研究「鉄心斎文庫伊勢物語資料の基礎的研究」(二〇一六年度〜一八年度、研究代表者・小林健二)による研究成果に基づき、その成果報告を含む。
著者
小川 一仁 川村 哲也 小山 友介 本西 泰三 森 知晴
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.47-52, 2019 (Released:2019-07-22)
参考文献数
12

スマートフォンの普及によって、児童や生徒がオンラインゲームでのさまざまな課金サービスに容易にアクセスできるようになった。本稿では近畿地方の小中高校生がオンラインゲームにおいてどの程度課金をしているかに関するアンケート調査の結果概要を報告する。かれらの課金経験率は約24%で、大学生を対象にした盛本(2018)と同程度である一方、社会人を対象にした新井(2013)よりは低かった。また、小中生では男子生徒の方が課金経験率が高い傾向にあった。
著者
小野 亨 城所 隆 小山 淳
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.55, pp.176-179, 2004-12-15 (Released:2011-08-11)
参考文献数
4

ニホンアマガエルとトウキョウダルマガエルの捕食能力について, ツマグロヨコバイを餌種として実験的に解析した. 試験容器は, 腰高シャーレと網掛けしたポット植えイネ株とした. 絶食直後の腰高シャーレにおける両種の捕食量は, 2g以下の個体では体重にほぼ比例して増加したが, 2g以上の個体では体重の割に少なく, 頭打ちとなる傾向がみられた.また, 継続する5日間の日当たり捕食量は, 体重の重いグループでは2日目以降に減少したが, 体重の軽いグループでは5日間の捕食量にほとんど変化がみられなかった. ポット植えイネ株における捕食能力は, 両種とも腰高シャーレ内の捕食数と比べて少なかったが, その程度はトウキョウダルマガエルの方が大きく, イネに上ることができないことが理由と考えられる.
著者
戸谷 裕之 堀口 淳 鯉淵 幸生 飯島 耕太郎 狩野 貴之 落合 亮 小山 徹也 飯野 佑一 森下 靖雄
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.281-284, 2003
被引用文献数
1

頚部リンパ節転移巣に扁平上皮癌成分があり, 診断に難渋した甲状腺オカルト癌の1例を経験したので報告する.患者は64歳男性で, 平成11年9月に検診で左頚部腫瘤を指摘され, 精査目的で当科外来を受診した.腫瘤は左胸鎖乳突筋外側に位置し, 3.7×3.1cm大, 弾性硬で可動性不良であり, 嚥下との共同運動はなかった.甲状腺に明らかな腫瘤を触知しなかった.甲状腺機能, CEAおよびSCCは正常範囲内であった.サイログロブリンは143ng/mlと上昇していた.頚部超音波検査では3.2×2.8cm大の不整形で内部不均一, 境界は比較的明瞭な低エコー像を認めた, 甲状腺との連続性はなく, 甲状腺内に明らかな病変は認められなかった.頚部CTでは約3cm大の不整形, 境界明瞭で, 内部不均一な腫瘤像を認めた.腫瘍の針生検で扁平上皮癌の疑いがあり, 確定診断のためincisional biopsyを施行し, 扁平上皮癌成分を伴う甲状腺乳頭癌の診断を得た.甲状腺オカルト癌の診断で, 甲状腺全摘およびリンパ節郭清を施行した.摘出した腫瘍は3.8×2.6×2.0cm大, 灰白色, 充実性で, 甲状腺との連続性はなく, 割面でも甲状腺内に明らかな病変は認められなかった.甲状腺の病理検査で右葉下極付近に0.2cm大の微小乳頭癌を認めた.
著者
小山 尚之 コヤマ ナオユキ
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 (ISSN:18800912)
巻号頁・発行日
no.4, pp.11-25, 2008-03

1930 年にアンドレ・ブルトンとジョルジュ・バタイユの間に激しい論争があったことはよく知られている。それは、ヘーゲルの弁証法を土台にしたシュルレアリストたちの採択するマテリアリスムに対して、バタイユが、みずからの低・マテリアリスムの立場から、それはイデアリスムの一形態にすぎない、と批判したことから始まった。これに対しブルトンは、バタイユは精神的に病んでいると応じたが、これによって彼にはシュルレアリスムの法王というイメージが貼られてしまった。ブルトンとバタイユはその後和解し、ファシズムに抗してわずかの間だが共に闘った。だが、彼らの死後、テル・ケル派の首領フィリップ・ソレルスが、1960 年代末に、ブルトンとバタイユのあいだにあった敵対関係を再燃させた。ソレルスの判断ではその当時、ブルトンに比べてバタイユは閑却され、孤立し、検閲の対象となっていた。そのような状況を打破するためにソレルスはブルトンを批判し、バタイユを顕揚した。しかしソレルスはブルトン批判をその30 年後に撤回し、修正する。ブルトンとバタイユのあいだには対立や矛盾があるというより、ともに並べて思考すべきなにか共通のものがある、と訂正した。実際、ブルトンとバタイユはある共通の倫理的パトスを分かち合っていたと思われる。その倫理的パトスは、全般的転覆と自由への賭けというものに根をおろしており、シュルレアリスム運動全体に伏流している。バタイユはシュルレアリストではなかったが、シュルレアリスムの傍らにあってこのようなパトスを受け留め、それをラディカルに深化させたのである。It is well known that in 1930, Andr? Breton and Georges Bataille were emroiled in a vehement controversy triggered by Bataille's criticism, from the standpoint of low materialism, of dialectic materialism of Surrealism based on the theory of Hegel. In his criticism, Bataille regarded the materialistic vision of surrealists as a kind of idealism. In response to this criticism, Breton diagnosed that Bataille suffered from a mental abnormality. Despite this, the two men were to struggle together against Fascism five years later. After the second World War, they became reconciled to each other, admitting that their disputes in the past were rather excessive. However, at the end of 1960's, Philippe Sollers, head of the group Tel Quel, revisited the old quarrel between Breton and Bataille, and concluded that Bataille had been, in comparison with Breton at that time, isolated and neglected and that it was the works of Bataille that were more important. Then, thirty years later, Sollers withdrew his criticism and corrected his attacks on Breton, maintaining that there was no contradiction between Breton and Bataille, and that it is better to treat them together than to separate them. Indeed, Breton and Bataille seemed to share a common ethical pathos, founded on the total subversion and the bet for liberty. It is this pathos, which runs right through Surrealism and that Bataille inherited from the surrealist movement and radicalized in his own manner.
著者
小山 順二 都筑 基博 蓬田 清 吉澤 和範
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.129-146, 2013-03-19

2011 年3 月11 日マグニチュード9.0 の超巨大地震が東北地方太平洋沿岸をおそった.この地震は過去千年以上にわたる日本付近で発生したどの地震よりも大きな津波を励起し,地震動災害ばかりではなく歴史に残る甚大な津波災害を発生させた.従来,このような超巨大地震が日本付近で発生することは,地震学的に想定されてこなかった.我々は,この超巨大地震の発生を考えるうえで,今まで見過ごされてきた超巨大地震の発生場には二つの異なった特徴があることに気が付いた.それはAlong-dip Double Segmentation(ADDS)とAlong-strike Single Segmentation(ASSS)という異なった地震活動である.我々はこの考えに基づき,世界中で発生した超巨大地震を調べなおし,超巨大地震の発生場を,地震活動の特徴(ADDS/ASSS),地震メカニズム,破壊様式,沈み込み帯の形状,上盤プレートの性質や背弧海盆の活動といった性質から,明らかにする.
著者
古戎 道典 小山 則行 西田 舞香 村本 賢三
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.156, no.2, pp.114-119, 2021 (Released:2021-03-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

近年,不眠症治療薬として,従来のベンゾジアゼピン系薬剤に加え,オレキシン受容体拮抗薬が上市しており,不眠症の薬物治療は大きく変革しつつある.オレキシンは視床下部外側野で産生される神経ペプチドであり,睡眠・覚醒状態を制御するキーメディエーターとしての生理的役割が示唆されている.オレキシン受容体拮抗薬は,オレキシンシグナルを介して睡眠覚醒サイクルに特異的に作用し,生理的な睡眠を誘導すると考えられている.レンボレキサントは2つのオレキシン受容体,オレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)の両方に作用するデュアルアンタゴニストであり,OX2Rに対してより強い阻害作用を有する.オレキシン受容体に素早く結合・解離することから,レンボレキサントの薬理作用には血中濃度の薬物動態が強く反映されると考えられる.ラットモデルでは,レンボレキサントがレム睡眠とノンレム睡眠を同様に促進し,睡眠構造を変化させずに睡眠誘導効果を示すことが確認された.不眠症患者を対象とした第Ⅲ相試験では,レンボレキサントが入眠障害および中途覚醒を有意に改善した.本薬による副作用としては傾眠の頻度が最も高く,用量依存的な発現が認められたものの,忍容性は概ね良好であった.また,翌朝の覚醒後(投与8~9時間後)の体のふらつきや運転技能に対する影響はプラセボ群と統計学的に差がなく,翌朝への持ち越しリスクが低いことが示唆された.レンボレキサントは,併存疾患を伴う不眠症患者でも有効性や安全性に大きな違いは認められず,こうした患者に対しても有用であることが示唆される.以上の結果を受け,レンボレキサントは2020年1月に不眠症の適応で承認を取得した.不眠症患者に対する新たな治療の選択肢として期待される.
著者
西島 功 小畑 慎也 小山 淳 土田 真史 友利 隆一郎 猪谷 克彦 池村 綾 宮城 和史 比嘉 信喜 伊波 潔
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.534-538, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
20

目的:迅速対応システム(Rapid response system:RRS)を導入する施設が増えているが,その起動が困難で,また本邦でのエビデンスが希薄である。修正早期警戒スコア(Modified early warning score:MEWS)は,患者急変を予知できるツールであり,RRS起動基準として有用ではないかと考えた。方法:2012 年10 月,MEWS が高値となり急変する可能性の高いWZ(Warning Zone)に入った患者に対して,主治医・ICU 看護師が迅速に対応する,MEWS-RRSを導入した。研究1としてMEWSの点数別院内心停止(in-hospital cardiac arrest:IHCA)率を比較,研究2としてMEWS-RRSの起動件数を評価し,研究3としてMEWS-RRS はIHCAを減少させるか検討した。結果:<研究1>MEWS の点数別IHCA 率は,6点0.18%,7点1.40%,8点1.75%,9点以上3.57%で,6点に比べ7点・8点・9点以上では有意にIHCA 率が高かった(p<0.05)。<研究2>新入院1,000人当たりのMEWS-RRS の起動件数は,WZをMEWS 6点以上とした第1 期では99.8 件,WZをMEWS 7点以上とした第2 期では46.6件と有意に減少するも(p<0.01),IHCA 率は1.50 vs 2.30と有意差はなかった。<研究3>MEWS-RRS 導入前の第0 期と,第1 期・第2期において,新入院1,000人当たりの月別IHCA率を比較すると,5.21 ± 3.47 vs 1.50 ± 1.07 vs 2.30 ± 1.43とMEWS-RRS導入後有意に低下した(p<0.01)。考察・結論:WZをMEWS 7点以上としたMEWS-RRSは,適正なRRS起動件数が得られ,IHCAの減少に寄与する有用なシステムである。
著者
小山 拓志 青山 雅史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

2016年4月14日に熊本県熊本地方において,M6.5の地震が発生し,熊本県益城町で最大震度7を観測した。そして,2日後の4月16日01時25分頃には,同地域を震央とするM 7.3の地震が発生し,熊本県上益城郡益城町と西原村において最大震度7を再度観測した。この一連の地震によって,熊本市内を西流する白川や緑川,加瀬川周辺を中心に液状化現象(以下,液状化)が発生した。本発表では,地理学の立場から,本地震における液状化被害の分布を示すと共に,液状化発生地点の土地条件について報告する。
著者
小島 邦生 唐澤 達史 上月 豊隆 黒岩 英則 柚木崎 創 岩石 智志 石川 達矢 小山 遼 野田 晋太朗 植田 亮平 菅井 文仁 野沢 峻一 垣内 洋平 岡田 慧 稲葉 雅幸
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.458-467, 2016 (Released:2016-10-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

This paper presents the development of high-speed and high-power humanoid robot research platform JAXON. Researchers have studied humanoid robots widely and people expect humanoid robots to help various tasks such as housework, entertainment, and disaster-relief. Therefore it is important to develop humanoid research platform available in various fields. We considered the following as design requirements necessary to utilize humanoids for various uses. 1) Robots have humanlike body proportion to work in infrastructure matched to human body structure. 2) Robots have the same degree of physical performance as humans. 3) Robots have energy sources such as batteries and act without tethers. 4) Robots walk with two legs or four limbs and continue to work without fatal damage in unexpected rollover. JAXON satisfied these requirements. Then we demonstrates the performance of JAXON through the experiment of getting out of a vehicle, stepping over walls, squatting with heavy barbels, walking with four limbs, and operating on batteries. Further more, we assesses the performance of the strong armor and the shock absorbing structure through a backward over-turning accident.
著者
山本 秀和 小山 浩
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.662-672, 1997-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
103
被引用文献数
7

大規模集積回路(LSI)は,シリコン単結晶基板(ウエハー)を用いて製造ざれる.これまで,デバイス特性向上の要求に対し,ウエハーの品質は充分なマージンを持ち,大きな問題は起こさなかった.しかし,近年その状況が大きく変化してきている.シリコンウエハーの製造プロセスは,結晶引ぎ上げとウエハー加工に大別されるが,両者に起因したデバイス不良が発生し始めた.そこで,これらの不良をともに改善できるエピタキシャル成長ウエハーが注目されている.ざらに,マルチメディア時代の半導体デバイスを開発する上で,一つのプレークスルーをもたらす薄膜SOIウエハーも本格的に検討され始めた.ここでは,これらデバイス不良の現状を解説し,次にその解決策としてのウエハー仕様の変更と次世代ウエハーの展望について述べる.