著者
小山 真人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1707年富士山宝永噴火の火口は、これまで富士山南東斜面にある火口列(宝永第1〜第3火口)とされ、その脇にある宝永山は宝永噴火中のマグマの突き上げによって古い地層(古富士火山の一部)が隆起したものと解釈されていた(宮地・小山, 2007,「富士火山」;Miyaji et al., 2011, JVGRなど)。しかしながら、最近の台風通過による露頭状況の改善後に現地の地形・地質を見直した結果、従来の考え方と異なる結論に達したので報告する。宝永山付近の地質と赤岩の成因宝永山の山頂近くの赤岩に露出する凝灰角礫岩(ATB)は、1)黄褐色をして変質・固結が進んでいること、2)山体の傾斜とは不調和な南西方向に傾斜し、周囲の地層と不整合関係に見えること、3)宝永山の膨らみが宝永第2火口底を変形させたように見えること、4)周囲には見られない複数の断層が観察されることから、古富士火山時代の古い地層が宝永噴火の際に隆起して地表に露出したものと考えられてきた。しかしながら、地質調査ならびにドローンを用いた近接撮影画像とそれらのSfM(Structure from Motion)解析の結果、ATBは未固結・新鮮な降下スコリア(宝永スコリア:図のHSc)と指交関係にあり、従来考えられていた不整合は見当たらない。また、ATBは、着地時の高温で周囲を焼いた新鮮な火山弾・火山礫を含む。これらの観察事実から、ATBは宝永噴火堆積物の一部と考えられる。黄褐色の変質部分は、おそらく噴火時かその直後の熱水変質によるものであろう。また、第2火口底の「変形」は、HScが風下の東側に厚く堆積したことと、堆積後の斜面移動の影響と考えて矛盾はない。なお、赤岩表面の断層群には南東傾斜と北西傾斜の2系統(走向はともに尾根の伸びに沿う北東―南西)があって共役断層の疑いがあり、隆起の可能性は残される。HScの下位には、細粒基質をもつ凝灰角礫岩(宝永噴火堆積物の一般的特徴であるハンレイ岩礫を多く含む)が宝永山の東側斜面を取り巻くように広く露出しており、第1火口によって形成された火砕丘(HCC)と考えられる。宝永噴火の給源火口と推移 宝永噴火を起こした火口は、従来の考えでは宝永山の南西に隣接して北西―南東方位に並ぶ火口列(宝永第1、第2、第3火口)であり、噴火初期の軽石(宝永軽石)の給源が第2・第3火口、以後のスコリアの給源が主に第1火口と考えられてきた(宮地, 1984, 第四紀研究)。しかしながら、実際には第1〜第3のいずれの火口の周囲にも軽石が見当たらず(第1火口の東側地表に変質した軽石がまれに見つかるが、転石状で層位不明)、宝永軽石の給源火口は不明と言わざるを得ない。 一方、第3火口の東側にU字形をした火砕丘とみられる地形があり(ここでは御殿庭東火砕丘GHCと呼ぶ)、その表面ならびに断面には灰色で雑多な岩質の巨礫を多数含む角礫岩(基質は均質で新鮮な黒色岩片)が露出する。その特徴は、宝永第2・第3火口周囲の火砕丘HCCと類似し、噴火堆積物と考えられる。GHCのU字形の北西延長上には宝永山がある。 以上のことと前節で述べた宝永山付近の観察事実に加え、宝永噴火の古記録と絵図(小山, 2009,古今書院)、宝永軽石と宝永スコリアの等層厚線図(宮地, 1984)、宝永噴火のメカニズムに関する岩石学的解釈(藤井, 2007,「富士火山」;Miyaji et al., 2011)も考慮に入れて、宝永噴火の推移を次のように見直した(1〜5が従来の考え方と大きく異なる)。1.宝永噴火は、現在の宝永山から南東に伸びる割れ目(第1噴火割れ目)の噴火として始まり、最初に宝永軽石を噴出した後、割れ目火口の南東端に火砕丘GHCを形成した。2.宝永軽石(流紋岩質マグマ)の噴火を誘発した玄武岩質マグマが、軽石に引き続いて上昇し、若干南西側にずれた場所に新たに北西―南東方位の割れ目火口(第2噴火割れ目)を開いた。3.第2噴火割れ目上に並んだ宝永第1〜第3火口から爆発的な噴火が起き(火口が開いた順序は、地形から判断して南東→北西)、火口の周囲に火砕丘HCCを形成した。4.宝永スコリアが主として第1火口から噴出し、すでにあった火砕丘(GHCとHCC)の一部を厚くおおった(図のHSc)。この際に赤岩のATBも堆積した。5.主として3〜4の結果として、噴火初期にできた宝永軽石の給源火口が埋没し、宝永山が形成された。なお、宝永軽石の元となった流紋岩質マグマの一部が宝永山を若干隆起させた可能性が残る。6.噴火の最終段階に至り、第1火口底にスパター丘HSpが形成され、最後の爆発でその山頂に小火口が開いた。

8 0 0 0 OA 印篆貫珠 12巻

著者
小山政紀
出版者
巻号頁・発行日
vol.[12],
著者
上田紋佳 猪原敬介 塩谷京子# 平山祐一郎 小山内秀和 足立幸子# 服部環
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第58回総会
巻号頁・発行日
2016-09-22

企画趣旨 「現在の世代は読書をしているか」。このことについては,教育関係者のみならず,社会全体から強い関心が寄せられてきた。例えば,2012年のPISA調査では,「趣味としての読書をどのくらいしますか。」の項目に対して,「趣味で読書をすることはない」と回答した割合が日本は約44%であり,17か国中の2番目に高いという結果が報告されている(国立教育政策研究所,2010)。一方で,全国学校図書館協議会による児童生徒の読書状況についての調査では,小学生・中学生の読書量は増加傾向,不読率も減少傾向が報告されている(毎日新聞社, 2016)。これら読書についての実態調査から,私たちは「今の若者は本を読まない」「いや,不読率は下がってきている」などと議論するが,その内容は実態調査の結果の解釈に終始してしまい,現場における「読書と教育」の在り方に影響を及ぼすことは少なかったように思われる。実態調査から一歩踏み込み,現場のニーズに答える心理学的研究が,ぜひとも必要である。 そこで本シンポジウムでは,日本における読書研究の増加と質的発展を促すための視点を模索したい。具体的には,読書量の測定方法やその精度の問題,また読書の効果に関するプロセス,読書や読書教育の環境などの観点から掘り下げていく。話題提供の先生方には,学校教育における子どもの読書に関する現状を,実態把握調査や個々の研究データをもとに明らかにし,克服すべき課題を示していただく。指定討論では,足立幸子氏からは国語科教育・読書指導の観点から,服部環氏から教育心理測定の観点からコメントをいただき,建設的な議論のきっかけとしたい。本シンポジウムを通じて,研究者および現場の教員・司書などの教育関係者の間の議論が活発となり,学校教育における読書の在り方について考察を深めたい。話題提供国語科に位置付けられた読書活動の現状-文部科学省の調査から-塩谷京子(関西大学) 現行の小中高等学校の学習指導要領において,国語科は,「A話すこと・聞くこと」,「B書くこと」,「C読むこと」及び〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の3領域1事項から内容が構成されている。読書は,このうちの 「C読むこと」に位置付けられている。 「C読むこと」の指導では,読む能力を育成するとともに,読書の幅を広げ,読書の習慣を養うことへの配慮の記述がある。例えば平成21年に告示された高等学校学習指導要領の解説国語編では,国語科改訂の要点の一つに「読書活動の充実」があげられている。学校図書館や地域の図書館などと連携し,読書の幅を広げ,読書の習慣を養うなど生涯にわたって読書に親しむ態度を育成することや,情報を使いこなす能力を育成することを重視して改善が図られた。 このように,読書は学校教育において児童生徒に身につけさせる態度や能力の側面から,国語科という教科の中で系統的に扱われている指導事項の一つである。 しかしながら,我が国で50年以上続いている読書に関する調査では,1ヶ月に1冊も本を読んでいない不読者の割合が問題になってきた。小中学校においては,朝読書が取り入れられてきた時期から不読者は徐々に減少傾向にあるものの,高等学校においては,その割合がおよそ50%に及び,長い間大きな変化はない。 読書が学校教育に位置付けられているにも関わらず,不読者があるという現状について,多方面から調査・分析が行われたり,対策が提案されたりしている。 本発表では,毎年実施されている全国学力調査と読書の関係や2016年度に行われた高校生への読書に関する意識調査結果をもとに,学校現場の現状を紹介しながら,今後どのような研究が必要とされているのかを提案し,読書教育推進に貢献したいと考えている。話題提供「読書量」という指標をどう扱うか-大学生の読書状況調査から考えたこと-平山祐一郎(東京家政大学) 大学生が学習を行う上で,不可欠なスキルのひとつとして,「読書」を位置づけることができる。そこで,大学生がどれだけ読書をしているのかを把握しようと試みたところ,読書離れが大きく進行している事実が見出された。しかしながら,読書離れを裏付けるための「読書量」という指標そのものが,多くの検討の余地を残していることが判明した。多くの読書調査では,月当たり,週当たり,一日当たりと時間を区切って,読書時間や読書日数,読書冊数を尋ねている。しかし,あくまでも自己申告(内省報告)であるので,社会的望ましさの影響も含めて,誤差の大きい回答になっていると思われる。そのため,読書に関する行動や読書時間帯,読書動機などの変数と関連付けると,解釈がかなり困難になることが多い。 読者に読書記録をつけてもらい(日誌法),読書量を推定する方法は,読書内容も含めて検討できるため,読書量に関して精度の高い推定ができることが予想されるが,そのコストはかなり大きくなるだろう。「読書量」そのものを検討するならば,そのコストは甘受しなければならないが,多くの調査や研究は「読書量」を利用した研究となっているため,「読書量」把握だけに力を注ぐことはできない。 では,ある程度の誤差を含み込んだ「読書量指標」をどのように扱えばよいのだろうか。また,「ほんの一工夫」することにより,少しでも読書量把握の精度を上げることができるか否かを考えてみる。話題提供データに基づいた知見の必要性-読書が言語力に及ぼす影響についての研究から-猪原敬介(電気通信大学・日本学術振興会) 「読書は児童の言語力を伸ばす」ことは,我が国における多くの教育実践者によって直観的,体験的に信じられている。心理学における科学的方法論に基づいた研究もこのことを概ね支持していることから,結果として,上記の主張と科学的エビデンスとは矛盾していない。しかし,矛盾がなければそれで良いだろうか。 本話題提供では,科学的エビデンスに基づかない「読書は児童の言語力を伸ばす」という主張の限界について議論し,データに基づく読書研究の必要性について考えてみたい。 具体的には,直観的・体験的な信念は,現象の過度な単純化を産み出し,効果的な読書教育につながらないのではないかと問題提起する。例えば,「読書は児童の言語力を伸ばす」というだけの単純なモデル(ある人の頭の中にある読書についての捉え方)では,児童の個人差(言語力や好み)や,その個人差が生み出す読書活動の変化 (読む本の難易度やジャンル)を考慮しないため,「どの児童にどの本を読ませても効果は同じだから,児童がどんな本を読んでいるかには注意を払わない」というような読書教育上の単純化を生み出し,読書教育の効果を小さくしてしまう。 一方で,過度なモデルの複雑化は,そのモデルの利用価値を下げてしまうことも事実である。本話題提供では,研究の背後に「適度な複雑さで,有用なモデル」を仮定する海外の研究について紹介し,まだまだ研究そのものが少ない我が国での研究の指針として提案したい。また,国内の研究事例として,話題提供者らが行った研究についても紹介し,我が国における優れた読書研究の推進に寄与したい。話題提供読書は社会性の向上に寄与するか?-物語読書量とマインドリーディングとの関連の検討-小山内秀和(浜松学院大学) 子どもの読書が推奨される根拠として,言語能力の向上とともに取り上げられることの多いのが,「読書は思いやりといった社会性の発達を促す効果を持つ」という主張である。巷間,そして教育現場などで,こうした指摘を聞くことは多い。しかしながら,読書と社会性との関連について実証データに基づいた議論がされることはあまり多くなく,実践現場の実感として語られることが多いという印象がある。 従来,読書と社会性との関連については,子どもや成人を対象に読書の活動調査を行うなかで,思いやりや積極性などとの関連を見るというかたちで検討されてきた。しかしながら近年,1) 読書のなかでも物語の読書に焦点を当て,2) 社会性のなかでも「他者の心的状態の理解」への効果に注目した研究が行われ,より実証的なデータが報告されるようになっている。こうした研究が可能となったのは,読書活動と社会性のそれぞれを客観的に測定する手法が少しずつ洗練されてきていることが大きい。読書活動についていえばさまざまな読書量推定指標が,社会性については他者の心的状態を推測する能力の個人間差を測定できる課題が,大きく貢献しているといってよいだろう。 本発表では,物語の読書と他者の心的状態を理解する能力である「マインドリーディング」との関連を扱った研究について,海外の研究成果を紹介しつつ,発表者が大学生と小学生を対象に行った研究についても報告する。それによって,読書の効果という教育上きわめて重要なテーマに対して,基礎研究がどのように貢献できるのかを考える一助としたい。引用文献国立教育政策研究所(2010).生きるための知識と技能4−OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2009年調査国際結果報告書 明石書店毎日新聞社(2016).読書世論調査 毎日新聞社
著者
伊藤 研一 大場 崇旦 家里 明日美 岡田 敏宏 花村 徹 渡邉 隆之 伊藤 勅子 小山 洋 金井 敏晴 前野 一真 望月 靖弘
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.168-174, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
55

甲状腺未分化癌は発生頻度の少ないorphan diseaseであるが,甲状腺癌死に占める割合は高くその予後は極めて不良である。甲状腺未分化癌のほとんどは,分化癌から脱分化のステップを経て発症してくると考えられているが,未分化転化の機序も解明されていない。現在のTNM分類では,原発巣の状況と遠隔転移の有無でⅣA,ⅣBとⅣCに分類されているが,多くは診断時ⅣB以上である。本邦と海外で共通に報告されている予後因子としては,診断時の年齢,原発巣の広がり,遠隔転移の有無がある。本邦で設立された甲状腺未分化癌研究コンソーシアムでの世界に類をみない多数例の解析では,急性増悪症状,5cmを越える腫瘍径,遠隔転移あり,白血球10,000mm2以上,T4b,70歳以上が有意な予後不良因子であった。今後,新規治療戦略の開発とともに,未分化癌においても治療戦略に有用なバイオマーカーが同定されることが期待される。
著者
小山 照幸
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.33-45, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
12

目的:リハビリテーション治療は近年,急速に普及が進んできているが,令和元年末から流行し始めた新型コロナウイルス感染症への対応により,通常の診療に影響が出ている。今回,保険診療の面からリハビリテーション治療のこれまでの経過と現状を調査した。調査方法:厚生労働省が公表している社会医療診療行為別統計の平成27年から令和2年までの「心大血管疾患リハビリテーション料,脳血管疾患等リハビリテーション料,廃用症候群リハビリテーション料,運動器リハビリテーション料,呼吸器リハビリテーション料,がん患者リハビリテーション料と回復期リハビリテーション病棟入院料」の算定回数,点数の年次変化を調べた。また各疾患別リハビリテーション料算定回数の年齢階級別年次変化,令和元年と2年の入院外・入院別年齢階級別年次変化を検討した。結果:リハビリテーション料算定回数は平成30年まで増加していたが,令和元年から減少していた。算定点数は令和2年まで増加していた。令和2年の心大血管疾患リハビリテーション料算定回数は17.7%,運動器リハビリテーション料は8.1%,廃用症候群リハビリテーション料は4.9%それぞれ前年に比べ減少していた。結論:リハビリテーション治療は,平成30年までは普及が進んでいたが,その後令和2年に著しく減少しており,これは新型コロナウイルス感染症の流行が影響していると考えられた。
著者
小山 貴士 赤坂 竜一 大野 勘太 友利 幸之介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.435-445, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
56

認知症患者および軽度認知機能障害患者を対象としたリハビリテーションにおける目標設定に関する既存の知見を,スコーピングレビューを使用して分析した.PubMed,MEDLINE,ProQuest,CINAHL,Web of Science,Scopusから得られた33編の適格論文を精読した結果,意思決定支援ツールや介入パッケージ・理論を適応させる研究や,介護者の関与を促進させる研究が抽出された.しかし,重度認知症患者を対象とした報告は限定的であり,今後は重度認知症患者に対する目標設定のさらなる検証や,認知症特有の意思決定支援ツールの開発の必要性が示唆された.
著者
山本 徳栄 近 真理奈 伊佐 拓也 根岸 努 森 芳紀 前野 直弘 小山 雅也 森嶋 康之
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.493-499, 2017-09-25 (Released:2017-09-30)
参考文献数
17

2008年1月から2016年11月の期間中,埼玉県動物指導センターに収容されたイヌとネコから直腸便を採取し,腸管寄生虫類の検索を行った。イヌは1,290頭中296頭(23.0%)が寄生虫類陽性で,検出種とその陽性率はイヌ鞭虫(15.0%),イヌ鉤虫(6.4%),イヌ回虫(2.1%),イヌ小回虫(0.2%),マンソン裂頭条虫(2.0%),瓜実条虫(0.2%),日本海裂頭条虫(0.1%),縮小条虫(0.1%),Isospora ohioensis(1.3%),ランブル鞭毛虫(0.5%),Cryptosporidium canis(0.5%),腸トリコモナス(0.2%)およびIsospora canis(0.1%)であった。ネコは422頭中216頭(51.2%)が寄生虫類陽性で,検出種とその陽性率はネコ鉤虫(25.1%),ネコ回虫(17.8%),毛細線虫類(1.7%),マンソン裂頭条虫(18.2%),瓜実条虫(1.9%),テニア科条虫(0.5%),壺形吸虫(6.9%),Isospora felis(5.2%),Isospora rivolta(1.4%),Cryptosporidium felis(0.7%)およびToxoplasma gondii(0.2%)であった。また,2000年4月から2015年10月の期間中,同施設に収容されたネコから採血し,T. gondiiに対する血清抗体価を測定した。ネコにおけるトキソプラズマ血清抗体は,1,435頭中75頭(5.2%)が陽性であった。
著者
村越 真 満下 健太 小山 真人
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.1-16, 2020-12-31 (Released:2022-04-19)
参考文献数
51

This study examined whether students can recognize the risk of natural hazards using topographic or hazard maps, and whether recognition accuracy improves by learning about the relationships between topographic features and hazards from the viewpoint of map literacy. An experiment was conducted with 37 student participants and 3 natural hazard experts. Risk evaluation of sediment-related hazards for 6 sites and floods for 5 sites was required with 7-point scale, both with topographic maps and with hazard maps. The selected sites were either high risk with the risks displayed, high risk without the risks displayed, or low risk, and the participants were randomly assigned either to the experimental group or the control group. The experimental group participants learned about the relationships between topographic features and the risk of natural hazards for 10 minutes, and the control group participants learned about the risk of natural hazards without mention of the relationships. Risk evaluations for the 11 sites were required twice, before and after the learning sessions. As a result, participants were able to evaluate the risk of natural hazards to some extent even with topographic maps, but there were also some sites where they could recognize risks first by using hazard maps. Evaluated risks for many sites declined when the hazard risk was higher but not displayed on the hazard maps, while the experts maintained risk evaluations for such sites. Free descriptions explaining the evaluations revealed that the experimental group acquired knowledge of the relationships between topographic features and risk of natural hazards from the learning sessions, but it did not appear to affect their evaluations of risk. Based on the results, it was argued that autonomous judgments of the risk of natural hazards required knowledge of the relationships between topographic features and risky area of natural hazards as well as the reasons for the relationships and topographic features that should be paid attention to. Theoretical and practical implications for map literacy were also discussed.
著者
竹林 正樹 小山 達也 千葉 綾乃 吉池 信男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.240-247, 2022-08-31 (Released:2022-09-07)
参考文献数
20

目的:大学生を対象にした健康教育関連シンポジウムの案内チラシにおけるナッジ別の参加意欲の検証.方法:保健系大学生917人を無作為に3群に振り分け,健康教育関連シンポジウムの異なる3種類のチラシをメールで送信し,参加意欲を調査した.対照群のチラシは従来型のチラシをもとに詳細な情報を記載し,簡素化ナッジ群は文字数を73%削減した.EASTナッジ群はナッジの枠組みEAST(簡素化,印象的,社会的,タイムリー)に沿って,4コマ漫画や主催者の似顔絵等を記載した.結果:対照群70人,簡素化ナッジ群67人,EASTナッジ群71人(有効回答率29.1%)を解析対象とした.「参加したいが日程が合わない」「参加する」と回答した者は,対照群,簡素化ナッジ群,EASTナッジ群の順に,30.0%,40.3%,47.9%で,対照群よりEASTナッジ群が有意に高かった.チラシの感想では,対照群は「読みやすい」「すぐに読みたくなった」で他の2群より有意に低く,「不快に感じる」は簡素化ナッジ群より有意に高かった.結論:既存型のチラシは情報量の多さが参加意欲の阻害要因であり,「阻害要因の除去としての簡素化ナッジ」と「促進要因としてのタイムリーナッジ」を設計することで意欲が向上することが示唆された.本研究は実際の参加者数をアウトカムにしなかったこと等の限界があり,さらなる検証が求められる.
著者
小山 真人
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.323-347, 1998
参考文献数
74
被引用文献数
9

All available historical documents, which reeord abnormal phenomena relating (or possibly relating) to the activity of Fuji Volcano, Japan, were re-examined and classified aceording to the reliability of each document. Comparisons of the reliable descriptions with geologic evidence were executed and several new correlations between historical records and eruptive deposits are proposed. Volcanic activity of Fuji Volcano was in high-level from the 9th to I Ith century; in this period at least 7 reliable and 5 possible eruptions occurred. Although only 2 reliable and 1 possible eruption records exist from the 12th to the early 17th century, this low-level activity may be apparent because of lack of enough historical records. After the middle 17th century, enough historical records suggest that the activity is generally low except for the 1707 eruption, which is one of the most voluminous and explosive eruptions in the history of Fuji Volcano. At least thirteen large earthquakes (M 8 and possible M 8 class) have occurred near Fuji Volcano (in east Nankai and Sagami Troughs) since the 9th century. Eleven of these 13 earthquakes were accompanied with volcanic events (eruption, rumbling, or change in geothermal activity) of Fuji Volcano before and/or after each earthquake (in ±25 years).
著者
福永 篤志 小山 英樹 布施 孝久 原口 安佐美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.127-133, 2021-03-31 (Released:2021-04-23)
参考文献数
16

脳梗塞の発症メカニズムは明らかでなく予防法も確立されていない.今回,rt-PA療法が施行された比較的重症な脳梗塞初発例を対象に脳塞栓(A群)と脳血栓(B群)に分類し,発症時刻と月,当日の気圧配置パターンを調査し,両群の発症の違いを統計学的に分析した.平均気温が最も高かった7~9月は,B群が有意に多かった(p=0.0248,フィッシャーの直接確率法.以下同じ).時間帯は,午前6~7時はB群が有意に多く(p=0.0357),午後2~7時と午後11~午前5時はA群が有意に多かった(p=0.007,p=0.0467).気圧配置パターンは,その他高気圧型(移動性高気圧型,帯状高気圧型のどちらにも分類できない高気圧型)がB群に有意に多かった(p=0.0166).脳梗塞の主な原因は動脈硬化と不整脈であるが,気象変化や生活リズムなどの体外環境の影響で脱水状態等となり突然血栓・塞栓が形成されてしまう可能性がある.脱水予防のため適時適度な飲水補給等の指導が必要だろう.予防法の確立に向け,さらなる調査に期待される.
著者
小山 謙二 河野 泰人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.2338-2346, 1994-11-15
被引用文献数
8

知性と感性がオーバラップした感性情報の評価モデルとして、精緻な論理性を有する詰将棋問題をとり上げる。日本将棋連盟主催の問題創作コンテストの作品(70問題)に対し、問題の好感度に及ぼす予想要因(詰め手順や図式の特徴)を計測し、得点(好感度の集計値)との相関を分析した。さらに、従来作品(12000問題)との差も定量的に解析した。その結果、問題の新鮮さや問題を解く難しさが好感を持たれ、特に詰め上がり図における玉の開放度の大きさ(解放感)が最も好感度に影響していることが分かった。