著者
中村 晋 山口 道也 本間 誠一 中沢 次夫 小林 敏男 小林 節雄 牧野 荘平 寺嶋 周 船橋 茂 久保 政次 水谷 明 鳥居 新平 上田 雅乃 稲垣 義彰 金井 朗 森 啓太郎 野添 新一 佐々田 健四郎 安江 隆 馬場 実 向山 徳子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.191-196,200, 1975-03-30 (Released:2017-02-10)

1970年著者の1人中村は, そば屋の調理師にみられた職業性そばアレルギー症の1例をわが国最初で貴重な興味深い症例として報告した.そして前報のごとくアンケートによるそばアレルギー症の全国調査に際し本症の追加9例の存在が確認された.今回協同研究者の協力の下にこれらの症例に関する詳細な再調査を実施したので, その結果を纒めて(先に報告した第1例を含めて)報告し若干の検討を加えた.1)職業性そばアレルギー症をみる職種として, そば屋の調理師と店員, そば製麺業者, そば粉販売業者および特に仕事場と同じ棟に住む家族が挙げられる.2)病歴およびアレルギー学的諸検査成績より, 職業性そばアレルギー症はCoombs and GellのI型(即時型)アレルギーのmodelと考えられる.そして過敏症状は抗原物質が体内に経口的に入る時も経気道的に入る時も発症するという一般のそばアレルギー症と同様の特徴を有する.3)著者らはそば粉取扱業者への指導方針の若干の試案をアレルギー学的見地より提唱した.
著者
澤田 隆介 岩田 通夫 梅崎 雅人 臼井 義比古 小林 敏一 窪野 孝貴 林 周作 門脇 真 山西 芳裕
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2B01, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
2

漢方薬(漢方方剤と呼ばれる葛根湯など)による医療は日本の独創的かつ伝統的な治療体系である。その有用性は、欧米でも注目されている。本研究では、富山大学和漢医薬学総合研究所が長年に渡り蓄積してきた莫大な漢方医薬情報を、統合的に解析するための情報技術を開発し、漢方薬の作用機序の科学的考察や、漢方薬の新規効能予測を行うアルゴリズムやデータベースを開発した。漢方薬、その構成生薬及び成分化合物と標的タンパク質の階層的関係から、漢方薬が生体に薬理学的効果を及ぼすメカニズムの考察を可能にするだけでなく、in silico結合シミュレーションや機械学習の手法を用いて、漢方関連ビッグデータを解析することにより、漢方薬の新しい適応可能疾患の予測(漢方薬リポジショニング)も可能にした。本研究で構築したデータベース「KampoDB」は、web上で公開している(http://wakanmoview.inm.u-toyama.ac.jp/kampo/)。
著者
田中 美智子 長坂 猛 矢野 智子 小林 敏生 榊原 吉一
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.4_59-4_65, 2008-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
18

健康成人女性11名を対象とし,腹式呼吸を行っている間に,循環反応や自律神経系がどのような反応をするのかに加え,ストレス時に見られるホルモンの分泌が抑制されるか,また,覚醒感に関与しているセロトニンの分泌は促進するのかという点を検討する目的で行った。腹式呼吸時の循環反応は通常の呼吸と同様の経過を辿った。実際の心拍数は経過とともに減少し,血圧の上昇を示したが,有意な変化ではなかった。RR間隔の時系列データを周波数解析すると,腹式呼吸時は副交感神経優位となった。尿中セロトニン濃度は腹式呼吸及び通常の呼吸で変化が認められなかったが,腹式呼吸では尿中のノルアドレナリン濃度,アドレナリン濃度及びコルチゾール濃度の有意な低下が認められた。腹式呼吸はコントロール実験として行った通常の呼吸と同様,生体に対してストレッサーにはなっておらず,リラックスした状態を維持できる呼吸法であると考えられた。
著者
小林 敏生 影山 隆之 金子 信也 田中 正敏
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-27, 2002-03
被引用文献数
3

夜勤を含む複数の交代制勤務形態を有する電子部品製造業における技術系男性職員の不眠症の有症率および抑うつ状況について調べるために,日勤,2交代勤務,固定夜勤に従事する男性従業員を対象にして横断的な質問紙調査を行い,256名の回答について検討した。不眠症の定義は「入眠困難」,「中途覚醒」,「早期覚醒」,「熟眠困難」のうち1つ以上の不眠症状が最近1カ月以上持続して週1日以上あるために,二次的に生活上の支障を生じて困っている者とした。また抑うつ度の判定にはCES-D日本語版を用い,16点以上の者を「抑うつ傾向あり」と判定した。不眠症の有症率は日勤群10.4%,2交代勤務群34.5%,夜勤群15.9%と2交代勤務群で最高値,日勤群で最低値を示した。CES-D得点は2交代勤務群で最高値,夜勤群で最低値を示し,日勤群ではその中間値を示した。また抑うつ傾向の有症率は日勤群31.2%,2交代勤務群48.3%,夜勤群29.5%で,2交代勤務群で日勤群,夜勤群と比べて有意に高率となったが,日勤群と夜勤群の間には有意差を認めなかった。またすべての勤務形態において「不眠症有り」の者のCES-D得点平均は「不眠症無し」の者のCES-D得点平均より有意に高かつた。以上の結果より,本職場においては睡眠および精神衛生状況は2交代勤務群で最も悪化していることが示唆され,今後の本職場における交代勤務体制のあり方を検討するうえで重要な知見であると考えられた。
著者
山内 加奈子 斉藤 功 加藤 匡宏 谷川 武 小林 敏生
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.537-547, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
43
被引用文献数
3

目的 地域高齢者における 5 年間の縦断的研究により主観的健康感の低下に影響を及ぼす心理・社会活動要因について明らかにすることを目的とする。方法 愛媛県東温市に在住する65歳以上の高齢者7,413人全員に「高齢者総合健康調査」を実施し,85歳以上または日常生活動作で介助を必要とする者および 5 年間における死亡・異動等を除く4,372人を追跡対象者とし,3,358人を分析対象者とした(追跡率76.8%)。主観的健康感は「普段,自分を健康だと思いますか」に 4 件法で回答を求め,さらに「非常に健康である」,「まあ健康である」を主観的健康感の健康群,「あまり健康でない」,「健康でない」を非健康群に分類した。この 2 群について,5 年間追跡することで,主観的健康感の変化およびそのパターン別の割合を検討した。次に,初回調査時における主観的健康感の健康群を対象とし,5 年後の主観的健康感が健康か非健康かを目的変数として交絡因子を調整の上,初回調査時の老研式活動能力指標,生活満足度尺度 K,認知症傾向,うつ傾向の心理・社会活動指標の各因子との関連についてロジスティック回帰分析を用いて検討した。結果 5 年間の追跡調査後に,主観的健康感の健康群は男女ともに減少した。追跡期間中に健康を維持した者の割合は,男女とも,前期高齢者では約 6 割,後期高齢者では約 4 割であった。前期高齢者においては,初回調査時の生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.85(95%信頼区間:0.77-0.93),女性で0.79(95% CI: 0.72-0.87)とそれぞれ有意に低く,さらにうつ傾向有のうつ傾向無に対するオッズ比は女性でのみ1.68(95% CI: 1.11-2.56)と有意に高かった。後期高齢者においては,生活満足度が高いことの低いことに対する 5 年後の主観的健康感が非健康であるオッズ比は,男性で0.87(95% CI: 0.77-1.00),女性で0.89(95% CI: 0.80-0.99)と有意に低く,さらに老研式活動能力が高いことの低いことに対するオッズ比は,男性で0.80(95% CI: 0.70-0.91),女性で0.88(95% CI: 0.80-0.97)と有意に低かった。結論 本研究から,地域高齢者の主観的健康感の低下を防ぐためには,男女ともに生活満足感を高めることが必要と考えられた。加えて,前期高齢者の女性においてうつ傾向がないこと,および後期高齢者では,男女共に日常生活活動能力を維持することが,主観的健康感の維持のためには重要と考えられる。
著者
岡山 加奈 藤井 宝恵 小野寺 一 荒川 満枝 小林 敏生 片岡 健
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.269-277, 2011 (Released:2011-12-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

2002年にCenters for Disease Control and Prevention (CDC)より公表された “Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings” や2009年にWorld Health Organization (WHO)より公表された “WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care” では,現場でより効果的に運用可能な擦式アルコール製剤を用いたラビング法と自然爪の長さが6.35 mm未満であることが推奨されている.我々は,自然爪の長さが擦式アルコール製剤を用いた手指消毒と手指細菌叢に及ぼす影響を細菌学的に明らかにするため,手指衛生について学習経験のある看護学生および大学院生17名を対象に検討を行った.その結果,自然爪の長さが短い群(2.4 mm)と長い群(5.4 mm)で比較すると,手指消毒後の手指菌数において,自然爪の長さが短い群は4.3 CFU,長い群は40 CFUと長い群の菌数が有意に多かった.爪下菌数は,手指消毒前後とも自然爪の長短による有意差を認めなかったが,手指消毒後にも関わらず自然爪の長さが2.4 mm以上では1.6×103 CFU/mm2以上の細菌が検出された.爪下と手指から検出される菌種は類似しており,coagulase-negative staphylococciやBacillus spp.の検出率が高く,菌数も多くを占めていた.さらに,自然爪の長さが長くなるとmethicillin-resistant S. aureusやS. aureusのような医療関連感染原因菌が手指と爪下へ残存しており,除去することが困難であった.本研究結果は,自然爪の長さが長いと擦式アルコール製剤を用いた手指消毒効果が減弱することを示唆している.
著者
折山 早苗 宮腰 由紀子 小林 敏生
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

16時間夜勤時の看護師の眠気、疲労感および睡眠状況ならびに夜勤時にとる仮眠の影響を明らかにし、パフォーマンス維持に効果のある仮眠のとり方を実施した。まず、質問紙調査を行い、眠気や疲労感の増加する時刻などを明らかにした後に夜勤時の仮眠のとり方を決定し、夜勤時の仮眠時間ならびに仮眠開始時刻の条件をかえて、実験室で行った後に、臨床実験を行った。仮眠開始時刻によって朝方にかけて眠気、疲労感、パフォーマンスの変化が異なることが明らかとなり、パフォーマンス維持効果のある仮眠のとり方が明らかになった。
著者
小林 敏宏 曽根 克彦 小林 富男 小須田 貴史 田端 裕之 鈴木 隆 小野 真康 田代 雅彦
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.335-340, 1991-03-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

橈骨動脈注入による逆行性大動脈造影は, 侵襲の少ない検査であり, 新生児, 乳児期に左心系造影が必要となる大動脈縮窄症, 大動脈弓離断症などの疾患には有用な検査方法である.また, 最近では肺動脈閉鎖を伴う動脈管依存性先天性心疾患の肺動脈造影にも応用されている. 当院では過去8年間に43例に対し橈骨動脈造影による診断を行なった. 疾患は, 大動脈弓の異常を呈する疾患28例 (大動脈弓離断症12例, 大動脈縮窄症9例, 左心低形成症候群4例, 血管輪3例), 肺動脈閉鎖を伴う動脈管依存性先天性心疾患13例 (Fallot四徴症7例, 三尖弁閉鎖症2例, 純型肺動脈弁閉鎖症1例, 単心室1例, 無脾および多脾症候群2例), 動脈管開存症2例であった.方法は, 22Gまたは24Gのangiocathを橈骨動脈へ経皮的に穿刺し, イオヘキソール1~2ml/kgを機械的に約2秒間で注入した.造影は全例診断可能な所見が得られ, 重篤な副作用もみられなかった.
著者
影山 隆之 小林 敏生
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

交替勤務者に質問紙調査を行った結果、夜勤に従事している間の眠気は、夜勤連続時の「昼間の就寝前」に飲酒する人、及び次の夜勤前に二度寝する人で強く、就寝前にカフェイン摂取を控える人、就寝前に入浴する人、及び健康感が高い人では弱かった。この結果と先行研究に基づき「交替勤務者のための睡眠教育テキスト」と睡眠日誌を作成し、これを使った睡眠教育を交替勤務者に実施した。その結果、2カ月後には、睡眠によい生活習慣の一部で実行率が上昇し、夜勤連続時の不眠症状と夜勤に従事している間の眠気は減少傾向を示した。
著者
小林 敏孝 篠沢 隆雄
出版者
足利工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

H16年度において、睡眠の数学モデルによって、睡眠時間が昼間の行動と密接な関係にあることを推定した。H16年度〜17年度にかけて、15名の被験者に睡眠日誌と行動量計(アクチグラフ)を約2週間記録してもらい、彼らの自覚的な睡眠覚醒リズム(SWR)と活動休止リズムを測定した結果、睡眠時間が6時間以下のshort sleeper (SS)では、昼間の活動量が常に高かかった。これに反して9時間を超えるlong sleeper (LS)の昼間の活動量は変動が大きく、SSに比べて低かった。17年度〜18年度にかけて、企業の中高年(38才〜59才)の会社員に対して、睡眠時間が比較的短い6名を選び、彼らに睡眠ポリソムノグラフ(PSG)等を3夜連続で記録した。その結果、平均睡眠時間が5時間半以下の者はREM睡眠の持続が悪く、精神的なストレスが過多であった。また、性格傾向を質問法(YGテスト)で検討した結果、SS群とLS群の間には大きな差異は認められなかった。しかし、面談による被験者の性格傾向としてSS群は快活、多弁の被験者が多く、LS群は物静かな印象を強く受けた。性格傾向に関しては詳細な検討が必要と考えている。以上の3年間の結果から、short sleeperの行動上特徴として、昼間の活動量が常に高いこと、さらに中高年では精神的なストレス過多にある可能性が高いことが明らかになった。これは、昼間の活動を高める性格に関与する性格遺伝子が睡眠時間を決定している遺伝子の有力な候補の可能性が高いことを意味する。3年間の研究期間においてshort sleeperの精神生理的な特徴の同定に多くの時間を要したために、遺伝子の同定に着手できなった。今後、平均睡眠時間が5時間前後でしかも昼間の活動量が高く昼寝の習慣がない群を選び、昼間の活動が高い性格に関与する遺伝子の同定を試みる。
著者
筒井 晃一 小林 敏勝 西沢 宏司 上野 太三郎 景山 洋行
出版者
一般社団法人 日本レオロジー学会
雑誌
日本レオロジー学会誌 (ISSN:03871533)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.267-273, 1997-12-15 (Released:2012-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

Pigment dispersion technology plays an important role in attaining basic coating qualities such as a ”high quality appearance” and ”high durability”. Authors' experiments have quantitatively proved that a basic principle in pigment dispersion was an ”acid-base interaction between pigment and resin” in either non-aqueous or aqueous mediums, by optical and rheological measurements of pigment dispersions. These dispersions were prepared from pigments, acid-base characteristics of which were measured by a new method developed in our laboratory.A conventional pigment dispersing resin, called an ”amphoteric resin”, was also developed using a new idea that any conventional pigment having a variety of acid-base characteristics must be well dispersed, when a resin containing both acid and base functions was used.Pigments with almost no acid and/or base characteristic could be, however, well dispersed when the pigments were surface modified to have either an acid or base characteristic by plasma surface treatment. This result also supported that the ”acid-base interaction” was important in pigment dispersion.
著者
岡田 ルリ子 松川 寛二 小林 敏生 宮腰 由紀子
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.315-321, 2013-08-01 (Released:2013-08-29)
参考文献数
37
被引用文献数
1

This study aimed to develop a new method of increasing water content in the cutaneous stratum corneum under a dry skin condition. For this purpose, the experiments were performed using 10 healthy women (age: 20 ± 5 years, height: 158 ± 4 cm, weight: 50 ± 6 kg) in winter to ensure the dry condition. The subjects immersed the right hand into a 42˚C bath for 10 min. Skin surface temperature and water content in the stratum corneum of the left forearm were simultaneously measured during and for 1 h after the hand warming. The skin surface temperature began to increase (P<0.05) 15 min after the hand warming and thereafter remained increased for 1 h. Similarly, the water content in the stratum corneum began to increase immediately after the hand warming and remained increased throughout the experiment. The present results suggest that warming of one hand is effective in enhancing skin moisture in the other forearm and thereby maintaining barrier function of the skin.
著者
影山 隆之 小林 敏生 河島 美枝子 金丸 由希子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.103-114, 2004 (Released:2006-09-21)
参考文献数
62
被引用文献数
30 23

勤労者のコーピング特性(CP)は,職業性ストレス要因から健康問題が発展する過程に大きく影響する.しかしCPに関する既存の質問紙の多くは長すぎて,職域精神保健活動に活用しにくい.本研究で著者らは,わずか18項目から成る,勤労者のCP評価のための新しい自記式質問紙の開発過程と,その信頼性・妥当性・実用性について報告する.予備研究に基づき,コーピング戦略に関する18問6尺度から成るコーピング特性簡易尺度(BSCP)が提案された.これと職業性ストレス簡易評価尺度(BSJS)および抑うつ尺度(CES-D)から成る質問紙を某企業の従業員394名に適用し,328名(83%)から回答を得た.年齢の平均(SD)は40.1(10.0)歳,78%が男性,75%が既婚で,ほとんどがホワイトカラーであった.BSCPの因子分析から抽出された6因子は当初想定した6尺度や先行研究の結果とよく一致した.これらは“積極的問題解決”“解決のための相談”“発想の転換”“気分転換”“他者を巻き込んだ情動発散”“逃避と抑制”と命名された.Cronbachの信頼性係数は0.66~0.75で,十分高い内的一貫性が認められた.どの尺度も性・年齢との関連はなかった.多変量解析の結果,抑うつ度得点の分散の38%がBSJSの“量的負荷”“対人関係の困難”“達成感”およびBSCPの“問題解決”“逃避と抑制”によって説明された.交互作用分析の結果,CPが職業性ストレス要因と抑うつ症状の関係を修飾していることが示唆された;“対人関係の困難”得点が高くかつ“達成感”得点が低い群においてのみ“積極的問題解決”得点は抑うつ度得点と負相関しており,“対人関係の困難”得点が高い群においてのみ“逃避と抑制”得点は抑うつ度得点と正相関していた.以上の結果はBSCPの信頼性・妥当性を支持するとともに,職域精神保健領域における職業性ストレスの自己管理や健康教育の道具としてのBSCPの実用性を支持するものである.今後の研究では,BSCPの再現性や併存的妥当性を確認するとともに,他の集団においてCPが性・年齢・職種あるいは他の職業性ストレスアウトカムと関連しているかどうか確認することが,課題である.
著者
小林 敏夫
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.18-23, 2018 (Released:2019-03-01)
参考文献数
10

2015年,「インターネットの父」の一人と言われるヴィントン・サーフ氏(Google副社長)は,「21世紀は将来の歴史家から忘れ去られるだろう」と述べ,今さまざまな記憶媒体に保存されている文書やデータは,消失する危機にさらされていると警鐘を鳴らした.本稿では,今後記憶媒体の主流になる可能性がある半導体不揮発性メモリの現状について紹介するとともに,超長期保管用メモリを作ることは技術的に可能であることとその必要性を訴えることの重要性について述べる.
著者
堤 雅恵 田中 マキ子 原田 秀子 涌井 忠昭 小林 敏生
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:1341044X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.65-71, 2007-03-20
被引用文献数
2

近年,高齢者ケアの現場において音楽,ゲーム,園芸などを手段としたアクティビティケアが頻繁に行われているが,その効果については未だ十分な検討が行われていない.本研究では,介護療養型医療施設に在住する認知症高齢者女性10名(平均年齢84.4±7.1歳,Barthel Index平均得点37.0±30.4点,HDS-R平均得点6.4±6.0点)を対象に,アクティビティケアを実施した日と実施しなかった日の9時から17時までの,携帯式行動量測定装置アクティカルを使ったエネルギー消費量測定による活動量およびタイムスタディによる対人交流時間の調査を実施し,アクティビティケアの効果を検討した,その結果,アクティビティケアが実施された日とされなかった日のエネルギー消費量は,それぞれ338.9±70.4kcalおよび344.0±86.4kcalであり,有意差は認められなかった.対人交流時間については,アクティビティケアが実施された日の対人交流時間の合計は137.9±45.0分で,実施されなかった日の対人交流時間96.1±40.4分と比較して有意に多かった(p=0.042).本研究結果から,アクティビティケアの実施が活動量の増加にはつながりにくいものの,対人交流の時間の確保につながることが示唆された.
著者
中川 功一 福地 宏之 小阪 玄次郎 秋池 篤 小林 美月 小林 敏男
出版者
日本経営学会
雑誌
日本経営学会誌 (ISSN:18820271)
巻号頁・発行日
no.34, pp.3-14, 2014-12-10

This study investigates a microfoundation of the structural change of business ecosystem. While previous studies point out environmental shocks and subsequent entrepreneurial behaviors, we focus on the effect of several actors' interactions within the ecosystem. By using the concept of Weick (1979)' s enactment, we build up the chain reaction framework of multiplayers' interpretation and action. Through an in-depth case study of the transition of Silicon Valley ecosystem from an IPO-centered model to a M&A-centered one, we illustrates how startups, established business companies, venture capitals and research institutes interact each other and how those interactions effect on ecosystem transition.