著者
小林 正法 池田 賢司 服部 陽介
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2014 (Released:2014-10-05)

本研究では,解釈レベルの違いが検索誘導性忘却に影響するかどうかを検討した。検索誘導性忘却とは,ある記憶の検索が他の関連する記憶の抑制を導く現象である。解釈レベル理論から,高次解釈(e.g., Why思考)では関連付け符号化,低次解釈(e.g., How思考)では項目特定的な符号化を導くとされている。学習項目を関連付けることが検索誘導性忘却を減少するという知見から,本研究では高次解釈を行った場合,検索誘導性忘却が生じないと予測した。実験1,2を行い,得られた検索誘導性忘却効果を統合したメタ分析を行った。分析の結果,低次解釈群では検索誘導性忘却が生じたが,高次解釈群では生じなかった。このように,本研究は学習に直接影響しない操作である高次解釈(Why思考)が,検索誘導性忘却を減少させることを初めて明らかにした。
著者
小林 宏 所 晃史
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp."1A1-D28(1)"-"1A1-D28(3)", 2010

Astronauts are able to stay long-term in space because of space development. In long-term stay, the collection of excrement is one of main issues due to difficulty of collecting excrement under microgravity, odor in spaceship, and noise of exhaust fan. Therefore, in this paper, we propose Insert-type Toilet that has an openable and closable apparatus and it is used by being inserted to the anus. Advantages of it is collecting excrement without defecating to outside and preventing diffusion of odor. In order to verify its capability, we also develop Defecation Robot that duplicates organs and movements of muscles around the pelvis for mimicking human-like defecation. Furthermore, we verify defecation and collecting capability of Defecation Robot and Insert-type Toilet by conducting the experiment.
著者
小林 文明 千葉 修 松村 哲
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.19-34, 1997-01-31
参考文献数
22
被引用文献数
12

1994年10月4日17時すぎ,土佐湾海上で5本の竜巻が連続して発生した.数多くの画像データと竜巻近傍の自記紙やレーダーエコーデータにより,これらの竜巻の形態と構造を解析した.5本の竜巻の発生から消滅までは1時間の連続した現象であった.漏斗雲が地上まで達した4本の竜巻のライフタイムは約20分,竜巻の強さはFスケールでF0と推定された.竜巻渦はすべて時計回り(高気圧性)の回転であり,漏斗雲の形状,直径の顕著な時間変化を示さないまま3〜6km/hの移動速度で北上した.土佐湾竜巻の発生メカニズムは,直接的にはメソγスケール(数km)のシアーライン上の初期の渦が積乱雲発生時の上昇気流とカップリングして生じたと考えられたさらに,メソβスケール(土佐湾のスケール)の地形,性の収束が積雲を発生させた点で重要であった.土佐湾竜巻はスケールの異なる2つの条件下で発生した,海上竜巻であると結論づけられた.
著者
小林 康孝 筒井 広美 木田 裕子 大嶋 康介 富田 浩生
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 : 日本高次脳機能障害学会誌 = Higher brain function research (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.581-589, 2012-12-31

軽度外傷性脳損傷 (MTBI) は, 診断が困難な故に診断までに時間を要する。MTBI による高次脳機能障害の場合, さらにその診断は困難で時間を要し, 発症早期のリハビリテーションを受けずに病院を渡り歩く症例が多い。今回, MTBI により高次脳機能障害を来した 3 例をもとに, その問題点を検討した。症例 1 は, 診断までに時間を要し, 十分なリハビリテーションを受けられなかった。また病態に対する家人の理解が不十分であることが, 本人の負担を重くしていた。症例 2 は身体症状の訴えが多く, 十分なリハビリテーションを行えなかった。また, 自賠責保険の等級認定に関する裁判を抱えている。症例 3 は神経心理学的検査結果からの客観的所見はないが, 記憶障害等の自覚症状が強く, ドクターショッピングを続けた。3 症例とも頭部 MRI 上は明らかな異常を認めなかった。今後 MTBI による高次脳機能障害者への支援を進めるには, 病態の解明, 医療従事者の理解, 画像診断の進歩が望まれる。
著者
蔭山 正子 横山 恵子 中村 由嘉子 小林 清香 仁科 雄介 大島 巌
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.625-636, 2014 (Released:2014-11-27)
参考文献数
19

目的 精神障がい者の家族を対象とした家族ピア教育プログラム「家族による家族学習会」の効果的な普及戦略を検討するために,プログラムを実施していない家族会を対象として,家族学習会の採用に関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 精神障がい者家族会連合会12か所と加盟する単位家族会を対象に,2013年 6~9 月に郵送で質問紙調査を実施した。分析枠組みは,ヘルスケア組織におけるプログラム普及の理論枠組みを適用し,プログラムの採用プロセスを 2 段階に分けた。第一段階のプログラムを把握する段階では,把握レベル(家族会で把握あり/家族会で把握なし)の 2 群,第二段階のプログラムの採用意思を決める段階では,実施予定(実施予定あり・検討/実施予定なし)の 2 群をそれぞれ従属変数とし,2 群間で比較した。プログラムを把握した段階については,多重ロジスティック回帰分析を行い,検討した。結果 10の精神障がい者家族会連合会から協力が得られた。加盟家族会のうち,家族学習会を実施したことのない177か所の家族会に調査票を送付し,110か所から回答を得た(回収率62.1%)。プログラムを把握する段階では,家族会所在市町村の人口が10万人以上であり(OR=5.53, 95%CI; 1.93–15.89),周囲にプログラムを積極的に勧める人がいて(OR=5.22, 95%CI; 1.46–18.69),連合会からプログラムのことを知った(OR=3.41, 95%CI; 1.27–9.17)家族会ほど,プログラムを家族会で把握していた。プログラムの採用意思を決める段階では,プログラムを家族会で把握していた39か所を分析した。プログラムを実施予定・検討中の家族会は,実施予定なしの家族会と比較して,役員数が多く,プログラム実施に必要なマンパワーがあり,意欲的な会員がいると思っている家族会が有意に多かった。また,実施予定・検討中の家族会は,プログラムの難しさ・リスク・労力といったプログラムの実施負担が少ないと思っており,プログラムを実施することで会員増や相互支援が進むことにつながると思っている家族会が有意に多く,プログラムが家族会や会員の関心と合致しており,周囲にプログラム実施に反対する人がいないと思っている家族会が有意に多かった。結論 本プログラムを知ってもらうためには,影響力の大きい人との協力と連合会を通した情報発信が有効であり,プログラムを採用してもらうためには,複数の家族会での合同実施,および,家族会に未入会の家族を対象に実施する方法が有効である。
著者
角 康之 江谷 為之 シドニーフェルス ニコラシモネ 小林 薫 間瀬 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.2866-2878, 1998-10-15
被引用文献数
52

本稿では,我々が現在進めている展示ガイドシステムの研究プロジェクトC?MAP (Context?aware Mobile Assistant Project)の概要と現状を報告する.C?MAPの目標は,博物館や研究所公開などの展示会場を想定し,携帯情報端末を携えた見学者へ,彼らのおかれた時空間的な状況や個人的な興味に応じて,展示に関する情報を提供する環境を構築することである.我々は最初のテストベッドとして我々の所属する研究所の研究発表会を選び,展示ガイドシステムを試作した.携帯ガイド上には,展示会場の地理的案内と展示間の意味的な関連を可視化した意味的案内が提供され,これらはユーザの時空間的/心的な文脈に応じて個人化される.また,ガイドシステム上にはlife?likeな外見を持つガイドエージェントが表示され,システムとユーザ間のインタラクションを取り持つ.本稿では,展示に関する興味を共有する見学者?展示者間のコミュニケーションを促進するためのサービスについても述べる.This paper presents the objectives and progress of the Context-aware Mobile Assistant Project (C-MAP).The C-MAP is an attempt to build a tour guidance system that provides information to visitors during exhibition tours based on their locations and individual interests.We prototyped a guide system using our open house exhibition of our research laboratory as a tested.A personal guide agent with a life-like animated charadter on a mobile computer guides users using exhibition maps which are personalized depending on their physical and mental contexts.This paper also describes services for facilitating communications among visitors and exhibitors who have shared interests.
著者
守屋 純二 竹内 健二 上西 博章 赤澤 純代 元雄 良治 橋本 英樹 金嶋 光男 小林 淳二 山川 淳一
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.87-93, 2014
被引用文献数
1

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome : CFS)は6ヵ月以上持続する,休息後も改善しない強い疲労感を主症状とする。発熱,睡眠障害,頭痛などの症状を呈し,著しく生活の質が損なわれる。原因として,ウイルスによる先行感染,免疫学的な変調,中枢神経系の,特に海馬における形態的・機能的変化などが報告されている。しかし,明らかな原因は不明で,診断マーカーや治療法は確立していない。<br>今回報告する症例は16歳男子高校生で,インフルエンザ罹患後の持続する発熱と強度の倦怠感などを主訴とした。既に複数の医療機関において約1年間の精査・加療を受けるも原因は不明で,CFSと診断された。当科紹介時に再度CFSの診断基準を満たすことを確認し,三黄瀉心湯エキス7.5g/分3とデュロキセチンを併用したところ,4週後には疲労・倦怠感は軽減した。しかし,熱型は不変,食欲低下を認めたため,補中益気湯エキス7.5g/分3を追加したところ,劇的に症状が改善した。<br>西洋医学的に治療に難渋するCFS のような疾患に対して,漢方治療が有効な治療方法として使用できると考え報告する。
著者
小林 盾 ホメリヒ カローラ
出版者
成蹊大学文学部学会
雑誌
成蹊大学文学部紀要 (ISSN:05867797)
巻号頁・発行日
no.49, pp.229-237, 2014-03

この論文では、生活満足度が主観的幸福感と一致しているのかを検討する。ともすれば、生活に満足している人は、幸福であるとみなされがちである。しかし、このことは自明ではない。満足していても不幸とかんじるかもしれないし、不満があっても幸福かもしれない。そこで、2013年社会と暮らしに関する意識調査(SSP-W2013-2nd)をデータとしてもちいて、分析をおこなった。その結果、以下がわかった。(1)満足と幸福が一致しない人は、全体で23.4%いた。そのうち「生活に不満があるのに幸福」というポジティブな不一致の人は、不満な人のうち3割いた。とくに60代で45.9%と多かった。逆に「満足しながら不幸」というネガティブな不一致は、1.5 割いた。とくに未婚者で27.9%と多かった。(2)女性ほど、年配者ほど、既婚者ほど、世帯収入が多いほど、「不満だが幸福」というポジティブな不一致がふえ、「満足だが不幸」というネガティブな不一致がへった。ただし、学歴や従業上の地位による違いはほとんどなかった。以上から、生活満足度と主観的幸福感はたしかに似た概念であるが、同一視するには慎重であるべきだろう。
著者
影山 隆之 小林 敏生
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

交替勤務者に質問紙調査を行った結果、夜勤に従事している間の眠気は、夜勤連続時の「昼間の就寝前」に飲酒する人、及び次の夜勤前に二度寝する人で強く、就寝前にカフェイン摂取を控える人、就寝前に入浴する人、及び健康感が高い人では弱かった。この結果と先行研究に基づき「交替勤務者のための睡眠教育テキスト」と睡眠日誌を作成し、これを使った睡眠教育を交替勤務者に実施した。その結果、2カ月後には、睡眠によい生活習慣の一部で実行率が上昇し、夜勤連続時の不眠症状と夜勤に従事している間の眠気は減少傾向を示した。
著者
川崎 賢一 後藤 和子 河島 伸子 佐々木 雅幸 小林 真理 KWOK KianーWo CRANE Diana MARTORELLA R KIAMーWOON Kw CRANE O
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、3年間にわたる共同研究に最終年度にあたり、まとめる方向で研究を行った。初年度は、東京で、まず、芸術文化政策の比較の枠組みについて話し合い、同時に、東京を中心とする日本の文化政策を理解することにつとめた。また、この年度末には、シンガポールで会議を開催し、現地の文化政策関連の人々とも議論を行った。シンガポールは、日本とは異なるアジアの国々のひとつであり、国家を中心として文化政策をここ10年間で積極的に推進してきた社会であり、その歴史、やり方の有効性などをメンバーと共に議論をし、理解を深めた。いづれにしろ、欧米の芸術文化政策を論じる前に、アジアを回ったことは、今までの欧米中心の研究スタイルとは異なるやり方で、メンバーにも好評で、一定の成果をあげることが出来た。2年目は、イギリスのバーミンガムで会議を開き、イギリスの最近の動向について議論をした。その結果として、ロンドンのみならず、多くの都市において、文化を取り入れた都市計画が盛んになり、地方分権や民主化が進み、階級文化の境界がはっきりしなくなるなどの変化が見て取れるようになった。3年目は、仕上げとして、ニューヨークで会議を開催し、アメリカ、特に、ニューヨークの文化政策について学び、また議論することにより、これからの展望をはっきりと描くことが可能になった。それは芸術文化的活動と経済との連携がより深くなるということ、もう一つは、文化政策における、非営利的組織(いわゆるNPO)の重要度が高まり、プライバタイゼーションが進行するということである。しかし、同時に、どの国でも同じことが起こるわけではない。本研究では、さらに、来年度、ファイナルシンポジュウムを東京で開催し、「グローバル化する文化政策」というタイトルで、共同研究の最後を締めくくりたいと考えている。
著者
徳田 恵一 益子 貴史 小林 隆夫 今井 聖
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.192-200, 1997-03-01
被引用文献数
104

動的特徴 (音声のデルタ及びデルタデルタパラメータを含む混合連続分布HMMから音声パラメータ列を生成するための高速アルゴリズムを提案する。ここでは, 尤度最大の意味で最適な音声パラメータ列を生成することを考え, この問題を現実的な演算量で解くため, 適応フィルタリングにおけるRLSアルゴリズムと類似の手法を用いて高速アルゴリズムを導出した。また, 提案アルゴリズムにより, 静的及び動的特徴の統計情報(平均及び共分散)を反映した音声パラメータ列の生成が可能となることを例によって示すと共に, 提案アルゴリズムの音声の規則合成への応用について考察を加えている。
著者
葛西 恭一 石田 恵梨 小林 由佳 曽我 幸一 金光 大石 坂本 京子 竹中 信也 柳田 國雄 伊谷 賢次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.257-261, 2013-02-20
参考文献数
12

症例1は75歳男性.心房細動にてダビガトラン220mg/日服用開始したところ,5日後より食道閉塞感,ゲップを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを継続しながらプロトンポンプ阻害剤(以下PPI)を服用したところ潰瘍は治癒した.症例2は68歳,女性.発作性心房細動に対しダビガトラン300mg/日服用開始77日後より胸焼けを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを中止しPPI投与したところ潰瘍は治癒した.ダビガトランは循環器領域で使用頻度が高まると予想される薬剤であり,薬剤性食道潰瘍の原因となり得ることを念頭に置く必要がある.
著者
佐藤 卓 松本 文雄 安部 隆司 二瓶 直子 小林 睦生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.195-204, 2012-09-30 (Released:2013-07-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

It was previously reported that the northern limits of geographic distribution of Ae. albopictus in Japan are Akita and Iwate Prefectures. In this study, we carried out larval surveillance from 2009 to 2010 to clarify the present distribution of the mosquito in Iwate Prefecture and to analyze the relationship between climatic conditions and the northern distribution of Ae. albopictus by the geographic information systems (GIS). Distribution of Ae. albopictus was found in 34 collection sites from 7 cities and 2 towns in this study. Around the collection sites in Senboku 2 Chome, Morioka City where Ae. albopictus larvae were collected in 2009, an intensive investigation was carried out in 2010, and more than 20 colonies of Ae. albopictus were collected. This suggests that Ae. albopictus population has been established in Morioka City. The relationships between climatic conditions and distribution of Ae. albopictus in Iwate Prefecture were analyzed using 1 km mesh climate data from 2006 to 2010, and the following conditions were suggested for the presence of Ae. albopictus populations: >10.8°C annual mean temperature, >-1.4°C daily mean temperature in January, >185 days/year with >10.8°C mean daily temperature and >1,350 degree days of effective accumulated temperature per year.
著者
高橋 秀俊 小林 謙二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.179-194, 1985-03-05

「人間にとってふさわしい研究は人間である」 (The proper study of mankind is man) と英国の詩人アレキサンダー・ポープは言っているが, 科学の窮極の目的の一つは矢張り, 思惟する能力をもつ「人間」というものを理解することであると言えるのかも知れない. 科学も所詮は「人間」が作り上げた文化の一形態であり, 「人間」なしには科学も存在し得なかったのである. その意味で, 教科書の中の科学だけではなく, 実際に研究に従事した科学者の語るなまの「人間の言葉」も聞いてみる価値が大いにあろうかと思われる. 1977年が日本物理学会創立100年にあたることを記念して, 『日本の物理学史』(上)-歴史・回想編-; (下)-資料編-が日本物理学会編集により1978年に東海大学出版会から発行され, 日本の物理学界の指導的立場にあり, すぐれた業績をあげられた先生方の回想録が収められている. 物性理論に関連したものとしては, 久保亮五先生の「日本における統計力学の成立」, 永宮健夫先生の「物性論の発展のなかで」, 伏見康治先生の「日本における物理学の成立」という大変興味深い回想録があり, 我が国における物性理論の発展の様子を可成りの所まで窺い知ることができるが, 十分とは言えないように思われる. そこで, 上記の回想録を補足するという意図も含めて会誌の編集委員の末席につらなる小林謙二が幾人かの物理学者にインタビーーし, 「我が国における物性論の草創時代」というテーマで, 御自身の研究の動機や当時の物理学者群像などを回想して頂き, ここにまとめた次第である. 1回目として, 我が国における物性論の草創時代 (1940年代) に活躍された東京大学名誉教授で慶応大学客員教授でもある高橋秀俊先生 (1962年度と1967年度の日本物理学会会長で, 1980年度の文化功労者にも選ばれている) の回想談をしるすことにしよう. 何分にもインタビュアーの非才のために質問の拙なさから重複するところがあったり, 余り意を尽していないような所もあるかとも思われるが, その段は読者諸賢の御海容をたまわりたい.
著者
小林 真
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

視覚障害者ボウリングを楽しむ当事者らのニーズをもとに、「投球フォーム検出と提示」「残ピン状況の読み上げ」「ボール軌跡の読み上げ」を目的とするシステム開発と検証を行った。フォーム検出に関しては、腕に装着した加速度センサから投球タイミングの検出が可能なことが分かった。また残ピン読み上げに関しては画像処理を利用してほぼ完璧な認識が可能であり、実際の練習に役立つシステムを構築できた。ボール軌跡については、深度センサで実現可能なことが分かった。さらにスポーツにおける状況の音声化は,プレーヤー自身だけではなく,応援や観戦をしている視覚障害者にとって重要なエンターテインメント要素になることが分かった.