著者
畑 泰子 秋山 浩之 石川 欽司
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.345-348, 2001-12-25
被引用文献数
1

症例は19歳男性で, 潰瘍性大腸炎のため副腎皮質ステロイド剤投与中に腰部激痛を訴え入院となった.入院翌日に小水疱が出現したため, 水痘疹と考えアシクロビルの投与を開始し, 副腎皮質ステロイド剤を減量した.しかし, 入院後3日目には血小板が低下, FDP上昇, GOT, GPTが上昇し, 播種性血管内凝固症候群(DIC)と肝炎を併発した重症水痘感染と思われた.メシル酸ナファモスタットとヘパリンナトリウムおよびアンチトロンビンIII製剤の投与を開始し, 濃厚血小板輸血も行った.これにより血小板数, 凝固能ともに改善し, GOT, GPTも低下した.また副腎皮質ステロイド剤を減量した後も排便回数の増加や血便は見られなかった.副腎皮質ステロイド剤使用中に水痘などの感染症に罹患した際には重症化することがあり, ステロイド〓瘡により水痘疹の発見が遅れ, 早期に治療が開始出来ないとさらに予後不良となることがあるので留意を要する.
著者
原山 浩介
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

占領期の闇取引・闇市には、行政上の様々な意図が作用する。ひとつは、石橋湛山に象徴されるような、戦後インフレを一過性のものと見る立場からの闇市合法化論、あるいは戦時における統制の破綻に根ざした統制廃止論がある。また少し違った角度から、財産税課税のための資産補足を免れるために、手持ち通貨を換物しようとする動きが起こり、これが闇取引とインフレを助長していることに対する懸念があった。そして勿論、闇市・闇取引を、経済秩序の混乱をもたらすもの、あるいは犯罪の温床とみる立場からの、闇市・闇取引撲滅論も存在した。しかし全体としては、GHQ/SCAPの一貫した闇市・闇取引取締りの方針に突き動かされる形で、全体としては規制・廃止が基調となる。一方、実際にこの闇市・闇取引を自らの生業としながら生きた人びとにとっては、行政による取締りは、その振れ幅にも関わらず、概して脅威と捉えられていた。また、そこに生きた人びとのタイプは実に様々で、あぶく銭を手にして放蕩する者、日々を生き抜くための仕事として取り組む者、あるいは闇市での経験がベースになって後に小売業等に邁進する者など様々であった。こうした現実は、闇市・闇取引が、単なる時代のあだ花とするには余りある、生活との連関がある。また、闇市・闇取引が当時の物流・配給の手段として重要な意味を持っていたのも事実である。そうしたことは、現場に近い行政機関の関知するところでもあり、地方行政レベルでは露店の集約を事業化するなどの動きが見られ、また警察は闇市・闇取引に対する過剰な取締りを行わないという方向性を打ち出していた。以上の諸点に鑑みたとき、闇市・闇取引を、そこを生きた人びとの感覚に一面的に依拠しながら、「解放空間」ないしは「闇社会」と規定するのは誤りであり、占領期という歴史的に特異な時期に現出した生活世界として把握することが必要になると言える。
著者
朱宮 丈晴 高山 浩二 藤田 卓 加藤 英寿
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究 (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.63-87, 2008-03

南硫黄島における垂直分布に沿った温度・湿度と上壌環境といった環境要因、群落組成と構造の変化および相互の対応関係を解析した。調査期間中(2007年6月19日〜25日)の気温の平均値から逓減率を求めたところ標高500m以上の3つの地点で湿潤断熱減率(0.47℃/100m)を示した。また、5%ごとの湿度の測定値頻度を求め、標高別にみてみると、標高500m以上の3つの地点で95%〜100%の頻度が最も高かった。ただし、山頂部は強風の影響で雲霧の発生が不安定であると考えられ747mと比較して湿度の変動係数が大きかった。12cm (45.8%)、20cm (40.8%)における表層土壌の土壌水分は山頂部で最も高かった。こうした環境に対応して木本層(胸高1.3m以上)、草本層(胸高1.3m未満)、着生層の群落組成と構造を解析した。クラスター分析によって木本層の群落はP1(911m)〜P3(521m)、P4(375m)、P5(59m)という3つのグループに区分され、雲霧林が一つのグループとして区分できた。ただし、P1、P2ではコブガシ、エダウチヘゴが共優占していたが、P3はコブガシだけが優占していた。これは雲霧林内では常緑広葉樹の成長が抑制されためシダ植物が林冠構成種として共存しているのかもしれない。また、着生層の種数は標高が減少するとともに急激に減少した。群落構造は山頂部で最大直径が大きく、最大樹高は減少しており、強風などの影響が考えられた。着生層種数/総種数(0.56〜0.40)、着生層種数/草本層種数(0.88〜0.55)から500m以上の雲霧林では、各着生層種数比が高かった。したがって、林床が暗く、空中湿度高い雲霧林では草本層より着生層の発達が著しいと考えられた。
著者
中山 浩太郎 原 隆浩 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.56, 2008-06-12

Wikipedia は知識抽出のための有用なコーパスとして,人工知能や情報検索,Web マイニングなどの研究分野で最近急速に注目を集めている.筆者らの研究グループでは,Wikipedia から高精度な大規模連想シソーラスを構築できることを証明してきたが,is-a 関係などのような,より明確な意味関係の抽出が技術的課題であった.本研究では,リンク構造解析による重要文抽出と,自然言語処理を利用した解析手法を提案し,意味関係を抽出することで,Wikipedia から機械可読な概念辞書を自動的に構築することを目指す.The fact that Wikipedia is an invaluable corpus for knowledge extraction has been confirmed in various research areas such as AI, IR and Web Mining. In our previous researches, we have proved that we can extract a huge scale and accurate association thesaurus from Wikipedia. However, to construct a Web ontology from Wikipedia, extracting explicit relation types is a remaining technical issue. In this paper, we propose a method to construct a Web ontology from Wikipedia based on parsing and link structure analysis.
著者
中澤 仁 由良 淳一 岩本 健嗣 横山 浩之 徳田 英幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.399, pp.149-154, 2009-01-15

無線センサノードを,ユビキタスサービスにおける様々な用途に広く利用するためには,多くの無線センサノードと協調的に動作しながら情報を交換する機能を,人々がいつも持ち歩いている携帯デバイスにおいて動作させることが重要である.本稿では,携帯電話上でユビキタスセンサネットワークアプリケーションを動作可能とするための技術として開発した,(1)センサ情報トランシーバ,(2)センサ情報収集ソフトウエア,および(3)Zigbee環境情報センサについて報告する.利用者は,センサ情報レシーバを携帯電話に装着し,所望のアプリケーションをダウンロード,インストールするだけで,周囲の無線センサノードを利用したユビキタスサービスを享受できる.従って本技術は,今後のセンサネットワークならびにユビキタスサービスの普及に資するものである.
著者
南山 浩二
出版者
静岡大学
雑誌
人文論集 (ISSN:02872013)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.A1-A20, 2003-07-31

The aim of this paper is to discuss about researches on ambiguous loss made by Pauline Boss and clarify the significance of this researches in the field of family researches. She has made many researches on family stress situation with putting a focus on a family's perception and meaning. In her researches and clinical work, she is keeping on paying her attention to a stress situation, ambiguous loss and its potential effect on perception and meaning. She clarified how people learn to live with ambiguous loss through the analyses of the narratives of people who suffer the loss, There are two basic types of ambiguous loss. First, people are perceived by family members as physically absent but psychologically present. Secondly a person is perceived by family members as physically present but psychologically absent. People who are facing both types of ambiguous loss have to manage something very different from ordinary, clear-cut loss. Her theory can be adapted to a wider diversity of people and families as well as a wider variety of stressors. Finally some problems around this theory are addressed in order to develop it.
著者
指山 浩志 辻仲 康伸 浜畑 幸弘 松尾 恵五 堤 修 中島 康雄 高瀬 康雄 赤木 一成 新井 健広 星野 敏彦 南 有紀子 角田 祥之 北山 大祐
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.440-443, 2010 (Released:2010-07-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

症例は53歳の男性.工事現場のコンクリートから突出した鉄筋の上に座り受傷した.その後肛門痛があったが軽度であったため3週間放置し,症状悪化後近医を受診,外傷性直腸損傷による直腸周囲膿瘍の診断にて当院紹介入院となった.入院時は肛門痛著明で歩行困難であり,脱水状態であった.直腸指診では直腸後壁側に半周性の直腸壁欠損があり,外傷性直腸穿孔の診断で,双口式人工肛門を造設し,直腸周囲膿瘍のドレナージ術を施行した.未治療の糖尿病があり,膿瘍の改善が不良で治療に難渋したが,直腸穿孔部が閉鎖していることを確認の上,術後7カ月後人工肛門を閉鎖した.杙創性直腸穿孔は通常受傷後直ちに治療される場合が多いが,経肛門的な直腸損傷の場合,症状が乏しい場合があり,本症例のように受診が遅れることがある.受診の遅延は治療の難渋につながり,合併症の頻度を高めるため,早期の診断,治療が予後の改善には重要である.
著者
上山 浩次郎
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.21-38, 2021-05-31 (Released:2022-08-01)
参考文献数
28

アイヌの人々の現在を理解する上では,アイヌ文化に注目する必要がある。アイヌの人々の復権の動きにおいて,アイヌ文化が大きな位置を占めてきたからである。そこで,アイヌ文化実践の変遷を,特に戦後に注目して検討し,現在の特徴を考察した。「アイヌ文化保存対策期」(1945~1973 年)において,アイヌ文化は,「保存」の対象とされ,高齢者によって実践され,かつ次世代への伝承が避けられていた。だが,「ウタリ福祉対策期」(1974~1996 年)に入り,制度・政策レベルでのアイヌ文化の伝承活動の奨励が進み,生活レベルではアイヌ文化の再興運動が組織的な活動を基盤としながら展開した。さらに,「アイヌ文化振興法期」(1997~2018 年)では,「アイヌ文化振興法」という法制度に支えられアイヌ文化の実践がなされていた。 019 年に成立した「アイヌ施策推進法」をみると,「民族共生象徴空間(ウポポイ)」については,アイヌ民族博物館などのハード面での整備だけではなく,その具体的な担い手の育成という点で大きな意味を持つ可能性がある。他方,「アイヌ施策推進地域計画」については,観光産業事業に偏り文化継承に関する事業が相対的に弱くなる可能性があり得る。その意味で,今後の具体的な運用のあり方が重要な意味を持つ。以上を踏まえると,「アイヌ施策推進法」は,アイヌの人々のアイヌ文化実践のあり方を,「アイヌ文化振興法期」から異なる状況へと変化させうる可能性を持ちえる。
著者
宮崎 博之 伊藤 翼 中山 浩 廣田 真史
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和元年度大会(札幌)学術講演論文集 第3巻 空調システム 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.209-212, 2019 (Released:2020-10-31)

個別分散空調は、室外機の設置状況(壁近傍、集中設置等)によっては、高温(冷房時)の吹出空気を吸込面から直接吸込むショートサーキットが生じ、能力が低下することが知られている。本研究では、室外機の設置状況、外気温度、負荷率によりショートサーキットがエアコンの性能に与える影響を定量的に把握することを目的にする。本報では環境試験室に建物壁や障害物を模擬した壁を設置し、室外機の吸込温度と外気温の関係について明らかにしたので報告する。
著者
岩下 具美 前田 保瑛 髙橋 詩乃 岡田 まゆみ 三山 浩 島田 遼太郎 栁谷 信之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.24-30, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
16

背景:救急救命士が行う医行為の質を担保する体制として病院実習(実習)がある。 救急隊の生涯教育にかかわる長野赤十字病院救命救急センター(以下,センターと略す)の取り組みを報告する。改変前:対象はセンターを管内とする消防本部(本部)のみであった。実習は1日当たり1名を受け入れ,主な項目は静脈路確保であった。救急隊を対象とする勉強会(勉強会)は夕方に年2〜3回不定期に開催していた。改変後:対象は,実習が地域メディカルコントロール協議会に属する全3本部,勉強会はセンターが担当する医療圏にある全5本部とした。実習は1日当たり2〜3名/本部を受け入れ,救急車現場出動時の医師搭乗,他隊搬送事案の見学,救急科入院患者検討会の参加などを新規項目に加えた。病院救命士を調整役とした。勉強会は日勤帯に毎月定時開催とした。結語:実習・勉強会の刷新は救急隊活動の質向上と消防本部間格差の均等化に寄与した。
著者
丸山 浩平 足立 遼子 関谷 潔史
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.248-255, 2022-11-25 (Released:2023-05-25)
参考文献数
25

COVID-19へのBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種による感染および発症予防効果が示されているが,これらの効果は経時的な低下が報告されている.一方で,接種後の抗体価は感染予防効果との相関が示唆されているが,接種後から長期間経過した時点での抗体価に影響を与える要因の報告は少ない.我々はBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン2回目接種後の職員に抗体検査を実施し,6か月以上経過している場合の,抗体価に影響を与える要因について後ろ向き観察研究を行った.このうち過去にCOVID-19罹患が判明している職員,問診票による情報収集ができなかった職員は除外した.本研究において,2回目接種から6か月以上経過している場合,抗体価が大幅に低下していることが判明した.さらに,6か月以上経過している医療従事者において,単変量解析では年齢,性別,降圧剤の使用が抗体価に影響を与える要因とされ,多変量ロジスティック回帰分析では年齢のみが抗体価に影響を与える要因とされた.年齢については本邦だけではなく,海外からの報告でも抗体価に影響を与える要因とされている.本研究の結果より,ワクチン2回目接種から6か月以上経過している場合,高齢者においては時間経過によるワクチン抗体価の低下が若年層に比べて,より顕著であり,このことは高齢者において,ワクチンによる感染予防効果が時間的な影響をより受けやすいことを示唆していた.
著者
櫻井 秀彦 恩田 光子 中川 明子 藤本 佳乃子 奥田 勅子 岡山 浩之 荒川 行生 早瀬 幸俊
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.118-123, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
15

Objective: This study quantitatively analyzes the factors causing dispensing errors in community pharmacies and explores the characteristics of these factors and their order of importance.Design and Methods: We collected data records on the contents and causes of dispensing errors as reported between April and July 2009 by a total of 320 pharmacists at 56 stores of two pharmacy chains (15 stores in Hokkaido and 41 stores in the Kansai area).  We focused on the following three types of dispensing error: 1) “measurement error”, 2) “wrong drug dispensing error” and 3) “wrong dosage form specification error”.  We conducted multiple regression analyses and discriminant analyses with occurrence frequency of each type of error as dependent variables and count frequency of each causal factor as independent variables.Results: The result of the multiple regression analyses indicated that the primary causes of the three types of errors in order of strength of the regression coefficients were as follows.  For “measurement error”: 1) pharmacist’s wrong assumption and 2) calculation error; for “wrong dosage form specification error”: 1) insufficient confirmation of prescription and 2) pharmacist’s wrong assumption; for “wrong drug dispensing error”: 1) pharmacist’s wrong assumption and 2) insufficient confirmation of prescription.  The results of the discriminant analysis indicated that only for the discriminant coefficient between “wrong dosage form specification error” and “wrong drug dispensing error” no significant difference in the mean was found (p=0.539).Conclusions: Results show that partly different factors cause “measurement error” as compared with the two other types of dispensing errors.  In addition, while basically the same factors were found to cause “wrong drug dispensing error” and “wrong dosage form specification error,” there was a difference in the order of importance of these factors.  This study uncovered differences in terms of causal factors affecting each dispensing error type.
著者
櫻田 歩夢 西山 浩司 清野 聡子
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-155, 2020 (Released:2021-02-24)
参考文献数
30

本研究では,平成29年 7 月九州北部豪雨の被害を受けた福岡県東峰村とその隣接地域に立地 する水神を対象に,その立地特性を把握し,現地住民に対するヒアリング調査,災害に関する歴史文献調査を通して,水神と災害との関連性を調査した。その結果,約8割の水神が,土石流を含む渓流の氾濫が起こりやすい場所に立地していることがわかった。また,ヒアリングから得られた4つの水神は災害,または,農業に関連して祀られており,桑鶴地区と葛生地区の水神は,台山の土石流と大肥川の氾濫から地域を守るために祀られていることがわかった。急峻な谷筋を持つ台山では,歴史的に何度も土石流災害が発生してきたと推定できるため,災害の危険性を訴える大切なメッセージが,大蛇の言い伝えとなって桑鶴地区に伝わったと考えられる。以上の結果から桑鶴地区の水神が持つ防災上のメッセージの内容について考察すると,大蛇の言い伝えを介して語り継がれた,繰り返し起こる台山の土石流災害の特徴を水神のメッセージに含ませることによって,水神が台山に繋がる地域の災害の危険性を意識付ける役割と その危険性を後世に伝える役割を持つようになり,地域の防災モニュメントとして水神を活用することができるようになると期待される。
著者
小笠原 健 荒川 史博 穐山 浩 合田 幸広 小関 良宏
出版者
Japanese Society of Food Chemistry
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.155-160, 2003-12-12 (Released:2017-12-01)
参考文献数
19

さまざまな大豆加工食品における組換え遺伝子の音量とDNA断片化の程度を調べることにより、厚生労働省により通知された公定法記載の定量PCR法の加工食品への適用可能性について検証した。豆腐のように100℃程度で加熱加工された場合は、適用できることがわかった。しかし、市販されている加工食品のように加熱され、物理的力が更にかかるオートクレーブ処理などが行われた場合、あるいは発酵食品の場合、100bp程度までDNAの厳しい断片化が引き起こされることが明らかとなった。従って、これらの加工食品中の遺伝子組換え大豆の定量を行うには95bpより短いプライマー、プローブを開発する必要があると考えられた。
著者
越智 温子 小山 浩正 高橋 教夫
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.13-19, 2009-06-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
37
被引用文献数
1

風散布型種子であるサワグルミの種子サイズのばらつきが散布に果たす効果を調べた。サワグルミの種子重と翼荷重の平方根には正の関係があり,さらに翼荷重の平方根が小さいほど終端落下速度も低かったことから,小種子ほど落下速度が低く,潜在的な散布能力は小種子のほうが高いことが示された。そこで,野外での実際の散布時に小種子の高い散布効率は散布範囲の拡大に貢献しているか調べた。その際に行った散布のシミュレーションでは,実際の野外での風速のばらつきも考慮した。その結果,種子密度が1粒/m^2以上の範囲内に散布された種子の平均重量は散布距離の遠近に関わらずほぼ一定の値となった。さらに実測として野外で散布された種子を距離別に採取した結果も,シミュレーションと同じく散布された種子の平均重量に距離による違いが無く,種子サイズのばらつきの効果は見られなかった。シミュレーションと野外での観測データの傾向が一致したことから,散布距離へ及ぼす効果は風速のばらつきのほうが種子サイズのそれよりもはるかに大きく,種子サイズの変異が散布距離に及ぼす影響は野外では認められないことがわかった。種子サイズのばらつきの意義は散布後の定着段階に求める必要があると考えられる。