著者
福村 由紀 仲程 純 高瀬 優 齋浦 明夫 石井 重登 伊佐山 浩通
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.89-95, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
23

胆嚢腺筋腫症(以下ADM)はRokitansky-Aschoff sinus(RAS)が増殖し,筋層肥大・壁肥厚を伴う後天性病変で,上皮過形成を伴うことが多い.本稿では,病理学的側面を中心にADMの現在の知見と自験例をまとめた.ADMは病変の広がりによりびまん型,分節型,底部型,混成型に分類されるが,組織形態は基本的に同じである.ADMでは筋層肥大を見るが,RASの底辺に至る筋層増殖は見られない.分節型ではADMの部位よりも底部側で筋層肥大がより高度となることも多く,底部型における中央陥凹部はRASではなく胆嚢壁の陥凹である.RASの増殖からADM形成に至る組織学的変化に関し異論は少ないと思われるが,その成因に関しては意見の一致をみていない.ADMを前癌病変とする報告は殆ど見られないが,特に分節型をリスク因子とする報告は散見される.さらなるエビデンスの集積が待たれる.
著者
春山 浩司
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.26, pp.28-43, 1972 (Released:2010-01-22)
参考文献数
50

This paper examines the meaning of “nature” in education, taking as a point of departure educational thought centered around Locke and Rousseau. In doing so, we shall draw out the two different forms of thinking concerning the awareness of nature, and then we shall examine both the postive and the negative meaning, as well as the basic characteristics of educational thought conditioned by a nature concept originating from either of these two forms of thinking. That is, the educational thought based on a scientific nature concept which, free from subjective conscience, has contributed to the intellectual liberation of man and the enlargement of self by its fundamental vein of a rational explanation of reality and the utilization of this explanation, but with the closed character of (its) conscience structure in fact, it contains a tendency to intercept the view toward a total liberation of man. On the other hand, the educational thought which draws nature into the subjective conscience and which is based on a value-reflecting normative nature concept, gave to the human being the function of criticizing the social system and has opened up the road toward complete liberation of man. It did this by perfectly subjectivising nature and adding to it a human ethos. These two concepts of nature, form the basis for characterising respecti has as its aim the formation of the “person” as such, is being visualized in contrast to a scientific knowledge (dominating knowledge) related merely to the “things” of the outside world.vely the educational theories. Among the individual theorists attention is necessarily paid to a tension or a harmony between the two. In the future it will be necessary to examine further the structure of the internal relation between these two kinds of “nature” in education.
著者
春山 浩司
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1971, no.24, pp.59-74, 1971-12-15 (Released:2010-01-22)
参考文献数
35

Locke has been chosen as an example of the consequences of the concept of “freedom in education” in the history of thought, for this is considered one of the most fundamental concepts in modern education. Because Locke treats the theory of freedom in various areas, it is first of all necessary to establish the viewpoint for arranging and analysing these areas. The two systems of coordinate axes of essential and functional freedom on the one side, and of individual and social freedom on the other, were determined. Furthermore, on the logical coordinate field resulting from the combination of these coordinate concepts various aspects of freedom, such as pedagogical freedom, epistomological freedom, religious freedom, civil freedom, are analysed and clarified as regards their fundamental nature. This analysis enables us to seek the meaning of freedom of education and visualize the essence of this concept. By way of conclusion it can be said that freedom according to Locke is a functional and individualistic type of freedom, and as a result freedom of education reflects social status presented in a twofold manner ; this freedom may be visualized as a double feedback of individual self-control and of restriction by state power. Furthermore it may be seen that Locke guaranteed the individual character of education by the thorough formation of the intellect through educational content.
著者
糸山 浩司
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.87-94, 2010-03-25 (Released:2017-08-01)
参考文献数
8

南部陽一郎博士2008年ノーベル物理学賞受賞の対象となった素粒子物理学における対称性の自発的破れの機構を、場の量子論の成立、発展を含めて論じる。
著者
丸山 浩明
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.104-128, 1992-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
48

本研究では,浅間火山山麓での実証的な先行研究の成果を踏まえ,まず集落の起源や形態,集落(もしくは農家)を核とする農業的土地利用の種目構成とその空間的配列状況に着目して,火山山麓の農業的土地利用パターンを低位土地利用パターン (A類型),中位土地利用パターン (B類型),高位土地利用パターン(C類型)の散村型 (C1型)と集村型 (C2型)に類型区分した。そして,それぞれの類型の実態とその分布状態の特質を,中部日本の主要な火山山麓全域において検討した。 水稲を中心に果樹,野菜の組みあわせに特徴づけられる低位土地利用パターンは,河川や湧泉,溜池などに隣接した水利条件の良い低平な場所で卓越する。 A類型の主要な分布域は,火山山麓の最下部にあたる標高約700m以下の高度帯に認められる。中位土地利用パターンは,水稲,果樹,野菜,工芸作物を中心に,飼料作物や花卉一苗木類までが混在する多様な土地利用種目構成に特徴づけられる。 B類型の主要な分布域は,水田卓越地帯から畑地卓越地帯への移行部に対応する,火山山麓中腹の標高約1,000m以下の高度帯である。野菜を中心に飼料作物,花卉一苗木類,水稲が組みあわさった高位土地利用パターンは,火山山麓最上部の高冷地を中心に認められる。 C類型のなかで,散村型(C1型)は第二次世界大戦後のいわゆる戦後開拓集落など新開地の土地利用を反映する類型で,自立型の野菜栽培や畜産経営が卓越する。一方,旧集落を代表する集村型 (C 2型)では,戦後大規模な夏野菜栽培が著しく進展した。 C類型の主要な分布域は,一般に火山山麓最上部の標高約900~1,400mの高度帯である。 浅間火山山麓で実証された農業的土地利用パターンの類型分布の垂直的地帯構造は,より広範な中部日本の主要な火山山麓全域においても認められる一般的かっ基本的な特質であることが本研究で明らかになった。これは,中部日本の火山山麓が歴史的に極めて類似した開発過程を辿ってきたこと,土地利用を規定する水利,気温,地形(起伏),土壌などの自然的諸条件や,開拓地・旧集落の立地形態,交通条件,国有地や入会地の分布といった経済・社会的諸条件の特質に,中部日本火山山麓特有の共通性があることなどに起因していると考えられる。
著者
上山 浩
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.796, pp.132-135, 2011-11-24

ITベンダーのロックインを防ぐには、プログラムなどの著作権をすべてITベンダーに帰属させないようにする必要がある。契約で注意したいのは、著作権をITベンダーと共有する場合だ。契約の内容によっては、事実上、ユーザー企業が著作権を持っていない状況と同じリスクを抱えることがある。
著者
関本 理佳 村山 浩 上野 晴樹
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.207-208, 1991-02-25

現在のプログラミング環境ではプログラム理解の能力を持たないので,プログラムを作成しても文法チェックしかしてくれず,またそれも分かりにくいメッセージであることが多い。まして簡単な論理ミスばかりでなくスペルミスさえも補正してくれない。これらは全てプログラマの負担となっている。人間のチュータがミスを含んだプログラムを読む時は,ミスの原因や訂正の方法を同定することが出来る。そこで我々は,人間のチュータの役割をコンピュータが代行するような教育向き知的プログラミング支援環境の開発を行っている。本稿では,実験に基づく論理エラーの分類と意図理解への応用について述べる。
著者
宮 香織 渡邉 英明 有地 あかね 菅 かほり 石川 聖華 門前 志歩 河村 真紀子 許山 浩司 依光 毅 矢内原 敦 河村 寿宏
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.135-141, 2007 (Released:2007-12-06)
参考文献数
63

体外受精胚移植(IVF-ET:in vitro fertilization embryo transfer)に代表されるART(assisted reproductive technology)の歴史は1978年から始まり約30年の間に目覚しく進歩してきた.現在では体外受精で誕生した子が親になる世代である.ARTの遺伝的安全性の検証は極めて重要であり,ART実施者は出生児のフォローアップも行うことが義務とも言える.しかし,本邦においては,体外受精によって妊娠・誕生した児についてのその後の詳細な追跡調査は多くはない.この総説では体外受精(conventional IVF)と顕微授精(ICSI:intracytoplasmic sperm injection)によって妊娠・誕生した児についての先天異常について自験例を紹介するとともに,文献的に考察を行いたい.先天異常の発生頻度は,自然妊娠とARTによる妊娠の間で統計学的有意差はないとする論文もあるが,先天異常の増加を指摘する論文があるのも事実であるため,治療を開始する際にはそのような情報を正しく患者に説明することが大切であろう.また,最近では生殖医療分野に遺伝学的要素も加わり複雑化しているが,治療を行う側はこれらの知識も必要不可欠である.
著者
栗山 浩一
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.28-39, 2016

森林など自然資源に対する市民の要求が利用価値から非利用価値まで拡大したことで,森林の環境サービスの受益者は地域住民だけではなく一般市民にまで広がっている。本研究は,林業経済学分野における市民参加研究を展望するとともに,市民参加や受益者負担の事例を見ることで,自然資源管理に一般市民の意見を反映するための課題を明らかにする。市民参加に関しては,世界遺産に指定されている知床と富士山における訪問者管理を検討し,一般市民の意見を適切に管理計画に反映することの重要性を示した。受益者負担については,滋賀県造林公社の下流費用負担と神奈川県の水源環境保全税を市民の観点から分析し,一般市民の森林に対する要求の変化に対応可能な柔軟な費用負担制度が必要であることを示した。これまでの森林政策では消費者や市民などの需要サイドよりも林業関係者などの供給サイドが優先されていたが,今後は市民の視点から森林政策を評価することが必要である。
著者
栗山 浩一 庄子 康 柘植 隆宏
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>近年,複数の地域で国立公園指定や世界遺産登録が続いている。国立公園指定については,2014年3月慶良間諸島,2016年9月やんばる,そして2017年3月奄美群島国立公園が新たに指定された。一方,世界遺産については2013年に富士山が世界文化遺産に登録され,現在は奄美・沖縄が世界自然遺産への登録を目指している。こうした国立公園指定や世界遺産登録により観光地としての魅力度が高まり,観光客数が増加することが期待されている。本研究では,国立公園指定の前後の観光客の変化を分析し,国立公園指定が観光価値にどのように影響するのかを分析する。全国の一般市民を対象に国立公園の利用についてアンケート調査を2013年から継続して実施し,国立公園指定の前後における公園利用の変化をトラベルコスト法により分析した。その結果,国立公園の指定直後には影響は少ないものの,翌年から観光価値が上昇することが示され,国立公園指定が観光価値に大きな影響をもたらすことが分かった。また国立公園指定は指定された地域だけではなく,周辺の国立公園にも影響することが示された。この分析結果をもとに国立公園の魅力度を改善するための今後の課題について議論する。</p>
著者
栗山 浩一 庄子 康 柘植 隆宏
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

2013年6月,富士山が世界文化遺産に登録されたが,富士山の世界遺産登録は富士山のある富士箱根伊豆国立公園の観光利用に影響を及ぼす可能性がある。そこで,富士山が世界遺産に登録される前後の2012年から2014年の全国の国立公園の訪問行動を分析し,世界遺産登録が各国立公園の訪問行動にもたらした影響を評価することで,世界遺産登録の経済価値を分析する。過去1年間の国立公園の利用回数をたずねるアンケート調査をWeb調査により3年間実施した。3年間累計で7373人から有効回答が得られた。この訪問データをもとにクーンタッカーモデルを用いて分析したところ,富士箱根伊豆国立公園の訪問価値は2012年では一人あたり平均3736円,2013年では7326円,2014年では8218円と上昇傾向にあった。この訪問価値のうち世界遺産登録による影響をDifference-in-Difference推定量を用いて計測したところ,世界遺産登録価値は2013年では2621円に対して2014年では4281円と上昇し,2014年の訪問価値のうち約半分が世界遺産登録の効果であることが示された。
著者
松下 紀子 小宮山 浩大 田辺 康宏 石川 妙 北條 林太郎 林 武邦 深水 誠二 手島 保 櫻田 春水
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1117-1121, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
10

症例は,45歳,男性.通勤時に突然の上腹部痛を自覚し他院へ搬送された.精査のために施行した腹部造影CTで上腸間膜動脈に解離を認め,急性上腸間膜動脈解離症と診断され,加療目的に当院へ搬送となった.来院時は血圧 143/85mmHg,上腹部に自発痛と圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった.血液検査ではアシドーシスは認めず,CK 182U/Lと軽度高値,D-dimerは正常範囲内で腸管虚血を示唆する所見は認めなかった.軽度の腹痛は残存するものの,症状は落ち着いていたため保存的加療の方針とし,禁食・ヘパリン持続投与を開始した.来院8時間後に,急な腹痛を訴え腸管の虚血所見を認めたため緊急カテーテル検査を施行した.上腸間膜動脈起始部から解離を認めIVUSでは偽腔により真腔が大きく圧排されていた.解離を修復するように遠位より,2本のステント(PALMAZ Genesis® 6×15mm,E-Luminexx® 10×60mm)を留置し,良好な血流が得られ腹痛も軽快した.急性上腸間膜動脈解離は比較的稀であり,その治療法も一定していない.今回,われわれは急性期に反復する腹痛と腸管虚血を呈した上腸間膜動脈解離に対してステント留置を行い良好な結果が得られた.文献的考察を踏まえて報告する.
著者
植田 拓也 柴 喜崇 畠山 浩太郎 中村 諒太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EaOI1038, 2011

【目的】<BR> 脊柱後彎変形(以下,円背)は加齢に伴い進行する高齢者特有の姿勢であり(Milne,1974),高齢者の約60%に認められると報告されている(川田,2006).高齢者の円背の増加はバランス能力低下(坂光,2007),呼吸機能の低下(草刈,2003)などと関係があり,円背の定量的測定の開発が求められている.また,円背進行予防運動の効果を検討するためにも,時間的な制約のある臨床現場ではより効率的で簡便な円背の測定が必要であると考えられる.<BR> 現在,円背の定量的測定のGold standardとして脊柱矢状面レントゲン画像から算出するcobb角がある(Kado,2009).また,自在曲線定規による円背指数(Kyphosis Index(%):以下,KI)が最も安価で簡便な測定方法であるとされている(Lumdon,1898).<BR> そこで本研究の目的は臨床で使用可能であり,簡便な円背の定量的測定方法の開発を目的とし,小型ジャイロセンサーを用いた円背の定量的測定の妥当性及び再現性を検討することとした.<BR>【方法】<BR> 参加者は神奈川県S市のラジオ体操会会員から募集した56歳~86歳の地域在住中高齢者96名(男性50名:平均年齢70.1±5.0歳,女性46名:平均年齢72.7±6.2歳)であった.<BR> 姿勢測定は((株)ユーキ・トレーディング社製,ホライゾンKS08010:以下,姿勢測定装置)を使用し,脊柱後彎角度(Kyphosis Angle;以下,KA)を算出した.本装置は小型ジャイロセンサーが内蔵された測定器(±0.7°の精度)であり,三次元的な角度の測定が短時間かつ正確に可能である.KAは,第7頸椎棘突起(以下,C7)と脊柱の最大後彎部を結ぶ線,脊柱の最大後彎部と両側上後腸骨棘の中点(以下,PSIS中点)を結ぶ線のなす角度である.また,外的基準として円背の程度の測定をKIにて算出した.KIは身体に非侵襲的であり,高値になるほど円背が重度と判断される指標である.また,Cobb角との高い相関が確認され(Milne,1974),検者内,検者間の再現性のある測定方法である(Lundon,1998).KIの算出は,測定を立位にて実施した.C7と両側上後腸骨棘を触診し,C7からPSIS中点までの脊柱アライメントを自在曲線定規で型どりそのアライメントを紙にトレースした後,C7からPSIS中点を結ぶ線との交点までの長さL(cm)と直線Lから彎曲頂点までの高さH(cm)を記録し,H/L×100で算出した.<BR> 統計解析は姿勢測定装置による円背測定の妥当性について,KIとKAの関連をPearsonの積率相関係数を用いて検討した.また,2回及び3回連続測定の再現性について,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient:以下 ICC(1,1),ICC(1,2),ICC(1,3))を算出し,適切な測定回数を検討した.なお,有意水準は1%未満とした.<BR>【説明と同意】<BR> 参加者には事前に書面及び口頭で本研究について十分な説明を行い,書面にて自署において同意を得た.<BR>【結果】<BR> 参加者全体のKA及びKIの平均値はKA:163.8±6.8°,KI:8.4±2.6%であった.KAとKIの間には,全参加者(r=-.63,<I>P=.00</I>,n=96),男性(r=-.64,<I>P=.00</I>,n=50),女性(r=-.62,<I>P=.00</I>,n=46)において統計学的有意な中等度の相関が確認された.<BR> KAの連続測定の再現性の検討では,2回連続ではICC(1,1):0.967(99%Confidence interval(99%CI);0.935-0.983),ICC(1,2):0.983(99%CI;0.966-0.991),3回連続ではICC(1,1):0.958(99%CI;0.9267-0.9766),ICC(1,3):0.985(99%CI;0.974-0.992)であった.<BR>【考察】<BR> 本研究では姿勢測定装置による円背の定量的測定の妥当性と再現性を検討した.結果,姿勢測定装置による円背測定の妥当性が確認された.また,ICCは0.9以上で"優秀"と定義されていること(Shrout,1979)から,2回及び3回連続測定の高い再現性が確認された.これは3回の連続測定の再現性に関しては,本装置による体幹前傾角度の計測法を検討した先行研究(Suzuki,submission)とも一致する結果となった.姿勢測定装置による円背測定の回数はKAのICC(1,1)が0.95以上であったことから1回の測定でも十分再現性は高いといえる.つまり,姿勢測定装置による円背の測定は1人の検者が1回測定すれば十分であるということができる.以上のことから,姿勢測定装置による円背測定は,妥当性,連続測定の再現性が高く,臨床現場において簡便に実施可能な円背の定量的測定方法であることが示唆された.<BR> しかし,本研究では姿勢測定装置での日の違いによる検者内再現性及び検者間再現性は検討しておらず,今後はこれらについても検討する必要がある.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 現在,求められている科学根拠に基づく理学療法の確立には治療効果を定量的,客観的に測定することが必要である.また,その測定方法は簡便であり,時間に制約のある臨床場面で容易に使用できることが前提となるべきである.本研究において,効率的かつ正確に円背の定量的測定が可能になることで,円背の進行予防に対する効果的な訓練方法の確立につながると考えられる.
著者
上村 直実 八尾 隆史 上山 浩也 藤澤 貴史 矢田 智之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1733-1743, 2014

種々の感染診断法の偽陰性に伴う「<I>H. pylori</I>陰性胃癌」が少なからず認められるが,<I>H. pylori</I>未感染の胃粘膜に発生する「<I>H. pylori</I>未感染胃癌」の頻度は稀である.「<I>H. pylori</I>未感染胃癌」として代表的なものは,分化型胃癌に関しては八尾らが提唱した胃底腺型胃癌であり,未分化型胃癌に関しては粘膜内の印環細胞癌と考えられる.胃底腺型胃癌は,おもに胃体部に発生する腫瘍で,免疫組織学的には胃型形質を主体とする低異型度の癌であるが,早期に粘膜下層への浸潤がみられるもので,日常の内視鏡診療では萎縮性変化のない胃粘膜の胃体部に存在する小さな粘膜下腫瘍様病変に注意が必要である.一方,未分化型胃癌については,未感染胃粘膜に比較的多くみられる印環細胞癌が代表的なものと思われ,内視鏡的には胃体部の小さな褪色領域に注意すべきであり,今後,症例を集積した臨床的な解析が必要である.<I>H. pylori</I>陰性時代を迎える今後,<I>H. pylori</I>陽性胃癌と未感染胃癌に関する遺伝子レベルでの検討が必要となっている
著者
坂井 隆敏 菊地 博之 縄田 裕美 根本 了 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.171-177, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

畜産物中のフィプロニルおよびその主要代謝物であるフィプロニルスルホンについて,LC-MS/MSを用いた迅速かつ高感度な分析法を開発した.試料からn-ヘキサンおよび無水硫酸ナトリウム存在下,酢酸酸性下アセトニトリルで抽出し,中性アルミナカートリッジカラムを用いて精製した.測定はLC-MS/MSを用い,ESIによるネガティブイオンモードで行った.開発した分析法を用い,畜産物6食品について添加回収試験(各食品n=5)を実施したところ,基準値相当濃度を添加した場合の真度および併行精度はフィプロニルでそれぞれ95~115および0.8~4.1%,フィプロニルスルホンでそれぞれ94~101および0.9~5.1%であった.また,添加濃度0.001mg/kgの場合の真度および併行精度も良好であった.確立した分析法の定量下限値はフィプロニルおよびフィプロニルスルホンともに0.001mg/kgと推定された.本分析法は畜産物中の基準値の適合性の判定に有用な方法と示唆された.
著者
岩田 義弘 寺島 万成 長島 圭士郎 服部 忠夫 堀部 晴司 岡田 達佳 櫻井 一生 内藤 健晴 大山 俊廣 門山 浩 戸田 均
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S195-S201, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2

われわれは下顎を支え前頸部舌骨上下筋群と胸鎖乳突筋に等尺性収縮の運動負荷を短時間に行うことにより嚥下機能の改善につながることを報告してきた。等尺性収縮は短時間での筋力増加が期待できる訓練手技であり、この訓練を高齢者 11 名 (60 - 88 歳) に毎食事前 4 - 6秒 3 回ずつ、自分自身で行い、2 - 4週間後にその効果を確認した。結果、repetitive saliva swallowing testは訓練前平均 2.7 (± 1.2) から訓練後 6.2 (± 1.6) と変化した。頸部側面単純レントゲン撮影では頤 - 舌骨間が11.1%、頤 - 甲状軟骨間が 8.4%短縮した。胸骨 - 甲状軟骨間は12.0%延長した。年齢とともに胸骨に近づいた舌骨・甲状軟骨の位置はこの訓練により頤に近づいた。このことは嚥下運動の開始が早くなり誤嚥防止に役立つと考えられる。舌骨・喉頭周囲の筋力増強を目的とした嚥下訓練は確立されたものは少なく、本手技は高齢者の嚥下機能改善に寄与することが考えられると同時に手技が簡便で短時間での効果発現が見込まれるため各種嚥下障害への応用が期待される。