著者
成瀬 一郎 後藤 知行 山内 健二 船津 公人
出版者
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.231-237, 2001-03-30
被引用文献数
1

現状の社会構造を持続発展可能なものへと転換させるためには,物質循環を機軸とする社会システムの構築が必要不可欠である。本研究ではその具現化方策の一つとして,各種産業から発生する廃棄物を未利用物質と位置付け,必要であれば最適な再資源化技術を適用することにより,それを他の産業における原料として利用するという異業種間ネットワークの構築によって,地域におけるゼロエミッション化を実現する方法論を提案する。具体的には,アンケート調査によって各事業所および廃棄物中間・最終処理業者における原料,製品,廃棄物の量と質に関するデータベース化や未利用物質を原料へ転換する再資源化技術に関するデータベース化を行い,これらを入力情報としてネットワークシミュレータにより解析を行う。本報では,豊橋市および東三河地域を対象地域として,農業・漁業・鉱業・建設業・製造業の各事業所1,139社,廃棄物中間・最終処理業者64社についてアンケート調査を行い,それぞれ236社(回収率:20.7%),32社(回収率:50%)の回答結果からデータベースを作成した。また,文献調査等により,総数383件の再資源化技術情報に関するデータベースも作成した。さらに一例として,作成したデータベースより廃ポリエチレンと燃え殻を入力情報としてネットワークシミュレータによる現状での地域内物質循環について解析を行った。次に得られた結果から,適当な再資源化技術をデータベースより抽出し,仮想的に組み入れた場合の物質循環についても検討した。結果として,各種データベース作成とそれを利用したネットワークシミュレー夕による解析は,最適な地域物質循環ネットワーク構築のための有効なツールになるものと考える。
著者
長澤 和也 山岡 耕作 大塚 攻 海野 徹也 奥田 昇 山内 健生
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

海産栽培漁業種の生態を寄生虫を生物標識に用いて解明するために、瀬戸内海における主要放流魚であるマダイ、クロダイ、メバル類などの外部・内部寄生虫相を明らかにした。瀬戸内海の6水域からマダイ1歳魚を採集し、寄生虫相を比較することにより、系群識別を試みたところ、マダイは比較的狭い海域で小さな地方群を形成していることが示唆された。また、クロダイは内部寄生虫相に基づくと、日本各地で異なる系群を形成していると推測された。
著者
小松 謙之 山内 健生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.25-31, 2022-03-25 (Released:2022-03-28)
参考文献数
61

2015年から2020年にかけて,茨城県,埼玉県,東京都,神奈川県,長野県,静岡県においてツバメ類3種の巣に生息する節足動物を調べた.巣の数は,ツバメが51個,イワツバメとヒメアマツバメが各6個の合計63個であった.巣から7目13種以上の節足動物が採集された.吸血動物に関しては,ツバメの巣からはシラミバエ類29個体(検出率10%),ニワトリノミ81個体(検出率2%),ツバメヒメダニ46個体(検出率3%)の虫体を得た.トリサシダニとスズメサシダニについては,両種とも検出率13%であった.イワツバメの巣からはツバメトコジラミ1,699個体(検出率83%),シラミバエ類88個体(検出率83%),スズメトリノミ50個体(検出率67%),ツバメヒメダニ359個体(検出率67%)が得られた.ヒメアマツバメの巣からは重要な吸血動物は得られなかった.今回の調査で,ニワトリノミとツバメヒメダニがツバメの巣から初めて採集された.イワツバメシラミバエは我が国のツバメの巣から初めて発見された.ニワトリノミとツバメヒメダニはツバメの新しい巣(巣を撤去した年に営巣)からは得られなかったが古い巣(以前からあった巣の上に営巣され,巣を撤去した年まで使用)から採集され(検出率は両種とも12.5%),新しい巣と古い巣における検出率に有意差がみられた.
著者
小松 謙之 仲村 昇 山内 健生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.223-225, 2016-12-25 (Released:2017-10-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 5

Human infestation of the swallow bug Oeciacus hirundinis (Hemiptera: Cimicidae) was confirmed in an apartment complex in the suburbs of Tokyo. Source of the bugs were nests of house martin Delichon dasypus attached to the outer wall. Swallow bugs were successfully eradicated from the room by applying heat and pesticide treatment for bedbugs. Bugs could be kept under captivity by feeding fetal mouse twice a month. We experimentally confirmed infestation by O. hirundinis. This report is the first confirmed human infestation and eradication case of the swallow bug in Japan. Since house martins are a common migratory bird in Japan, potential cases of human infestation may not be rare. In the future, it will be necessary to investigate bedbugs and their prevention, for preventing recurrence and identifying the kind and the nest building of the outside bird.
著者
山内 健生 岸本 年郎 角坂 照貴 杉浦 真治 岡部 貴美子 藤田 博己
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第60回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.39, 2008 (Released:2008-07-01)

東京都の小笠原諸島は特異な生物相を有する海洋島で,コウモリ類を除く陸生哺乳類は本来分布していなかった.しかし,19世紀以降,様々な陸生哺乳類が同諸島へ持ち込まれ,現在では,こうした哺乳類が外来種問題を引き起こしている.これまで同諸島のマダニ相に関する知見は皆無であったため,われわれは2007年4~10月に同諸島父島列島の弟島(5.2 km2)と父島(23.8km2)においてマダニ相調査を実施した. 弟島では,外来生物対策として駆除されたノヤギとノブタの体表を調査して寄生個体を採集したほか,フランネルを用いて植生上から未寄生個体を採集した.父島では,外来生物対策として駆除されたクマネズミの体表を調査して寄生個体を採集した. 採集されたマダニ類は,Boophilus microplus(弟島),Haemaphysalis flava(弟島),Haemaphysalis hystricis(弟島),Ixodes granulatus(弟島,父島)の3属4種であった.なお,採集法別の内訳は以下のとおりであった. 植生上:H. flava(NL),H. hystricis(NL),I. granulatus(L) ノヤギより:B. microplus(♂♀),H. flava(N),H. hystricis(♂♀N) ノブタより:H. hystricis(♂♀) クマネズミより:I. granulatus(♀) (L:幼虫,N:若虫)
著者
山内 健生 尾崎 清明
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.97-99, 2007
被引用文献数
2

2005年8月21-22日に沖縄島国頭村西銘岳で2雌の <i>Ornithoica exilis</i>(ハエ目:シラミバエ科)を2個体のヤンバルクイナ <i>Gallirallus okinawae</i> 幼鳥の体表から採集した。宿主のヤンバルクイナはいずれも良好な健康状態であった。今回の記録は沖縄島における <i>O. exilis</i> の初記録であり,ヤンバルクイナは <i>O. exilis</i> の新宿主記録となる。
著者
山内 健生 矢田 脩
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.243-246, 1999-09-30
被引用文献数
1

Gandaca harina simukensis Yamauchi et Yata,ssp.nov.インドネシアのメンタワイ諸島バツ群島のシムク島からGandaca harinaの一新亜種,simukensis ssp.nov.を記載した.本亜種は,雄の翅が淡いレモン色であること,雌の翅表が淡いクリーム色,裏が黄色みを帯びた淡いクリーム色であること,雌雄前翅表面の黒帯の巾が極めて狭く一様であることなどから,原名亜種と容易に区別できる.特に,本亜種の雌に見られる前翅表面の非常に狭い黒帯は他のいずれの亜種にも見られない.本亜種の雌雄交尾器の形態は,Gandaca harinaの種内変異の幅に含まれた.
著者
山内 健生 渡辺 護
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-16, 2013-05-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
16

富山県の山地(標高330m, 664m, および1,120m)にて,Townes型マレーズトラップを2009年7月から9月まで連続して設置し,スズメバチ類の捕獲を行なった.その結果,2亜科16種を捕獲した.捕獲個体数がもっとも多かったのはシダクロスズメバチで,全個体数の59.1%を占めた.ツヤクロスズメバチがこれに次いだ(15.7%).3地点とも最優占種はシダクロスズメバチであったが,種構成は標高によって異なっていた.アシナガバチ亜科に関しては,標高の高い地点ほど捕獲種数と個体数が少なく,標高1,120 m地点ではまったく採集されなかった.一方,スズメバチ亜科では標高が高い地点ほど捕獲種数と個体数が多かった.
著者
山内 健生 鈴木 大
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.345-349, 2008
被引用文献数
1 5

ヌマエラビルは日本と中国に分布し,淡水性のカメ類を宿主とする蛭である.本種の日本国内における記録は乏しく,その分布域はよくわかっていなかった.そこで,本州,四国,九州においてヌマエラビルの分布状況を調査した.その結果,本種が本州(石川県以南)と四国(北部)に分布することを確認した.本種の宿主はクサガメとイシガメであった.大部分のヌマエラビルは宿主の背甲と腹甲の間の柔らかい皮膚に付着していたが,眼窩と背甲に付着していた個体も確認された.宿主の背甲上には,しばしば,本種の卵塊が付着していた.
著者
山内 健生 渡辺 護 沢邉 京子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.101-104, 2020-06-25 (Released:2020-06-25)
参考文献数
12

From 2013 to 2014, ixodid ticks (Acari: Ixodidae) were collected by flagging at seven sites of two areas, Noto and Kaga, in Ishikawa Prefecture, Honshu, Japan. As a result of the survey, the following four ixodid species were collected: Haemaphysalis flava, Haemaphysalis longicornis, Ixodes ovatus, and Ixodes turdus. This is the first record of I. turdus from Ishikawa Prefecture. Haemaphysalis flava was the dominant species in Noto area. On the other hand, Haemaphysalis longicornis was predominant in Kaga area.
著者
山内 健生 高野 愛 丸山 宗利 川端 寛樹
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.143-148, 2012-11-25
参考文献数
15
被引用文献数
8

A Japanese male repeatedly infested with <I>Amblyomma testudinarium</I> in Malaysia was reported. He visited to Ulu Gombak, Malay Peninsula, Malaysia on April and May 2007, and he recalled three times of tick bite during traveling. The first tick bite was by one nymph infested on the inner side of the brachium of the patient. After a few days, erythema with a diameter of 2 cm was found at the site of tick attachment. Pain of the site remained for 20 days. The second tick bite was by larvae infested on the skin surface of the abdomen, basal portion of the thigh, and scrotum of the patient. He felt a pain at the moment of tick infestation. The pain remained for 15 days. The third tick bite was by a larva, and the tick was found in the phyma of his back immediately after his return Japan.
著者
山内 健生 中谷 友美
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.239-242, 2016-12-25 (Released:2017-10-12)
参考文献数
19
被引用文献数
5

2010~2015年に富山県で経験したマダニ人体刺症10例を報告した.それらの内訳は,ヒトツトゲマダニ3例,タカサゴキララマダニ2例,およびキチマダニ,ヤマトチマダニ,フタトゲチマダニ,ヤマトマダニ,シュルツェマダニがそれぞれ1例ずつであった.これらのうち,ヤマトチマダニによる1例は,北海道で刺咬されたものと推定された.今回2例を報告したタカサゴキララマダニによる人体刺症は,富山県では1976年に1例が確認されて以来の症例である.富山県では,近年のイノシシの定着にともなって,イノシシと関係の深いタカサゴキララマダニによる人体刺症が発生していると考えられる.
著者
山内 健生 田原 研司 金森 弘樹 川端 寛樹 新井 智 片山 丘 藤田 博己 矢野 泰弘 高田 伸弘 板垣 朝夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.297-304, 2009
被引用文献数
18

島根県で唯一の日本紅斑熱汚染地域である弥山山地(島根半島の西端)とその周辺地域において,マダニ相の調査を実施した.旗ずり法では7,497個体が採集され,次の12種に分類された:タカサゴキララマダニ,タイワンカクマダニ,ツノチマダニ,キチマダニ,タカサゴチマダニ,ヤマアラシチマダニ,ヒゲナガチマダニ,フタトゲチマダニ,オオトゲチマダニ,タネガタマダニ,ヤマトマダニ,アカコッコマダニ.弥山山地ではヒゲナガチマダニとフタトゲチマダニがそれぞれ12〜4月と5〜8月に優占し,両種の採集頻度は弥山山地から離れるにつれておおむね低下した.弥山山地は島根県で唯一のニホンジカ生息地であるため,ニホンジカの体からもマダニ類を採集した.その結果,819個体が採集され,次の4種に分類された:フタトゲチマダニ,オオトゲチマダニ,ヤマトマダニ,タヌキマダニ.ニホンジカから4〜6月に採集された全マダニ個体数の87.6%をフタトゲチマダニが占めていたことから,弥山山地のニホンジカはフタトゲチマダニの主要な宿主であると考えられた.
著者
山内 健介 金氏 毅 野上 晋ノ介 山下 善弘 高橋 哲 永山 純一郎 酒井 香織 酒井 昭行
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR JAW DEFORMITIES
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.205-210, 2010-08-15 (Released:2012-03-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

The most frequently used techniques for correcting skeletal Class III deformity are sagittal split ramus osteotomy (SSRO) and intraoral vertical ramus osteotomy (IVRO). The purpose of this study was to compare the clinical outcome including skeletal stability after SSRO with semirigid fixation and IVRO. The subjects of this study were 23 patients who underwent SSRO for mandibular setback with semirigid fixation by titanium miniplate and 20 patients who underwent IVRO for mandibular setback without interosseous fixation. The mean period of maxillo-mandibular fixation was 5.1 days in the SSRO group and 7.3 days in the IVRO group. The evaluation items were skeletal changes, operation time, blood loss, sensory disturbance, temporomandibular joint (TMJ) sound and mandibular range of motion (ROM). Compared with the SSRO group, the B-point and pogonion moved significantly posteriorly in the IVRO at more than 6 months after surgery. Operation time, blood loss and occurrence of sensory disturbance were also less than those in the SSRO group. There were no significant differences in TMJ sound and ROM. The results of this study showed that both methods had minimal relapse and no significant difference in comparison by measurement of B-point and pogonion. In conclusion, both methods are effective for correcting skeletal Class III malocclusion, and the surgical method should be selected in consideration of each clinical distinction.
著者
山内 健生
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.13-17, 2014-05-15

屋久島の原生的照葉樹林とその近隣のスギ人工林とで,Townes型マレーズトラップとIBOY式ウインドウトラップを用いてカミキリモドキ類を調査した.マレーズトラップでは5種61個体が捕獲された.個体数がもっとも多かったのはカトウカミキリモドキで,全個体数の53.6%を占めた.フタイロカミキリモドキがこれに次いだ(29.0%).オオサワカミキリモドキ,オキナワカミキリモドキ,ホソカミキリモドキは少数が採集されたのみであった.カトウカミキリモドキはスギ人工林で多くの個体が捕獲された.カトウカミキリモドキは3月下旬から7月下旬に捕獲され,性比は雌に偏っていた.ウインドウトラップではカトウカミキリモドキ8個体のみが捕獲され,性比は雄に偏っていた.
著者
山内 健治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.243-243, 2008

沖縄戦における集団自決壕からの生存者に関する聞き取り内容の社会人類学的分析である。沖縄本島で1945年4月2日に起こった、通称、チビチリガマとよばれる83名の死者をだした避難壕の様子と日本軍・米軍との人間関係の構造を分析し、人類学者としてのその意味を考察する。事例は、チビチリガマからの生還者・ハワイ・オアフ島在住・上原進助氏のライフヒスリーを中心とする。