著者
松岡 純子 玉木 敦子 初田 真人 西池 絵衣子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.2_12-2_20, 2013-06-20 (Released:2013-07-04)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

目的:本研究の目的は,広汎性発達障害児をもつ母親が体験している困難と心理的支援について明らかにすることである.方法:広汎性発達障害児の母親10名に半構成的面接を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:母親が体験している困難は,【適切な医療・療育環境の不整備ゆえに増大する苦悩】【家事,療育,教育支援のために余裕のない日常】【手探りの子育て】【長期にわたって続く心理的揺れと子どもの将来への心配】【学校生活に関する心配とストレス】として表された.母親が得ている心理的支援,および必要としている心理的支援は,【家族・友人・地域の協力者の理解と助言による支え】【家族や友人に相談できない状況】【気兼ねなく利用できる心理的支援への希求】【ゆとりの時間による気分転換】【子どもの長所や成長を確認することによる希望】【子どもの長所や成長に焦点を当てた支援への希求】として表された.結論:広汎性発達障害の特性と心理的支援に関する知識と技術をもつ専門家による母親への心理的支援や,母親への支援とともに子どもの長所や成長に焦点を当てた子どもへの支援の必要性が示唆された.
著者
宮崎 政行 吉岡 純夫 土方 明躬
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.30, no.331, pp.330-335, 1981-04-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

This paper presents the low cycle fatigue properties of two kind of solder materials and evaluation method of thermal fatigue life for solder joints. Thermal stress at the solder joint of semiconductor devices subjected to thermal cycle is discussed. Thermal fatigue test results of semiconductor devices are compared with the predicted life obtained from the low cycle fatigue strength of solder.The results obtained are as follows:(1) The mechanical shear properties depend on the test temperature and strain rate for two solder materials (60 Pb-40 Sn and 88 Pb-10 Sn-2 Ag). The low cycle fatigue strength of these solder materials can be expressed by equation (1). This equation (1) is valid for the test temperature range from 20°C to 135°C and the hold time up to one hour.ΔγT·Nf0.85=14.0 (1)where ΔγT and Nf represent the total strain amplitude and the number of cycles to failure, respectively.(2) By taking the nonlinear stress-strain properties into account, a theoretical analysis was made to obtain the thermal shear strain in the solder joint. The effects of major structural dimensional factors on shear strain were clarified.(3) Thermal fatigue life tests of semiconductor devices were conducted and the resistance change method was adopted to detect the fatigue failure of devices. The predicted life was found to be in a rather safety side compared with the measured life.
著者
岩崎 弥生 荻野 雅 野崎 章子 松岡 純子 水信 早紀子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

リカバリーは、病気から生じた障害をもっていたとしても、満足でき希望に満ち社会貢献できる生活を送る方法として認識されている。リカバリー志向のアプローチは、当事者と医療従事者のパートナーシップを基軸に、精神障害をもつ当事者の癒しと安寧をもたらす代替的なサービスとして注目されている。本研究は、精神障害をもつ人のリカバリーの概念を、精神障害をもつ当事者の視点から明らかにして、リカバリーを促す看護援助プログラムの開発・評価することを目標とした。平成16年度は、地域で暮らす精神障害者を対象に、当事者の視点からリカバリーの概念を明らかにすることを目標として、質的調査を実施した。地域で生活する精神障害者47名(男性35名、女性12名)から、面接インタビューを用いた研究への参加同意を書面で得た。質的分析の結果、当事者が考えるリカバリーとして、「傷を抱えながら新しい自分に成長する」および「社会通念にとらわれない自分らしい生き方をする」という二つのカテゴリーが析出された。また、リカバリーに関連する要因として、(1)「無理」に挑戦する、(2)自分でも病気を知り管理する、(3)地域の資源を組み合わせて普通の生活に近づける、(4)病気や障害をもって生きるには保障と周囲からの信頼が要る、(5)人並みに生きたいと思うと苦しい、といった五つのカテゴリーが析出されたが、これら五つのカテゴリーのうち、最初の二つのカテゴリーは障害をもつ個人としての側面におけるリカバリーを示し、最後の三つは社会的に周縁化された人々の自信と能力を削ぐ社会的システムの特徴を示唆した。結果から、精神疾患・精神障害に対する社会的な価値の転換の必要が示唆された。平成17年度は、前年度の研究成果を踏まえて精神障害者のリカバリーを促す看護援助を開発し、その有用性を検討した。リカバリーを促す看護援助プログラムは、「回復の希望」、「自分の擁護」、「わがままの発揮」、「新しい自分の構築」を促すことを目的とした四つのセッションから成り、小グループで話し合う形態で進めた。地域で暮らす精神障害者8名(男性6名、女性2名)から、書面で研究への参加同意を得た。プログラムでの話し合いの内容は録音し、観察の内容はフィールドノートに記録した。小グループでのディスカッションは、対象者が相互に新しい対処方法について学び、お互いの強みを発見し、病気の経験を人生の中に再統合することを促した。援助過程の中で浮上してきた対象者のリカバリー(回復)の中心的なテーマは、病気や障害の管理についてではなく自分の生き方に関してであり、リカバリーが全人的な過程であり、精神医療システムの範囲では捉えきれないことを示唆した。リカバリーを促すには、本人の脆弱性や障害されている部分に働きかけるのではなく、人生という観点からリカバリーを捉える全人的なアプローチの必要が示唆された。
著者
友岡 純子
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.37-47, 1994-06-04

日本語に限らず一つの言葉は表面的な語義の背後に内包的意味を持っているが、第二言語習得においてはどのように扱うべきなのであろうか。表面的な語義の理解だけでは本当の意味で言語を習得したことにはならない。言葉の背後に広がるイメージの理解を通して異文化を理解することを目的に、俳句を教材にした日本事情の授業を試みた。本稿は、俳句の季語が持つ季節感のアンケート調査の結果から、日本人と外国人のイメージのずれを明らかにし、そのずれを埋めるべく試みた授業の実践報告である。
著者
古城 慶子 坂元 薫 石郷岡 純
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.29-37, 2013-02-25

本稿では急性妄想幻覚状態後の推進低下期に焦点を当てて、病相期性経過段階を構成するpostpsychotic depression(PPD)と単極性ないしは双極性うつ病との間に症状構成、薬物療法および転帰に差異があるか、比較検討した。対象は5年以上経過を確認できた内因性精神病45例を母集団として経過のいずれかの時期にRDCによって統合失調症、統合失調感情病、特定不能の機能性精神病と診断され、しかも妄想ないしは幻覚が前景にある20例のうち推進低下期が後続するもの9例である。RDCによってそれらの推進低下期の横断面病像を診断すると、定型うつ病(D;2例)、準定型うつ病(d;4例)、その他の精神医学的障害(OPD;3例)であった。これらとRDCで規定した単極性うつ病(13例、病相数44)および躁病後に引き続くうつ病(10例、病相数12)とを比較した。PPDのDおよびdと単極性ないしは双極性うつ病のDおよびdとの比較では症状構成および炭酸リチウム療法以外の薬物療法に差はなかった。病相持続期間はPPDが単極性あるいは双極性うつ病相に比べ有意に短い傾向にあった。PPDのDおよびdとPPDのOPDとの比較では抑うつ気分と睡眠覚醒障害に差が認められたが、薬物療法と持続期間に差はなかった。PPDには明瞭な抑うつ症候群と推進低下症候群としかいえないものとがあったが、両群ともに積極的な抗うつ療法によって短期間で寛解していたことからうつ病の軽症型の可能性が示唆された。
著者
片岡 純 カタオカ ジュン Kataoka Jun 佐藤 禮子 サトウ レイコ Sato Reiko
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-8, 2009-12
被引用文献数
1

本研究の目的は,外来治療期から寛解期において,悪性リンパ腫患者が病気を克服するための統御力を獲得するプロセスを明らかにすることである。悪性リンパ腫に対する外来治療を終えた通院患者で研究参加に同意の得られた20名を対象に,面接法と参加観察法により資料を収集し,エスノグラフィーの手法を用い分析を行った。悪性リンパ腫患者の統御力獲得は,【[血液のがんではもう駄目だ]の思いが《治せるがんなら治すしかない》思いへ転換する】,【悪性リンパ腫を治すための予定治療を何が何でも完遂させる】,【がん治療を受けながら地域での生活の正常な営みを目指す】,【つきまとう不安を押しのける】,【《人に頼ったって駄目,自分で頑張るしかない》の思いと《支えてくれる人のためにも頑張ろう》の思いが共在する】【命・健康の大切さを肝に銘じて希求する有り様で生きる】,【治療後に残るダメージを軽減して通常生活を取り戻す】,【《自分なら乗り越えられる》思いを獲得する】など9つの局面からなるプロセスであることが明らかになった。患者が悪性リンパ腫罹患を契機として統御力獲得に至るには,①病気克服の意志決定,②主体的療養態度の形成,③出来事の影響を軽減できた自己の能力に対する肯定的評価,④コントロール感覚の獲得,の4つの課題を達成する必要がある。患者の統御力獲得を促進するためには,これらの4つの課題の達成を支援する看護援助が必要である。The purpose of this study was to describe the process by which malignant lymphoma patients in an ambulatory setting acquired mastery to overcome their illness. Twenty outpatients, who finished the treatment for malignant lymphoma in an ambulatory setting, participated in this study. Data were collected by a semi-structured interview and the participant observation, and analyzed using ethnography. Mastery was acquired through nine aspects. The nine aspects were: [Deciding to cure the malignant lymphoma by their own power, if it can be cured], [Completing the schedule of treatment for curing a malignant lymphoma by any means], [Aiming at living a normal life in the community, while undergoing cancer treatment], [Pushing aside the anxiety of hanging around me], [Living by how to desire, as remembering the importance of health and life], [Recovering a normal life by reducing damage after the treatment], [Permitting the anxiety of recurrence and ambiguity], [Acquiring the confidence of "I can overcome difficulties with my own power in the future"], e.t.c. In ordered for malignant lymphoma patients to acquire mastery, it is indispensable to satisfy four tasks. Four tasks are, (1) decision making to overcome the illness, (2) making a positive attitude, (3) fostering the self-efficacy as a result of coping with a problem, and (4) gaining a sense of control. Therefore it is important to provide nursing interventions that assist malignant lymphoma patients to satisfy these tasks on their own.
著者
長岡 純治
出版者
日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.1_011-1_024, 2014

アントニ・ファン・レーウェンフック(Antonie van Leeuwenhoek,1632-1723)は,自作の顕微鏡を駆使することで,細菌や原生動物などを発見し,また,赤血球や筋肉の横紋などを観察したことはあまりにも有名な話である。同時に,彼はバッタのような無脊椎動物を含むあらゆる動物の精液を観察することで,運動する能力を有する赤血球より小さな細胞,すなわち,精子を発見すると共に,精子が懸濁されている精漿部分にスペルミンの結晶を見出し,単純な液体ではないことを報告した。しかし,あらゆる動物の精巣で形作られた精子は,自発的に運動能を獲得するわけではないし,ましておや,受精能も持つわけでもない。例えば,哺乳類精子は,精巣の細精管の中でその形は完成するが,その後,セルトリ細胞から放出・排精されても,本来の運動能も受精能力も持たない。そして,オスの生殖輸管である精巣上体とそれに続く輸精管,さらに射精により,メスの生殖輸管である膣,子宮,輸卵管へと移動することで,次第に運動パターンと激しさが変化していき,その過程で受精能が獲得(capacitation)される。
著者
江淵 直人 中塚 武 西岡 純 三寺 史夫 大島 慶一郎 中村 知裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

オホーツク海および北西北太平洋親潮域の高い海洋生物生産性を支えている物質循環のメカニズムを,海洋中層(400~800m)の循環と鉄の輸送過程に注目して,現場観測と数値モデルによる研究を行った.その結果,オホーツク海北西大陸棚起源の鉄分が,海氷の生成とともに作られるオホーツク海中層水によって移送され,千島海峡で広い深度層に分配された後,西部北太平洋に送り出されている様子が定量的に明らかとなった.
著者
鈴木 豪 志賀 剛 木原 貴代子 大熊 あとよ 西山 寿子 小林 清香 鈴木 伸一 西村 勝治 石郷岡 純 萩原 誠久
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.381-381, 2011-10-25

第6回東京女子医科大学メンタルヘルス研究会 平成23年6月23日 東京女子医科大学総合外来センター5F 大会議室
著者
西岡 純
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.19-36, 2006-01-05

サイズ分画測定法を用いて外洋海域における鉄の存在状態を研究した。その結果, 従来"溶存態"と定義されてきた画分中にはコロイド状鉄が含まれており, 海水中の植物プランクトンによる鉄の利用過程や地球化学的鉄の循環を理解するために重要な画分であることを示した。また, 国際共同プロジェクトとして, 北太平洋亜寒帯域の西部および東部で現場鉄散布実験を行ない, 大気から供給される鉄が他海域より多いと考えられる西部海域においても, 鉄の不足が生物生産を制限する要因であることを明らかにした。さらに, 西部海域が鉄制限海域になるプロセスとして, 供給された鉄が, 速やかに植物プランクトンが利用しづらい形態に変化してしまうことが重要であることを示した。海洋における鉄の生物地球化学的な研究は, 自然海域における生物生産の諸過程を理解するためには欠かせない分野と成りつつある。本稿では, 著者がこれまでに展開してきた, 海水中の鉄の存在状態と鉄が生物生産に果たす役割に関する研究の一部を紹介した。
著者
西岡 純
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、冬季に砕氷船を用いた観測を実施し、得られたオホーツク海の海氷サンプルの化学分析を実施した。海氷中には高い濃度で大陸棚由来の鉄分が取り込まれており、オホーツク海の海氷が鉄など微量栄養物質を移送するのに大きな役割を果たしている事が示された。海氷が融解する際には、海洋表層の主要栄養塩は希釈されるが、鉄分は付加される傾向にある事が明らかとなった。本研究の結果から、海氷の広がりは、極域・亜極域の栄養物質の循環に大きな影響を与え、春季の生物生産の質や量を変化させている事が示された。
著者
安田 一郎 羽角 博康 小松 幸生 西岡 純 渡辺 豊 中塚 武 伊藤 幸彦 建部 洋晶 勝又 勝郎 中村 知裕 広江 豊 長船 哲史 田中 祐希 池谷 透 西川 悠 友定 彰
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

千島列島やアリューシャン列島海峡域において、中深層に及ぶ通常の数千倍の乱流鉛直混合の存在を、観測によって実証した。この大きな潮汐鉛直混合は、鉄や栄養塩等の物質循環を通じて、親潮など北太平洋亜寒帯海域の海洋生態系に大きな影響を与える。さらにその潮汐混合が18.6年周期で変動することによって生じる海洋変動が、日本東方海面水温とアリューシャン低気圧等の大気海洋相互作用を通じて増幅し、太平洋規模の気候・海洋の約20年変動に影響することが、観測・モデルの両面から明らかとなった。