著者
岸本 千佳司 Chikashi Kishimoto
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2018-03, pp.1-52, 2018-05

本稿は、米国シリコンバレーのベンチャー企業やビジネスモデルおよびそれを支える各種アクターを、相互に関連し支え合う「エコシステム」として理解し、その体系的解説の提示を課題とする。そこで、ベンチャーエコシステムを「起業家とベンチャー企業」と「支援アクター」という大きく二つのセグメントの間の循環で構成されるものと想定する。「支援アクター」は、「大学と研究機関」「経営支援専門家(法律家、会計士、アクセラレータ等)」、「資金提供者(ベンチャーキャピタル等)」、「大企業」で構成されると考える。彼らは「起業家とベンチャー企業」に対し、各々の立場から各種支援やリソースの提供を行う。逆に、ベンチャー企業が成功した際は、それを支えてきたアクターに、色々な形での見返りを与える(キャピタルゲインの獲得、事業・技術の補完、人材獲得等)。この循環が回り続けることでエコシステム全体が存続していくのである。 本稿では、両セグメント、およびその中の各アクターの動向を、従来の状況に加え、近年(概ね2000年代以降)の新たな展開について可能な限り解説した。その内容を簡単に紹介すると以下のようになる。先ず、「起業家とベンチャー企業」セグメントについては、活発な起業文化と濃密な技術コミュニティの存在が、起業家の輩出、および起業家・経験者の蓄積を支えてきた。加えて、近年では、起業サポートインフラの整備が進み、かつシリコンバレー流のビジネス手法が確立した結果、起業が一層容易となり、特に若者の間で起業の「ポップカルチャー」化が進んだ。合わせて、ユニコーン企業が輩出している。「支援アクター」の「大学と研究機関」では、スタンフォード大学等からの豊富な人材と技術シーズの供給、産業界との連携に加え、近年は、起業家育成プログラムの充実がみられ、学生や教授らによる起業が強く奨励されている。 「経営支援専門家」については、従来からある、ベンチャー経営に精通した経営実務専門家(法律家、会計士等)からのサービスに加え、近年は、コワーキングスペースやアクセラレータのような起業家支援施設・育成プログラムが登場し、事業成長の加速と起業家コミュニティ形成の促進がなされている。「資金提供者」の分野では、従来、当地の半導体・エレクトロニクス産業の技術的・起業家的発展とシンクロする形でベンチャーキャピタル(VC)業界が発展してきた。近年は、新世代Web起業家登場に合わせるように、VC業界の再編(従来型VCの停滞と「スーパー・エンジェル」の発展)がみられた。同時にクラウドファンディングが生み出され、資金調達ルートが一層多様化した。「大企業」の存在もエコシステムにとって不可欠である。かつては、スピンオフ等を通じた起業家・経営人材の供給が主な役割であったが、近年は逆にM&Aによりベンチャー企業を活発に取り込んでいる(出口戦略としてのM&Aの重要性上昇)。また、コーポレート・ベンチャーキャピタルもブームとなり、M&Aやオープンイノベーションを支えている。 以上のように、エコシステムの各分野で新陳代謝や新たな仕組みが生み出され、層が厚くなり、全体として支援/リソース/見返りの流れが血液のごとく循環して、システムの生命を維持しているのである。
著者
島村 幸成 藤元 健太郎 佐藤 衞 岸本 重治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.626-627, 1990-03-14

ペーパーレスオフィスが考え出されてから本当に長い年月がたった。しかしながら我々の周りではコピーの「紙」の他に、新しくDTPによる「紙」が氾濫してきている。特に印刷部数の少ないDTPでは試し刷りが紙使用のほとんどを占めるので、捨ててしまう紙が多いのが問題である。コンピュータディスプレイでのプレビュー機能が一部利用されているが、紙に比べて画像品質がよくないので本当にプレビューにしか使えず、ペーパーレスにはならない。我々はディスプレイで文書を読むためのグレースケールTeXを試作検討中である。今回はプレビューア、特にグレースケールフォントを生成する方法について検討したので報告する。
著者
飯島 義雄 秋吉 京子 田中 忍 貫名 正文 伊藤 正寛 春田 恒和 井上 明 安藤 秀二 岸本 寿男
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.500-505, 2009-09-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

2005 年12 月,神戸市内において鳥類展示施設の従業員の間でオウム病が発生した.従業員は,オウム病等の人獣共通感染症に関する研修等を受けておらず,鳥の糞の始末等を行う場合にも,マスク,手袋,作業着等の使用は限られていた.67 名の従業員のうち,4 名が肺炎を呈しており,2 名がオウム病肺炎と確定診断された.それ以外に19 名が発熱や咳などの症状を訴えたが,オウム病とは診断されなかった. オウム病発生時,約970 羽が検疫もされず,個体識別もされず飼育されていた.餌や水に混ぜてのドキシサイクリン投与に効果がなかったため,全鳥の個体識別とPCR にてクラミジアの検査を実施した.比較的大量のクラミジアを排出していたトリに,ヒムネオオハシ1 羽,オシドリ1 羽,マガモ3 羽がいた.また,死亡したオキナインコ1 羽の臓器からも大量のクラミジアが検出された. 肺炎患者1 名の気管支肺胞洗浄液がPCR でクラミジア陽性であったことより,主要外膜タンパク質(major outer membrane protein : MOMP)の塩基配列を決定した.上記のトリ由来のMOMP の配列と比較したところ,ヒムネオオハシから検出したMOMP の塩基配列が,患者のそれと完全に一致した.それ以外のトリ由来のものは,1~5 塩基異なっていた.ヒムネオオハシは,閉鎖的な部屋に放たれており,作業中にその排泄物を吸い込んで感染したものと推察された. 今回のオウム病集団発生を通じて,①オウム病など人獣共通感染症に対する知識と感染対策の必要性,②迅速診断の難しさ,③血清診断の難しさ(PCR でオウム病が確認できても,抗体価の上昇が起こらない症例の存在),④糞からのクラミジア検出の難しさ(PCR 阻害物質の残存)を経験した.また,パルスフィールド電気泳動等が確立されていないクラミジアにおいては,MOMP の塩基配列の解析が菌株を比較する方法として有用と考えられた.
著者
岸本 寛史 小島 一晃 原武 麻里 藤原 和子 岩井 真里絵 石丸 正吾 金村 誠哲
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.911-915, 2014 (Released:2014-09-02)
参考文献数
2

アブストラル®舌下錠は, フェンタニルの速放製剤と位置づけられるが, その用法・用量の調整は, 従来のオピオイド製剤と異なる点が多い. 留意点として, 本剤の増量がレスキュー・アップであることを意識した用量調整, ベース量に見合った1回投与量の上限の目安の設定, レスキュー投与と追加投与の区別, その間隔や回数についての制限の周知, コストなどが挙げられる. これらを鑑みて, 当院では, 原則として経口摂取が難しくなってきた患者で持続注射が導入されていない入院患者を適応とした. 緩和ケアチーム・薬剤部・看護部が協力して上記留意点の周知を図った. 医師向けの講習会を診療科ごとに開催し, 講習を受けた医師のみが処方できるライセンス制を導入し, 医師から看護師への指示を標準化した. また, 看護師をはじめとする医療スタッフ向けに10回の勉強会を開催した. 処方後は, 薬剤部と緩和ケアチームによるモニタリングも行う体制を整えた.
著者
岸本 桂子 竹内 智重 福島 紀子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.17-00114, (Released:2017-09-05)
参考文献数
18
被引用文献数
4

In Japan, a pharmacy or drug store license is required for selling pharmaceutical products. However, civilians without a pharmacy or drug store license are displaying pharmaceutical products for sale on a flea market application, which is illegal dealing. This study discussed the modality for implementing countermeasures for the illicit selling of pharmaceutical products. We extracted pharmaceutical products displayed for sale on three flea market applications (Mercari, Rakuma, Fril) on one day. One hundred and eighty-one pharmaceutical products were displayed (49 on Mercari, 86 on Rakuma, and 46 on Fril). There were 6.1% (11/181) domestically prescribed drugs, 69.1% (125/181) domestic over-the-counter (OTC) drugs, 23.8% (43/181) foreign-made prescribed drugs, and 1.1% (2/181) foreign-made OTC drugs. The seller could display the product for sale without confirming whether it is prohibited. We alerted the service providers of this illicit selling at flea markets at three different instances. The pharmaceutical product displays were deleted by the service providers at a rate of 55.1% (27/49) for Mercari and 51.2% (44/86) for Rakuma. The average number of drugs that were displayed for sale by each seller was 1.4 and the average number of total products that were displayed for sale by each seller was 100. The seller could have unintentionally displayed the pharmaceutical products for sale, without the knowledge that it is illegal. The service providers of flea market applications should create mechanisms to alert the sellers that displaying pharmaceutical products for sale is an illicit act and regulate these violations.
著者
岸本 達也
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.64, no.521, pp.227-235, 1999-07-30 (Released:2017-02-03)
参考文献数
23
被引用文献数
2

In this paper, facilities location model based on Spatial Interaction Models (SIM) is concerned. Initially outlines of SIM and location problem based on SIM are described. Secondly, a new model of SIM which is developed from Non-constraint type of SIM is proposed. In this model a new concept Maximum Realized Demand is applied. Next a location problem to maximize the sum of realized demand is proposed which is based on developed SIM. A method of solution based on Stochastic Descent Method and Stochastic Approximation Method is presented, and the effectiveness of presented method is confirmed through numerical analyses. Finally, 3 simulations of optimal location analyses are shown, and characteristics of presented location model are examined.
著者
酒井 理紗 岸本 桂子 福島 紀子
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.8-14, 2014-06-10 (Released:2015-08-11)
参考文献数
28

This study examines the effect on junior high school students’ understanding and usage frequency of medicines gained from education about medicines during elementary school. This education which we provided is tailored to the developmental stage of the child. We conducted a questionnaire directed at the first year students of a junior high school in Tokyo. We compared the responses to questions regarding the understanding and correct usage frequency of medicines between groups of students who had graduated from the elementary school (Group A : students who graduated from the elementary school where we provided the education about medicines, Group B : all students except those in Group A). In order to compare these, we calculated the scores about questions regarding the understanding and correct usage frequency of medicines using principal component analysis (PCA). The PCA score for understanding of medicine by group A was higher than that of group B ; a significant difference was found (P<0.001). Therefore, this suggests that receiving education about medicines may be a factor that enhances students’ understanding of medicines. The PCA score for correct usage frequency of medicine by group A was higher than that of group B; a significant difference was found (P=0.043). Therefore, this suggests that receiving education about medicines may be a factor that increases students’ correct usage frequency of medicines.
著者
岸本 章宏
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2004論文集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.1-8, 2004-11-12

将棋では別手順によって同一局面に至ることがあるために,詰将棋解答プログラムはハッシュ表を用いるのが普通である.ハッシュ表の利用によって,探索に必要な空間を大幅に減らすことができるのだが,将棋には元の局面に戻る手順が存在するために詰将棋プログラムでは,詰む問題を不詰めと間違えるGHI(Graph History Interaction)問題を引き起こすことがある.本論文では[8]の手法を利用してGHI問題に対する正当でかつ効率のよい解決策を提案する.さらに本手法を詰将棋プログラムに実装した結果,詰みの性能を保持しつつ,難解な不詰の問題を解くことに成功した.
著者
荒井 正行 佐久間 俊雄 岩田 宇一 山田 隆之 中村 一義 岸本 喜久雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.66, no.641, pp.144-150, 2000-01-25
被引用文献数
1 3

The surfaces of many industrial products, such as a holl drill, gas turbine engine and so on, are coated with diamond and ceramic material for improving the material properties.On the other hand, the surface may accumulate an oxidation layer by reaction of oxygen with inceasing time.These Common damage, in service, is "delamination".It is known that the delamiation will be caused by compressive stress in these coating layer which is generated by vibration and fatigue loading for industrial coating, and volume expansion for oxidation.The actual coating delamination process as follow had been clarified by many studies.The coating layer is buckled locally by compressive loadingand is then delaminated along the substrate.The aim of this study is to clarify the coating delamination mechanism under compressive stress by observing continuously buckling and delaminating process in the coating layer, which is modelled by engineering plastic in this study. The delamination evaluation method is proposed based on an interface mechanics, and an accuracy of the evaluation is examined using finite element analysis.Finally, the proposed evaluation are applied to the experimental results obtained by this study.