著者
中島 一郎
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.220-224, 2019 (Released:2019-11-25)
参考文献数
27

Myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) is a glycoprotein exclusively expressed on the surface of myelin sheath in the central nervous system (CNS). Although the precise function of MOG is not yet known, it is possibly related to the maintenance of the myelin structure. Although the IgG antibodies against MOG (MOG–IgG) are investigated in various demyelinating diseases, pathogenic antibodies had not been identified in any of the diseases. Using CBA, we are now able to detect a disease–specific MOG–IgG of IgG1 subclass. The specific MOG–IgG was initially reported in a study of pediatric demyelinating diseases, followed by studies of seronegative neuromyelitis optica spectrum disorders (NMOSD) and optic neuritis. However, since the patients with MOG–IgG have various phenotype and are relatively rare compared with multiple sclerosis (MS), it is still yet unknown what a prototypic phenotype of this disease is.
著者
髙山 耕二 平野 里佳 園田 大地 中村 南美子 大島 一郎 中西 良孝
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部農場研究報告 = Bulletin of the Experimental Farm Faculty of Agriculture, Kagoshima University (ISSN:03860132)
巻号頁・発行日
no.40, pp.19-21, 2019-03

平飼い条件下での薩摩黒鴨™の産卵性に関する基礎的知見を得ることを目的とし,産卵率,孵化率および卵質について検討した.2017年12月23日から2018年6月21日にかけて,鹿児島大学農学部附属農場内動物飼育棟において飼養試験を行った.180日齢の薩摩黒鴨™12羽(♂3,♀9)を14㎡の飼育スペースで市販成鶏用配合飼料(粗タンパク質含量15%,代謝エネルギー含量2,800kcal/kg)を不断給与しながら群飼した.180~360日齢における薩摩黒鴨™の産卵率は79.2%であった.受精率は97.0%,対受精卵孵化率は77.1%であった.薩摩黒鴨™ 卵に占める卵黄の割合は,市販鶏卵のそれに比べて有意に大きく(P<0.05),その化学成分では薩摩黒鴨™卵の水分含量が市販鶏卵より有意に低く(P<0.05),タンパク質含量が有意に高かった(P <0.05).以上より,薩摩黒鴨™ の産卵能力および繁殖能力は他のアヒル類よりも高く,その卵質は鶏卵とは異なることが示された.
著者
加藤 智之 越島 一郎 梅田 富雄
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.107-120, 2018 (Released:2018-10-09)
参考文献数
18
被引用文献数
2

近年、IoTやIndustry 4.0などのデジタル技術を基盤とした新しい価値創出のための概念が注目されており、実際に全く新しいビジネスが展開されている。これらは、デジタル革命と言われているように従来型の経営からデジタル技術を生かした経営変革に向うデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれ、世界的なトレンドとなっている。日本の製造業においても、これらのDXを実現しようとしているが、既存のビジネスモデルやビジネスプロセスをデジタル技術が活きるように変容することができず、対応が遅れているのが現実である。そこで、本論では日本企業の強みを活かしながらもDXに対応できるような組織体について議論し、日本的なDXのための経営手法としてP2Mが有効であると考え、関連する事例とともに関連事項について説明する。
著者
宅見 央子 中村 弘康 福田 真一 松田 紫緒 小城 明子 大野 友久 白石 浩荘 米谷 俊 藤島 一郎 植松 宏
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.183-191, 2009-12-31 (Released:2020-06-28)
参考文献数
35

本研究の目的は,①健康成人30 名,②試験食品であるビスケットの摂食・嚥下に問題のない一般高齢者20 名,③リハビリテーション科外来通院中の脳血管障害後遺症患者11 名(以下,「リハ患者」)に一般のクリームサンドビスケット(以下,一般品とする)と,口どけのよいクリームサンドビスケット(以下,低付着性品とする)を摂食させ,摂食時の咀嚼回数・時間,嚥下回数・時間の観察評価と,自由嚥下後の口腔内残留量を測定することにより,安全性および日常の食生活への応用の観点からビスケットの物性と摂食・嚥下機能との関係を検討することである.健康成人と高齢者の咀嚼回数および,全3 群の咀嚼時間においては,一般品に比べて低付着性品が有意に低値を示した.対象者間の比較においては,一般品と低付着性品の両方で,リハ患者と高齢者の咀嚼回数および咀嚼時間は健康成人に比べて有意に多かった.また,健康成人と高齢者の嚥下回数,および健康成人の嚥下時間においては,一般品に比べて低付着性品が有意に低値を示した.健康成人では,一般品と低付着性品の口腔内残留量に差がなかったが,高齢者とリハ患者では,一般品に比べて低付着性品の口腔内残留量が有意に少なかった.健康成人と高齢者では「口の中での付着」「口どけのよさ」などにおいて,一般品と低付着性品に有意な差がみられ,低付着性品のほうが高い評価を得た.摂食・嚥下機能の低下しているリハ患者や高齢者は,一般品と低付着性品のいずれにおいても,咀嚼回数・時間を健康成人より増加して対応していた.しかし,口腔内残留量は健康成人より有意に多かった.以上の結果より,低付着性品は,高齢者などの咀嚼・嚥下機能低下者に適した食品であり,咀嚼・嚥下機能低下者には,口腔内に残留しにくい食品の提供が重要であることが示唆された.
著者
真島 一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.406-432, 1991

本稿の目的は,西アフリカ,象牙海岸共和国のダン族に於ける仮面表象を通して,秘密結社の政治体制を支えるその「力」観念の特質を探っていくことにある。ギニア湾西部のいわゆる《ポロ結社文化》の諸社会に比べ,ダンの社会では,権力の行使が秘密結社に集中している。ただ,結社権威の観念的な拠り所となる「力」は,実は妖術と同一の概念あり,重大な規範侵犯への制裁も妖術制裁の形をとっている。とりわけ,森由来の精霊である仮面は秘密結社と密接に連係し,結社と同じ「力」に訴えることで,制裁への恐怖に裏付けられた規範維持に寄与している。だが結社のイデオロギーは,邪悪な妖術と同じ本質を持つ「力」を自らの手で完全に正当化することができない。そこに,ダンの仮面表象に於いては例外的な,「面なき仮面」の生きる余地が生じてくる。秘密結社という支配集団は,「誰でもない」その声に託して,権力への自己言及の道を開こうとするのである。
著者
安元 健 中島 一郎 Raymond BAGNIS 安達 六郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.1021-1026, 1977-08-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
7
被引用文献数
201 274

Experiments were designed to see whether a dinoflagellate, Diplopsalis sp. nov, found in a toxic sample of detritus collected from a ciguatera-endemic area is the cause of ciguatera. The dinoflagellate in the detritus was separated from other materials by means of sedimentation and sieving through sieves of various mesh sizes. Bioassay of the dinoflagellaterich samples thus obtained proved that the toxicity of each sample was proportionally related to the number of the dinoflagellate cells in the sample. Subsequent extraction of the dinoflagellate sample followed by fractionation of the extracts with solvents afforded two major toxins; a diethyl ether soluble toxin and an acetone precipitable toxin. The former toxin was judged to be identical, or closely related, to ciguatoxin, a major toxin in ciguatera, on the basis of various column and thin layer chromatographic properties. A close similarity was also observed between the acetone precipitable toxin and maitotoxin, a secondary toxin isolated from ciguateric surgeonfish. Judging from these results, it was concluded that Diplopsalis sp. nov is very likely to be the cause of ciguatera.
著者
濱田 康行 川島 一郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究院地域経済経営ネットワーク研究センター
雑誌
地域経済経営ネットワーク研究センター年報 (ISSN:21869359)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.65-91, 2021-03-26

状況(2021年初頭)を見れば,まさに大災害:Disasterに見舞われている。世界のコロナ感染者数と死者数をみるだけで,それは明らかである。そして,経済は深刻な不況であり,2021年が明けて一段と深まる気配だ。しかし,2020年11月,あらゆる状況が悪化する中でダウ平均株価は“夢の3万ドル”を達成した。この状況を理論に基づいたフレームワークの中で,かつデータに基づいて分析するのが,一連の研究の目的である。課題は二つに分けられる。第一は,株式市場の繁栄が人々の幸福・経済の状況とあまり関係がないように見えるが,それはなぜか?国際決済銀行(BIS)のレポートの表現を借りれば,Disconnected(非関連)なのはなぜか。第二は,そもそも,この高株価を生み出した要因は何か,特に内的要因を探ることである。第一のテーマは,2020年8月に発表した論文が,そして第二のテーマを本稿が扱っている。第1節では,株価を決定するのは,基本的に当該企業の業績・収益の状況によるとする株価第一原則について解説する。第2節は,過去のデータから株価の算定式を導き,この式でダウ平均3万ドルを判定している。今回の株高がバブルなのかどうか,それを問う試論である。第3節では,株価第一原則だけで説明できなくなった時に浮かび上がってくる要因について述べ,さらに,この要因の説明力を強める状況を示す。ここで従来の株価理論へのいくつかの疑問も呈示している。第4節では,マクロ的視点から,以上展開したことを総括する。金融概念図を使って株式市場の概念的位置の移動があったこと,その原因のひとつが株式市場の巨大化であることを主張している。最後に,全体のまとめ,および今後の研究方向を示してむすびとしている。
著者
水島 一郎 佐藤 力 綱島 祥隆
出版者
The Japan Society of Applied Physics
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.1187-1191, 2000

SON (Silicon on Nothing) 構造を実現する技術として,厚さは1μm以下でありながらミリメートルサイズの広さを有する平板状の臣大空洞 (ESS: EmPty Spacein Sillcon) を,シリコン基板内部に形成する技術を開発した.この構造は,サブミクロンサイズの闘孔径のトレンチをシリコン基板上に形成したのち,水素などの還元性雰囲気中にて熱処理し,シリコン原子を表面マイグレーションさせることで実現できる.さらにトレンチの初期配列を制御することで,平板状だけでなく,管状,球状などいろいろな形状のESSを形成できる.本技術は,埋め込み絶縁層の比誘電率として1という最小値を実現できる方法として,これまで期待されながら作製困難であったSON構造を従来のプロセス技術により実現できるきわめて有望な手法であり, SOI技術の代替技術となりうるとともに,微細加工技術のーつとして幅広い応尾が期待される.
著者
髙山 耕二 原 裕 石井 大介 柳田 大輝 冨永 輝 飯盛 葵 松元 里志 片平 清美 大島 一郎 赤井 克己 中西 良孝
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部農場研究報告 = Bulletin of the Experimental Farm Faculty of Agriculture, Kagoshima University (ISSN:03860132)
巻号頁・発行日
no.39, pp.7-10, 2018-03

肥育牛舎におけるイノシシ害防除法の確立に向けた基礎的知見を得ることを目的とし, 嗅覚刺激として市販のオオカミ尿(以下, 尿) を野生イノシシに提示し, その効果を調べた. 2012年12月に野生イノシシの誘引餌として市販の濃厚飼料を置いた誘引場所(6.0m2) の入口に, 1) 容器および尿のいずれも設置しない(設置前), 2) 容器のみを吊るす(空容器) および3) 容器に尿を入れて吊るす(容器+尿) の3つの処理を行った. オオカミの1日平均侵入頭数は, 設置前で70頭/日, 空容器で50頭/日および容器+尿で67頭/日となり, 処理間差はみられなかった. 空容器では, それに野生イノシシが強い警戒心を示し, 鼻先を使って探索する状況がみられた.しかしながら, 通過時間には3処理間で有意差が認められなかった. また, 容器+尿に対して, 野生イノシシが忌避する状況はみられなかった.以上より, 市販のオオカミ尿に対して, イノシシは忌避しないことが示された.
著者
荻上 裕基 越島 一郎 梅田 富雄
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集 2001年度春季
巻号頁・発行日
pp.232-236, 2001-03-12 (Released:2017-06-08)

プロジェクトのスケジュール手法としてPERTが多用され, 仕事を達成するための期間の算出する根拠に標準的な工数が使われている. しかしながら, 人間の作業に対する状態が考慮されていないので, 状況に合わせた人員配置とはなっていない. そこで, 本研究ではリソースの配置をより良くするために, 作業者のバイオリズムを考慮したプロジェクトスケジューリングやリソースの配置について新しい手法を提案する.
著者
瀧口 隆一 望月 英輔 鈴木 豊 中島 一郎 辮野 義己
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-17, 1997 (Released:2010-06-28)
参考文献数
18

Lactobacillus acidophilus SBT2062およびBifidobacterium longum SBT2928の人工消化液耐性試験, および腸内有害細菌 (Escherichia coliおよびClostridium perfringens) との混合培養試験を実施した.人工胃液耐性試験では, pH4, 37℃3時間保持においてB.longum SBT2928の菌数は1/10に低下したが, L.acidophilus SBT2062は初期の菌数を維持した.しかし, 人工腸液耐性試験では両菌とも高い耐性が認められた.また, 腸内有害細菌との混合培養では, L.acidophilus SBT2062およびB.longum SBT2928の初発培養菌数が105cfu/gにおいて有害細菌は完全に抑制され, さらに104cfu/gに低下しても強い抑制効果が認められた.よって, L.acidophilus SBT2062およびB.longum SBT2928は, 摂取後も生菌の状態で腸内に到達し, そこで腸内有害細菌を抑制する可能性が認められた.
著者
朝井 政治 神津 玲 俵 祐一 宮崎 哲哉 中村 美加栄 藤島 一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.424, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】 高齢者に対する呼吸管理を行う機会が増加する中,気管内挿管下に人工呼吸管理を行った症例のうち,抜管後新たに嚥下障害や排痰困難をきたすことを経験する。このような症例では,誤嚥や分泌物の自己喀出に難渋し,離床やADLの改善に支障をきたす場合が少なくなく,臨床上大きな問題となる。 今回,人工呼吸管理後に新たに嚥下障害を呈した症例の臨床的特徴について報告する。【対象・方法】 対象は1999年4月から2002年3月までに当院にて気管内挿管,人工呼吸管理となり,理学療法が処方された187症例のうち,脳血管障害,精神科疾患,重度の痴呆,神経筋疾患および頚髄損傷,一度も抜管に至らず気管切開となったもの,を除いて,抜管ができた55例(平均年齢72.2±12.3歳,男性43例,女性12例)とした。方法は,カルテから,嚥下障害の有無を調査し,嚥下障害を呈した症例の1)患者背景,2)人工呼吸管理,3)気道分泌物貯留,4)嚥下機能評価結果,について調査した。なお,嚥下障害の有無については,問診と身体所見,および主治医や担当看護婦からの情報,嚥下機能評価の結果より判定した。【結果】 嚥下障害を認めた症例は55例のうち4例(7%)であった。以下に各症例の臨床的特徴を示す。症例1:77歳,男性。肺炎,肺結核後遺症。挿管2日。予定外抜管あり,鎮静なし。分泌物貯留中等度。症例2:84歳,男性。急性肺水腫,心不全,肺炎,腎不全。挿管5日。予定外抜管なし,鎮静5日。分泌物貯留多量。症例3:84歳,男性。塵肺,COPD,喘息。挿管8日。予定外抜管あり,鎮静7日。分泌物貯留多量。症例4:73歳,男性。肺炎,間質性肺炎。挿管24日。予定外抜管あり,鎮静22日。分泌物貯留多量。 上記症例では,後期高齢者,予定外抜管の経験,鎮静が行われていた症例がそれぞれ3例で,いずれの症例でも分泌物の貯留を認め,抜管後の経口のみによる栄養摂取困難と診断された。残る51例の平均年齢は71.6歳,挿管期間平均6.9日,鎮静28例,予定外抜管5例であった。【考察】 今回,人工呼吸管理後に新たに生じた嚥下障害の頻度と臨床的特徴を調査した。その結果,中枢神経疾患や神経筋疾患,精神科疾患など嚥下障害のリスクを有さない症例で,抜管後に嚥下障害を呈した症例は7%と必ずしも多くなかった。しかし,嚥下障害を認めた4例はいずれも経口からの摂食は困難であった。人工呼吸管理に至るような重症の急性呼吸障害を呈した症例では,critical illness neuropathyやmyopathyを呈する場合があると報告されている。上記4症例を細かく比較してみても,一定の傾向は認められず,特に原因と考えられるものがなかったことから,この状態にあったことも予想された。これは回復に長い期間を必要とするため,人工呼吸器離脱直後だけでなく,継続的,かつ注意深いサポートが必要と考えられた。
著者
濱田 佑希 越島 一郎 渡辺 研司
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集 2015 春季 (ISSN:24320382)
巻号頁・発行日
pp.347-356, 2015 (Released:2017-07-01)

プログラムミッションは組織の事業戦略を分割して設定される。プログラムでは複数のプロジェ クトを同時並行で進めるため、各プロジェクトにおける価値創出活動の結果を伝播する構造を持 つ。価値創出活動の計画は不確定な要因が多い状況で作成されることもあり、進行に伴って状況 変化が引き起こる。既報では、状況マネジメントするために想定と異なる要因を特定し、戦略を 柔軟に変更する方策としてSWOT構造とIDEF0を利用した動的対応シナリオ生成手法を報告 した。本論では、価値創出活動を実施する組織とインタフェースを持つ組織との関係性を分析す ることで、影響を受ける要因と範囲の特定を行うことで状況マネジメントを行う方法を議論する。
著者
濱田 佑希 越島 一郎 渡辺 研司
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.37-51, 2015

大規模なミッションを達成することで事業継続を図るには、複数のプロジェクトを同時並行で進めることが重要である。P2Mでは、プログラム組織の下に複数のプロジェクト組織を置き、有機的に管理する方法が提示されてきた。現在、グローバル化や事業の大型化と複雑化に伴い、リスク分散の観点から組織文化やマネジメント方法が異なる組織と共同でプロジェクトを進める体制が増加している。この環境下で互いの組織の価値を最大限に発揮するには、各社の強みや弱みを考慮した戦略を立案して、マネジメントスキームが構築される必要がある。既報では、想定と異なる要因を特定し、戦略を柔軟に変更する方法として SWOT 構造とIDEF0を利用した動的対応シナリオ生成手法を報告した。本論では、P2Mのリスクマネジメントの概念を拡張して、他の組織と共同で行うプロジェクトが内在する場合の状況マネジメントの方法を議論する。
著者
黒木 英充 鈴木 茂 眞島 一郎 飯塚 正人 飯島 みどり 鵜戸 聡 池田 昭光 大場 樹精 山本 薫
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1世紀以上に及ぶレバノン・シリア移民の顕著な世界的活躍を支えるのは、異文化の社会に対する適応力とネットワーク形成力・拡張力の高さである。移動する自己と親族・友人等との間で、常に複数の社会における財の価値の違い等に関する情報が交換され、様々なビジネスが展開し、時には出身国と現住国の政治にすら大きな影響を及ぼす。そこでは自己の構成要素の複数性(たとえば言語など)、他者との関係構築ツール(帰属する宗教組織のネットワークから信用再強化のためのカネの貸借といった財の交換関係にいたるまで)が意識的に維持・展開される。その歴史的起源はレバノン・シリア地域の非ムスリム商人や通訳といった類型に求められる。
著者
加藤 勇夫 太田 結隆 越島 一郎
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.60-80, 2019 (Released:2019-03-23)
参考文献数
35
被引用文献数
1

日本社会が現在の生活の質を維持し、今後、深刻化する少子高齢化社会に対応するためには、既存社会システムの破壊と再生(革新)による労働生産性の向上と、この革新を支えるイノベータの育成が急務である。また、イノベータの育成には、プログラムを機敏にマネジメント(機敏に意思決定)するための基盤となるマネジメント方法論として、リーン&アジャイルプログラムマネジメントの開発と実施が必要であると考えている。本稿では、このリーン&アジャイルプログラムマネジメントを実現するために、これまでのイノベーションプロセスを再考し、イノベータが革新を完遂するためのマネジメントフレームワークを提案する。
著者
太田 結隆 加藤 勇夫 加藤 瑠人 越島 一郎 橋本 芳宏
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集 2019 春季 (ISSN:24320382)
巻号頁・発行日
pp.458-475, 2019 (Released:2019-05-13)
参考文献数
5

日本社会が抱えている問題の一つに重要インフラを支える制御システムを対象にしたサイバー攻撃のリスクがある。もしこのリスクが発生してしまうと、プラントの安全を確保するためには、OT側が実施すべき安全対応とIT側が実施すべきセキュリティ対応が連携して事態にあたる必要がある。インシデントレスポンスをP2Mの構図で考えると、OT側はSafeプロジェクトを実施主体であり、IT側はSecプロジェクトの実施主体と捉えることができる。この二つのプロジェクトを統括するにはプログラムマネジメントが不可欠である。このため、本稿ではP2Mフレームワークを援用して重要インフラにおけるサイバーインシデントマネジメントを議論する。
著者
真島 一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.24-49, 2006

本稿では、デュルケムの中間集団論およびその受容をめぐる人類学史を概観したうえで、今日の人類学が「社会的なるもの」を再考するうえでの発見学的モデルとして、一世紀の時を経た「中間集団」概念の理論的な加工作業が試みられる。デュルケム社会学の底流には、産業資本と福祉国家生誕の時をむかえた20世紀転換期フランスの「社会」危機に対し、彼のいう二次的集団、とりわけ職業集団の再編成を軸に道徳的個入主義と有機的連帯の育成を促そうとする社会工学の意図があった。だが、その後デュルケム理論の継承を図ったイギリス社会人類学は、自社会の変革をめぐる彼の政治規範を理論から漂白する過程で、市場の対概念であるモラルの思想史的含意、ならびに「未開社会」が植民地帝国下の入工的な中間集団たる現実を忘却していった。起点からの分岐と忘却を経た入類学に社会への視線が回帰する時期とは、脱スターリン化から「1968年革命」、福祉国家危機論の台頭へと到る、社会科学全般のパラダイム転換期でもあった。社会的なるものを主題とした人類学的考察の今日における顕著な増加を、パラダイム転換第二波の徴候とみるにせよ、モラル・エコノミー論争の70年代から地続きの現象とみるにせよ、社会介入型国民国家の生誕から問い直しへと到る歴史の一サイクルが閉じつつある今、19世紀末の社会工学を参照点とする「社会」再考の試みには、相応の意義が見出せよう。