著者
工藤 典代
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-32, 2014-03-31 (Released:2014-08-20)
参考文献数
5

口蓋扁桃摘出術は従来, 扁桃被膜の鑷子剥離と出血点の絹糸結紮で行っていたが, 現在は高周波凝固切開装置 (オートバイポーラ) を用い剥離と切離・摘出, 出血点の凝固を行っている. 前者を従来法, 後者を現法とし, 総手術時間 (摘出時間と止血時間) と出血量についての比較を, 扁摘経験による術者別に行った. その結果, 術者の経験を問わず, 手術時間も出血量もともに大きく短縮及び減少させることができた. 止血処置を要した術後出血は, 14年間の扁摘1,923例中, 25例 (1.3%) であった. アルゴンプラズマ凝固法を併用しはじめた年は4.1%であったが, 翌年以降には術後出血例は再び年間0から2例となり, 用いた手術機器による差は見られなかった.
著者
岡村 信行 原田 龍一 工藤 幸司 谷内 一彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.146, no.3, pp.144-149, 2015 (Released:2015-09-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2

ミスフォールディングタンパク質の脳内蓄積は,血液脳関門透過性を有するβシート結合プローブを放射性標識し,これを生体に投与することによって計測可能である.PET(陽電子断層撮像法)を用いたアミロイドβタンパク質および微小管結合タンパク質(タウ)のin vivo計測法が近年実用化され,アルツハイマー病に代表される神経変性疾患の診断補助マーカーとして活用されている.またアルツハイマー病における中核的病理像の存在を直接的に反映するバイオマーカーとして,新規治療薬の概念実証や治療対象者の絞り込みにも利用される.アミロイドイメージングでは標準的なPETプローブである[11C]PiBのほか,デリバリー供給も可能な18F標識薬剤が複数実用化されている.近年のアミロイドPET研究では,認知機能の障害されていない高齢者でも高頻度にアミロイドβタンパク質の脳内蓄積が観察されている.プレクリニカル・アルツハイマー病と呼称されるこうした高齢者の一群は,認知症発症のハイリスク群とみなされ,予防的介入研究の対象とされている.一方,脳内に蓄積したタウを画像化する技術はまだ確立されていないが,複数の有力なPETプローブが開発され,その臨床応用報告が近年相次いでいる.タウPETプローブの脳内集積量は疾患重症度とよく相関し,神経変性との密接な関わりを持つ新たな画像バイオマーカーとして注目されている.本技術は疾患モデル動物を用いた小動物イメージングにも応用可能である.これまで死後にしか知り得なかった線維化タンパク質の脳内蓄積を経時的に追跡することで,病初期におけるミスフォールディングタンパク質の形成プロセスを明らかにし,また治療前後での変化をモニタリングすることが可能である.
著者
菊池 英明 工藤 育男 小林 哲則 白井 克彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1502-1511, 1994-08-25
被引用文献数
19

音声を利用したマルチモーダルインタフェースのベースシステムとなる音声対話インタフェースにおいて,ユーザに発話のタイミングに関する自由を保証するための割込みの扱いについて検討した.ユーザに割込みを許すとき,従来のように1文を単位としてシステムの発話を計画するのでは,計画した発話内容と実際に発話した内容あるいはユーザが受け取った内容の間に差異が生じる.そこで,発話の計画の単位を,1文中の伝えるべき情報と定め,対話中に話者間でやりとりされる発話権を管理することにより,どの情報が受聴されたかを常に把握する方式を提案した.実験の結果,提案した方式によって,システムが計画した発話とユーザが受聴した発話の差異をなくしながら,スムーズな割込みへの対処が被験者の半数以上に認められた.また,割込みに対処することにより,ユーザのタスク完了までの所用時間は7%減少し,積極的な話題提起数が21%増えるなど,インタフェースの利便性が向上することが確認された.
著者
吉中 淳 工藤 七央
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.129-138, 2015-03-27

これまでの不登校・登校拒否研究を振り返り、1990年代初期に社会学の影響により大きなパラダイム転換が起こったこととそれが心理学に与えた影響を確認しつつ、現時点で未解決の問題を特定し、心理学は再登校支援のためにどのような貢献が可能かについて考察する。
著者
楊 広宇 松本 哲也 竹内 義則 工藤 博章 大西 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.473, pp.151-156, 2013-03-04

本研究はカメラで撮影した文書画像中の湾曲・射影歪を除去することにより文字情報を取得する手法を提案する.提案手法では,画像から文字候補を取得後,文字候補間の重複関係により行ごとに組み分け,4次多項式を用いてテキストラインの湾曲を近似する.そして,文書左右エッジを使って推定した複比と消失点により縦方向を推定し,画像をグリッドに分割する.その後,各グリッドの射影変換行列を計算することにより補正を行う.実際に撮影した文書画像50枚(英語文書画像:30枚,日本語/中国語文書画像:20枚)を用いた実験により,提案手法の有効性を確認した.
著者
木ノ内 誠 高田 直志 工藤 喜弘
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第25回情報化学討論会
巻号頁・発行日
pp.JP37, 2001 (Released:2002-10-25)
参考文献数
3

我々は学習が入力順序に依存しない一括学習型自己組織化マップ(BLSOM,Batch-Learning Self-Organizing Map)のアルゴリズムを開発し,類似性に基づく解析に成果を挙げてきた.入力ベクトルの数が増えると,マップのサイズも大きくする必要があり,学習時間はほぼその積に比例して膨大なものとなる.本研究では,初期マップが主成分分析に基づいて作成されること,更新前後のマップ上で入力ベクトルが大きくは動かないこと,の二点に注目して,この問題点の解消を図った.いくつかの条件で提案法を試みた結果,マップの質を犠牲にしないで,学習時間を数分の一から数十分の一に短縮できた.かつて,コドン利用に基づく遺伝子の分類に適用して成功を収めてきたが,ゲノムプロジェクト完了期を迎えた生物種が増え続けて解析の対象となる遺伝子数が急増している現況に,かなり対応できることがわかった.
著者
佐々布 裕季 工藤 芳彰 古屋 繁
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.P03-P03, 2007

本研究は、理系を指向する女子の人数を増加させることを目的に、「理系女子」のイメージの向上に寄与する製品をデザインした。その手順は次のとおりである。まず、文献調査をもとに、憧れの対象としての「理系女子」キャラクタに必要な構成要素とその属性を設定した。次に、フィールドサーベイをおこない、現在の「理系女子」のファッションを分析した。以上の結果をもとに、3人の「理系女子」キャラクタを決定した。そして、それぞれが使用する携帯電話、携帯オーディオ機器、鞄をデザインした。
著者
工藤 ひろみ 床次 眞司 細田 正洋 岩岡 和輝 葛西 幸彦
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.92-97, 2016 (Released:2016-08-09)
参考文献数
13
被引用文献数
2

On 11 March 2011, a 9.0 magnitude earthquake, which occurred at Northern Japan, and subsequent tsunami caused serious damage to the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (FDNPS). People living within a radius of 30 km were evacuated from their homes. Residents of Namie Town stayed for several days at a location 30 km northwest of the FDNPS. However, as a highly concentrated radioactive plume passed over this location, the evacuees are very much worried about their radiation exposure. On the other hand, there are several nuclear facilities in Aomori Prefecture. Such circumstances may produce concerns among people regarding an increased risk of cancer or other radiation-induced disease. In this study, focusing on the citizens of Namie Town and Aomori Prefecture (Hirosaki, Aomori and Hachinohe Cities), their understanding of basic knowledge on radiation was investigated through anonymous questionnaires. The present study has revealed that people recognized that they are exposed to natural radiation of more than 1 mSv, Despite this fact, however, people in Namie Town believe even radiation of 1 mSv will cause them some biological effects. Although basic general knowledge on radiation should be provided, a reliable relationship between the general public and experts also needs to be established.
著者
工藤 真由美
出版者
四條畷学園短期大学
雑誌
四條畷学園短期大学紀要 (ISSN:18811043)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.18-20, 2009-05

近年子どもの変化が、身体発達、心の発達など様々な点で指摘されるようになってきた。このようななかで、「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」にも示されているように、子どもの遊びの重要性は時代が変わっても変わらないものである。子どもの遊びの重要性を今日の社会環境の中で実現するには、大人の子どもの遊びに対する再考が求められる。まず、自己形成としての遊びは、(1)身体化される遊びであることが重要である。すなわち単に体を動かすだけでなくそのことを通して他者と交わり他者に存在を認められる行為としての身体活動であること。更には(2)身体化された遊びから想像力の世界へとつなげていくことが重要である。すなわち五感を働かせ、そこに無いものや目に見えないものへのあこがれや恐れなど想像力を豊かにすることである。それらは日本の伝承遊びなどに見られるが、まず大人がそのような遊びの価値に気づき、子どもへ働きかけることが重要である。
著者
山本 淳二 田邊 昇 西 宏章 土屋 潤一郎 渡辺 幸之介 今城 英樹 上嶋 利明 金野 英俊 寺川 博昭 慶光院 利映 工藤 知宏 天野 英晴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 計算機アーキテクチャ研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.110, pp.19-24, 2000-11-29
参考文献数
7
被引用文献数
9

我々は、フロア内やビル内に設置された計算機間で低レイテンシで高バンド幅な通信を実現するネットワークRHiNETおよびMEMOnetの開発を行なっている。本報告では、RHiNETおよびMEMOnetのネットワークインタフェースのコントローラチップであるMartiniについて述べる。Martiniは、ユーザレベルのゼロコピー通信(OSをバイパスしたユーザプロセスのメモリ空間間のリモートDMA)をハードウェアによりサポートすると共に、チップ内部のコアプロセッサにより柔軟な通信を実現する。
著者
山口 勇気 矢澤 ひろみ 岩西 哲 工藤 起来 Yamaguchi Yuki Yazawa Hiromi Iwanishi Satoru Kudo Kazuyuki
出版者
新潟大学教育学部
雑誌
新潟大学教育学部研究紀要 自然科学編 (ISSN:18833845)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.41-46, 2010

野外で採集したトゲズネハリアリの巣を飼育下で営巣させるための技術的な問題について検討した.石膏をプラスチックケースに敷き,ガラス板を置き,その下に育室を作成してトゲズネハリアリを飼育した.飼育を開始すると,ワーカーがケースの縁から石膏を掘り,石膏とケースの間で圧死したため,ワーカーが掘ることができない石膏の硬さを明らかにした.ガラス板下の育室の深さについて検討したところ,ワーカーは1mm程度の浅い育室を好んで幼虫を運び込み,定着した.明暗の異なる2つの育室のある飼育ケースで飼育したところ,すべての飼育ケースにおいてワーカーは暗い育室に幼虫を運んだ.野外のトゲズネハリアリが朽ち木の表皮近くの非常に狭い空間に営巣し,堅い朽木を大顎で削って巣を拡張するという生態学的特徴があるため,トゲズネハリアリを飼育するためには"堅い石膏"上に浅い育室を作成し,暗下で飼育する必要があることが判った.餌として,ゴミムシダマシの幼虫やバッタ目昆虫の脚,昆虫ゼリー,蜂蜜を与えたが,ワーカーはこれらをほとんど採餌しなかった.一方,ワーカーはキンバエの幼虫を好んで摂食した.トゲズネハリアリの生態や社会構造についてはほとんど分かっていないが,本研究により飼育条件が確立したため,今後本種における知見が蓄積できると期待される.
著者
工藤 力男
出版者
成城大学
雑誌
成城文藝 (ISSN:02865718)
巻号頁・発行日
no.218, pp.27-37, 2012-03
著者
黒田 正範 工藤 清勝
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.174-178, 1981-03-05
被引用文献数
2

薄層クロマトグラフィー(TLG)によるビスフェノールA系エポキシ樹脂の分離分析に及ぼす溶媒の極性と担体の粒度の影響を検討した.TLGで分離した各成分の基本構造式のnはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定し,それぞれn=0からn = 7に対応することを確かめた.TLGの分離条件をグラジェント法による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に適用し,紫外部に吸収のないテトラヒドロフラン(THF)-クロロホルム系の吸着モードHPLCによりパターン分析ができることが分かった.
著者
工藤 篤 田邉 稔
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.290-297, 2014 (Released:2015-02-17)
参考文献数
53

膵神経内分泌腫瘍の術後5年生存率は60~80%,肝転移再発率は30~85%と報告されている。原発巣切除の意義は極めて高く,リンパ節郭清が必要である。核出術が選択可能な腫瘍の肉眼型分類は,理論上被膜形成のある単純結節型に限定されるが,被膜形成や被膜外浸潤などの病理学的所見を術前に判定することは極めて困難であることは極めて明白であり,リンパ節郭清を伴う定型的切除を選択することがベストである。また,本邦においては初診時に遠隔転移を認める症例が約2割,非機能性NECに至っては半数を占める。肝転移を伴う症例の予後は極めて不良であり,集学的治療の一環としての外科切除が果たす役割は極めて重い。しかしながら,切除だけで根治を狙うことには限界がある。従来のソマトスタチンアナログ製剤に加えて,2011年にエベロリムスが2012年にスニチニブが保険適応となった。近年の大腸癌に対する集学的治療の革新的な進歩がそうであったように,膵神経内分泌腫瘍においても分子標的療法の発展に伴い外科治療の適応は今後ますます拡大していくことが予想される。