著者
工藤 拓 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.2146-2156, 2004-09-15
被引用文献数
25

近年,テキスト分類は,単純なトピック分類から,文のモダリティ,意見性,主観性といった書き手の意図に基づく分類へと,そのタスクの多様化が進んでいる.それにともない,単語の集合(bag-of-words)を素性とする古典的手法では十分な精度を得にくくなっている.精度向上には,テキストの構造(構文/レイアウト)を考慮する必要があるが,恣意的に選択された部分構造のみを用いた手法が多い.本稿では,構造を考慮したテキスト分類(半構造化テキスト分類)に向け,部分木を素性とするdecision stumpsと,それを弱学習器とするBoostingアルゴリズムを提案する.また,Tree Kernelを用いたSVMとの関連性,および本手法の利点について言及する.実データを用いた実験により,提案手法の有効性を検証する.The research focus in text classification has expanded from a simple topic identification to a more challenging task, such as opinion/modality identification. For the latter, the traditional bag-of-word representations are not sufficient, and a richer, structural representation will be required. Accordingly, learning algorithms must be able to handle such sub-structures observed in text. In this paper, we propose a Boosting algorithm that captures sub-structures embedded in text. The proposal consists of i) decision stumps that use subtrees as features and ii) Boosting algorithm in which the subtree-based decision stumps are applied as weak learners. We also discuss a relation between our algorithm and SVM with Tree Kernel. Two experiments on the opinion/modality classification tasks confirm that subtree features are important. Our Boosting algorithm is computationally efficient for classification tasks involving discrete structural features.
著者
河田 岳大 工藤 峰一 外山 淳 中村 篤祥
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.629-635, 2005-03-01

OCRなどを通して得られる日本語文の認識結果において, N-gram確率を利用した高速な誤認識文字検出法を提案する.日本語のように単語が分かち書きされず大規模な語彙を対象とした場合, 誤り個所の指摘に文字N-gramは有効な方法である.本論文ではまず, 通常のN-gram確率の拡張として両方向N-gram確率を提案し, その有効性を情報量の点から考察する.次に, 両方向N-gram確率と文脈確率を用いて1文字の誤字を検出する方法を提案する.シミュレーション実験では, 適合率80%において従来法よりも10%以上高い約75%の再現率を達成できた.また, 誤り範囲の指摘という点では, 適合率80%で再現率90%が達成された.
著者
江守 陽子 前原 澄子 工藤 美子 森 恵美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

母子相互作用において、近年もっとも注目されているのは母子の行動心理学的な作用であろう。見つめあい、タッチング、抱いて揺するなどは効率よく子供の注意を喚起する効果が認められている。こういった相互作用によって母と子がしっかりと結ばれ、また、それによって子供の成長が促進されるのであれば、看護者はできるだけ長く、かつ有効にその機会を持つような援助を考えるべきであろう。本研究では母親が子どもを抱いてあやすという行動に着目し、それが児にどのような影響を及ぼすのかを観察した。その結果は以下の5点に要約できた。1.抱くという刺激は児を泣きやます効果が認められる。2.たて抱きは、刺激直後の児の覚醒状態を急激に下げ、その後、穏やかに下降させる。すなわち、児を泣きやますには即効性があり、敏活な状態にする効果が認められる。3.横抱きは、刺激直後の児の覚醒状態は穏やかに下降し、その後(40〜80秒後)、さらに下降する。4.抱き上げずに布団を掛けるだけでは児の覚醒レベルの変化は認められなかった。5.啼泣の中止や敏活性を高める目的では運動感覚に対する刺激が有効である。
著者
山本 達之 高橋 哲也 山本 直之 神田 啓史 伊村 智 工藤 栄 田邊 優貴子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

南極上空に南半球の春先に発生するオゾンホールの影響で,地上への紫外線照射量が増加したための生態系への影響を,動物の眼の組織に注目して, FT-IRやラマン散乱スペクトルなどの分光学的手法によって調べた。その結果,牛眼の角膜のコラーゲン分子が,紫外線によって断片化していることが明らかになった。また,牛眼の水晶体のクリスタリンが,紫外線照射によって黄変し,トリプトファン残基だけが特異的に破壊されていることが明らかになった。
著者
三國 久美 工藤 禎子 深山 智代 広瀬 たい子 桑原 ゆみ 篠木 絵理
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、乳幼児を持つ両親を対象として育児ストレスを縦断的に測定し、1)子どもの月齢に伴う親の育児ストレスの変化、2)父母の育児ストレスの違い、3)育児ストレスに関連する家族特性について明らかにすることであった。育児ストレスの測定には日本版Parenting Stress Index (PSI)を用いた。日本版PSIは、奈良間ら(1999)により開発された尺度であり、高得点は高ストレスを意味する。子どもが4ヶ月の時点で縦断研究を開始し、3歳6ヶ月まで約6ヶ月毎に計7回の自記式質問紙による調査を行った。全調査で有効回答を得た父112人、母174人を分析対象者とした統計的解析により、以下の結果を得た。1)日本版PSI総得点は子どもの月齢による差がみられ、父では4ヶ月、10ヶ月と増加し、1歳6ヶ月時が最も高く、以降減少した。母では4ヶ月時が最も低く、10ヶ月から1歳6ヶ月にかけて増加し、その後の変化はみられなかった。2)日本版PSI総得点は、父母間で差がみられ、4ヶ月から3歳6ヶ月まで常に父よりも母の育児ストレスが高かった。また、4ヶ月から3歳6ヶ月までの父母の日本版PSI総得点には有意な正相関が認められた。3)日本版PSIと家族特性との関連をみたところ、子どもの出生順位では第二子以降よりも第一子のほうが、また子どもの健康状態では良好なものよりも治療中のもののほうが、父母ともに有意に育児ストレスが高かった。また、有職の母よりも無職の母の育児ストレスが有意に高かった。父の学歴では、中学卒のものはそうでないものよりも母の育児ストレスが有意に高かった。以上の結果から、子どもの月齢、出生順位、健康状態、また母の職業の有無など育児ストレスに関連する要因を踏まえて両親への育児支援を行う必要性が示唆された。
著者
森田 直子 高村 昇 工藤 崇
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本課題研究期間において、小型加速度・温度・心電図感知機能に線量モニタリングを搭載したの個人用モニタリングセンサーの開発を行い、システム構築を完成させた。このモニタリングセンサーを用いて、2011年3月11日発生した東北地方太平洋沖地震に端を発して発生した福島第一原子力発電所事故における本学からの救援活動の際、現地で活動した本学から派遣の医療関係者の生体情報管理に応用した。また、本学内に設置の精密型ホールボディ-カウンターを用いて、福島に滞在した長崎からの派遣者の内部被ばくを測定した。特に、事故後初期に測定した被験者からは、短半減期のヨウ素-131をはじめ、ヨウ素-132やテルル-132も検出され、初期の段階での内部被ばくの状況を判断するための非常に重要な結果が得られた。
著者
工藤 綾子 稲冨 惠子
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1. テーマ「災害時における集団避難生活者の感染予防意識と行動」を第14回日本在宅ケア学会学術集会(聖路加看護大学)にて発表した。回答者は117名。男性44.4%、女性55.6%である。本調査では(1) 集団避難生活者の感染症意識は災害発生時期や集団非難の規模の影響をうけている。(2) 避難期間の長さによって体調の変化、集団避難生活の仕方(清掃範囲・清掃場所)などの清掃意識に影響を与える。(3) 避難生活中の感染症予防行動がとれていない人は30%みられる。感染予防行動は水確保の影響を受けており、医療関係者派遣と同時に、早い時期の水確保が感染症予防と拡大防止につながることが明らかにされた。2. 全国の県庁・市役所の災害防災課担当者への調査結果:611箇所から回答を得た。災害時に充分対応できるかと感染症の知識の両項目には関係がみられ、知識が不十分な場合には充分な対応ができないと捉えていた。また、災害時に感染症の知識が不十分と答えた人と対策が必要な細菌・ウイルスはなにかわからないと答えた人には有意な関係がみられた。最も注意する感染症は「呼吸器系の感染症」が最も多く264名(43.5%)であった。「消化器系の感染症」138名(22.7%)では、災害時に対応できる人数が21~30人と答えた人の項目に有意な関係がみられた。仕事内容と災害時の対応では、「地域住民の安全対策」担当と災害時の対応が充分な対応ができるともできないとも言えないと答えた人とは有意な関係がみられた。防災担当する人には、感染症に対する知識が求められることがわかった。3. 今後の課題:行政調査の結果を学会に発表し、1.2の結果をもとにマニュアルを作成する。
著者
工藤 栄 伊倉 千絵 高橋 晃周 西川 淳 石川 輝 鷲山 直樹 平譯 亨 小達 恒夫 渡辺 研太郎 福地 光男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.279-296, 2002-03

第39次および第40次日本南極地域観測隊夏期行動期間中(それぞれ1997年12月4日∿12月13日及び, 1998年2月15日∿3月19日と1998年12月3日∿12月20日及び1999年2月24日∿3月19日), 南大洋インド洋区で南極観測船「しらせ」の航路に沿って表層海水をポンプ連続揚水し, プランクトンネットで3∿8時間濾過して動物プランクトン試料を得た。動物プランクトンの湿重量測定を行い, 航路に沿って現存量を整理した。連続試料採取したにもかかわらず, 隣接した試料間においても現存量の変動は大きく, 動物プランクトンの不均一分布が伺えた。動物プランクトン現存量は「しらせ」南下時に顕著に認められる海洋前線通過時にしばしばきわだって大きくなり, その前後の海域で得られた値との格差は際立っていた。これら海洋前線では水温・塩分変動が大きく, 南大洋インド洋海区を四つの海域(亜熱帯海域, 亜南極海域, 極前線海域, 南極海域)に区切っている。2回の航海で得た現存量の平均値を比較したところ, 高緯度海域ほど平均値が大きくなる傾向があり, 南極海域で最大となった。南極海域の内でもプリッツ湾沖から東方にかけての海域(東経70-110°)で現存量が大きく, これまでの停船観測結果で推察されていた同海域の生物生産性が高いことに呼応する現象と考えられた。また, リュツォ・ホルム湾沖からアムンゼン湾沖の大陸近くの航行時に得られた現存量は, より沖合部を航行する東経110-150°間に得られた値よりも1/2程小さなものであり, さらに, 東経110°以東において大陸沿岸よりを航行したJARE-39とやや沖合いを航行したJARE-40で得られたデータ間でも前者の現存量が小さく, これらから南極海域では表層水中の動物プランクトン量が生物生産期間がより短くなると考えられる沿岸部ほど小さいことが推察された。今回表層水中で連続試料採取して得られた動物プランクトン湿重量値は, 過去四半世紀間に停船観測において同海域で主にプランクトンネット採集によって得られた値と大きくは異なってはいなかった。動物プランクトン分布の正確な測定のためには動物プランクトンの鉛直分布特性など考慮する必要があるが, 海域ごとの空間分布特性や海域内での変動性などの研究には今回のようなポンプ揚水による試料採集でも適用可能な部分が多く, その研究実施方法の容易さを考慮すると今後の長期的な動物プランクトンモニタリングなどに適した手法と思われた。
著者
工藤 正人 子林 秀明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.33, pp.25-30, 2009-03-11

会社等の組織における業務生産性を向上させるためには、同一の組織/プロジェクトチーム内のメンバだけでなく、外部の不特定のメンバとアドホックに協調して効率的に作業を進めていくことが重要である。現在は、電話や電子メール等のコミュニケーション手段を利用して他のメンバへの作業依頼や進捗確認を行っている。特に進捗確認に関し、連絡がつかなかったり確認を忘れたりすることによりタイムロスや作業遅延が発生し、業務が非効率化している。そこで、本稿では、不特定のメンバに依頼した作業の処理状態をリアルタイムかつ視覚的に確認可能にし、かつ締め切りが近づいてきた作業に関する督促を容易にすることで、不特定のメンバとのアドホックな協同作業を効率化できるタスク管理方式を提案し、実装した試作システムについて述べる。We propose a task management technique which can make ad-hoc collaboration works among unspecified users more efficient. Toward to get productivity increases in organizations such as company, working effectively in a coordinated manner with various people, is very important. Today, in order to make a request and ask processing progress, we use communication means such as telephone and e-mail. However, communication delay becomes a serious problem for getting productivity increases. In this paper, we propose expanded information sharing technique which a user can share processing progress with other users offered tasks visually, and communication means which the user can urge other users offered tasks to processing easily.
著者
深谷 亮 山村 毅 工藤 博章 松本 哲也 竹内 義則 大西 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.661-672, 2004-02-01
被引用文献数
16

本研究では,他人の文章を真似して作成された文章を発見するための文章間類似度の計算法を提案する.真似した文章の多くは,もとの文章に含まれる文と類似した文から構成され,類義語・同義語へ言い換えることなどにより表層的な表現を変化させる.そこで,本手法では各文章を構成される文単位で照合し,表層的な表現の変化に対応するため単語の頻度と概念辞書を用いる.本手法による類似度により,同一テーマで記述された文章と真似して書かれた文章とを明確に区別することができることを示す.
著者
兼成 哲也 工藤 信樹 張 旭 高橋 誠 山本 克之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.97, no.124, pp.9-16, 1997-06-20
被引用文献数
2

近年, 血管内超音波エコー法(IVUS)は臨床において重要な検査法になりつつある. IVUSを用いて血管内腔を描出することは血管狭窄の定量的評価を行う上で重要ではあるが, 血液のと粥腫の音響インピーダンスの差が小さいことから, 両者を見分けることが困難なことも多い. そこで, 本研究では血流や粥腫の動きを検出することにより血管内腔を明瞭に描出する新しいIVUSを提案する. IVUSにでは超音波の伝搬方向と血流方向が直交するために, ドプラ法では血流を検出できない. それゆえ, 本研究では血流を検出する方法として相関法を用いた. 本手法を実現するシステムを試作し, 血管ファントムを用いて評価を行った. その結果, 本手法を用いることにより従来のMモード像やBモード像では見分けることが困難であった血流と粥腫を明瞭に分離することができた.
著者
工藤 明 猪早 敬二 竹下 淳
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々は、細胞間接着分子カドヘリンに骨芽細胞分化制御機能があることを報告する。各種間葉系細胞株におけるカドヘリンの発現を調べた結果、各細胞株はそれぞれが独特なカドヘリンの発現様式を持っており、骨芽細胞系譜では、OBカドヘリン(カドヘリン-11)およびNカドヘリンを発現していることがわかった。同一細胞において複数種のカドヘリンが発現することの意味を調べるために、頭頂骨骨芽細胞と同程度にOBおよびNカドヘリンを発現させたL細胞(L-OB/N)ならびに、それぞれ単独で発現させたL細胞(L-OB,L-N,L-MOCK)を作製した。細胞染色の結果、OBとNカドヘリンは、それぞれが独立してアドヘレンスジャンクションに局在し、共に細胞接着に寄与していると考えられた。また、L-OB/Nにおいては骨芽細胞分化マーカーであるALP,Osteocalcinの発現誘導および骨芽細胞分化のマスター遺伝子であるCbfalの発現上昇が確認された。L-OBでは微弱ながらALPの発現が確認でき、L-N,L-MOCKでは全くそれら発現は確認されなかった。以上のことよりOBカドヘリンは骨芽細胞分化を方向付けし、Nカドヘリンはその作用を増強すると考えられた。NIH3T3においても同様の実験を試みたところALP,Osteocalcinの発現誘導は確認出来なかったが、FGFR2の発現が上昇し、L-OB/Nにおいても同様に発現上昇が確認された。FGFR2は、突然変異が骨格系に多くの異常を示し、Osteopontin発現上昇以前の骨芽細胞前駆細胞において発現することから、骨芽細胞初期分化に重要であると考えられている。これらのことより、OBとNカドヘリンは、未分化な骨芽細胞前駆細胞の細胞分化運命を決定していると考えられる。今回の結果は、複雑な細胞間相互作用が複数種のカドヘリンのよる細胞間認識の結果であると共に、細胞間認識による細胞分化決定機構の存在を示唆するものである。
著者
萩原 智 上嶋 一臣 西田 直生志 依田 広 三長 孝輔 南 康範 田北 雅弘 青木 智子 盛田 真弘 千品 寛和 松原 卓哉 大丸 直哉 稲村 昇 工藤 正俊
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.567-574, 2023-11-01 (Released:2023-11-10)
参考文献数
24

症例は30代男性.幼少期に完全大血管転位III型に対してFontan手術が施行され,近医に定期的に通院していた.20XX年7月腹部USで多発肝腫瘤を指摘され当院紹介受診となった.造影CTにて最大13 cmの多発肝細胞癌と判明した(BCLC stage B).画像上は門脈圧亢進所見や明らかな肝形態異常を認めなかったが,肝生検でCongestive Hepatic Fibrosis Score 3であり,実際には線維化の進展を認めていた.肝内多発のため外科手術やRFAの適応外であった.また最大径の腫瘍は肝外に突出しており,腹腔内破裂の危険性もあることから,まずTACEを施行した.再発に応じて各種抗癌剤治療を行い,生存中である.画像上は肝線維化を示唆する所見はなかったが,Fontan術後の特殊な循環動態では,肝線維化が進展している可能性があり,本症例を通して肝癌サーベイランスの重要性を再考する.
著者
町田 英世 工藤 卓 吉川 悟 中井 吉英
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.135-141, 2000-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

心療内科で扱う慢性疼痛症では, 症状に対して器質的病因が特定し得なかったり, 病因に相関しない疼痛が持続することが多い.こうした場合, 治療者側の疼痛の評価はより主観的となり, 病態に対する患者との認知の差が大きくなりやすい.そのため治療にあたっては, 患者が家族や治療者と行うコミュニケーションや相互作用に配慮することが重要になってくる.こうした視点で慢性疼痛を捉えることは, 治療的な相互作用の構成を課題とする短期療法の適応が考慮されるべき点である.今回は, 短期療法の一つといえる「問題の外在化」を用いて治療した慢性疼痛症例をあげながら, 心療内科における心理療法の応用について述べたい.