著者
磯田 友里子 工藤 玲 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.75-86, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
43

シニア市場は同質な単一セグメントではなく多様な消費者の集まりであり,この多様性に応じたマーケティング戦略が必要であるという認識が広まりつつある。しかし,シニア市場内の多様性を捉える具体的な枠組みを提示する既存研究は少なく,消費者間の差異を十分に捉えきれていない。そこで本研究では,シニア市場内の多様性を表す指標として未来展望(FTP)と将来自己連続性(FSC)を用い,シニア女性を対象として,実際の購買データを用いて探索的な調査を行った。その結果,FTPは非消耗品の購買活動に負の影響を与え,FSCが正の影響を与えることが明らかになった。また,FTPとFSCの交互作用が観察され,購買活動がもっとも活発なのは「将来の自分とのつながりは強いが,残された時間は長くないと感じているシニア女性」であり,「将来の自分とのつながりが強く,残された時間も長いと感じるシニア女性」は,金銭的支出を控える傾向が示された。
著者
家城 隆次 工藤 翔二 岡村 樹 平山 雅清 植竹 健司 木村 仁 加勢田 静 池田 高明 深山 正久 小池 盛雄
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-6, 1991-02-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

過去13年間の肺癌における組織型の比率の変遷について検討を行った. 対象は1976年~1988年の13年間に当院で病理組織学的に診断の確定した肺癌患者, 955名 (男711名, 女224名) で, 腺癌患者が45%, 扁平上皮癌患者が33%であった. 肺癌患者は増加しており, その組織型においては, 扁平上皮癌比率の減少と腺癌比率の増加がみられ, その傾向は特に1981年以降, 扁平上皮癌と腺癌の比率逆転という事態になった. この変遷は, 性別や年齢構成の変化によるものではなかった. 1983年までの日本TNM肺癌委貝会の患者登録からみても全国的に腺癌の比率が増加していることが推察される. 従来, 扁平上皮癌が腺癌より多いと言われていたが, 近年では, 腺癌の方が多くなっている可能性が示唆された.
著者
畑田 智子 大浜 用克 新開 真人 武 浩志 北河 徳彦 工藤 博典 望月 響子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.915-919, 2010-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【目的】食道閉鎖症根治術後の吻合部狭窄に胃食道逆流症(GERD)を合併した場合,狭窄が増悪するために,拡張術による拡張効果が乏しいと言われている.食道閉鎖症根治術後にみられたGERD合併例とGERD非合併例の吻合部狭窄に対する治療方針について検討した.【方法】1974年から2006年8月までに当院で治療し,術後の追跡が可能な113例の中で術後に吻合部狭窄を合併した31例を対象に,GERD合併群と非合併群の2群に分け,吻合部狭窄に対する治療成績を比較検討した.【結果】吻合部狭窄例31例の内,GERD合併例は14例であり,GERD非合併例は17例であった.GERD合併群の上下食道断端距離(gap)は26.7±13.5mmであり,GERD非合併群は15.0±9.3mmで両群間に有意差を認めた.吻合部狭窄とGERDの合併群では14例中6例に吻合時に食道環状筋切開術(Livaditis)が付加された.吻合部狭窄に対しては拡張術を,GERDには制酸剤投与を行った.その結果GERD非合併群では平均2.4回の拡張術で吻合部狭窄症の症状が改善したのに対し,GERD合併群では平均7.3回の拡張術を行っても狭窄の改善がみられなかった.11例に噴門形成術を行い,3例には狭窄部切除を行った.噴門形成術後は8例が速やかに改善,3例はブジーを追加して改善した.狭窄部を切除した内の2例は間もなく噴門形成術を追加施行し,他1例はGERD症状が軽快したので経過観察とし,そのまま改善した.【結語】GERDを合併した吻合部狭窄に対しては,制酸剤の投与と拡張術だけでは狭窄に改善がみられないため,早期に噴門形成術を行うべきである.
著者
高橋 順一 加藤 啓一 工藤 孝志 一瀬 悦史 竹澤 雄基 髙間 晶子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.597-601, 2017-08-31 (Released:2017-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

背景:日本赤十字社は効率的にBLS教育を実施できる学校向けのプログラムとして,『救急蘇生法の指針2010(市民用・解説編)』 1) で設定された「入門講習」などに基づき,「児童・生徒のための救命手当短時間プログラム」を新設した。目的:本プログラムの受講者である小学生の受講前後の救助意欲とBLSに関する知識の変化について,比較評価を行うことである。方法:秋田県と大阪府の小学生に対して本プログラム(1単元:45分間)を開催し,受講児童に対し講習前後に同じアンケート調査を行った。結果:秋田県が286名,大阪府が405名の総計691名の小学生全員から調査票を回収し得た。救助意欲の変化は受講前の68%から97%となり,救助知識においても受講前に比べて,受講後は全体的に向上した。考察:小学生に対して45分間のBLS教育を行うことにより,BLSに関する基本的な知識を習得すること,救助意欲を向上させることは可能である。
著者
工藤 彰 窪田 諭 市川 尚 阿部 昭博
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.19-27, 2013-06-30 (Released:2019-02-28)
参考文献数
16

In recent years, there has been a growing interest in field museums, which has led to local communities rediscovering their cultural identity, history, and ecology. However, a field museum guide system has not been researched extensively. The purpose of this study is to develop a field museum guide system by smartphone using digitalized old maps and old photographs. An evaluation of the prototype by users yielded roughly satisfactory results. As a result, we clarified the following design features of the guide system. Based on the following designs, we have developed a guide system in Field Museum of Morioka. The guide system has four functions: push-type information providing using GPS, use of old map/photograph, story-based navigation and cooperation among on-site mobile applications and Websites to visitors before/after the visit. And, the system was evaluated by viewpoint of the visitor and operator groups of the field museum. As a result, it was evaluated that the system is useful for town walking.
著者
山口 正樹 杉阪 次郎 工藤 洋
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.111-119, 2010-05-30 (Released:2018-02-01)
参考文献数
21

アブラナ科の越年生草本タチスズシロソウArabidopsis kamchatica subsp.kawasakianaは環境省のレッドリストに絶滅危惧IB類として記載されている。生育地が減少しており、その多くが数百株以下の小さな個体群である。著者らは、2006年春に、琵琶湖東岸において3万株以上からなるタチスズシロソウの大群落が成立していることを発見した。この場所では2004年から毎年夏期にビーチバレーボール大会が行われており、砂浜が耕起されるようになった。この場所の群落は埋土種子から出現したものと考えられ、耕起により種子が地表に移動したことと、競合する多年草が排除されたごとが群落の出現を促した可能性があった。2006年には、この群落を保全するため、ビーチバレーボール大会関係者の協力のもと、位置と時期を調整して耕起を行った。その結果、3年連続で耕起した場所、2年連続で耕起後に1年間耕起しなかった場所、全く耕起しなかった場所、初めて耕起し左場所を設けることができた。この耕起履歴の差を利用し、翌2007年に個体密度と面積あたりの果実生産数を調査することで、タチスズシロソウ群落の成立と維持に重要な要因を推定した。2006年に初めて耕起した場所では、耕起しなかった場所に比べて、翌年の個体密度、面積当たりの果実生産ともに高くなった。2年連続耕起後に1年間耕起を休んだ場所では、3年連続で耕起した場所に比べて、翌年の個体数は増えたが果実生産数は増加しなかった。また、結実期間中(6月)に耕起した場所では、結実終了後に耕起した場所に比べて、翌年の個体密度と果実生産数が低下した。これらのことから、秋から春にかけてのタチスズシロソウの生育期間中には耕起を行わないことと、結実後に耕起を行うことがタチスズシロソウ個体群の保全に有効であると結論した。このことは、ビーチバレーボール大会のための耕起を適切な時期に行うことにより、砂浜の利用と絶滅危惧植物の保全とが両立可能であることを示している。
著者
工藤 佳久
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.58-63, 2017 (Released:2019-01-19)
参考文献数
15

ヒトの脳におけるアストロサイトの数はニューロンより多い。発見以来長い間この細胞は血液脳関門としての機能や神経伝達物質の取り込み,ニューロンへのグルコースの供給などニューロン活動の支持役として機能しているのだと考えられてきた。電気活性の欠如のために情報処理装置としての脳機能への関与は低いと判断されてきたのだ。ところが,20 世紀末になって,アストロサイトが様々な神経伝達物質に細胞内Ca²⁺濃度上昇の形で応答するダイナミックな細胞であることが判明した。また,ニューロンが放出するほとんど神経伝達物質に対する受容体をG-タンパク質共役型の形で発現し,アストロサイト自身もグルタミン酸,ATP およびD-セリンなどのグリオトランスミッターを遊離することが明らかになった。現在では,アストロサイトはニューロン間のシナプスに組み込まれたトライパータイトシナプスとして機能し,高次機能の発現に関与する可能性が高いと考えられるようになっている。
著者
佐々木 真紀子 石井 範子 菊地 由紀子 工藤 由紀子 杉山 令子 長谷部 真木子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.164-172, 2016-09-20 (Released:2016-10-07)
参考文献数
44
被引用文献数
3 2

目的:化学療法中の患者を看護している看護師の抗がん剤の職業性曝露の状況と看護内容との関連を検討する.対象:北東北2カ所の一般病院で化学療法中の患者を看護している女性看護師10名で,原則として抗がん剤の混合調製を実施していない看護師とした.方法:化学療法中の患者の看護に従事した日の24時間の尿を採取し,オランダのEXPOSURE CONTROL研究所に依頼して,尿中のシクロホスファミド(CP)とα-フルオロ-β-アラニン(FBAL)の定量分析をガスクロマトグラフ質量分析で行った.また,年齢,化学療法中の患者への看護内容とその際の防護具装着状況,最近の健康状態等について質問した.結果:CPは9人の看護師の24の尿サンプルから検出された.CPの総排泄量は一人あたり5.4~44.2 ng/24 h,平均は16.8 ng/24 hで病院間に有意な差はなかった.FBALはいずれの尿サンプルからも検出されなかった.CPは勤務開始前の尿からも検出され,またCPの点滴中の患者を看護していない看護師の尿中からも検出された.健康状態では脱毛があると回答したものが9名で最も多かった.考察と結論:本研究ではCPの点滴中の患者の看護を行っていない場合でもCPによる曝露があることが明らかになった.曝露の経路としてCPの吸入や皮膚からの吸収が考えられる.曝露を最小限にするためには,看護の様々な場面でも適切な個人防護具の装着が必要である.また今後は環境中の抗がん剤のモニタリングや看護師の健康状態のモニタリングを定期的に行っていくことが重要である.
著者
岳本 秀人 工藤 謙 丸山 記美雄 三浦 宏 笠原 篤
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.274-285, 2006 (Released:2006-03-30)
参考文献数
13

日本で初めてのアスファルト舗装の大規模機械化施工が行われたのは1953年に開通した北海道の国道36号札幌~千歳間 34.5 km であった.本報告では,この区間(通称:弾丸道路)が施工されるに至った経緯や,当時の最新技術として,また寒冷地対策工として用いられた各種工法,材料について解説している.また,この50年を経過した舗装体から現位置試験や供試体の採取を行い,性状,支持力や強度,組成分などの観点から,その劣化の程度を評価した.その結果,構造的に小規模な破壊を呈している箇所や材料の劣化傾向が見受けられたが,現在の規格を満足する性状も多く,今でも供用に耐えられていることが確認された.
著者
佐藤 貴徳 工藤 慎太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.377-380, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

〔目的〕歩行開始時には,下腿三頭筋の活動低下によって足圧中心(COP)の後方移動が起きる.その際に,下腿三頭筋がどのような動態を示すかを検討する.〔対象〕同意を得た下肢に整形外科的疾患のない健常成人22名とした.〔方法〕足圧分布測定器,超音波画像診断装置,ビデオカメラを同期して,歩行開始時の下腿三頭筋の動態を,安静立位時と歩行開始時の筋線維束長の変化量で検討した.〔結果〕下腿三頭筋は10 mm程度の伸張方向への動態を認めた.〔結語〕下腿三頭筋はCOPが後方移動する際に伸張されることが示唆され,歩行開始時の運動療法の際には,この動態も含めてアプローチする必要があると考えられる.
著者
生田 拓也 野口 和洋 工藤 悠貴 阿部 徹太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.140-142, 2019-03-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
12

大腿四頭筋皮下断裂は比較的稀な外傷である.その症例2例を経験したので報告した.症例1は50歳男性で,トラックとプラットホームの間に挟まれて受傷した.症例2は57歳男性で,ジョギング中に段差に躓き受傷した.いずれも膝蓋腱上部の陥凹を認め,MRIにて確診した.合併損傷はなく,手術にて膝蓋腱をpull out法にて修復した.術後は3週間シリンダーキャスト固定の後,可動域訓練を開始した.2例とも膝関節屈曲可動域の獲得に時間を要したが術後3ヶ月時にはほぼ正座も可能となった.最終観察時,伸展筋力の低下はなくADLに支障はない.本症例はまれな外傷であるが,治療に関しては修復術が基本であると思われる.術後療法は遅らさざるを得なかったが結果は良好であった.
著者
本城 勇介 工藤 暢章
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.589, pp.321-333, 1998-03-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
3 1

地盤工学や構造工学で逆解析を成功させるためには, 逆解析の目的に応じた観測データの適切な取得が必要であると考えられる. 本研究では, 逆解析における事前情報, 観測情報, 予測の過程における情報の流れを, 情報理論で広く用いられるシャノンの情報エントロピーにより記述し, これを規準として逆解析を行なうことを前提とした場合の, 観測計画の評価を行う方法の基本的な考察を行った. この方法と, 従来から実験計画法の分野で提唱されてきた観測計画の評価基準との関係についても明確化した. 提案された方法は, 比較的簡単な例題に適用され, その有用性が示された.
著者
工藤 大輔
出版者
弘前大学國史研究会
雑誌
弘前大学國史研究 (ISSN:02874318)
巻号頁・発行日
no.105, pp.40-53, 1998-10-30
著者
石渡 奈緒美 堤 一磨 福岡 美香 渡部 賢一 田口 靖希 工藤 和幸 渡辺 至 酒井 昇
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.265-274, 2012 (Released:2014-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
3

IHクッキングヒーターを加熱源とし,フライパンでハンバーグを片面ずつ焼成する時の温度と水分移動を予測できる数学モデルを構築するため,モデル試料(シリコン,ボロニアソーセージ)を用いた解析を行った。蓋をしたフライパン内全体を調理空間とみなした伝熱モデルは,IH発熱層,フライパン伝熱層,フライパンと試料との接触層および試料から構成される伝導伝熱領域と,フライパン内の空気との熱伝達からなる。試料表面と空気との熱伝達とともに,フライパンから空気への放熱が,試料の温度上昇に影響をおよぼすことから,試料のないフライパン面と空気との熱伝達も考慮した。水分移動の計算では,試料表面とともに,試料内部も水分蒸発の計算領域とした。本モデルの妥当性を検証するため,調理中に形状が一定とみなせるボロニアソーセージを用い,中心温度50℃で一度反転させた際の温度と含水率変化を算出した。その結果,解析値は実験値と同様な傾向を再現可能であった。