著者
村上 暁信
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.233-236, 1994-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
32

エベネザー・ハワ-ド (1850-1928) は, 1898年にTomorrow: A Peaceful Path to Real Reformを著した。その中で田園都市という新しい都市の建設を提案し, その後の都市計画に多大な影響を与えた。ハワードは著書の中ではオープンスペースの重要性をうたっているが, 実際の建設に際してはほとんど言及していない。田園都市論の形成過程を検討することにより, 彼の関心はむしろ人間の技術の統合である都市建設という行為により多くの労苦が取り除かれることと, 協同の原則に基づいた社会をつくりあげることにあったということが考察された。
著者
木村 暁 合田 真
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

細胞核はほとんどの細胞で細胞中央に配置する。しかしながら核が中央に配置する機構は未だに議論が別れている。本研究課題で、報告者は細胞骨格である微小管が細胞質全体において引っ張られることにより細胞核が細胞中央に移動する「細胞質引きモデル」を支持する知見を得ることに成功した。メカニズムの理解をさらに進めるために、生きたままの細胞内で細胞核を移動させるのに必要な力を測定することにも成功している。これらの知見により細胞核が細胞中央へ配置する機構の理解は大きく進展した。
著者
那須 啓一 志田 大 松岡 勇二郎 谷澤 徹 松永 裕樹 真栄城 剛 宮本 幸雄 井上 暁 梅北 信孝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1485-1492, 2011-11-01 (Released:2011-11-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

S状結腸癌の術前検査にて偶発的に発見され,癌手術に際して同時切除した仙骨前面の骨髄脂肪腫の症例を経験した.症例は70歳の男性で,S状結腸癌の術前検査の腹部CTにて第3から第5仙椎前面に内部不均一に淡い造影効果を示す径4cmの腫瘤が見られた.MRIでは脂肪成分の含有を認め辺縁も一部不整であったことから,脂肪肉腫の術前診断にて,S状結腸癌の手術にあわせて同時に切除した.仙骨前面腫瘤は径4cm大の被膜形成の明瞭な充実性腫瘤で仙骨前面に比較的強固に付着していたが浸潤はなかった.組織学的には成熟脂肪組織の増生とその中に混在する三系統(赤血球,白血球,血小板)の造血細胞からなる骨髄組織が見られ,悪性所見はなく骨髄脂肪腫と診断した.骨髄脂肪腫は,主として副腎に発生する比較的まれな軟部組織由来の良性腫瘍であり,副腎以外の部位に発生する骨髄脂肪腫は極めて少ないことから,画像診断も含めて文献的考察を加え報告する.
著者
清原 一暁 中山 実 木村 博茂 清水 英夫 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.117-126, 2003-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
11
被引用文献数
6

本研究では,印刷物による提示とコンピュータ画面の提示による文章理解の違いを調べ,わかりやすい文章提示の方法を検討した.文章の理解度を内容に関するテスト成績で調べた.その結果,表示メディアについては,提示方法によらず印刷物がディスプレイに比べて良いことが分かった.また,LCDがCRTよりも理解度において優れていることが分かった.さらに,すべての表示メディアにおいて,明朝体と比べてゴシック体の方が文章理解において成績が良い事を明らかにした.
著者
富永 暁子 水上 和美 蟻川 トモ子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1133-1138, 2001-11-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

梅酒の長期貯蔵における1カ月から12年貯蔵の梅酒と梅果実の遊離アミノ酸, 糖, 酸, pH, 吸光度 (色) について調べ, 以下の結果を得た.1) 梅酒中の遊離アミノ酸量は漬け込み後急速に増加し, 1年貯蔵で梅酒と梅果実の遊離アミノ酸量はほぼ平衡に達した.梅酒中の遊離アミノ酸組成は1年貯蔵でアスパラギンが63%, アスパラギン酸が5%であった.12年貯蔵でアスパラギンは45%に減少し, アスパラギン酸は23%に増加した.2) 梅酒中のショ糖は漬け込みから1年以内に転化が完了した.3) 梅酒の有機酸は1年貯蔵まで増加し, それ以降ゆるやかに減少し, 3年でほぼ一定になった.pHは貯蔵中2.8~3.0であった.4) 梅酒の色は貯蔵が長くなるに従って濃くなり, 吸光度が加速度的に上昇したことで明らかである.5) 官能検査の結果は貯蔵期間が長くなるに従って味が濃くなり, さわやかさがなくなる.3年貯蔵の梅酒が有意に好まれた.
著者
立林 めぐ美 大磯 直毅 川田 暁
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.403-410, 2015 (Released:2016-04-05)
参考文献数
9

非ステロイド性抗炎症薬含有テープ剤などの貼付剤は皮膚と密着し,主剤の皮膚への浸透性を高めて効果を発揮するが,各種成分へのアレルギー感作が成立し,アレルギー性接触皮膚炎や光アレルギー性接触皮膚炎が生じうる。貼付により皮膚バリア機能が低下すると,アレルゲンの皮膚内への浸透性が高まり,感作がより生じやすくなる。しかしながら,貼付剤による皮膚バリア機能におよぼす影響はほとんど評価されていない。20歳以上の本研究に同意が得られた健常人ボランティア20例を対象にロキソプロフェンナトリウム水和物貼付剤とケトプロフェン2%貼付剤を7日間連続貼付し,貼付終了直後および貼付終了7日後における皮膚バリア機能に及ぼす影響を検討した。評価項目として経皮水分蒸散量(TEWL: transepidermal water loss)と角質水分量(capacitance)を測定した。角質水分量に貼付剤間の差は認められなかった。ケトプロフェン2%貼付剤群では,貼付終了直後と貼付終了7日後の経皮水分蒸散量が優位に高値を示した。テープ剤の各種成分の選択と構成比の最適化を図り,皮膚バリア機能が低下しない,もしくは低下しにくい貼付剤の開発と普及が望まれる。(皮膚の科学,14: 403-410, 2015)
著者
郭 暁蘇 植田 憲
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.212, 2013 (Released:2013-06-20)

中国吉林省査干湖周辺地域では、長い歴史のなかで、当該地域特有の漁撈文化が構築されてきた。しかしながら、今日の高度経済成長とともに、自然の管理や漁撈道具の変化、人びとが創出・継承してきた伝統的文化が消失しつつある。  本研究は、中国吉林省西山外村における、最も重要な漁撈活動として冬に行われる「冬捕」を取り上げ、自然との共生に基づいて構築されてきた特質を把握するとともに、今後の当該地域の生活づくりのあり方を導出することを目的としたものである。  文献調査ならびに西山外村における高齢者を中心して、昔の「冬捕」を主として聞き取り調査を踏まえ、次の諸点を明らかにした。  1)身の回りの自然物を適度に採取し道具をつくり、周りの自然環境を理解して、自然の利活用の知恵を生み出した。  2)時に分業・協働をして、漁撈をして、人と人を繋がって、共同体的な行動規範が存立した  3)漁撈に関する習俗と信仰を継承して、精神構造を共有して、特有な生活文化の秩序を構築した。
著者
藤竹 暁
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.446-460, 1990-03-31 (Released:2010-02-19)
参考文献数
62

清水幾太郎は、「経験」を基礎にして考え、行動した思想家であり、社会学者であった。清水幾太郎の人生とその業績を明らかにするためには、清水にとって経験とは何であったのかを、探らなければならない。本稿では、清水が社会学を志望するにいたり、そして三〇歳代前半に、環境と人間に関する清水独自の理論の骨子を形成するまでの、清水の初期の経験を考察する。まず、清水が成長過程で遭遇した個人的、社会的事件を整理し、これらの事件が、清水の思想形成において、どのような経験となったかを考える。次いでマルクス主義が支配する時代状況の下で、ドイツ形式社会学に没頭し、その非現実性に飽き足らず、オーギュスト・コントの研究へたどりつき、さらにアメリカの社会学、心理学、哲学を知るにいたって、コントの人類に関する観念を、清水独自の社会学的な人間の理論へと発展させた過程をたどりながら、清水が経験の概念を確立してゆく経緯を論ずる。それはまた、思想家そして社会学者としての清水幾太郎が、人生と社会に対して示した姿勢を明らかにすることでもある。
著者
長谷川 治 金井 一暁 弓永 久哲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1269, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】頭蓋脊椎角(以下CV角)は,C7棘突起を通る水平線とC7棘突起から耳珠を通る線が成す角度とされ,CV角の減少は頭部の前方への移動を指す。本研究の目的はCV角の違いで呼吸筋や換気能力の影響を検討することである。頸部制御不良は,廃用のほか神経筋疾患などで幅広くみられる容態である。臨床では座位不良や臥位姿勢不良などの影響で頸部周囲筋から腰背部筋の緊張を高めた症例を多く経験する。特に頸部筋の緊張が高まることで誤嚥やこれによる重篤な肺疾患をきたす症例も少なくない。これは頸部体幹部の不良姿勢による影響であることを多くの報告から散見する。しかし,このような不良姿勢者の呼吸筋力への影響や換気能力についての報告,特に頸部角度について検討した報告は少なく頸部姿勢介入への方法について検討する必要があるため今回の検討に至った。【方法】CV角を他動的に設定するため自作の固定器具を被験者の背部から当て頭部および上腕部で固定を行った。固定は正中位をCV角90°としてそこからCV角60°,45°,30°位とした。検査肢位は体幹の運動を排除するため全例背臥位とした。なお被験者の両上肢を固定し,頭部は固定器から浮かさないように口頭で説明し,動いたものは測定値から除外した。次いで,各肢位における呼吸筋力および最大換気能力をスパイロメーター(ミナト医科学社製AS507)によって,最大換気量(以下MVV),最大吸気圧(以下PImax)と最大呼気圧(以下PEmax)の測定を被験者ごとに各2回行った最大値を採用し,得られた値をDuboisの式を用いた体表面積(BSA)の値で除した。各肢位における測定の順序はランダムとし,測定の間隔も十分に休息を取って行った。各被験者の測定値の平均を算出し,それぞれの角度間のMVV,PImax,PEmaxの変化を比較検討した。統計には対応のある一元配置分散分析を用い,各角度間の比較にはBonferroniの多重比較法を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,研究の概要,倫理的配慮,公表の方法などについて本校倫理委員会で審査を受けその承認のもとに実施した。被験者は本実験の趣旨を十分に説明し書面によって同意を得られた健常な男性12名(平均年齢±標準偏差;20.3±1.7,平均身長±標準偏差;172.4±4.0,平均体重±標準偏差;63.7±8.0)とした。【結果】MVV/BSAがCV角90°(61.4±13.6L/min)に対して,60°(65.5±14.8L/min)で有意に増加し,逆に45°(64.1±14.2L/min)と30°(61.5±11.6L/min)では60°に比べて減少した。PImaxではCV角90°(77.3±17.7cmH2O)に対して有意差はなかったが60°(82.0±23.7cmH2O)と45°(83.9±26.6cmH2O)で増加した。しかし30°(79.5±29.0cmH2O)では減少した。PEmaxではCV角90°(70.5±14.6cmH2O)に対して有意差はなかったが60°(70.0±15.0cmH2O),45°(67.6±15.6cmH2O),30°(66.6±11.8cmH2O)とCV角の減少に従って減弱した。【考察】換気機能は頸椎の屈曲角度の増大に伴い減弱する傾向にあるが,CV角が60°となる,つまり背臥位姿勢からわずかに頸部を屈曲した姿勢では,屈曲しなかった姿勢に比べて有意に換気し易くなる結果となった。このことから背臥位姿勢では,枕などを使用したわずかな頭部挙上位が換気しやすい姿勢であることが示唆される。また,CV角60°では吸気補助筋である胸鎖乳突筋や斜角筋の走行を上位胸郭の引き上げ方向に一致させ筋活動を起こしやすくし最大吸気筋力の増大につながったと考える。しかしCV角45°以下になると,その走行が上位胸郭の運動方向より逸脱するため筋活動が起こし難くなると考える。またCV角45°以下は上位胸郭の前上方への運動制限,上気道抵抗の増大などを引き起こすため,過剰な頸部屈曲姿勢を保持し続けることは廃用的に換気不全に陥る可能性が示唆される。このことから,背臥位での過剰な頸椎屈曲姿勢は,換気機能や呼吸筋力を低下させる可能性があるため,背臥位姿勢でのポジショニングを考える際には,枕などを使用して軽度屈曲姿勢をとらせることを検討する必要性があることを示唆した。【理学療法学研究としての意義】臨床における座位不良やポジショニング不良による頸部周囲筋から腰背部筋の緊張が高まった症例に対し,呼吸筋力や換気能力の低下を予防するために,姿勢介入の重要性を考える一助になると考える。
著者
松下 記代美 山田 秀和 荒金 兆典 川田 暁 手塚 正 今野 元博
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.462-465, 2003 (Released:2012-01-06)
参考文献数
10

48歳,女性。45歳時に子宮筋腫のため当院婦人科にて腹腔鏡下膣式子宮全摘出術を受けた。約3年後の平成10年5月頃より臍部の腫瘤に気付いた。臨床的に臍部に1.6 cm大のやや硬い境界明瞭な桃紅色の結節を認め,皮下に連続性の硬結を触れた。腹部エコーと腹部CTの画像診断によって,腫瘤が腹膜と連続していることが確認された。当院第2外科の協力のもと全身麻酔下に開腹,腫瘤摘出をおこなった。組織学的には表皮直下から腹膜まで連続性に膠原線維の不規則な増生と線維芽細胞の増殖が認められた。臨床経過,臨床症状および組織学的所見より腹腔鏡下手術後に生じた臍部のケロイドと診断した。今後,内視鏡子宮全摘術の増加するにつれて,臍部のケロイドの発生も増加することが予想される。
著者
伊藤 啓 伊藤 大介 齊藤 泰司 松下 健太郎 江連 俊樹 田中 正暁
出版者
日本混相流学会
雑誌
混相流 (ISSN:09142843)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.118-124, 2020-03-15 (Released:2020-04-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

In the design study on sodium-cooled fast reactors, .it is important to investigate the gas entrainment (GE) phenomena in detail. In fact, a lot of analytical, experimental and numerical studies have been conducted to clarify the onset condition of GE and some GE onset models have been proposed. However, few studies on the modeling of entrained gas flow rate has been conducted due to the difficulty on modeling the gas bubble entrainment at a free surface, which is accompanied by complicated free surface deformation. In this paper, the authors propose a mechanistic model to predict the entrained gas flow rate by a free surface vortex. The model contains the theoretical equation of transient gas core elongation and the empirical equation of critical gas core length for gas bubble detachment. The mechanistic model is applied to predict the entrained gas flow rate in a simple GE experiment. As a result, the predicted results show qualitatively good agreement with the experimental results of the entrained gas flow rate. Therefore, it is confirmed that the proposed mechanistic model can predict the entrained gas flow rate by a free surface vortex.
著者
森田 紘圭 大西 暁生 田畑 智博
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.113-124, 2019-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
17

東日本大震災における災害廃棄物の多量発生を契機に,現在,各地域の自治体では,積極的に災害廃棄物処理計画の策定を進めており,それに伴い災害時の広域的な処理体制構築や準備が進められているところである。一方,個々の被災現場におけるがれき処理においては,高齢化による自助努力の難しさやボランティアの不足などの課題があり,十分に対策が進んでいない。本研究は,災害時における廃棄物処理,特に初動期における被災家屋におけるがれき処理段階を取り上げ,地域の世帯特性に応じた対応可能性について基礎的分析を行うものである。具体的には,多摩川水系のうち東京都・神奈川県の洪水想定区域内に居住する住民400人を対象に,水害発生時における災害廃棄物処理への対応に関するアンケート調査を実施することで,世帯特性に応じたがれき処理への対応可能性や支援希望などを把握し,その結果を用いて地域ごとの各世帯における災害廃棄物処理への対応可能性や地域コミュニティや行政に対する支援ニーズの分析を行う。分析の結果,1)初動期の被災家屋のがれき処理においては住民が行政・ボランティアなどに希望する支援として清掃・運搬を行うための機材調達や運搬などの支援ニーズが高いこと,2)60歳以上を中心として構成される世帯では自分や家族のみによるがれき処理が困難であること,3)60歳未満を含む世帯であっても夫婦のみの世帯は支援を依頼する主体が少ない傾向があること,などが明らかとなった。また,多摩川水系で支援の必要性を確認すると,対象地域において比較的高齢化が進んでおり外部支援が必要となることが明らかとなった。