著者
三枝 暁子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

室町期京都の権力構造を明らかにするため、比叡山延暦寺(山門)と、その末社である祇園社(八坂神社)・北野社(北野天満宮)の京都支配の構造、および三寺社と室町幕府との関係、について解明した。その際、寺社と幕府との関係を探る重要な素材として祭礼に注目し、室町期の北野社(北野天満宮)の祭礼について取り上げ、考察をすすめた。具体的には南北朝期における幕府の北野祭の再編と北野社西京神人の存在形態、あるいは神社において「神人」を統率する位置にある、「公人」について検討した。さらに中世の「北野祭」の名残りをとどめる、現在の「瑞饋祭(ずいきまつり)」について調査を行い、成果をまとめた。
著者
加藤 柊也 丸山 智朗 乾 直人 後藤 暁彦 鈴木 寿之 瀬能 宏
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.19-031, (Released:2020-02-28)
参考文献数
19

Eighteen specimens of the pipefish Microphis retzii were collected from several rivers on Iriomote and Ishigaki Islands (Yaeyama Islands, Ryukyu Islands, Japan) from 1990 to 2019. The records from Iriomote Island, including variously sized specimens plus brooding males over multiple years, suggest established settlement of the species. The records from Ishigaki Island, being the first specimen-based records of the species from that locality, are suggestive of a new settlement. Accordingly, M. retzii should be treated as a Japanese resident species, rather than one subject to abortive migration, making them eligible for evaluation of red lists in Japan.
著者
暁 清文 佐伯 忠彦 西原 信成
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.160-164, 1987 (Released:2009-10-20)
参考文献数
8
被引用文献数
5 4

The operative findings of traumatic vertigo were studied in 65 patients who had surgery for middle ear trauma. A complaint of vertigo was present in 23 patients and absent in 42. A perilymphatic fistula was found in 19 patients with vertigo and 2 patients without vertigo. The incidence of perilymphatic fistula was correlated with the accompanying symptoms. There was no positive correlation with loss of consciousness, or temporal bone fracture or ossicular dislocation, but there was a positive correlation with the way the traumatic force acted on the inner ear windows. Vestibular function tests in the 19 fistula patients with vertigo showed positional nystagmus in 12 cases and a fistula sign in 10 cases. These two tests are considered to be important in the diagnosis of perilymphatic fistula.
著者
畑中 陽子 玉腰 暁子 津下 一代
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.141-149, 2012-07-20 (Released:2012-09-21)
参考文献数
32
被引用文献数
6 12

目的:20歳代のBMIやその後の体重変化が,40歳代での高血圧・糖尿病の服薬率・有病率や医療費に及ぼす影響を検討する.対象と方法:1989年時点で20歳代の男性10,125人を対象とし,BMI区分別,およびBMI区分と20年間の体重増減の組み合わせ別に40歳代の高血圧・糖尿病の服薬率・有病率と医療費について分析した.BMI区分別の服薬率,有病率,受療率をロジスティック回帰分析により,平均医療費を共分散分析により,1989年時点の年齢,ならびに20年間の体重変化の程度を調整して検討した.結果:20歳代から40歳代にかけて20年間で平均7 kgの体重増加を認めた.40歳代の高血圧服薬率・有病率,糖尿病服薬率・有病率のいずれも20歳代のBMI区分が高くなるほど有意に上昇し,BMI 18.5–19.9の群に比べ25.0以上の群では高血圧有病率は6.81倍,糖尿病有病率は16.62倍であった.40歳代の外来医療費,総医療費も同様に20歳代のBMI区分が高くなるほど高額となり,1人当たり平均総医療費はBMI 18.5未満の群の818.7円から25.0以上群の5,311.5円に増加した.さらに,20歳代のBMIが20.0–21.9,22.0–24.9であっても20年間に体重が10㎏以上増加した場合には40歳代の高血圧・糖尿病のリスクが増加した.考察:20歳代のBMIが高い区分ほど40歳時の高血圧や糖尿病の有病率は上昇し,同様に医療費も増加した.20歳代でBMI 25.0未満の場合でも,20歳代のBMI区分とその後の体重増加に依存して有病率が高くなった. 終身雇用を基本とした日本企業における保健活動では,若年期からの肥満対策はもちろん,肥満でない人も含めて体重コントロールができるよう支援することが重要である.
著者
齋藤 暁
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究実施計画に沿って、多倍長精度で時間依存密度行列繰込群を用いる量子回路シミュレータZKCM_QCの改良を進めた。この計算手法で計算コストを決定づける特異値分解の内部ルーチンにGPGPUを用いると高速になるが一方で計算精度が落ちる。落ちた計算精度をCPU計算でRayleigh商反復により回復させることで多倍長精度を維持するのだが、安定性向上のため繊細な技術的な改良を行った。この精度回復の詳細について、学会発表2件で述べた。また、ZKCM_QCを用いて主要な量子アルゴリズムのシミュレーションを行ってきており、2018年度前半の時点では、Deutsch-Jozsaアルゴリズムについてはある程度構造のあるオラクルの場合、回路幅218量子ビットの回路をPCワークステーションで浮動小数点精度256ビットでおおよそ27分でシミュレートできている。また、Shorのアルゴリズムについては、回路幅60量子ビット、回路深さおおよそ70万の回路を14.5時間~17時間でシミュレートできている。Shorのアルゴリズムのシミュレーションでは私はまだ所用時間が合成数のビット長に対して指数的に増大するデータを見つけていないが、競合する研究グループであるメルボルン大学のWangらの結果には所用時間が急激に増大していると思われるデータ点がある。同様の手法を使っていてかなり異なる結果になっている理由としては、(1)私は多倍長精度で計算しており計算中ゼロ特異値と微小特異値を混同することはほぼないが、Wangらは仮数部53ビット精度での計算のため混同している可能性があること、(2)私はQFTベースの算術回路を使っているのに対してWangらは巾乗剰余を通常の算術回路ベースでデータに作用させており、回路構成が異なること、が考えられる。以上の結果についても同じ学会発表で述べた。
著者
趙 暁婷 高島 健太郎 西本 一志
出版者
Information Processing Society of Japan
雑誌
情報処理学会研究報告. GN, グループウェアとネットワークサービス (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.1-6, 2018-03-12

アイデア生成の上流過程である発散的思考活動では,幅広い視点から様々な知識や関連情報を収集することが求められる.特に新奇性が高いアイデアを産み出すためには,一見飛躍しているように思える意外な関連性のある知識や情報を得る必要がある.しかしながら,特になんらかの専門的な知識を有する者にとっては,その知識の枠を超えて発想を飛躍させることは容易ではない.この問題を解決するために,本研究では「子供の発想」に注目する.子供はしばしば,大人が思いつかないようなアイデアを思いつく.しかしながら,ほとんどの場合,子供のアイデアは非現実的なものであり,そのままでは役にたたない.そこで,同じ課題に対する子供のアイデアを,専門知識を有する大人に提供し,これを参照しながら実用的なアイデア生成を行う手法を提案する.被験者実験により,提案手法の有効性を検証する. : In the divergent thinking process, an upstream process of idea generation, it is required to collect various knowledge and related information from a wide viewpoint. In particular, in order to produce ideas with high novelty, it is necessary to obtain unexpectedly relevant knowledge and information which seems to be leaping at first glance. However, it is not easy for a person with some specialized knowledge to leap the idea beyond the boundary of that knowledge. In order to solve this problem, we focus on "children's ideas" in this research. Children often come up with ideas that adults cannot think of. However, in most cases, the ideas of children are not feasible and it is not useful as they are. Therefore, we propose a novel divergent thinking method where children's ideas are referred to. We conducted user studies and verified the effectiveness of the proposed method.
著者
金井 一暁 米田 浩久 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.123-129, 2004 (Released:2005-03-11)
参考文献数
8

In this study, It was found that there was a relationship between poorcoordination of the limbs and trunk and instability of the lower trunk and pelvic girdle in a stroke patient. It was clarified that instability of the lower trunk and pelvic girdle caused by lower muscle activity of the obliquus internus abdominis made the backmuscles tone higher, and that this condition made the poorcoordination. The effect of treatment for lower muscle activity of the obliquus internus abdominis was verified using a force-measuring platform and surface electromyogram. As a result, the trunk muscle tone in this patient got closer to normal, and the poorcoordination was alleviated. It was suggested that the approach to improve the instability of the lower trunk and pelvic girdle was effective in controlling the poorcoordination.
著者
鷹﨑 和義 和田 敏裕 森下 大悟 佐藤 利幸 佐久間 徹 鈴木 俊二 川田 暁
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.41-51, 2018 (Released:2019-03-20)
参考文献数
30

2015年5月~2016年11月に,福島県内の阿武隈川水系の13定点においてさし網や延縄などを用いた調査を行い,716個体(体長9.9~65.0 cm)のチャネルキャットフィッシュが採集された。本種は阿武隈川の本流で採集され,特に発電用ダム(信夫ダム,蓬莱ダム)の貯水域やその下流域で多く採集された。信夫ダムでは,2008年に比べて CPUE が著しく増加していることや,GSI の高い成熟個体や未成熟の小型個体が多く採集されたことから,近年,ダム周辺の水域を中心に,再生産により本種の個体数が急激に増大している可能性が考えられた。雌の GSI の季節変化より,本水系における産卵期は5~6月ごろと推定された。信夫ダムにおいて,さし網および延縄により採集された魚類のうち,本種が占める割合は非常に高く(各64.2%および100%),本水系における適切な駆除手法の確立が急務であると考えられた。
著者
難波 敦子 成 暁 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.193-197, 1998-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
7

A search for the correlation between Japanese and Chinese food cultures identified the production of natto, a non-salted and fermented soybean product, in China. Natto is prepared by Jingpo-zu in Dehong Thai-zu Jingpo-zu Province of Yunnan in China. Boiled soybean covered with bamboo grass, straw or loquat leaves is left to ferment in a bamboo basket. After fermentation, it is eaten with pepper, or salt and pepper is added to produce a seasoning like Japanese miso. Salted natto is also dried for storage as drynatto, and some natto is used to prepare Shui-douchi a kind of supplementary food. Our search indicates that the nattoline from Nepal via Bhutan and Myanmar that has been presented by Sasaki can be extended to Yunnan in China.
著者
北田 暁大
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.64-77, 2000

Inaba Michio once focused on the aethetics of Nakai Masakazu to elaborate the conception of media and mediation. Although 30 years have passed since Inaba's suggestion, the theoretical definition of MEDIA seems to remain confused. In this paper, picking up Nakai's investigation for medium and Mittel, I re-examine the ontological problems concerned with Media Studies. First, Nakai's argument about technology is examined from the two theoretical viewpoints : the concept of directedness-non-mediatedness, and the concept of cooperation. Next, I focus on his unique film theory and clarify of Nakai's theory in the present context of Media Studies.
著者
戦 暁梅
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.105-134, 2002-04

日本文人画の「最後の巨匠」と称賛される富岡鐡斎は近代日本画壇において非常に象徴的、且つ矛盾に満ちた存在である。彼は全く東洋的な教養から出発しながらも、画面一杯に漲る力強いタッチ、原色に近い鮮やかな色彩表現、ユーモラスな筆触などの要素を混合させながら独自の画風を作り上げた。この画風は原始主義、稚拙、醜さの賛美を求める西洋の近代絵画に通じるところがある。伝統の文人画から出発し、文人画家の道を貫いた富岡鐡斎は、何を求めてこのような画境に至ったのか。今までの鐡斎の藝術観に関する研究は殆ど彼が文人画の一般論を語った幾つかの資料をまとめたものであるが、あの近代的な画風を連想させる鐡斎自身の独自な芸術観はなかった。この小論は、今までほとんど見落とされてきた鐡斎画の賛文を主な手がかりとして、改めて画家富岡鐡斎の藝術観を検討する試みをしようとするものである。賛文の分析を通じて、伝統からの逸脱、画風における「痴・奇・拙・醜」の追求、自我と「心」の重視、遊び心などが鐡斎藝術観の大きな特徴として浮上し、これらの特徴が個性溢れる鐡斎の画風の根底にあることが明らかになった。伝統文化の中から新しい表現の方法を求めて形になった富岡鐡斎の藝術は、西洋様式の取り入れに焦る日本の美術界に日本画、文人画を発展させるもう一つのあり方を提示した。また、印象派や後期印象派が西洋の近代美術の発端となったのと同じように、鐡斎は文人画の分野を超えて、日本の近代美術において大きな役割を果たした。文人画の伝統を受け継ぎながら、その中に潜む正統に反する部分を大切にし、これをベースに築き上げや豊かな近代感覚に、鐡斎藝術の最も大きな意義がある。
著者
西岡 暁廣 ニシオカ アキヒロ Nishioka Akihiro
出版者
同志社社会学研究学会
雑誌
同志社社会学研究 (ISSN:13429833)
巻号頁・発行日
no.23, pp.25-35, 2019-03

ジョック・ヤングは著書『排除型社会--後期近代における犯罪・雇用・差異』において、後期近代社会が次第に排除的傾向を強めていくことの構造的要因を示している。この理論は現代の社会的排除の問題を考える上で非常に有用なのだが、その全体像は曖昧な造語の多用や本の構成上の問題で非常に読み取りにくい。複数の研究者が共通の基礎理論として用いることをより容易にするため、本稿ではヤングの後期近代社会に関する理論の全体像をひとつの変数間関連図として整理することを目指す。研究ノート(Note)
著者
石田 藍子 芦原 茜 井上 寛暁 松本 光史 田島 清
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.47-54, 2018-02-25 (Released:2018-03-23)
参考文献数
32

授乳期の母豚に,トウモロコシ全量を飼料用玄米と代替した飼料を給与し,母豚および子豚の飼養成績,免疫指標および発情回帰に及ぼす影響を検討した.LW種の雌豚13頭を供試し,トウモロコシを65%配合したトウモロコシ主体飼料を給与する対照区と,玄米主体飼料を給与する玄米区へ振り分け,分娩1日後から21日後の離乳まで試験飼料を給与した.分娩3日および7日後に乳および血液を採取した.その結果,母豚の飼養成績に対照区と玄米区に有意な差はなく,また発情回帰日数および背脂肪厚の変化量にも有意な差はなかった.子豚の増体重にも処理区間に有意な差はなかった.血液成分では,総タンパク質が玄米区で有意に高く,血漿中のIgG濃度が玄米区で有意に高かった.以上より,授乳期の母豚へ飼料中のトウモロコシを玄米と代替した飼料を給与しても,飼養成績および発情回帰に影響がないが,母豚の血中のIgG濃度は増加することが明らかとなった.
著者
村山 雅史 谷川 亘 井尻 暁 星野 辰彦 廣瀬 丈洋 富士原 敏也 北田 数也 捫垣 勝哉 徳山 英一 浦本 豪一郎 新井 和乃 近藤 康生 山本 裕二 黒田郡 調査隊チーム一同
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

黒田郡遺構調査の目的で,高知県浦ノ内湾の最奥部(水深10m)から採取した堆積物コアを解析した。当時の海洋環境や生物相の変遷履歴も復元することもおこなった。高知県土佐湾の中央部に位置する浦ノ内湾は,横浪半島の北側に面し,東西に細長く,12kmも湾入する沈降性の湾として知られている。高知大学調査船「ねぷちゅーん」を用いて、バイブロコアリングによって4mの堆積物コアが採取された。採取地点は,周囲からの河川の影響はないため,本コア試料は,湾内の詳細な環境変動を記録していると考えられる。採取されたコア試料は,X線CT撮影,MSCL解析後,半割をおこない肉眼記載や頻出する貝の採取,同定をおこなった。 堆積物の岩相は,olive色のsity clayであり,全体的に多くの貝殻片を含む。コア上部付近は,黒っぽい色を呈し強い硫化水素臭がした。また,コア下部に葉理の発達したイベント堆積物が認められ,その成因について今後検証する予定である。