著者
村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.53-57, 1997 (Released:2018-05-05)
参考文献数
8

抗ヒトCRPモノクローナル抗体による免疫多層フィルム法でサルCRP値の測定を試みた。試料として飼育下の霊長目6属12種47個体から採取した血清もしくは血漿67検体を用いた。マカク属, オナガザル属, テナガザル属およびチンパンジー属の健康個体はすべて1.0mg/dlを示した。よって, この境界値を本法によるCRP陽性値とするのが適当と考えた。抗ヒトCRP抗体を用いた本法によるCRP測定は簡便かつ迅速であり、霊長目の動物の臨床診断に利用できる。しかし, 腸炎や肝炎などを呈した疾病個体に1.0mg/dl以下の値のものが認められ, ヒヒ属では健康個体にも関わらずCRP高値を示していた。本法による診断と応用については, 動物種もしくは属別の検討が必要である。
著者
村田 浩一 増田 隆一
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
The Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1157-1159, 1996
被引用文献数
11

外生殖器の形態からは性を判別し難いフタユビナマケモノ(Choloepus didactylus)のY染色体上性決定遺伝子(SRY)を合成酵素連鎖反応(PCR)増幅し, 仔の性鑑別をおこなった. 5ヶ月齢の仔および対照とした両親から毛を採取しDNAを抽出した. 仔および父親からSRY断片(216塩基対)がPCR増幅されたが, 母親からは増幅されなかった. ナマケモノのPCR増幅産物(166塩基対)の塩基配列を決定し, すでに報告されている他の哺乳類のSRY遺伝子配列と比較した. ナマケモノのPCR増幅産物にはそれらの遺伝子と高い相同性がみられ(74.1-86.8%), アミノ酸レベルでも同様であった(63.6-85.5%). このことから, ナマケモノのPCR増幅産物はSRY遺伝子の一部であることが推察され, 哺乳類の間で高い保存性をもっていることが分かった. この結果から仔の性別は雄と判定された. ナマケモノの毛を用いたPCR法による性鑑別は動物園での繁殖計画に役立つものである. 知る限りにおいて,貧歯目のSRY遺伝子配列に関する報告は本報が初である.
著者
村田 浩一
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.117-122, 1997 (Released:2018-05-05)
参考文献数
10
被引用文献数
8

ニホンコウノトリ(Ciconia boyciana)は, 150年ほど前までは日本中でごく普通に見られた野鳥であった。しかし, 1971年に兵庫県豊岡市で野生最後の個体が捕獲されたことで, わが国のニホンコウノトリの地域個体群は消滅した。まれに迷鳥として中国大陸から渡ってくることはあるが, 残念ながら定着して繁殖することはない。この鳥が絶滅した主な原因は, 明治時代以降の狩猟による乱獲, 戦時中の営巣木の伐採, 農業改良による生息地の減少, 農薬による餌の汚染, 小個体群内で生じた遺伝的問題などであると考えられている。同様の現象は, 現在の野生ニホンコウノトリの生息地である中国やロシアでも進行しており, 種の存続自体が危ぶまれている。ニホンコウノトリの飼育下繁殖は, 野生個体が11羽となった1965年に兵庫県豊岡市で始まった。さまざまな努力にも関わらず, 日本産のコウノトリの繁殖は成功に至らなかったが, 中国やロシアから若い個体を導入して飼育下繁殖を試みた結果, 1988年に待望のヒナが誕生した。以後, 国内の3施設で順調に繁殖し飼育個体数が増加している。野生復帰計画を具体的にすすめるために, 1992年から専門家による委員会が設置された。遺伝的管理下でより多くの個体を飼育・繁殖させ, 野生復帰の訓練を行う新たな施設も建設される予定である。しかし, 野生復帰までにはまだ多くの問題がある。生息環境の保全は第一の課題である。たとえば, 飛行時の事故原因となる高圧電線への対策, 餌場となる水田の無農薬もしくは減農薬化, 湿地の確保, そして人工巣塔の設置なども考慮しなければならない。地域住民への啓発も大切である。獣医師が本計画に関われる分野は, 飼育下での疾病治療や予防のみならず, 環境保全を含めたはば広いものであると考える。わが国で今後も進展すると思われる各種希少動物の野生復帰計画を成功に導くため, 日本の獣医学は野生生物保護にも積極的に貢献していく必要があろう。
著者
石原 暢 篠原 翠 苫米地 伸泰 村田 浩美 王 文娟 水野 眞佐夫
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.87-95, 2016 (Released:2017-10-31)

This study aimed at evaluating the effect of habitual exercise and the level of daily physical activity on executive function (i.e. inhibitory control) and mental health status in youth adults. Twenty-four undergraduate- and graduateuniversity students participated in this study. All of the subjects underwent evaluations of their mental health (The General Health Questionnaire 28; GHQ28), inhibitory control (Stroop Color and Word Test), past- and current- exercise habits, and daily physical activity levels (International Physical Activity Questionnaire Short Version). Current habitual exercise and the level of low intensity physical activity were inversely correlated with score for GHQ28. Past habitual exercise was inversely correlated with reaction time for incongruent trial of the Stroop Color and Word Test. The level of vigorous physical activity was inversely correlated to the accuracy for incongruent trial. This study demonstrates that the level of low intensity daily physical activity may improve inhibitory control and maintain the optimal status of mental health, while the level of vigorous intensity physical activity might lead to an impairment of inhibitory control in youth adults.
著者
岡本 香 村田 浩子 西山 英子 田口 素子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.154-166, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
44
被引用文献数
1

【目的】男性持久系競技者を対象とした食事記録法の栄養評価における食品重量見積もり誤差の特徴を明らかにすることである。【方法】筆者らの研究室に蓄積された食事記録法のデータベースから,競技者及び非競技者を対象とした食事記録を抽出した。これらに基づいて作成したモデル献立の写真と食事記録票を栄養評価者に配布し,食品の選択及びその食品番号と見積もり重量の記入を依頼した。その後,筆者らが栄養素等摂取量を算出し栄養評価値を得た。モデル献立の基準重量と評価者に依頼した見積もり重量との誤差及び基準値と栄養評価値との誤差を比較した。【結果】競技者モデル献立の基準値と栄養評価値との間に,10%以上の過小評価が認められたものはエネルギー及び炭水化物(それぞれ平均値で-13%,-16%),過大評価が認められたものはビタミンA及びビタミンC(それぞれ40%,10%)であった。エネルギー及び炭水化物への寄与率が高かったご飯の見積もり重量に有意差が認められ,基準重量に対し23%の過小評価が認められた。また,ビタミンAへの寄与率が高かったにんじん,ほうれん草は基準重量に対しそれぞれ48%,68%の過大評価が認められた。ビタミンCへの寄与率が高かったほうれん草は基準重量に対し68%の過大評価が認められた。【結論】男性持久系競技者を対象とした食事記録法の栄養評価においては,ご飯と緑黄色野菜の重量見積もり誤差が大きいという特徴があることが示唆された。
著者
村田 浩平
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.83-96, 1995 (Released:2007-03-29)
参考文献数
22
被引用文献数
9 10

水田の栽培管理が水稲害虫の有力天敵であるクモおよびその餌昆虫の発生消長に与える影響を明らかにするために, 農薬および化学肥料を使わない保全田と慣行田において調査を行った. 1990年と1991年に, 水田内および畦畔においてクモおよび餌昆虫の個体数をスイーピソグ法によって調査し次のような結果を得た.1. 畦畔を含む水田環境では, 10科から14科のクモが採集された. 各水出とも水田内のクモの個体数はアシナガグモ科, カニグモ科, フクログモ科の順に多かった.2. 保全田の水田内では慣行田に比べてクモの個体数が明らかに多く, その差は2倍以上であった. 特に保全田では慣行田に比ベアシナガグモ科, カニグモ科, ハエトリグモ科の個体数が多かったのが特徴である. 保全田と慣行田のこのような違いは, 栽培管理の違い, 特に水管理によると考えられた.3. 水田内と畦畔のクモ相を比較すると, 両年とも畦畔が科数, 個体数ともに多い傾向がみられた. このことは, 畦畔が天敵としてのクモの温存場所として重要であることを示唆すると考えられる.4. 全ての調査水田でウンカ, ヨコバイの発生消長とクモの発生消長が重なる傾向が見られ, この傾向はウンカに比べヨコバイに対してより強かった.5. 保全田では慣行田に比べてユスリカの個体数が多く, これはクモの密度を維持するうえで重要であると考えられた.以上のことから, クモを天敵として有効に活用するためには, 農薬の使用を避け, 春期にはゲソゲを栽培し, 落水時も水田内を完全に干上がらせないことによって, ウンカ, ヨコバイの発生の間隙においても餌昆虫の安定した供給を計ること, 畦畔の除草回数を減らしクモの温存場所を確保することが重要であると考えられた.
著者
村田 浩一 柳井 徳麿 吾妻 健 宇仁 茂彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.945-947, 2003-08-25
被引用文献数
1 20

膵内分泌腺癌が原因で死亡した飼育下の成雌ユキヒョウ(Uincia uncia)の右心室内および肺動脈内にフィラリア成虫3隻の寄生を認めた.虫体の計測値は犬糸状虫(Dirofilc immitis)のものとほとんど一致しており,形態およびミトコンドリアDNA COI領域の比較においてもD.immitisと遠いが認められなかった. D.immitisはこれまでネコ科動物2属3種に感染が報告されているが,新たな宿主としてユキヒョウが加えられた.
著者
松立 大史 三好 康子 田村 典子 村田 浩一 丸山 総一 木村 順平 野上 貞雄 前田 喜四雄 福本 幸夫 赤迫 良一 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.63-67, 2003 (Released:2018-05-04)
参考文献数
10
被引用文献数
1 16

国内5郡県で採集されたタイワンリスCallosciurus erythraeus 24個体およびヌートリアMyocastor coypus 53固体について内部寄生蠕虫類の調査を行った。これら2種の外来哺乳類における本格的な寄生蠕虫調査は今回が初めてである。その結果,タイワンリスからはBrevistriata callosciuviおよびStorongyloides sp.が,またヌートリアからはStorongyloides myopotami. Calodium hepaticumおよびFasciola sp.がそれぞれ見つかった。Fasciola sp.がヌートリアに寄生していた例は日本において初めての報告である。Fasciola sp.とC.hepaticumは人獣共通寄生虫症の病原体なので留意すべきである。
著者
村田 浩平 土屋 守正
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

外来植物セイタカアワダチソウが侵入したことで,絶滅危惧種オオルリシジミや希少な食糞性コガネムシの生息環境がどのような影響を受けたかについて節足動物相を調査することで解明を試みた.また,草原生態系における捕食‐被食関係の解明の一環として,希少な草原性の食糞性コガネムシや土壌節足動物に関する調査を実施するとともに,捕食-被食関係を調査し,オオルリシジミを中心とした食物網を解明した.また,セイタカアワダチソウが侵入した環境において,除草の効果を評価した.研究期間中,阿蘇山の噴火や熊本地震により調査地が被害を受け,当初計画した一部の研究は実施ができないなどの問題も生じたが研究成果の公表に努力した.
著者
村田 浩
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
燃料協会誌 (ISSN:03693775)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.73-82, 1974-02-20 (Released:2010-06-28)

Energy crisis has been the most vital problem for all over the world. Atomic energy is expected to be one of the most hopeful solutions for the present energy crisis.This article describes the features of atomic energy and includes world history and present status of 1) power reactors which are light water reactor, gas cooled reactor, heavy water reactor and fast breeder reactor. 2) commercial nuclear power plants of which 124 power plants are in operation as of the end of 1972. 3) multipurpose uses of atomic energy which contains some examples such as atomic energy uses to chemical process heat, breeding of fishes and prawn, district heating, desalination, steel making and hydrogen energy utilizing system. 4) controlled thermonuclear fusion which is expected to be an ultimate energy source for mankind. 5) future trend of the development of atomic energy ; the way to the controlled thermo nuclear fusion reactor.
著者
金澤 朋子 鳥谷 明子 小島 仁志 小谷 幸司 安藤 正人 村田 浩一
出版者
一般社団法人環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.103-106, 2016

<p><tt>本研究では,動物園の役割のひとつである「環境教育」に着眼し,その効果を高める上で重要なツールである解説板の設置位置と来園者行動との関係性を検討した。横浜市立金沢動物園のインドゾウ展示場を対象に,解説板の設置位置を</tt>3 <tt>パターンに分け,展示場前の観覧通路を</tt>7 <tt>区分した上で来園者行動の観察および来園者に直接解説板への関心の有無を確認し,解説板に対する関心度合の把握を行った。その結果,来園者の解説板に対する関心は高いことに加え,解説板を展示場の両端に設置した場合と中央に設置した場合とでは来園者行動が異なることなど,動物園における「環境教育」の機会がより広がる有用な知見が得られた。</tt></p>
著者
村田 浩一 増田 隆一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1157-1159, 1996-12-25
被引用文献数
3

外生殖器の形態からは性を判別し難いフタユビナマケモノ(Choloepus didactylus)のY染色体上性決定遺伝子(SRY)を合成酵素連鎖反応(PCR)増幅し, 仔の性鑑別をおこなった. 5ヶ月齢の仔および対照とした両親から毛を採取しDNAを抽出した. 仔および父親からSRY断片(216塩基対)がPCR増幅されたが, 母親からは増幅されなかった. ナマケモノのPCR増幅産物(166塩基対)の塩基配列を決定し, すでに報告されている他の哺乳類のSRY遺伝子配列と比較した. ナマケモノのPCR増幅産物にはそれらの遺伝子と高い相同性がみられ(74.1-86.8%), アミノ酸レベルでも同様であった(63.6-85.5%). このことから, ナマケモノのPCR増幅産物はSRY遺伝子の一部であることが推察され, 哺乳類の間で高い保存性をもっていることが分かった. この結果から仔の性別は雄と判定された. ナマケモノの毛を用いたPCR法による性鑑別は動物園での繁殖計画に役立つものである. 知る限りにおいて,貧歯目のSRY遺伝子配列に関する報告は本報が初である.
著者
阿部 邦昭 村田 浩
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.281-284, 1989-11-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

空気中の物体の運動は放物線軌道からかなりずれるので,空気抵抗を無視して考えるわけにはいかない。ここではその例として,バトミントンのシャトルコック(羽根,シャトル)の運動をとりあげ,抵抗の大きさと軌跡について調べた。送風器を使った実験から,シャトルの受ける空気抵抗は速さの2乗に比例し,その無次元抗力係数は0.56となることがわかった。次にはね上げたシャトルの軌道をストロボ撮影し,その軌跡が,先に求めた抵抗値を運動方程式に導入して解いたものと一致することを示した。またこの抵抗値は自由落下するシャトルの終端速度から求めたそれとも一致する。
著者
松本 令以 植田 美弥 村田 浩一 比嘉 由紀子 沢辺 京子 津田 良夫 小林 睦生 佐藤 雪太 増井 光子
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.79-86, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
52

蚊媒介性感染症のベクターとなる蚊の生息状況解明を目的として,2005年5月から5か月間,横浜市立よこはま動物園内においてドライアイストラップ,グラビッドトラップおよびスウィーピング法を用いた捕集調査を行った。その結果,アカイエカ種群蚊(Culex pipiens group),ヒトスジシマカ(Aedes albopictus),トラフカクイカ(Lutzia vorax)など計9属14種2,623個体が捕集された。アカイエカ種群蚊およびヒトスジシマカが捕集蚊全体の約85%を占め,これらの蚊が園内における優占種であると考えられた。神奈川県内で生息が確認されている蚊26種のうち53.8%にあたる種が捕集されたことから,本動物園およびその周辺地域は,各種蚊が選好する多様な環境で構成されていると考えられた。なお,捕集蚊の10.6%で吸血が認められ,動物園動物を吸血源としている可能性が示唆された。動物園動物の蚊媒介性感染症を制御し,希少種の生息域外保全を行うためには,蚊種の生態に応じた防除対策が必要である。
著者
仲野 正博 松嵜 理登 成田 伸太郎 渡辺 淳一 森川 弘史 村田 浩克 小田 裕之 小松 秀樹
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.11-16, 2005-01-20
被引用文献数
1 3

(目的)恥骨後式前立腺全摘除術における硬膜外麻酔併用腰椎麻酔(硬麻併用腰椎麻酔)の有用性を検討した.(対象と方法)2003年7月より2004年2月までの間に硬麻併用腰椎麻酔下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例を対象とした. 2002年4月より同年12月までの間に硬膜外麻酔併用全身麻酔(硬麻併用全身麻酔)下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例と比較した.純粋な麻酔による影響のみを検討するために,術中合併症のあった症例が含まれない様に期間を設定した.手術は全例,同一術者が行った.(結果)出血量は,硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に少なかった(p=0.024).術後平均飲水開始日は,硬麻併用腰椎麻酔下群は0.4日,硬麻併用全身麻酔下群は1.1日であった(p<0.0001).術後平均食事開始日は,硬麻併用腰椎麻酔下群はO.7日,硬麻併用全身麻酔下群は1.5日であった(p<0.0001).術中平均血圧の最高値は硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に低かった(p=0.002).(結論)硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は,硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘除術と比較して術中の出血量が少なく,血圧変動が小さかった.また,術後腸蠕動の回復が早かった.硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は,術中出血量の減少と術後早期回復が期待でき,全身麻酔関連の合併症が予防できることなどから硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘徐術より利点が多いと考える.
著者
阿部 邦昭 村田 浩
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.281-284, 1989

空気中の物体の運動は放物線軌道からかなりずれるので,空気抵抗を無視して考えるわけにはいかない。ここではその例として,バトミントンのシャトルコック(羽根,シャトル)の運動をとりあげ,抵抗の大きさと軌跡について調べた。送風器を使った実験から,シャトルの受ける空気抵抗は速さの2乗に比例し,その無次元抗力係数は0.56となることがわかった。次にはね上げたシャトルの軌道をストロボ撮影し,その軌跡が,先に求めた抵抗値を運動方程式に導入して解いたものと一致することを示した。またこの抵抗値は自由落下するシャトルの終端速度から求めたそれとも一致する。
著者
吉倉 智子 村田 浩一 三宅 隆 石原 誠 中川 雄三 上條 隆志
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.225-235, 2009 (Released:2010-01-14)
参考文献数
49
被引用文献数
3

ニホンウサギコウモリ(Plecotus auritus sacrimontis)の出産保育コロニーの構造を明らかにすることを目的とし,本州中部の4ヶ所のコロニーで最長5年間の標識再捕獲調査を行った.出産保育コロニーの構造として,齢構成,コロニーサイズとその年次変化,性比および出生コロニーへの帰還率について解析した.また,初産年齢および齢別繁殖率についても解析した.本調査地におけるニホンウサギコウモリの出産保育コロニーは,母獣と幼獣(当歳獣)による7~33個体で構成されていた.また,各コロニー間でコロニーサイズやその年次変化に違いがみられた.幼獣の性比(オス比)は,4ヶ所のコロニー全体で54.2%であり,雌雄の偏りはみられなかったが,満1歳以上の未成獣個体を含む成獣の性比は1.0%とメスに強い偏りがみられた.オスの出生コロニーへの帰還率は,全コロニーでわずか3.6%(2/56)であった.一方,メスの翌年の帰還率は,4ヶ所のコロニーでそれぞれ高い順に78.9%,63.6%,16.7%,0%であった.初産年齢は満1歳または満2歳で,すべてのコロニーを合算した帰還個体の齢別繁殖率は,満1歳で50%(12/24),満2歳で100%(13/13)であった.また,満2歳以上のメスは全て母獣であり,出産年齢に達した後は毎年出産し続けていることが確認された.
著者
村田 浩一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.785-790, 2002-09-25
被引用文献数
1

1988年から2001年までの13年間に国内で捕獲された701羽の野鳥について血液内寄生虫の保有状況を調査した.供試した野鳥は一部を除いて傷病が原因で神戸市内およびその周辺で保護され,動物園に治療のために持ち込まれた個体であった.総検査羽数の10.6%にあたる74羽に血液内寄生虫の感染が認められ,その内,住血原虫の寄生する個体はPlasmodium spp.が12羽,Haemoproteus spp.が36羽およびLeucocytozoon spp.が32羽であった.ミクロフィラリアがイカル(Coccothraustes personatus)およびツグミ(Turdusnaumanni)の各1羽から検出された.Haemoproteus sp.とLeucocytozoon sp.の混合感染が4種6個体,ミクロフィラリアとLeucocytozoon sp.の混合感染が2種2個体にそれぞれ観察された.住血原虫の感染が比較的多く認められた鳥種は,コノハズク(Otus scops):4羽中3羽,ホンドフクロウ(Strix uralensis):14羽中10羽,ハシブトガラス(Corvusmacrorhynchos):26羽中17羽,ウミネコ(Larus crassirostris):7羽中4羽,アオバズク(Ninox scutulata):9羽中5羽,ハシボソガラス(Corvus corone):39羽中18羽,ゴイサギ(Nycticorax nicticorax):29羽中7羽であった.