- 著者
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越智 靖文
伊東 正
- 出版者
- 園芸学会
- 雑誌
- 園芸学研究 (ISSN:13472658)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.43-48, 2012-01-15
果実内発芽し難い1系統と果実内発芽し易い2系統を供試材料とし, 果実内発芽と内生アブシジン酸含量の関係を明らかにするために,カリウム濃度の異なる3種の培養液(2.4,4.2および6.0me・L-1)で栽培した. その結果,果実内発芽し易い系統では,カリウム濃度の低下により1果当たりの種子数が明らかに減少した. しかし, 果実内発芽し難い系統では,カリウム濃度は種子収量に影響を与えなかった. 葉柄ならびに胎座部周辺の果汁中のカリウムイオン濃度は,果実内発芽し易い系統より果実内発芽し難い系統で高かった. 果実内発芽はカリウム施肥量の減少に伴い,果実内発芽し易い系統で増加したが,果実内発芽し難い系統では,いずれのカリウム濃度でも果実内発芽は認められなかった. 胎座部周辺の果汁中のABA含量は,カリウム施肥量の減少に伴い減少した. ABA濃度が異なる水溶液を用い,種子の発芽試験を行ったところ,果実内発芽し難い系統ではABA濃度の増加に伴い種子の発芽が著しく抑制された. 以上の結果から,カリウム施肥量の減少により胎座部周辺の果汁中のABA含量が減少し,その結果として果実内発芽が増加すること,また,果実内発芽し難い系統は,低いABA濃度閾値で種子の発芽抑制があらわれるものと推察された.