著者
大和田 国夫 田中 平三 伊東 正明 政田 喜代子
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.243-247, 1972-06-28 (Released:2009-02-17)
参考文献数
19
被引用文献数
10 5

This paper is concerned with studying the developmental changes which occur in sensitivity to the 4 primary taste qualities viz. sweet (sucrose), sour (citric acid), bitter (quinine sulfate) and salty (sodium chloride).Results are as follows:1. Taste threshold values and difference threshold values for the 4 taste qualities increased with age and showed a peak at the age of 60. These values slightly decreased at the age of 70.2. An increase of salty taste threshold values with aging were more marked than other taste threshold values.3. Either sex failed to reveal significant differences for taste sensitivity.4. Significant differences in taste threshold, especially bitter taste, were observed between smokers and non-smokers.5. False dentures (complete) appeared to influence slightly taste threshold values.
著者
越智 靖文 伊東 正
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.37-42, 2012 (Released:2012-02-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1

果実内発芽と内生アブシジン酸含量の関係を明らかにするために,果実内発芽し難い系統と果実内発芽し易い系統の2供試材料を,硝酸態窒素濃度の異なる3種の培養液(6.5,13,および26 me・L−1)で栽培した.その結果,果実内発芽し易い系統において,果実内発芽は,最も高い窒素濃度(26 me・L−1)で栽培されたときに増加した.しかし,果実内発芽し難い系統では,すべての窒素濃度下で,果実内発芽が認められなかった.両系統において,窒素濃度が高くなるほど胎座部周辺の果汁中のABA含量が減少した.また,果実内発芽し易い系統よりも果実内発芽し難い系統の方が,胎座部周辺果汁中のABA含量が高かった.以上の結果から,硝酸態窒素施肥量の増加により,胎座部周辺果汁中のABA含量が減少し,その結果として果実内発芽が増加すると考えられた.また,果実内発芽し易い系統では,果汁中のABA含量が低いと推察された.
著者
伊東 正人
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.229-230, 2009
被引用文献数
1
著者
村上 正行 丸谷 宜史 角所 考 東 正造 嶌田 聡 美濃 導彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.299-307, 2010
被引用文献数
6

本稿では,授業映像シーンへのコメントの付与及び授業映像の要約が可能なシステムSceneKnowledgeを開発し,本システム及び授業デザインの有効性を明らかにするために,2年間の授業に対して,質問紙調査を行った.その結果として,(1)授業映像がシーンに分割されていることによって,受講生が授業に関するコメントをを読み書きする際や授業映像の要約を作成する際に有用だった(2)受講生は,コメントを書くことを通して,授業内容を振り返り,自分の意見について考えることができた.また,他人のコメントを読んで,自分の考えと相対化させ,より深く考えることによって,授業に対する関心が高まった(3)授業映像の要約を作成することを通して,新しい観点を発見し,自分なりの考えをまとめることによってモチベーションを高めていた,の3点が分かり,高次な学習活動に結びついていると考えられる.
著者
嶌田 聡 宮川 和 東 正造 森本 正志 奥 雅博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.1231-1242, 2008-05-01
被引用文献数
17

本論文では,興味や関心の高い映像シーンの検索・ナビゲーション機能を実現するために,視聴者発信情報から映像シーンの内容を表す特徴ワードや概要などの高次のメタデータを自動抽出する方法を提案する.一般に,視聴者発信情報からメタデータを抽出する場合にはノイズが含まれることが問題となる.そこで,映像シーンを視聴しながらコメントを付与していく視聴連動型のコミュニケーション機能をファンコミュニティに提供することにより視聴者コミュニティの協調行動を誘導させることで視聴者発信情報の品質を向上させる方法を提案する.まず,視聴連動型の掲示板コミュニケーション機能を実在するファンコミュニティに導入し,視聴者コミュニティの協調行動が誘導されたことを検証した.次に,得られた視聴者コメントからTF-IDF法でシーンを代表する特徴ワードを求め,更に,映像シーンに対して視聴者が付与したコメントの中で特徴ワードを含む"文"を集約したシーン代表コメントを生成し,これらを映像シーンのメタデータとして抽出した.被験者16人による評価実験を行い,抽出したメタデータが,未視聴映像の検索については約半数のシーン,再視聴映像についてはほぼ全部のシーンに対して重要な手掛りになることを確認した.
著者
塚越 覚 丸尾 達 伊東 正 扶蘇 秀樹 岡部 勝美
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1022-1026, 1999-09-15
被引用文献数
1 2

NFT毛管水耕システムを用いたホウレンソウ(Spinacia oleracea L.品種'ジョーカー'および'オリオン')栽培において, 収穫前にNO_3-Nのみの補給停止(実験1 : 夏作), または全肥料成分の補給停止(実験2 : 秋作)が, 生育, 可食部の硝酸含量, 廃液の無機成分濃度に及ぼす影響を検討した.実験1 : 収穫6日前からのNO_3-Nの補給停止で, 可食部の硝酸含量は2, 199 ppm, 廃液のNO_3-N濃度は1.0 me・liter^<-1>と, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.NO_3-N以外の成分は初期濃度と同じか, それ以上に廃液中に残存した.実験2 : 2&acd;6日前からの追肥停止で, 廃液のNO_3-N濃度は0.7 me・liter^<-1>以下, 可食部の硝酸含量は2, 870 ppm以下となり, 食品・廃液の許容基準を満たすことができた.さらに, 他の主要無機成分についても, 残存濃度を低減できた.しかし, 6日前からの追肥停止では, 地上部生体重が低下した.以上より, 夏作で収穫予定日の6日前, 秋作では2&acd;4日前から, 肥料成分を含まない水を補給する方法が, 可食部の硝酸濃度の低いホウレンソウの生産と, 廃液中の主要無機成分含量の低減に有効と考えられた.
著者
東 正訓
出版者
一般社団法人 交通科学研究会
雑誌
交通科学 (ISSN:02881985)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.49-57, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
14

本研究の目的はドライバーの速度超過運転の習慣強度を質問紙法によって測定する尺度(SHS) を構成することである.種々の習慣に利用可能なVerplanken&Orbel(2003)のSRHIを速度超過運転習慣の強度測定用に修正・変更した.18歳~68歳のドライバーを対象にしたインターネット調査データを分析した結果,非常に高い内的整合性信頼性係数及び中程度の再検査信頼性係数(2カ月間隔)を得た.SHSと関連が予想される変数との相関分析も整合的な結果であった.クラスター分析で得られた最も習慣強度が強い群は,最も違反回数が多かった.SHSは研究用だけでなく,ドライバーのアセスメントツールとしても有用であると考えられる.
著者
石井 雅久 伊東 正 丸尾 達 鈴木 皓三 松尾 幸蔵
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.103-111, 1995-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

完全制御型植物工場の電力コストを削減させるために, 一般電力と比べて割安な深夜電力 (11pm~7am) の利用について, 『岡山サラダナ』を供試し, 光強度と照射時間の関係から調査・検討を行った.生育中期までは, PPFDならびに照射時間の増加とともに葉の生体重および乾物重は増加したが, 後期から腋芽葉の発生や葉捲きが多く発生し, サラダナの生育は遅延し, 生産物の品質は低下した.また, 1回の明期に照射する光量子の積算値が等しければ, サラダナの生育や品質も同様になると推察された.以上のことから, 本試験の照射条件のなかでは, PPFDが400~420μmol・m-2・s-1, 照射時間が8時間で生育したサラダナが生育や品質などの面から効率的であることがわかり, 深夜電力の利用による栽培の実用的可能性が示唆された.
著者
小林 裕生 森田 伸 田仲 勝一 内田 茂博 伊藤 康弘 藤岡 修司 刈谷 友洋 板東 正記 田中 聡 金井 秀作 有馬 信男 山本 哲司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Fb0802, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 温熱療法は臨床において,加温による生理反応を利用し疼痛軽減,循環改善,軟部組織の伸張性向上などを目的に施行されている.温熱療法は一般に筋力トレーニングや動作練習といった運動療法前に施行される場合が多く,温熱負荷が筋力へ及ぼす影響を理解しておく必要がある.しかし,温熱負荷による筋力への影響についての報告は,種々の報告があり統一した結論には至っていない.本研究の目的は,一般的な温熱療法である HotPack(以下,HP)を使用した際の,深部温の変化に伴う等速性膝伸展筋力への影響を検討することである.【方法】 対象は,骨関節疾患を有さず運動習慣のない健常人9名(男性6名・女性3名,平均年齢29.2±5.2歳,BMI 22.4±3.3)とした.測定条件は,角速度60deg/sec・180deg/secの2種類の等速性膝伸展筋力(以下ISOK60・ISOK180)をHP施行しない場合と施行する場合で測定する4条件(以下 ISOK60・HP-ISOK60・ISOK180・HP-ISOK180)とした. HPは乾熱を使用し,端坐位にて利き脚の大腿前面に20分施行した.温度測定には深部温度計コアテンプ(CT‐210,TERUMO )を使用.皮下10mmの深部温の測定が可能であるプローブを大腿直筋中央直上に固定.安静時と HP 施行直後にプローブを装着し,測定器から温度が安定したという表示が出た時点の数値を深部温として記録した.等速性膝伸展筋力は, CYBEX Norm を使用.測定範囲は膝関節伸展0°・屈曲90°に設定,各速度で伸展・屈曲を3回実施した.なお,測定は筋疲労の影響を考慮し各条件は別日に実施した. 深部温の変化は,HP施行前とHP施行直後の深部温の平均値を算出し,等速性膝伸展筋力はピークトルク値を体重で正規化し平均値を算出した.いずれも統計学的検定は,各速度で HP を施行する場合と施行しない場合を対応のあるt検定で比較した.なお有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被験者に本研究の趣旨と内容,起こりうるリスクを説明し,書面にて同意を得た者のみ実験を行った.【結果】 深部温の変化は, HP 施行前34.44±0.52℃, HP 施行後37.57±0.24℃であり有意に温度上昇を認めた(p<0.001).等速性膝伸展筋力に関しては,ISOK60で1.9±0.7Nm/Kg,HP-ISOK60で2.0±0.5 Nm/Kg, ISOK180で1.2±0.4 Nm/Kg, HP-ISOK180で1.4±0.5 Nm/Kg という結果を示し, ISOK180と HP-ISOK180で有意差を認めた(p=0.01).【考察】 一般に HP は表在を加温する温熱療法であるが, HP 施行により深部温度は有意に上昇していた.加温による筋への影響について,生理学的には組織温が上昇することで末梢循環では代謝亢進や血流増大,ATP利用の活性化,神経・筋系では末梢神経伝達速度の上昇,筋線維伝導速度上昇に伴う筋張力の増加が期待できるという報告がある.今回の研究では,等速性膝伸展筋力の変化に関して, ISOK60とHP-ISOK60は有意差がみられなかったが, ISOK180と HP-ISOK180で有意差がみられた.したがって,深部温の上昇に伴う組織の生理学的変化はより速い速度での筋収縮に影響することが示唆された.この生理学的背景としては,組織温の上昇に伴う ATP の利用の活性化が第一に考えられる.筋肉は強く,瞬発力を要する筋張力を発揮する場合,運動単位としては速筋線維の活動が初期に起こるとされている. ATP 産生が酸化的に起こる遅筋線維と比較しても速筋線維は ATP 産生が解糖系であるためエネルギー遊離速度が速いといわれていることから,温度上昇により速筋線維の活動が賦活され筋力増加につながったのではないかと考えられる.さらに,神経伝達速度の上昇に伴い筋収縮反応性が向上したことも影響した要因の1つだと予想される. 今後は温度上昇部位の詳細な評価や温熱の深達度に影響を及ぼす皮下脂肪厚測定,誘発筋電図による神経伝達速度の評価を行い,今回の結果を詳細に検討していく必要がある.【理学療法学研究としての意義】 等速性膝伸展筋力は,筋収縮の特異性として速い角速度ほど動作能力に結びつきやすいといわれている.今回の研究において,深部温の上昇に伴いより速い角速度での等速性筋力が増加したことは,温熱療法が筋力へ影響することを示唆する結果となった.このことは,運動療法前に温熱療法を行うことの意義が拡大すると考えられる.
著者
和泉 泰衛 矢野 聡 佐藤 早恵 西野 文子 大野 直義 荒木 利卓 矢嶌 弘之 中島 一彰 伊東 正博
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.122-124, 2016 (Released:2016-06-24)
参考文献数
8

症例は24歳男性. 主訴は感冒症状が先行する右頸部痛. 画像上, 右内頸静脈血栓を認め, Lemierre症候群と診断. 抗生剤と抗凝固療法にて症状改善した. 退院後に腰痛, 乾性咳嗽が出現し頸部-骨盤造影CTにて右総腸骨静脈, 左内腸骨静脈に新たな血栓, 右下葉の肺炎, 椎体の骨髄炎の所見を認めて再入院となった. 各種感染症検査を提出したが原因は特定できなかった. 抗生剤治療を継続したが, 両側胸水が増悪し, 椎体の溶骨性病変が多発, 増大した. 骨病変の生検を施行した所, 転移性腺癌の診断に至った. 内視鏡検査にて進行胃癌を認め, 多発骨転移, 癌性リンパ管症を合併した進行胃癌と診断された. 以上の経過より, 上気道炎から内頸静脈血栓を合併したのは, 進行胃癌に伴う過凝固状態が一因であったと推察した. つまり, 進行胃癌に伴うTrousseau症候群の一例と考えられた. 本症例のように血栓症を繰り返す症例では若年者でも悪性疾患合併を考える必要があると感じた症例であった.
著者
東 正剛 三浦 徹 久保 拓弥 伊藤 文紀 辻 瑞樹 尾崎 まみこ 高田 壮則 長谷川 英祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究プロジェクトにより、スーパーコロニー(SC)を形成するエゾアカヤマアリの感覚子レベルにおける巣仲間認識と行動レベルでの攻撃性の関係が明らかとなった。このアリは、クロオオアリの角で発見されたものと同じ体表炭化水素識別感覚子を持ち、巣仲間であってもパルスを発しており、中枢神経系で識別していると考えられる。しかし、SC外の他コロニーの個体に対する反応よりは遥かに穏やかな反応であり、体表炭化水素を識別する機能は失われていないと考えられる。また、SC内ではこの感覚子の反応強度と巣間距離の間に緩やかな相関関係が見られることから、咬みつき行動が無い場合でも離れた巣間では個体問の緊張関係のあることが示唆された。敵対行動を、咬みつきの有無ではなくグルーミングやアンテネーションなどとの行動連鎖として解析した結果、やはり咬みつきがなくてもSC内の異巣間で緊張関係が検出された。さらに、マイクロサテライトDNAを用いて血縁度を測定したところ、SC内の巣間血縁度は異なるコロニー間の血縁度と同じ程度に低かった。巣内血縁度はやや高い値を示したが、標準偏差はかなり大きく、巣内には血縁者だけでなく非血縁者も多数含まれていることが示唆された。これらの結果から、SCの維持に血縁選択はほとんど無力であり、恐らく、結婚飛行期における陸風の影響(飛行する雌は海で溺死し、地上で交尾後、母巣や近隣巣に侵入する雌が生き残る)、砂地海岸における環境の均一性などが多女王化と敵対性の喪失に大きく関わっていると結論付けられる。
著者
山下 俊一 FOFANOVA O ASTAKHOVA LN DIMETCHIK EP 柴田 義貞 星 正治 難波 裕幸 伊東 正博 KOTOVA AL ASHATAKNOVA エルエヌ DEMETCHIK EP ASHTAKNOVA L DEMETCHIK E.
出版者
長崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

旧ソ連邦の崩壊後、1994年から3年間ベラル-シを中心に学術共同研究「小児甲状腺がん特別調査」を行ってきた。すでに関係機関や保健省、ミンスク医科大学、ゴメリ医科大学、ゴメリ診断センターとは良好な協力関係を構築し、放射能高汚染地区の小児検診活動が軌道に乗っている。昨年出版したNagasaki Symposium; Radiation and Human Health(Elsevier,1996)ではベラル-シ以外ウクライナ、ロシア、カザフ等の旧ソ連邦の放射線被曝者の実態を明らかにしてきた。1994年〜1995年の一期目はベラル-シ、ゴメリ州を中心に小児甲状腺検診プログラムの疫学調査の基盤整備を行い、共通の診断基準、統一されたプロトコールを作成し甲状腺疾患の確定診断を行った。特にエコー下吸引針生検(FNAB)を現地に導入し、細胞診を確立することで最終診断の上手術の適応を判定可能となった。更にゴメリ州で発見された小児甲状腺がん患者がミンスク甲状腺がんセンターで手術されることから、連携をとり、組織診断の確認や患者の追跡調査を行った(Thyroid 5; 153-154,1995,Thyroid 5; 365-368,1995,Int.J.Cancer 65; 29-33,1996)。チェルノブイリ周辺では慢性ヨード不足のため地方性甲状腺腫の診断の為、尿中ヨードの測定装置を開発し、現地での測定に役立て一定の成果を得た。すなわちヨード不足と甲状腺腫大の関係を明らかにした(Clin Chem 414; 581-585,1995)。一方、ヒト甲状腺発癌の分子機構や病態生理の解明のためには種々の基礎実験を行い、甲状腺癌組織におけるPTHrPの異常発現と悪性憎悪の関連性を明らかにした(J Pathol 175; 227-236,1995)。特に放射線誘発甲状腺癌の研究では細胞内情報伝達系の特徴から、細胞周期停止とアポトーシスの解離現象を解析した(Cancer Res 55; 2075-2080,1995)。その他TSH受容体の遺伝子異常(J Endocrinol Invest 18; 283-296,1995)、RET遺伝子異常(Endocrine J 42; 245-250,1995)などについても解析を行った。1995年〜1996年の二期目はベラル-シの小児甲状腺癌の激増がチェルノブイリの原発事故によるとする各国際機関発表を基本に被曝線量の再評価を試みた。しかし、ベラル-シの多くのデータは当時のソ連邦特にモスクワ放射線生物研究所を中心に測定、管理されており、窓口交渉やデータの共有化等で未解決の問題を残している。更にチェルノブイリ原発事故の対応はセミパラチンスクにおける467回の核実験の対策マニュアルに基づいて行われたことが明らかとなり、カザフを訪問し健康被害の実態調査(1958-1990年)について検討を加えた。一方、甲状腺癌の基礎研究においてはいくつかの新知見が得られている。1996年-1997年の三年目は、チェルノブイリ原発事故後激増する小児甲状腺がんの細胞診活動を継続し、30,000人の小児検診のうち60名近いがんを発見した。同時にほかの甲状腺疾患の診断が可能であった(Acta Cytol in press 1997)。チェルノブイリ以外に旧ソ連邦では467回の核実験を行ったセミパラチンスクが注目されるが、更に全土で100回以上の平和利用目的の原爆資料が判明した。甲状腺癌細胞を用いた基礎実験ではp53遺伝子の機能解析を温度感受性変異p53ベクター導入株を用いて行った。その結果、放射線照射における細胞周期停止とアポトーシスの解離現象にp53以外の因子が関与することが判明した。更にDNA二重鎖切断の再修復にp53が重要な役割を担っていることが明らかにされret再配列との関連性等が示唆された(Oncogene in press 1997)。TSH受容体遺伝子や脱感作の研究も進展している。しかしながら、放射線誘発甲状腺含発症の分子機構は未だ十分解明されておらず更なる研究が必要である。貴重なチェルノブイリ原発事故周辺の小児甲状腺がん組織の散逸やデータの損失を未然に防ぐためにも国際協調の下、Chernobyl Thyroid Tissue BankやPatient Network Systemなどの体制づくりも必要である。
著者
東 正彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

“C-N balance"アイデアに基づき、以下の成果をえた。1.シロアリ共生系(1)シロアリの“C-N balance"機構には「Nをinput側に加える」「Cを選択的にoutputする」の二通りがあることを示し、シロアリの共生生物との相互作用のうち、この二つの“C-N balance"法として機能するものをまとめた。(2)“C-N balance"の能力に見合う程度にしか食料資源を利用できないことを見い出し、ワンピース(巣をなした枯れ木を食糧源にする)タイプよりセパレーツ(巣と食糧源を分離する)タイプの方がより繁栄している現象、およびセパレーツ・タイプにしか真のワーカー(不妊の職蟻)が存在しない現象を説明した。2.生態系の栄養動態(1)水域生態系で、植物がとり込めるNに対応する以上に光合成によって作り出してしまう余剰のCを、EOC(細胞外排出炭素)として「垂れ流す」ことに着目することによって、通常のgrazing food chain、microbialgrazing food chain、detrital food chainの相対的な発達の度合いを左右する機構を示した。(2)生態系における“C-N balance"プロセスに着目することによって、森林、草原、水域の生態系機能における構造的差異を浮き彫りにできることを示した。3.生態系の発達機構に関して(1)植物生産者と分解者の間の「協同進化」によって生態系の発達過程が進むこと理論的に示した。(2)珊瑚礁生態系の発達機構を“C-N balance"のアイデアに基づいて説明する理論モデルを得た。以上の成果は、“C-N balance model"の一般的有効性、一つのパラダイムとして発展する可能性を示唆するものと言えよう。
著者
西川 潤 細川 歩 渕野 真代 高取 俊介 岩本 真也 菓子井 良郎 坂東 正 清水 哲朗 峯村 正実 杉山 敏郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.3, pp.299-304, 2018-03-10 (Released:2018-03-12)
参考文献数
27

エソメプラゾール投与により発症した横紋筋融解症の1例を経験した.逆流性食道炎に対してエソメプラゾールを投与したところ,約10カ月後に横紋筋融解症を発症した.投薬の中止と補液によって腎障害を合併することなく改善した.横紋筋融解症はプロトンポンプ阻害薬投与にともなうまれな副作用であるが,速やかな診断と対応が求められる貴重な症例であり報告した.
著者
カンサ ジョージ オデュロ 丸尾 達 篠原 温 伊東 正
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.118-122, 1996-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
21

スイカ (Citrulus lanatus Thunb.) 2品種 (‘Baoguan’, ‘Xinlan’) を供試し, 光照度 (50%, 100%) と気温 (33℃, 38℃) が, 光合成速度 (Pr) , 蒸散速度 (E) , 気孔伝導度 (gs) , 細胞内CO2濃度 (Ci) , および果実収量・糖度に及ぼす影響を調査した.高照度下で生育した植物体のPr, E, gsは, 低照度下でのものより高かった.品種について比較すると, いずれの気温でも高照度条件下で, ‘Baoguan’のPr, E, gsおよび収量が, ‘Xinlan’よりも高かった.光合成速度と蒸散速度, および気孔伝導度と収量の間には, 統計的に有意な正の相関が, また, 光合成速度と細胞内CO2濃度との間には負の相関が認められた.果実糖度 (Brix) は, 両品種ともに12.0~13.5の範囲にあり, 処理による影響は認められなかった.スイカの生育, 収量は, 遮光により低下したが, 50%遮光条件下でも実際栽培上の問題はなく, さらに光強度が高い熱帯アグロフォレストリー地域においては, 適度な遮光下でも十分に栽培が可能と推察された.