著者
松井 太
出版者
弘前大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

西暦9〜14世紀に属する中央アジア・新疆地域出土の古代ウイグル語世俗文書のなかから,特に税役制度に関係する社会経済文書群を文献学的に解読し,歴史学的考察の基礎となる校訂テキストを準備した。特に,税役徴発を命じる行政文書群については,近日中に英文で資料集として出版する予定である。また,その他の個別の諸種文書(免税特権許可状,契約文書など)を解読校訂しつつ,その歴史的背景となる税役制度の分析を試みた。
著者
越川 満 内山 将夫 梅谷 俊治 松井 知己 山本 幹雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1443-1451, 2010-08-15

フレーズベース統計的機械翻訳では,連続する単語列(フレーズ)を翻訳の最小単位とした確率的規則に基づいて翻訳候補の順位付けを行い,最も確率の高い候補を出力とする.しかし,入力文のフレーズ区切りや翻訳前後の訳語関係(フレーズ対応)の組合せ数は膨大である.そのため,従来の統計的機械翻訳システムは,翻訳候補およびフレーズ区切り・対応に対して大胆な近似を行うことで探索空間を狭めており,厳密な確率の最大化をしていない.本稿では,フレーズ対応・区切りに関する厳密な確率最大化を行う問題を,フレーズベース翻訳において広く用いられているすべての素性を考慮可能な形式で整数線形計画問題として定式化し,それを翻訳候補のリランキングに応用する手法を提案・実装する.評価実験の結果,提案手法は有意に翻訳精度を改善することが示されると同時に,フレーズベース翻訳における探索の課題は,フレーズ対応ではなく翻訳候補文についてより多くの候補を評価することにあるという示唆が得られた.
著者
池津 善郎 池部 敏市 小倉 英郎 小田嶋 博 黒坂 文武 佐瀬 くらら 杉内 政巳 杉山 朝美 勝呂 宏 鈴木 慎一郎 藤沢 重樹 北條 徹 松井 猛彦 松田 三千雄 山本 淳 四本 秀昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.633-642, 1991
被引用文献数
8

米アレルギーの関与が考えられるアトピー性皮膚炎(AD)患者に対する通常米の厳格除去効果を臨床的に検討することを目的として, 低アレルゲン米(HRS-1)の代替食療法を多施設共同で実施した. その際, 米と小麦との交叉反応性を考慮し小麦も厳格除去した. このHRS-1は, 抗原蛋白を除去するため蛋白分解酵素処理した米である. 総実施例49例のうち除外・脱落などを除いた43例を解析対象とした. 多くの症例でHRS-1摂取直後から4週にかけてAD病変の範囲・重症度指数(ADASI)の急速な低下が観察され, 2週後, 4週後, 最終判定日(平均5.6週)のADASIは, それぞれ開始時と比較して有意に低下した. 全般改善度において「改善」以上の改善率は, 2週後では39%, 4週後では67%, 最終判定日では74%であった. また, 併用ステロイド外用剤の減量効果においても「軽減」以上の症例は, 最終判定日で約半数に認められた. 3例の悪化のほかに特記すべき副作用は認められなかった. 有用性の成績は, 43例中「非常に有用」が17例(40%),「有用」が13例(30%),「やや有用」が9例(21%)であり,「有用」以上の有用率は70%であった. HRS-1は, 米アレルギーに悩む難治性重症AD患者の代替食として高い有用性のあることが認められた.
著者
松原 みゆき 佐々木 秀美 山下 典子 松井 英俊 岩本 由美 田村 和恵 小柳 芙美子 河野 寿美代
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.18-23, 2004-03-27

成人看護学講座においては,初年度より看護教育及び看護の実践の場で広く適用されている,看護過程を取り入れた臨地実習を行っている。そこでは看護過程と看護技術を結び付けて学習することが必要である。看護過程の思考方法は,デューイの思考過程を看護過程に取り入れられたことに始まると言われている。そこで,平成15・16年度成人看護学臨地実習Iでは,デューイの反省的思考を取り入れ臨地実習を行い,その実施過程の報告を行った。実習方法は,原則として,土・日曜日を除き,病院での臨地実習を5日間,学内での実習(オリエンテーションと反省会を含む)5日間の内,3日間反省的思考を行う時間に当てた。その流れは,グループ毎に臨地実習を進める中で,看護過程を通して重要であると考えた看護技術を取り上げ,振り返る作業を行った。グループ毎に,なぜその技術を取り上げたのか理由を明確にして,事例を挙げて看護過程に沿ったレジュメを作成した。発表は,1グループ30分間で,実技を伴う発表と発表後学生や教員と質疑応答を行った。反省的思考を成人看護学臨地実習Iに取り入れることは,佐々木がデューイの『思考の方法』を手がかりに看護教育において「一つ一つの問題を綿密に考えていくようにしていくことが思考の訓練であり,それが学習である」と仮定している。さらに「経験をし,分析する思考態度の育成が良質の看護を提供することにつながる」ことを明確にしたい。
著者
松井 豊 望月 聡 山田 一夫 福井 俊哉
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

惨事ストレスへの耐性に関するプロアクティブな予測を行うために、消防署に配属された新人消防職員を対象にして、1年の間隔をおいて、心理検査・神経心理学的検査・脳科学的な検査を継時的に行った。2回の検査を受けたのは、消防職員7名と対照群として男子大学生2名であった。各神経心理検査得点について,大学生と消防職員を比較するために,Mann-Whitney検定を行った結果,各神経心理学検査得点には有意な差はみられなかった。職場配属から検査実施までの間で,衝撃をうけた災害へ出動経験があった消防職員が存在したので,被災体験があった消防職員(N=4)と被災体験がなかった消防職員(N=3)の神経心理学的検査得点を比較するために,Mann-Whitney検定を行った。その結果,Tapping Span(逆)に有意差傾向がみられ(p=.057),被災体験があった消防職員は,被災体験がなかった消防職員よりも得点が低かった。Tapping Span(逆)以外の神経心理学的検査得点には,被災体験による有無により,有意な差はみられなかった。また、効率的な検査実施のために、タブレット方パソコンを使って、検査過程を自動化するソフトの開発も行った。なお、研究協力者のスケジュールの調整がつかず、平成23年5月に検査が延びたため、研究終了が延期された。
著者
浅尾 俊樹 北澤 裕明 伴 琢也 Pramanik M. H. R. 松井 佳久 細木 高志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.247-249, 2004-05-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 21

8種の葉菜類の自家中毒物質を探索するために水耕葉菜類に用いた活性炭に吸着された物質をGC-MS法で分析した.その物質は乳酸,安息香酸,m-ヒドロキシ安息香酸,p-ヒドロキシ安息香酸,バニリン酸,アジピン酸およびコハク酸であった.同定された物質の中で,顕著に生育抑制を引き起こす物質を探るため各葉菜類の苗を使ったバイオアッセイを行った.その結果,パセリではアジピン酸,セロリでは乳酸,ミツバでは安息香酸. p-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸,レタスではバニリン酸,葉ゴボウではコハク酸,シュンギクでは安息香酸,m-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸,チンゲンサイでは安息香酸およびp-ヒドロキシ安息香酸,ケールでは安息香酸,p-ヒドロキシ安息香酸およびアジピン酸が生育抑制を顕著に引き起こす物質として認められた.
著者
松井 幸雄 木村 修二 小酒 英範
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

噴射率選定自由度及び制御応答性に優れている燃料噴射系であるコモンレール式を基本に、単発噴射化の改良、燃料噴射圧の向上をまず始めに進めた。単発噴射化は噴射コントローラーの改造と制御プログラムの開発によって対応した。また噴射圧力の向上は特設の増圧ユニットの新規開発によって実現した。上記燃料噴射系の単体性能試験に拠れば、最大噴射圧力は175MPaに至った。一方、噴射率制御に関しては、パイロット噴射、スプリット噴射、N回分割噴射が可能であることを確認した。予圧サプライポンプ、急速圧縮膨張装置の駆動、燃料噴射等の同期を具現化するためのコンピュータ制御システムを完成し、当該噴射系を急速圧縮膨張装置に組み込み、燃焼実験に供した。その結果、着火遅れ期間は噴射圧力の向上やノズル噴孔径の縮小につれて短縮されること、今回の実験範囲では噴射圧力の向上に対する着火遅れ期間短縮傾向は飽和領域に至っていないこと、パイロット噴射によると主噴射燃料の燃焼による燃焼器内圧力上昇率が緩和されること、分割噴射に呼応して複数回熱発生率が出現するものの、遅い噴射に対する熱発生率が緩慢になるなどの挙動が確認できた。さらに、ノズル仕様が噴霧燃焼の燃焼室壁面への熱損失に与える影響を急速圧縮膨張装置による燃焼実験で明らかにするために、ノズルの噴孔径・噴孔数・噴射方向などが燃焼効率と熱損失割合に与える効果の定量的な把握を試みた。その結果、噴霧火炎と燃焼室壁面の接触を極力回避することを狙い、小噴孔径化と噴孔数増加を組み合せると、熱損失は減少するものの、各噴霧間の相互干渉に起因すると考えられる燃焼効率の低下が見られること、この燃焼効率低下を避けるために、噴射角度の異なる噴孔2種を組み合せた二段型ノズルでは、燃焼効率は改善するが、逆に熱損失割合は顕著に増大するなどの実験的事実を得た。
著者
松井 幸夫 倉持 孝司 柳井 健一 藤田 達朗 松原 幸恵 元山 健 愛敬 浩二 江島 晶子 元山 健 愛敬 浩二 植村 勝慶 江島 晶子 大田 肇 小松 浩 榊原 秀訓 鈴木 眞澄
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

現代の日本の政治改革において参照されたのは、イギリスをモデルとした小選挙区制、二大政党と政治的リーダーシップ、選挙による政権交代等であった。しかし、当のイギリスやその影響下の諸国では、ウエストミンスター・モデルと呼ばれる、このような政治システムの変容や再検討や、そこからの離脱傾向が強まっている。本研究は、このような実態と理論状況を明らかにし、現代立憲民主主義の憲法理論構成の方向性を明らかにする視座を得た。
著者
松井 宏樹 林 慶樹 野田 五十樹
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

株取引における執行戦略の一つである出来高加重平均に基づく分割発注(VWAP)では,執行の基準となる一日の出来高の推移(ボリュームカーブ)を推定することが執行リスクの低減のために重要である. 本研究では,野田の提案する機械学習における再帰的ステップサイズパラメータ調整法(RASP)により,前日までのボリュームカーブから当日のボリュームカーブの推定を試みる.
著者
松井 和宏 佐藤 晴夫
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

金融市場における自動取引戦略を探索するためには、 訓練時とテスト時で探索空間の形状が変化する問題に適切に対応する必要がある。 著者らはこの問題に対して、GAにおける個体評価に近傍評価法を 導入している。本研究では、この近傍評価法をさらに発展させるために、 探索空間中での近傍形状の拡張、及び近傍探索の高速化を検討する。 実験の結果、提案手法が良好な結果を示すことを確認した。
著者
多田 弘明 小林 久芳 秋田 知樹 松井 英雄
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の主要な成果は以下の通りである。(1)単体硫黄と金属イオンを含むエタノール溶液中で,TiO_2にUV光を照射することによって,TiO_2表面と良好な界面接合状態を有するCdS,PbS,MoS_2,Ag_2S量子ドットを形成することに成功した。(2)光析出法を用いて作製した金属硫化物量子ドット-TiO_2ダイレクトナノカップリング系の特徴を明らかにした。(3)光析出法,SAM法およびSILAR法で調製したCdS量子ドット担持メソポーラスTiO_2ナノ結晶薄膜を光アノードとして用いた量子ドット増感型太陽電池を作製した。疑似太陽光照射下(one sun)におけるセル性能評価を行った結果,光電変換効率は,2.5%(光析出法)>1.2%(SILAR法)>0.14%(SAM法)の順であることが判明した。
著者
松井 徹哉 武藤 厚 大塚 貴弘 永谷 隆志
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

浮屋根と液体の非線形性を考慮した大型液体貯槽の地震時スロッシング解析理論を体系化し、縮小模型による振動台実験を実施してその妥当性を検証した。さらにその成果に基づいて、2003年十勝沖地震で発生したシングルデッキ型石油貯槽浮屋根の損傷・沈没の原因究明を試み、浮屋根や液体の非線形性に起因する非線形振動モードの存在がポンツーンに過大な応力を発生させ、浮屋根を座屈・沈没に至らせる可能性のあることを指摘した。
著者
高橋 玲 AARONSON Stu BENEDICT Wil 佐谷 秀行 松井 利充 BENEDICT William f. AARONSON Stuart a.
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究は、米国で数年間行われてきた癌抑制遺伝子の機能解析についての研究を継続し、日米の協力研究として発展させることを目的とする。基本的には我々のグループが樹立した癌抑制遺伝子の生物学的活性を直接的に細胞レベルで解析できる実験系を用い、その遺伝子異常を正常のものと比較する。また癌細胞における癌抑制遺伝子の発現を種々の方法で人為的に調節することで癌細胞の表現型の変化を誘導し、癌治療に向けての可能性を検討する。研究代表者高橋は、分担研究者全員の協力を得てRB遺伝子とp53遺伝子のトランスフェクションを進めた。膀胱癌,肺小細胞癌にRB遺伝子導入、口腔扁平上皮癌と大腸癌にp53遺伝子を導入し、それぞれの安定発現株を得て解析を進めた。時にp53遺伝子導入大腸癌細胞においては、アポトーシスを誘導できる系が確立されることが明らかとなり、制癌剤開発に適したモデルとして期待される。ヒト大腸癌培養細胞株WiDrはp53遺伝子上2つ3番目のコドンに相当する部位の点変異を有する。サイトメガロウイルスのプロモーターに制御される正常p53発現プラスミドベクターを安定性にトランスフェクションし、プラスミドのもつネオマイシン抵抗性を利用して正常p53の発現を獲得したクローンを得た。培養中の増殖態度は軟寒天中のコロニー形成率の著しい低下以外には、ほとんど変化がみられなかった。抗Fas抗体(IgM)で処理すると親株にはほとんど変化がみられなかったが、48時間後をピークとしてp53導入細胞に著明な細胞死(アポトーシス)が誘導された。アポトーシス処理後24時間後の細胞からのRNA解析によれば、内在性の変異型p53遺伝子の発現レベルには変化がなく、導入された正常p53の発現及びそれに関連してcdK2のインヒビターであるp21(WAFI)遺伝子の発現の亢進がアポトーシス誘導に伴って生じることが明らかとなった。このことは正常p53遺伝子の発現に担っているサイトメガロウイルスのプロモーターに特異的なシグナルがFAS依存性反応経路に存在していることを示唆しており、現在、同プロモーターに働くNFkBについて解析を進めている。現在までFasからのシグナルとp53依存性アポトーシスとの間に関連はないといわれているが、今回の人為的反応経路の連結により、Fasにより誘導可能なp53依存性アポトーシスのモデルとして、DNA損傷により誘導される場合とは異なりユニークなモデルといえる。トランスフェクションに用いた大腸癌細胞はγインターフェロン処理によってもp53遺伝子再構築なしに抗Fas抗体に感受性を示すようになることが知られており、遺伝子再構築と制癌剤との協同作用として興味深い。肺小細胞癌は神経内分泌特性によって他の肺癌と区別されているが、我々は今回NF1遺伝子mRNAのスプライシング様式の変化がその分化指標となりうることを発見した。NF1のスプライシング様式の変化は以前、分担研究者の佐谷らによって見出されたもので、多くの神経系細胞や腫瘍において、分化度と高い相関を示すことが明らかにされていた。我々は肺小細胞癌培養株で得られた所見をもとに臨床材料で形態学的あるいはNSEなどのマーカーとの関連において解析を続けている。口腔扁平上皮癌においてもp53変異に対して正常p53遺伝子導入株で角化傾向が誘導されることも確認されている。今回の協力研究により困難で長時間を要するヒト癌細胞への安定性癌抑制遺伝子導入にいくつかの細胞で成功し、解析が可能となった。特に定常状態での変化よりも、分化誘導や細胞死誘導などの刺激下では癌抑制遺伝子の細胞レベルでの機能が顕著になることが明らかとなった。今後さらに種々の組合わせで癌細胞における癌抑制遺伝子機能がさらに詳細に解析されることが期待される。今回は兵庫県南部地震のため、渡米計画が一部中止されるなどの変更が生じたが、おおむね、当初の研究交流の成果を待つことができたと考えられる。