著者
坂根 直樹 松井 浩 澤入 房子 森 直樹 平澤 勇 竹村 智子 村上 博之 小暮 彰典 高倉 康人 梅川 常和 吉岡 敬治 吉田 俊秀
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.521-524, 2001-06-30

われわれは健康学習 (患者の生き方や価値観を重視し, 行動科学手法を用いた保健指導論) を用いた「楽しくてためになる糖尿病教室」の普及を目指し, 全国でグループワークやロールプレイを中心とした糖尿病教育ワークショップを実施し, 糖尿病医療スタッフ995名の意識や態度に与える影響を検討した. プログラム内容検討, 参加者の目標設定, グループワークや体験学習の必要性の有無で有意差が認められた. 従来は講義時間が大半を占めていたが, 終了後はグループワークや実技の必要性が再認識された.
著者
稲垣 均 松井 隆則 小島 宏 加藤 潤二 小島 泰樹 藤光 康信 黒川 剛 坂本 純一 野浪 敏明
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.692-696, 2004-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
17

症例は62歳の女性で,2000年1月直腸癌にて低位前方直腸切除術の既往がある.2000年11月より血清CEAの上昇傾向を認めていたが,画像診断上再発所見を認めず,経過観察されていた.その後も血清CEAは上昇を認め,2001年8月CTにて膵体部に腫瘤を認めた.2001年10月当科を紹介された.孤立性膵腫瘍であり,他に転移を認めないことから,膵体尾部脾合併切除術を施行した.腫瘍は7×4cm大で,組織学的に中分化腺癌の像を呈し,直腸癌の転移と診断した.術後,5-FUとisovorinの化学療法を開始し,2003年7月現在,血清CEAの軽度上昇を認めるが,画像上明らかな再発所見を認めず,外来通院中である.大腸癌膵転移は極めてまれであり,その切除の報告例は検索しえた範囲内で,自験例を含めて14例に過ぎない.長期生存例の報告もあり,孤立性で他に転移巣を認めない場合には,積極的に手術を行うべきと考えられた.
著者
小原 均 岡本 敏 松井 弘之 平田 尚美
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.187-193, 1992-03-25

キウイフルーツ'ヘイワード'の果実肥大と成熟時の品質に対する葉果比(1.5, 3, 4.5, 6)の影響を調査した.結果枝に環状剥皮を行うと葉果比が増加するに従って果実重量が増加したが,葉果比1.5では果実を適正または積極的に肥大させるまでには至らず,葉果比3では通常の果実の肥大(約100g)を示し,葉果比4.5及び6では肥大が促進された.一方,結果枝に環状剥皮を行わないと,葉果比にかかわらず果実の大きさはほぼ同じであった.KT-30処理果実でも肥大に対する葉果比の影響は,KT-30無処理果実と同様な結果であったが,結果枝に環状剥皮を行った葉果比4.5及び6の果実では,著しく肥大が促進された.正常な果実の肥大のためには,葉果比が3であれば十分であり,また,KT-30による果実肥大促進にも葉果比が3であれば十分であった.なお,果実肥大に対するKT-30の効果は,果実のsink能を高めることであることが,葉果比の面からも推察された.葉果比が果実の品質に及ぼす影響は,特に糖度に認められ,結果枝に環状剥皮を行うと,KT-30処理にかかわらず葉果比1.5で低く,また,KT-30無処理果実では葉果比3でも低かった.正常な品質の果実に生長するためには,葉果比で4.5は必要であると推察された.
著者
上田万年, 松井簡治 著
出版者
富山房
巻号頁・発行日
vol.巻4, 1929
著者
原 貴洋 手塚 隆久 松井 勝弘
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.459-463, 2007-07-05
被引用文献数
1 2

中国30点,韓国30点,日本7点の計67点のハトムギ遺伝資源を熊本県の九州沖縄農業研究センター圃場で5月下旬に播種,栽培し,成熟期に形態的形質を調査した.韓国品種の形態的形質は日本品種に似ていたが,韓国品種の着粒層は日本品種より狭く,韓国品種には草丈が小さい品種が認められ,機械収穫適性を改良する素材として期待できた.中国品種は,草丈,主稈葉数,稈径,着粒層,葉長,葉幅で大きな値を示し,飼料用ハトムギの改良に有望と考えられた.各形質値の間の相関関係が高かったことから主成分分析を行った.第1主成分は草丈,稈径,主稈葉数,着粒層,葉長,葉幅の植物体の大きさを表す形質との相関が高かった.第2主成分は着粒層との相関が高く,植物体の形を表していると考えられ,中国品種,韓国品種は日本品種より分布域が広かった.以上のことから,韓国,中国品種はともに,わが国ハトムギの草型の変異拡大に寄与すると考えられた.
著者
後藤 卓 松井 藤五郎 和泉 潔
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

金融市場において,国債や企業向け貸出のヘッジ手段としてCDSが幅広く用いられるようになってきたが,依然として,アジアを中心にCDSマーケットのない国や企業が存在する.これに対し,状況が似ている他の国や企業のCDSを用いてヘッジするプロキシヘッジの取組がなされているが,その際において,最適なヘッジ比率設定が課題となっている.本論文では,複利型強化学習を用いて最適ヘッジ比率を学習する手法を提案する.
著者
松井 藤五郎 後藤 卓 和泉 潔 陳 ユ
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

本論文では,複利型強化学習における投資比率パラメーターをオンライン勾配法を用いて最適化する方法について述べる.また,実験によりその有効性を確認する.
著者
松井 利郎 佐藤 匡央 津田 孝範 南部 伸孝
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-05-31

低分子ペプチドの生体調節機能を明示し、先端的食科学の構築を図ることを目的として、血管及びその他組織での生理作用発現性について詳細な解明を試みた。その結果、塩基性ジペプチド類は内皮非依存的に血管を弛緩させること、その作用は細胞内でのカルシウムシグナル系の抑制であることを細胞並びにMDシミュレーション法により明らかにした。さらに、この血管弛緩作用は加齢に伴い、また高血圧進展に伴い減弱するとの新たな知見を得た。さらに、体内吸収過程の可視化に成功するとともに、筋肉組織においてAMPK活性化を誘導し、抗糖尿病作用を発現する可能性を初めて明示することができた。
著者
大山 博 寺島 彰 山岡 義典 松井 亮輔
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

韓国の社会的企業制度はまだ課題も多いことも明らかにした。しかし、わが国では長年、福祉的就労と一般就労という二分法的な制度運用で、その問題が多いことが指摘されてきたが、社会的企業制度は、両者の架け橋的な役割を果たすものとして、わが国でも社会的意義が大きいことがいえる。(2)滋賀県と箕面市の制度は障害者を中心的に対象としており、韓国の脆弱階層より狭くなっている。今日、社会的排除へのインクルージョンが求められており、財政負担問題も含めて国レベルでの制度化が必要である。(3)地域での社会的企業創設に関しては、現在の福祉的就労の状況から、商品開発、生産管理、販路開拓、流通と販売手法などの共同化を図り、さらには、専門性あるスタッフをコーディネーターとして配置した中間支援組織が重要であることを明らかにした。
著者
石原 雅巳 寺本 龍生 松井 孝至 千葉 洋平 山本 聖一郎 安井 信隆 石井 良幸 奈良井 慎 立松 秀樹 小林 直之 徳原 秀典 渡邊 昌彦 北島 政樹 倉持 茂
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.440-445, 1990-06
被引用文献数
6

症例は22歳の男性.1995年5月,排便困難,血便を主訴に近医を受診した.直腸癌の疑いで当院を紹介され1995年5月29日,入院となった.注腸造影,大腸内視鏡検査では肛門縁より約7cmの直腸左壁を中心とし半周性の隆起を主体とした腫瘤の集蔟を認め,感染性腸炎を疑わせる所見であった.生検の病理組織像は形質細胞の多い非特異的炎症のみであった.梅毒血清反応が陽性であったことから,梅毒性の直腸炎と診断し,駆梅療法を開始した.開始後,梅毒血清抗体価の低下にともない病変の縮小を認め,治療後約4カ月で梅毒血清抗体価の陰性化と病変の消失を認あた.さらにTreponema pallidum(以下T.p.)に対する抗体を用いた酵素抗体法によりT.p.が生検部の病理組織より証明され,梅毒性直腸炎の確定診断がされた.
著者
大門 寛 松井 文彦 松田 博之
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

新しく発明した立体光電子顕微鏡(楕円メッシュ二次元分析器)を完成して、試料の拡大像を観測し、微小領域だけからの二次元光電子分光を行ない、微小領域の電子状態と原子構造を立体的に詳しく観測することを目的としている。放射光施設(SPring-8)にて光電子を用いた性能評価実験を行い、0.2%という高いエネルギー分解能、25ミクロンという顕微鏡の分解能、±50度までの放出角度分布を確認し、微小グラフェン試料からの光電子回折実験にも成功し、目的の性能が達成された。
著者
永井 由美子 須永 剛司 山内 裕平 松井 功 小川 俊二 高橋 敏也
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.46, pp.230-231, 1999-10-15

When we develop tools and system that include complicated information system, "designing" and "using" need to connect with each other. On this ongoing project, "future black board system" for a junior high class room, we approach "activity based design." It leads to develop good design for users. From beginning of this project until now, we go and research the junior high slass room, then results took in the system. And further, designers need to take part designing curriculum that contains using the system.
著者
筒井 裕之 蒔田 直昌 絹川 真太郎 松井 裕 石森 直樹 畠山 鎮次
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

ミトコンドリアの生体維持機能は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)によって動的に制御されている。近年、mtDNAの酸化損傷およびそれに起因する活性酸素の過剰産生が、種々の疾病の発症、さらには老化にも関与することがあきらかにされ、疾病発症の共通基盤としてのミトコンドリア機能不全が注目されている。本研究では、心血管ストレス応答におけるミトコンドリア転写因子およびミトコンドリア酸化ストレスの役割をあきらかにした。
著者
松井 保憲 網谷 良一 久世 文幸 伊藤 春海
出版者
京都大学胸部疾患研究所
雑誌
京都大学胸部疾患研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.24, no.1/2, pp.12-33, 1992-03-31

It is widely accepted that the impairment of tracheobronchial clearance (TBC) are closely related to the development and the progression of chronic bronchial infections. We investigated TBC in patients with chronic bronchal infections (bronchiectasis; 11 cases, diffuse panbronchiolitis; 9 cases and primary ciliary dyskinesia; 3 cases) and also in 6 healthy subjects by a radioactive aerosol (^<99m>Tc-human serum albumin, 4.4 ± 1.4μm in diameter) inhalation scintigraphy with cough control in order to elucidate the relationships between impaired TBC and chronic bronchial infections. All subjects were not current smokers. After 4-minutes inhalation of radioactive aerosols (tidal volume : 500ml×20/min.), radioactivities in whole right lung were measured every 20 seconds for 2 hours serially and then measured at the time of 6 and 24 hours after inhalation. Immediately after the serial recording for 2 hours, single photon emission computed tomography (SPECT) was performed to assess the deposition pattern of radioactive aerosols. During the first 2 hours, all the subjects were instructed to avoid coughing as much as possible to evaluate the mucociliary clearance without cough effect. And then the subjects were allowed to cough between 2 and 24 hours after inhalation. All radiation counts were corrected for background radiation and physical decay of ^<99m>Tc. Because it is considered that the deposited aerosols are eliminated much more slowly in alveoli (biological half life : several months) than in airways (biological half life : several hours), the radioactivity remaining at the time of 24 hours was defined as alveolar deposition (ALV). Initial bronchial deposition (Br0) was defined as initial whole lung deposition (L0) minus ALV. We evaluated the TBC with following parameters; 1) Br0/L0 (%) : ratio of initial bronchial deposition to initial lung (bronchial and alveolar) deposition 2) Br2/Br0 (%), Br6/Br0 (%) : bronchial retention ratio; the ratio of bronchial deposition at the time of 2 and 6 hours after inhalation to initial bronchial deposition, respectively. 3) TMV (mm/min.) : tracheal mucus velocity (rate of shift of radioactive bolus on tracheal mucosa), which was measured during the period of first 2 hours under prohibition of cough. The patients (23 cases) were divided into two groups with regards to cough control for the first two hours of the scintigraphy : cough-controlled group (19 cases) and cough-uncontrolled group (4 cases). The cough-controlled group was subdivided into two subgroups (group A and group B) according to Br0/L0 : group A<47.9% (mean+SD of Br0/L0 in healthy control) ≦ group B. More proximal aerosol deposition was demonstrated in group B and cough-uncontrolled group by SPECT. Br2/Br0 was significantly elevated in group A (p<0.05) and group B (p<0.05) despite more proximal aerosol deposition, and also seemed to be elevated in cough-uncon-trolled group, compared to healthy control. Br6/Br0 was, however, almost equal among all disease groups and healthy control, which suggested that cough played an important role in eliminating airway fluid in chronic bronchial infections and that the impaired mucociliary clearance might be partially compensated by the cough effect. TMV was significantly slower in disease groups (14 patients) than in healthy control. In the rest (9 patients) of the patients, any boli for the measurement of TMV were not detected on tracheal mucosa during the serial imaging for the first 2 hours, which also suggested the remarkable impairment of the mucociliary clearance. We concluded that mucociliary clearance was impaired in patients with chronic bronchial infections and cough played very important roles in compensation of the impaired mucociliary clearance. We also concluded that our integrated system was very useful for evaluating the mucociliary clearance and the cough effect separately.
著者
石川 明子 松井 基純 釣賀 一二三 坂元 秀行 高橋 芳幸 金川 弘司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.965-968, 1998-08-25
被引用文献数
4

性成熟に達した10頭の飼育下の雄エゾヒグマを不動化した後, 電気刺激射精法により, 延べ21回の精液採取試験を行った.運動精子を含む射出精液は, 21回のうち14回から得られ, 採取された精液の量およびpHは, 平均2.7mlおよび7.4であった.また, 精子の濃度, 運動性, 生存率および奇形率は, それぞれ平均471.6×10^6個/ml, 80.2%, 89.7%および21.8%であった.
著者
海堀 昌樹 松井 康輔 斎藤 隆道 岩本 慈能 吉岡 和彦 上山 泰男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.1655-1660, 2008-08-01
被引用文献数
2

症例は53歳の女性で,2006年3月大腸癌術後両葉多発性転移性肝癌にて当科入院となった.患者はエホバの証人であり,教義上の理由により同種血輸血やアルブミン製剤使用は拒否された.転移性肝癌5か所に対して肝切除術を行った.手術時は術前希釈式自己血輸血650ml,術中回収式自己血輸血500ml行った.手術時間8時間43分,出血量は1,015mlであった.ヘモグロビン濃度,血清アルブミン値はそれぞれ術前12.2g/dl,4.1mg/dlであったが,手術直後8.9g/dl,2.0mg/dlまで低下した.術後13日目に軽快退院となった.エホバの証人患者に対する術前インフォームド・コンセントにおいては担当外科医,麻酔科医が患者と無輸血手術の契約を行い免責証明を交わさなければならない.その際,医師は安全な手術を行うため,患者またはその家族へ手術での推定される出血量を述べ,術前希釈式や術中回収式自己血輸血,またアルブミン製剤の必要性を説得し,その使用の許可をとる必要があるものと考えられた.
著者
松尾 和人 川島 茂人 杜 明遠 斎藤 修 松井 正春 大津 和久 大黒 俊哉 松村 雄 三田村 強
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-73, 2002-03 (Released:2011-12-19)

Bt遺伝子組換えトウモロコシンは,1995年に米国で初めて商業用に登録された。その後,このBt遺伝子組換えトウモロコシは標的害虫であるアワノメイガなどに対して抵抗性を有するために,防除経費の削減,収量の増加,品質の向上など生産面での有利性があるために,米国を中心に年を追って作付け面積が拡大した。一方,わが国では遺伝子組換え作物の加工用および栽培用の種子輸入に当たって,食品としての安全性は厚生労働省が,飼料としての安全性および環境への安全性は農林水産省の確認が必要である。農林水産省による環境に対する安全性の確認は,隔離圃場において組換え作物の栽培・繁殖特性,越冬可能性,雑草化の可能性,近縁種との交雑可能性等について調査した結果に基づいて行われている。ところで,1999年に米国コーネル大学のLoseyら(1999)が,Bt遺伝子組換えトウモロコシの花粉が非標的昆虫のオオカバマダラの幼虫に悪影響をもたらす可能性があるという報告を行い,新しい環境影響として世界中に衝撃を与えた。しかし,彼らの報告は,幼虫に与えた花粉量や野外における葉上の花粉堆積の実態等について触れていなかったために,環境影響の有無や程度は不明であり,今後解明すべき課題として残された。日本においても,そのような観点から遺伝子組換え作物の環境影響評価を行う必要があるため,緊急にBt遺伝子組換えトウモロコシの環境影響評価に関する調査研究に取り組むこととなった。本研究では,Bt遺伝子組換えトウモロコシの花粉の飛散によるチョウなど鱗翅目昆虫に及ぼす影響を知るために,1)トウモロコシ圃場から飛散する花粉の実態調査とトウモロコシ圃場からの距離ごとの落下花粉密度の推定,2)幼虫が摂食して影響を受けるBt花粉の密度,3)Bt花粉中のBtトキシン含有量,4)環境変化に対して脆弱であると考えられる鱗翅目昆虫の希少種について,栽培圃場周辺に生息する可能性,Bt遺伝子組換えトウモロコシの開花時期と幼虫生育期との重なり,採餌行動など,総合的な知見に基づいてリスク評価を行い,同時に,花粉飛散に伴う生態系への影響評価のための各種手法を開発した。