- 著者
-
松本 康
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.1, pp.147-164, 2005-06-30 (Released:2009-10-19)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
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5
4
Fischerの「下位文化理論」が都市における友人関係の興隆を予測して以来, 日本では都市度と友人関係に関する多くの調査研究がなされてきたが, その結果はまちまちであった.本稿では, 2000年に実施された名古屋都市圏調査のデータを用いて, 都市度と友人関係に関する経験的・理論的争点を検討する.分析の結果, 「友人興隆」仮説に反して, 友人数は都市度が増すにつれて減少していた.それは主に地元都市圏出身者が, 都市的地域で地元仲間集団を衰退させていたからである.しかし, 彼らの中距離友人数は, 都市度が増すにつれて増加していた.また, 遠距離友人数は, 都市度とは無関係で, 回答者の移動履歴の影響をうけていた.多くの経験的関連が移動履歴によって条件づけられていたという事実は, 社会的ネットワークの「選択-制約」モデルよりも「構造化」モデルを支持するものである.後者は, 諸個人の移動履歴によって関係資源の地理的分布が異なり, 都市圏内部に関係資源を豊富にもつ場合にのみ, 友人関係の再生産は都市度に影響されると強調する.さらにマクロにみると, 都市化の初期段階では, 移住者が多いために, 都市圏内部の社会的ネットワークは希薄であったかもしれないが, 一世代後には, 地元都市圏出身者の増大によって, 中距離友人ネットワークが増大すると推測される.こうして本研究は, アーバニズム理論に時間的・空間的視点を提供するものである.