著者
松本 伸哉
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.683-688, 2012-12-01

米国において,ビッグデータ解析の事例を紹介する.本事例は,オンラインゲームの会社において,ユーザーとの通信をすべて蓄積し,解析を実施した事例である.オンラインゲームにおいては,初心者にとって入り込みやすいゲームであるとともに,熟練したプレイヤーにとっても飽きさせない要素が必要である.また,プレイヤー間でのフェアな競争が必要であり,アンフェアな行為が可能でないかの確認ために,解析を実施した.
著者
吉田 有輝 三岡 相至 松本 直人 大野 英樹 吉田 生馬
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】1998年の厚生労働省の調査によると,ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:以下,GBS)は人口10万人あたりに対し1.15人の年間発生率であり,平均発症年齢は39歳で男女比は3:2である。また,GBSは一般的に予後良好であるとされており,1998年の英国の調査において,走行可能な状態まで回復した症例は約62%と報告されている。このように,GBSは若年性の神経難病であり,やや男性に多いことから,働き盛りの労働者に発生しやすいという特徴を持っている。それにも関わらず,GBSを発症した症例がその後どのような過程を経て社会復帰を実現したのかを示す報告は少ない。そこで,今回,当院において急性発症から自宅退院,その後の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)により社会復帰を達成した症例を経験したので報告する。【方法】平成25年3月5日~4月16日までに神経内科に入院したGBSの1例を対象とした。年齢は40代後半,性別は男性,職業は建設施工会社の現場監督であり,妻と3人の息子と同居していた。退院時のBarthel Indexは85点,100mの連続歩行や1時間の座位保持は疲労感が強く継続は困難な状況で,外出には車椅子が必要であった。筋力は,徒手筋力検査にて,上肢では前腕筋が概ね3+,股関節伸展筋および外転筋が3+,足関節底屈筋が2+,握力は右14.5kg,左14.0kgであった。退院時の主訴は「新たな身体を作りたい」であり,HOPEは「最終的に復職したい」であった。入院中は1日3回のリハビリテーションを毎日実施し,自宅復帰後は週に3日,1回40分の訪問リハを医療保険下で平成25年4月18日~9月27日まで実施した。訪問リハでは,屋内生活の安定を目標とするとともに,過用性筋力低下(overwork weakness)のリスクを考慮したADL指導や自主練習の提示を行っていった。その後,徐々に活動範囲を拡大させながら,日常的な活動性とADLおよびIADLの状況を毎回確認し,最終的には,復職した際の具体的な通勤方法や仕事内容を評価し,指導を行った。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則り,利用者に十分な説明と同意を得た後に実施した。【結果】自宅復帰後,社会参加に対するHOPEに早期復職や完全復帰と変化が認められるようになった。しかし,介入時の主訴からも推測される通り,疾患や身体機能,それに伴うADLへの理解が不十分であり,復職に関して焦燥感があることが考えられた。本人が同年6月末を復職時期として希望していたため,まず,通勤手段である自転車走行や電車移動を家族とともに行ってもらったが,電車移動中や外出先では疲労が強く頻回な休息が必要という結果であった。そこで,本人と相談しながら復職時の課題を明確化し,問題解決方法をその都度確認していった。その結果,8月初旬には1日の外出を実施することが可能となった。その際,移動時の疲労やそれらの翌日への持ち越しが確認されたが,デスクワークは可能であることも確認できた。そして,9月には訪問リハを週2回に変更し,復職後の業務内容は会社と相談した結果,内勤へと変更することが決まり9月27日に訪問リハは終了,10月初旬に復職を達成した。【考察】若年の男性にとって,労働者や夫,父親としての社会的地位や尊厳,名誉が失われることは大きな問題である。また,あらゆる神経難病の中で,GBSが予後良好と言われていても,罹患した方々は常に不安と隣り合わせの状態で自宅退院を迎えていることが容易に予測できる。今回の症例では,入院中から復職という社会復帰の目標が明確に設定されていた。しかしながら,退院直後は自宅内生活を送ることが精一杯であり,外出時には車椅子を使用しなければならない状況であった。そのため,まずは居宅生活の安定を目標としリハビリテーションを実施していった。その中で,徐々に生活が安定すると,可及的早期に復職をしたいというHOPEの変化が認められた。本人は復帰時には仕事への完全参加を希望していたが,病態やより具体的な復職のプロセスを考慮すると,本人との間で課題の明確化と問題解決方法をその都度確認していく必要があった。そのような介入をした結果,利用者の焦燥感は徐々に緩和していったと考えられる。そして,社会的側面や経済的側面も考慮し,可能な限り利用者の地位や名誉,尊厳に配慮した形で目標を共有していけたため,安全な方法や形式での社会復帰が可能であったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法の目的および理学療法士の役割が,身体の機能回復ではなく,個々人の権利・名誉・尊厳の回復であるならば,本症例のような神経難病を有する患者に対し,退院後も居宅サービスとしての支援を行い,社会復帰を実現していくことは大変重要なことであると考えられた。
著者
松本 拓哉 金澤 浩 大津 知昌 成尾 政一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0642, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】ストレッチングには,スタティックストレッチング(SS)やダイナミックストレッチング,バリスティックストレッチングなど,多様な方法がある。中でもSSは,伸張反射が起こりにくく,筋腱の損傷が少ない安全な方法であるとされている。筋の伸張性が筋力に及ぼす影響を調査した研究は多数行われているが,筋のストレッチングが拮抗筋へ与える影響を調査した報告は少ない。中島ら(2012)は,ハムストリングのSSを1週間継続した結果,膝関節伸展トルクの有意な増加が認められたと報告している。我々は,SS直後に拮抗筋の筋力が向上すれば,運動療法をより効果的に実施することが出来るのではないかと考えた。本研究の目的は,股関節内転筋群(AD)にSSを加え,拮抗筋である股関節外転筋群(AB)の筋出力が向上するかを確認することである。【方法】対象は,整形外科的疾患や神経学的疾患がない健康な成人男性50名(平均年齢25.1±2.5歳,身長171.1±4.5cm,体重65.5±9.1kg)とした。はじめに,右股関節外転角度を,角度計で他動的に計測し,疼痛の出現する直前の角度を記録した。続いて,右ABの最大随意等尺性収縮(MVC)を,サイベックスノルムCN77(CSMI社)を用い,肢位は「筋力測定装置CYBEX NORM User's Manual」に準じて側臥位とし,股関節外転のMVCを3回行った。その後,背臥位で,右ADに対するSSを,30秒間保持の4セット,疼痛の出現する直前の強度で実施した。SS後,股関節外転角度,及びMVCの測定を再度行い,ABのピークトルク,体重比(%BC)を算出し,SSの前後で比較した。股関節外転角度とABのピークトルク,%BCの差の比較には,Wilcoxonの符号付き順位和検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】SS前後の股関節外転角度の平均は,SS前42.6°±4.4°,SS後47.2°±4.1°で,SS後の股関節外転角度の有意な増大を示した。ABのピークトルクの平均も,SS前87.5±26.8Nm,SS後は94.3±29.5Nmとなり,SS後が有意に増大した。ABの%BCの平均についても,SS前135.1±42.5,SS後145.8±46.6で,SS後は有意な増大が得られた。【考察】股関節外転角度はSSにより11%の有意な増大を示したことから,ADの伸張性は改善し,SSの効果は得られていたと考えられる。Siatrasら(2008)は,30秒以上のSSで関節可動性が有意に増大したと報告していることから,本研究のSSの実施時間は,ADの伸張性を改善させるには,十分であったといえる。対象筋に対するSSの効果を調査した報告は多く,濱田ら(2008)は筋パワーの低下をもたらすとし,Rubiniら(2007)は最大筋発揮やパフォーマンスを低下させると報告している。本研究ではADのSS後に,拮抗筋のABのピークトルクが7.7%,%BCは7.9%向上したことが確認され,SSは拮抗筋の筋出力の向上に即時的な効果があることが示された。筋力発揮に関わる因子は多く挙げられるが,その中でも効果的な筋力発揮を得るための相反神経支配の関与が重要視されている。通常,関節運動時には拮抗筋の活動は完全には抑制されず共収縮が生じており,本研究ではSSによってADの伸張性が増大した結果,ADの共収縮が低下し,拮抗筋であるABの筋出力が改善したことが一つの要因ではないかと考える。本研究の結果,筋力強化の対象筋が明確な場合,SSは拮抗筋の筋出力を即時的に改善させることから,SSを行うことで拮抗筋の筋力を効率よく発揮出来ることがわかった。【理学療法学研究としての意義】主動作筋の筋力増強運動を行う直前に拮抗筋のSSを行うことで,より効果の高い運動療法が実施出来ると考える。
著者
松村 博文 大貫 良夫 加藤 泰健 松本 亮三 丑野 毅 関 雄二 井口 欣也 橋本 裕子
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series D, Anthropology (ISSN:03853039)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-28, 1997
被引用文献数
2

Fourty seven human skeletons dating Formative Period (2,000 B. C. A. D 0) were recovered from the Kuntur Wasi, Loma Redonda, Huacaloma and Kolgitin sites in Cajamarca region, Peru. The artificial cranial deformities, which can be classiffied into the tabular erect type, were observed in nine skulls from these sites excepting the Kolgitin site. The dental caries was frequently found in the Kuntur Wasi people though less frequently than in the recent Peruvians. The facial morphology is not homogeneous, and the aristocratic features are found in some skulls from the Kuntur Wasi and Roma Ledonda sites. The sexual difference of estimated stature is great in the Kuntur Wasi and Huacaloma people. The squatting facets are present in all tali examined, suggesting that the inhabitants customarily sat in the squatting position or walked up and down rocky mountains.
著者
平藤 雅之 世一 秀雄 三木 悠吾 木浦 卓治 深津 時広 田中 慶 松本 恵子 星 典宏 根角 博久 澁谷 幸憲 伊藤 淳士 二宮 正士 Adinarayana J. Sudharsan D. 斉藤 保典 小林 一樹 鈴木 剛伸
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.60-70, 2013
被引用文献数
3

フィールドサーバは,野外における情報収集,灌水等の制御,センサ等新デバイスの実験を行うためのセンサネットワーク用プラットフォームである.そのためには多機能かつ十分な拡張性を備えると同時に,機械作業や栽培ステージに応じて手軽に移設でき作業者等の安全性にも配慮したオールインワン化及びワンユニット化が必要とされる.また,半導体技術の進歩やCPU等LSIの世代交代にあわせてハードウェア及びファームウェアの更新と機能向上を迅速に行う必要がある.ところが,大量生産ができない段階では低コスト化と高機能化を両立させることは困難であり,しかもそのような初期段階においては低コストで高機能な試用機がないとアプリケーション開発ができず市場が拡大しないというジレンマがある.これらの問題を解決するための制作手法としてオープンソース・ハードウェアを用いる方法を考案し,オープンソースのフィールドサーバ(Open-FS)を開発した.さらに,Open-FSを用いて測定したデータを低コストに収集・閲覧・共有するための方法として,既存のクラウドサービス(Twitter等)とHTML5で記述した閲覧用ソフトウェアからなる"センサクラウド・システム"を提案し,試作及びインドと日本における長期現地実験によってその有効性を評価した.<br>
著者
松本 好太 橋本 修 藤原 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.296, pp.33-38, 2004-09-07

本研究では,電子レンジのドア全周構造のシールド効果およびその性能向上を目的とした改善法について,並列FDTD法を用いることにより検討を行った.具体的には,まず,市販の電子レンジに使用されるドア全周構造を詳細にモデル化し,漏洩波に対するシールド効果について解析を行い,次にシールド性能の改善法として,チョーク構造の周期スリットに着目し,スリット幅および高さに対するシールド効果の変化について検討した.この結果,市販モデルにおいて実用上の技術基準を満たすシールド効果がドア上下左右において得られること,またスリットの寸法に対するシールド効果の変化を定量的に確認し,電子レンジドア構造のシールド性能向上に向けた基礎的な資料を提供することができた.
著者
新美 仁男 佐々木 望 松本 生 中村 陽子
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.626-629, 1976-06-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
5
被引用文献数
1

The incidence of antithyroid antibodies in normal children were studied by thyroglobulin and microsomal-coated red blood cell hemagglutination techniques. (Fuji-Zoki Co.) The sera of 785 normal children were tested by these antithyroid antibody tests.Of 785 normal children, the sera of 7 (0.89%) showed a positive reaction for thyroglobulin antibodies, and eleven (1.40%) showed a positive reaction for microsomal antibodies.The thyroglobulin and microsomal antibodies were not detected in males. In females the incidence of these antibodies was 2.34 %, and was progressively greater with age.
著者
綾田 穣 石川 哲也 奥村 明彦 大橋 知彦 松本 英司 佐藤 顕 堀田 直樹 福沢 嘉孝 各務 伸一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.10-15, 2006 (Released:2006-11-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

症例は53歳, 女性. 骨粗鬆症に対し, リセドロン酸ナトリウム (sodium risedronate hydrate : SRH) が投与され, その約6カ月後, 全身倦怠感が出現. 血液検査で肝胆道系酵素の著明な上昇を認めたため, 当科に入院となった. SRHによる薬物性肝障害を考え, DDW-J 2004ワークショップの薬物性肝障害診断基準案に基づいて診断を進めた結果, 病型は胆汁うっ滞型で, スコアは, (+6) : 「可能性が高い」と判定された. 肝生検では, 肝実質のび慢性のロゼット形成や胆汁栓, 軽度の門脈域の拡大などの所見が得られたため, 本剤による薬物性肝障害と診断した. 特徴的な組織像により肝生検が診断の一助となった, SRHによる薬物性肝障害の1例を経験したため, 文献的考察を加え報告する.
著者
松本 暁子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.99-104, 2004-04-10
被引用文献数
1

地上から400kmの宇宙空間に日本を含む世界15カ国が共同で建設を進めている国際宇宙ステーション: ISSがある。ISSは微少重力の宇宙空間に長期間滞在しながら未知の可能性に望む「宇宙研究所」として, 新薬や新しい素材などの開発を行う。そして, この実現のために国や人種を超えた取り組みが行われており, 宇宙飛行士は今も宇宙でISS建設を進めている。しかし, 特殊な宇宙環境下での滞在によって, 人間の身体は, 循環器系・骨代謝・筋肉系・血液免疫系の変化や放射線被曝などさまざまな宇宙医学生理学的影響を受けるため, 宇宙で活動するためには適切な栄養摂取が重要である。人間が宇宙空間に到達してから40年以上が経過しているが, その間に宇宙での栄養についても研究が進み, ISS長期滞在時の栄養摂取基準が定められている。現時点の宇宙食は米国かロシア製のみであるが, 今後は栄養学的に優れた日本食の特色を生かした宇宙日本食の導入によるISS計画への貢献が期待される。
著者
松本 洋俊 糸長 浩司 長坂 貞郎 大塚 肇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.19(第19回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.331-334, 2005 (Released:2007-12-28)

本研究はエコロジカルな視点から、生物資源を効率的に活用したアクアポニックスシステムの開発を目的とし、まず養殖水中での栄養塩負荷の除去を図るため、各種濾材と植物を組合わせたシステムを構築し水質評価を行った。その結果、植物による一定の負荷除去効果を示した。また、コイ養殖とクウシンサイ水耕を組合わせたアクアポニックスモデルを構築し、養殖と水耕による栄養塩収支の評価を行った結果、栄養塩が若干増加傾向を示したが比較的養殖水質は栄養塩が低濃度で安定していた。バイオマス生産評価では、コイは飼育環境の季節による低温化に伴い良好な成長を図ることができなかったが、植物については濾材の違いによる成長特性について基礎的知見を得た。
著者
松本 勉 大石 和臣 高橋 芳夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.799-809, 2008-07-15
被引用文献数
2

通常はコピーできないビデオをコピーするようにプレイヤを改造することを困難にする,ICカード電子マネーを打出の小槌に変えさせないようにするといった耐タンパー技術は,システム実装に絡むセキュリティ技術であり,その内容が非公表であることが多く実態を掴みづらい.しかし,よりセキュアなシステムの構築を目指す立場からは耐タンパー技術に関して体系的な視点を持つことが重要である.本稿ではパソコン用のセキュリティチップTPMや組込みシステムに対して公表された最近の攻撃事例や研究成果を手掛かりとして,耐タンパー技術の現状と課題を探る.
著者
松本 美鈴
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.105, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 塩麹により牛肉が軟化し,うま味成分が増加することは,三橋等により既に報告されている.本研究では,塩麹を塗布した牛もも肉の保存条件および加熱条件などを変えて,塩麹による肉の軟化効果を検討した.方法 <10℃保存>牛もも肉に肉重量の10%塩麹(株式会社河野源一商店)または塩水(食塩濃度12%)を塗布し,それぞれ10℃で1,3および24時間保存し,沸騰水中で肉の中心温度が80℃に達するまで加熱後,冷却し試料とした.<25℃保存>牛もも肉に塩麹,塩水またはpH5に調整した塩麹を塗布し,25℃で1時間保存し,沸騰水中または低温(80℃水中で)加熱後,冷却し試料とした.<測定項目>加熱後の重量保持率,レオメーター(山電)を用いたテクスチャー試験によるかたさ,歪率,凝集性などを測定した.結果 <10℃保存>塩麹添加によりいずれの試料もかたさ変化率が無添加に比べて有意に小さく,やわらかくなった.また,保存時間が長いほど軟化しやすい傾向がみられた.一方,塩水添加試料では物性値に有意差がみられなかった.<25℃保存>沸騰水中加熱試料では,テクスチャー測定値に有意差がみられなかった.しかし,低温加熱試料においては,pH5調整塩麹試料は無添加および塩麹より凝集性が小さく,肉が崩れやすくなった.以上の結果より,塩麹による牛もも肉の軟化には,保存温度は25℃より10℃が好ましく,低温加熱が有効であることが分かった.
著者
松本 茂章
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.203-218, 2005-12

研究(Note)80 年代から90 年代初めにかけて、全国の自治体は競うように文化会館や文化ホールを建設した。政府による内需拡大の要求やバブル経済にともなう好景気などを背景に、「ハコモノ行政」が展開された。しかし、これらの施設は、海外や東京でつくられた芸術文化を紹介することにとどまりがちで、地域の芸術文化を創造し広めるという役割は、きわめて弱かった。東京の芸術文化を「上意下達」のスタイルで地域に伝えていく配給的機能は果たしたものの、地域文化育成にどれほど役立ったのかという疑問は、すでに多くの先行研究が指摘してきたところである。 上記の反省に加えて、依然として続く東京の経済文化両面の一極集中に対する強い危機感から、いくつかの自治体は近年、創造型の文化施設を設ける試みを始めた。地域アイデンティティの形成、回復を目指すことにより地域活性化を図る動きである。そのひとつの事例である京都芸術センターに注目してみた。 京都芸術センターは、京都市が2004 年4月に中京区内に開設した文化施設である。地方自治法上の「公の施設」ながら、特色ある運営システムを採用しているところが興味深い。その活動ぶりや運営実態を詳述することで、21 世紀の自治体文化政策を考える一助になると考えた。 本稿では、まず筆者の問題意識を明確にしたうえで、次に京都芸術センターの5年にわたる活動状況を振り返り、運営システムを解明していく。最後に、課題を整理して総括し、新時代の自治体文化政策のありようを浮かび上がらせる。