著者
服部 優子 松田 智明 新田 洋司
出版者
日本作物学会関東支部
雑誌
日本作物学会関東支部会報 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.102-103, 2003

平成14年度は北関東の平野部において, 早生および中生品種を中心に精玄米の一部に白色不透明部を有する不完全登熟粒が多発し, 各地で一等米比率および品質の低下問題が生じた. とくに茨城県内では, 土浦市などを含む南部地域での被害が著しく, 北部地域と比較して一等米比率は著しく低下した. これらの要因としては, 高温登熟の影響が考えられているが, その詳細については不明な点が多い. そこで本研究では, 低品質化が目立った茨城県南部産の「コシヒカリ」における不完全登熟粒の胚乳構造を, 福島県産「コシヒカリ」とともに走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した.
著者
安田 みどり 松田 智佳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.107, 2007 (Released:2008-02-26)

目的 緑茶に含まれるカテキンは強い抗酸化活性を示し、様々な疾病の予防などに効果があることで知られている。しかしながら、茶の飲用は食事や薬からの鉄などの吸収を妨げるといわれている。これは、カテキンと金属イオンとが錯体を形成するためであると考えられている。本研究では、電気化学的手法を用いて、カテキンと金属イオンとの反応のメカニズムを解明することを目的とした。 方法 サイクリックボルタンメトリー(CV)および電気化学検出器(ECD、750mV)を装備したHPLCを用いて、カテキンの酸化電位および酸化ピーク面積値に与える金属イオン(Fe2+、Fe3+、Cu2+)の影響を調べた。カテキンは、緑茶に含まれる主要なもの((-)-エピカテキン(EC)、(-)-エピガロカテキン(EGC)、(-)-エピカテキンガレート(ECG)、(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG))を使用した。 結果 CVの結果から、金属イオンは、カテキンの酸化電位に影響を与えることが明らかになった。特に、pH7以上において、EGCGの酸化ピークはFe2+やCu2+の添加によってほとんど消滅した。また、HPLCの結果、ECは金属イオンの影響をほとんど受けなかったが、他のカテキン、特にEGCGは金属イオンの添加により著しい濃度の減少が認められた。これは、pH7以上で起こりやすく、金属イオンの濃度に依存することがわかった。以上のことにより、EC以外のカテキンは、酸化活性部位において金属イオンと錯体を形成するか、もしくは金属イオンによりカテキンが酸化分解されることが示唆された。
著者
大川 峻 松田 智明 新田 洋司
出版者
日本作物学会東北支部
雑誌
日本作物学会東北支部会報 (ISSN:09117067)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.127-128, 2007

これまでに急速凍結-真空凍結乾燥法によって可視化される炊飯米の微細骨格構造のうち、炊飯米の表面に伸展する「細繊維状構造」および内部に認められる「海綿状構造」の網目の発達程度が良食味米の構造的指標となること、また、炊飯に伴って良食味米では細胞壁やタンパク顆粒は分解されるが、低食味米では分解されずに残存することなどを指摘した。本報では、これらの構造的指標を用いて新しい水稲良食味米系統「北陸200号」の微細骨格構造を走査電子顕微鏡レベルで評価した。
著者
松田 智行 上岡 裕美子 伊藤 文香 鈴木 孝治 富岡 実穂 木下 由美子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.449-459, 2011
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】地震を想定した災害時要援護者(以下,要援護者)に対する避難支援の地域ケアシステムを構築することを目的に,移動に障害を有する要援護者の避難訓練を報告し,避難支援に対する理学療法士の必要性を提言する。また,避難訓練の事例集(以下,事例集)を作成し,事例集が地域の保健医療専門職にどのような点で有用であるのかを検討する。【方法】要援護者5名に対して,研究者らが独自に作成した調査票と実施手順をもとに避難訓練を実施した。さらに,茨城県内の市町村と保健所,訪問看護ステーションの149名に,5事例の事例集を配布し,郵送にて利用方法に関する質問紙調査を行った。【結果】5事例のうち,自力での避難が困難な2事例について詳細な報告を行う。2事例に対して,停電を考慮した避難方法を指導し,屋外への避難訓練が実施できた。質問紙調査は,22件(回答率14.9%)の回答があり,事例集の主な活用方法は,要援護者とその家族,専門職種への避難支援教育の教材であった。【結論】地域ケアシステム構築に向けて,避難を可能にするために地震発生前からの理学療法士の関与は重要である。さらに,事例集は,避難支援教育の教材として有用である可能性が示された。
著者
高橋 一典 松田 智明 新田 洋司
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.47-53, 2001-03-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
27
被引用文献数
4 4

炊飯に伴うデンプンの糊化についての基礎知見を得るため,1998年産コシヒカリ,きらら397およびタイ米(インド型長粒種,単一銘柄)を供試して,米粒中のデンプン粒の糊化過程を経時的な微細構造の変化として走査電子顕微鏡により詳細に追跡した.炊飯開始後10分(炊飯釜内中央部の温度45.0℃)でコシヒカリではアミ口プラスト包膜の表面から分解が開始された.炊飯開始後15分(51.3℃)には,炊飯開始前に長径で約3~4μmであったデンプン粒は約4.5~5μmに膨潤し,精白米の第1層目の胚乳細胞内のデンプン粒で,表面から繊維状の糊が伸展した.網目状の構造はデンプン粒の表面から内部に向かって形成が進行した.アミ口プラスト内のデンプン粒は互いに網目状構造で融合し,一体化して多孔質の糊となり不定形化した.炊飯開始後20分(98.5℃)には,コシヒカリの米粒の表層部では,きらら397やタイ米と比較して網目の拡大した微細骨格構造が形成された.アミ口プラスト単位で一体化した不定形の糊状構造は,炊飯開始後25分(98.5℃)には,さらに胚乳細胞を単位として一体化するのが認められた.炊飯に伴うデンプン粒の膨潤と網目状構造および不定型の糊状構造の形成は,米粒の表層部ほど早く始まり中央部では遅かった.網目の大きさは米粒の表層部で大型化し,中央部では小型であった.本観察からデンプン粒の糊化とは「緻密」な構造体であるデンプン粒が,その主成分であるアミロペクチンの分子内に氷分子を取り込み,膨潤し,分子密度の低下した構造体に変化することであると考えられた.
著者
松崎 良美 猿木 信裕 松田 智大
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.247-260, 2020-04-15 (Released:2020-05-08)
参考文献数
31

目的 2013年に「がん登録等の推進に関する法律」(以下,「がん登録推進法」)が成立し,2016年1月に施行され,医療機関においてのがんの診断・治療に際して届出が義務付けられた。都道府県で同一患者に関する複数の届出を処理し,がんの罹患数を高い精度で把握するためには,名寄せが必要なため,個人情報の収集が欠かせない。がん登録の遂行をめぐり,財政的基盤が不足していたことに加え,「がん登録推進法」の成立過程では,個人情報保護が主論点となったが,国民のがん登録に対する関心の持ち方にも変化がみられた可能性がある。新聞メディアにおいて,がん登録に触れた記事の本数の推移を把握し,その内容がどのように変化したか記述し,検討を行う。方法 がん登録の標準化や精度向上が進捗したと考えられる第3次対がん10か年総合戦略が開始された2004年から2013年に発刊された主要紙5紙と地方紙50紙を対象に,株式会社ELNETが取り扱う新聞記事クリッピングサービスを用いて1)「がん and 登録」2)「がん and 統計」3)「がん and 対策」4)「がん and 情報」のキーワードを見出しまたは本文に含む記事を抽出したところ,960件が該当した。そのうち「がん登録」の文言を含む記事441件を分析対象とし,2004年から2008年に掲載された「前期」記事,2009年から2013年の「後期」に分け,新聞記事本文の計量テキスト分析を実施した。ソフトはKH Coderを用いた。結果 「がん登録」の文言を含む記事が最も多くみられたのは2006年で68件あり,次いで2011年の60件であった。とくに,がん登録2006年に多くみられた記事の多くは,法律制定にむけた動きの他に,がん登録データを用いた疫学調査の結果の公開と関連して,2011年については東日本大震災で発生した原発事故と関連してみられた。結論 「がん登録」の文言を含む記事数増加の背景には,がん登録を用いたデータ分析結果の公表,国民の不安や健康意識を高めるようなイベントの発生があった。例えば,地域や施設別生存率の提示や,がん発症が懸念されるイベントが挙げられる。これらのイベント発生ががん登録の重要性の認識に繋がったとも考えられる。
著者
戸田 すま子 渡部 節子 松田 智子 松田 好雄 原口 俊蔵 池田 耕三 奥田 研爾
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.231-235, 2006-12-20 (Released:2010-07-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

二酸化塩素 (ClO2) は安全性の高い消毒薬として古くから用いられているが, 各種微生物に対する殺菌効果を検討した系統的で詳細なデータはこれまであまり発表されていない. そこで今回我々は, 二酸化塩素 (クリーンメディカル®) を用い, その殺菌および静菌的効果の検討を行った. その結果, 二酸化塩素 (600ppm) を用いた場合, Salmonella enteritidisは5分間, Pseudomonas aeruginosa, Esckerichia coliは10分間, Serratia marcescensは15分間, Staphylococcus aureus, Candida albicansは30分間, methicillin-resistant Stphylococcus aureusは60分間の作用で, 菌数が検出限界以下になることが明らかになった. 二酸化塩素は安全性が高く, 一般的な消毒薬の一つである次亜塩素酸のような刺激臭も無いため, 病院内・介護施設等における環境・機器の消毒薬として大変有望であると考えられ, 今後医療の現場への更なる応用が期待される.
著者
松田 智弘
出版者
日本道教学会
雑誌
東方宗教 (ISSN:04957180)
巻号頁・発行日
no.76, pp.p24-42, 1990-11
著者
原 弘道 松田 智明 月橋 輝男 松田 照男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.485-497, 1995-12-15
参考文献数
26
被引用文献数
2 4

クリ果実における渋皮組織の発達とタンニンの蓄積過程ならびに渋皮剥皮の難易について形態学的な検討を行った.<BR>1.ニホングリ果実の発育初期における渋皮のタンニンは渋皮細胞の液胞に蓄積されており, 液胞内に顆粒が分散しているもの, 液胞膜に沿って集合しているもの, 液胞内全体の電子密度が高くなっているものおよび液胞がタンニンで埋めつくされているものなどいくつかのタイプが見られたが, 収穫期の渋皮細胞ではほとんどの細胞が多量のタンニンで埋め尽くされていた. タンニンが高密度に蓄積された細胞は渋皮の中央, 外層部分に多く, 子葉に近い細胞のタンニン蓄積は少なかった.<BR>2.渋皮の剥皮には渋皮組織と子葉組織の接着程度によっていくつかの様相がみられたが, 品種に固有の様相は認められなかった.<BR>3.収穫期において渋皮の剥皮が困難であった果実の渋皮は, タンニンの蓄積が多く, 子葉に接する細胞の電子密度が高く, 細胞壁の崩壊が認められた. また, 渋皮と子葉の間には低電子密度のマトリクスと電子密度の高い網目状構造が特徴的に認められた.<BR>4.電子密度の高い部分は子葉表皮細胞壁にも浸潤していたが, これらの構造は, 従来推定されていた渋皮と子葉を接着するタンニン様物質によるものと考えられた.<BR>5.一方, チュウゴクグリの果実は渋皮の剥皮が容易であり, 渋皮が薄く, タンニンの蓄積密度が低く, 子葉に接する細胞の退化は遅かった.<BR>6.これらの観察結果は, 渋皮剥皮の難易が渋皮組織細胞に蓄積されたタンニンの多少だけでなく, 中間層および子葉に接する細胞の退化とも密接に関係していることを示唆している.
著者
松田 智子
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.99-110, 2001-03-01

本稿の目的は,性別役割分業を基盤とする高齢夫婦の問題,特に高齢男性の配偶者への依存性に焦点をあて,その依存性を規定している要因を明らかにすることである。ロジスティック回帰分析の結果,配偶者への依存度が高い群と低い群を分けるのは,学歴,家事遂行度,夫婦愛意識の3変数であった。すなわち,高学歴の男性,家事遂行度の低い男性,夫婦愛意識が強い男性で配偶者に対する依存度が高くなっていた。これらの分析結果から,高齢男性の中でも特に高学歴層に配偶者への依存度が強いこと,高齢男性の配偶者に対する依存性を軽減するためには,男性の家事分担の促進,夫婦愛にとらわれない意識が重要であることが明らかとなった。
著者
松田 智子
出版者
奈良学園大学人間教育学部
雑誌
人間教育 = Online Journal of Humanistic Education (ISSN:2433779X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.149-156, 2018-07

学校園では道徳教育の生命尊重の項目の目標達成のために、絵本を教材として活用する機会もあるが、死をテーマとした絵本はほとんど取り上げられることはない。これは日本の無宗教な教育背景や、子どもに死は無縁であるという教育観によるところが大きい。本来、生と死は、表裏一体であり、子どもの日常生活の中に死が見えなくなっている現代社会だからこそ、死を見つめた生命尊重の教育が必要である。死を考えることは、つまり生を考えることであり、道徳の生命尊重の教育の目標達成に結び付く。本稿は、谷川俊太郎の絵本「死んでくれた」を教材として、子どもへの読み聞かせによる保育と低学年に授業を行った実践報告の分析である。実践中の子どもの反応や授業後の振り返りや感想から、道徳の生命尊重の教材として、「死」を扱った絵本の効果は高いと考えられる。
著者
北村 八祥 松田 智子 原 正之 矢野 竹男
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.114-119, 2015

厚生労働省は健康の維持・増進,生活習慣病予防を目的に,各栄養素の摂取量について基準を策定している(厚生労働省,2010)。多量ミネラルとしては,カルシウム(Ca),リン(P),マグネシウム(Mg),カリウム(K)およびナトリウム(Na)の5要素が取り上げられており,農産物はNaを除く4要素の重要な供給源となっている(厚生労働省,2010)。農産物に含まれるミネラル含量は,日本食品標準成分表2010(文部科学省,2010)に品目毎の代表値が示されているが,利用部位による違いは考慮されていない。今後,農産物の加工・業務用需要が増加する中,用途に合わせた部位の活用が進むことが考えられ,部位別のミネラル含量を明らかにすることには意義がある。特に健康増進を目的としたメニューや農産加工品の開発への利用価値は非常に高い。そこで,摂取量が最も多いコメ(Oryza sativa L. ),代表的な加工・業務用野菜であるキャベツ(Brassica oleracea L. var. capitata),タマネギ(Allium cepa L. )およびニンジン(Daucus carota L. )について,部位別のミネラル含量を調査し,ミネラルに着目した農産物提供の可能性を検討した。
著者
波多野 義郎 松田 智香子
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 (ISSN:13455451)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.239-244, 2003-03-25

The purpose of this study is to clarify the relationship between actual participation in recreational activities and sexual behaviors among the students at a welfare oriented university. For this purpose, a Questionnaire survey on the respective areas was developed and administered to 74 male and female students who took a recreation course at the Kyushu University of Health and Welfare in the year 2002. From the results, certain tendencies pertaining to the relationship between recreational activity participation and sexual behaviors among the current students were pointed out.
著者
山口 和政 村澤 寛泰 中谷 晶子 松澤 京子 松田 智美 巽 義美 巽 壮生 巽 英恵
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.3, pp.175-183, 2007-09-01

我々は,嗅球摘出ラットを用いてヒトのうつ病状態に陥る生活環境の再現を試みた.暗室にラットを飼育することで昼夜逆転のヒトの生活を,また,身動きできないスペースの個室飼育で自由を奪うことでヒトのリズム運動抑制を再現し,セロトニン(5-HT)欠乏脳になったことを中脳縫線核(5-HT細胞体)のトリプトファン水酸化酵素および5-HTの免疫染色で確認後,行動評価を行った.嗅球を摘出後14日以上,暗所で個別飼育したラットは,暗所で24時間の脳波を測定すると,摘出前と比較して,嗅球摘出前にみられるような睡眠覚醒周期(短時間に覚醒・睡眠を交互に繰り返す)は消失し,覚醒または睡眠の持続時間延長といった周期混乱(ヒトで寝起きの悪さに類似)が認められた.また,この睡眠覚醒周期の混乱はSNRIのmilnacipran(10 mg/kg)の7日反復経口投与で回復が認められた.また,このラットをマウスに遭遇させると,逃避性および攻撃性を示す個体(ヒトでの自閉症様行動に類似)とに分かれた.さらに,ケージから取り出したときパニック様症状(ヒトでのちょっとしたストレスで自らを混乱に陥れてしまうパニック行動に類似)を示し,植木らが報告した評価項目に従って判定すると,偽手術ラットと比較して高い情動過多を示した.また,ラットの中には泣き声を発せずにジャンプし,マウスの尾を傷つけたりするような激しい行動(ヒトの動物虐待などの過激な行動に類似)を示す個体もみられた.マウスに対して逃避性および攻撃性を示す個体の生化学的および病理組織学的所見では,前脳皮質のノルエピネフリン(NE)および5-HT含量の減少および中脳または橋の背側縫線核トリプトファン水酸化酵素(TPH)免疫染色および5-HT免疫染色で陽性細胞数の減少(5-HT細胞体の機能低下)が認められた.また,マウスに対して逃避性を示す個体では,青斑核チロシン水酸化酵素(TH)免疫染色で陽性細胞数の減少(NE細胞体の機能低下)が,攻撃性を示す個体では,青斑核TH免疫染色で陽性細胞数の増加(NE細胞体の機能亢進)がそれぞれ認められた.NPY(抗うつ薬によるラットのムリサイド抑制と密接な関連を有するペプチド神経)免疫染色では,前頭皮質,帯状回皮質,運動野皮質および扁桃体でNPY免疫染色陽性細胞の増加が,また,前交連,側座核および視床下部では,NPY免疫染色陽性線維の増加が認められた.さらに,このラットの疼痛反応の評点は抗うつ薬のtrazodone(10および30 mg/kg)の反復経口投与開始後1日の投与後に,その他の項目の評点は四環系抗うつ薬のmaprotiline(10および30 mg/kg),SNRIのmilnacipran(3および10 mg/kg),SSRIのfluvoxamine(10および30 mg/kg)の反復経口投与開始後5および7日の投与前および投与後に抑制が認められた.<br>