著者
呉林 秀崇 木村 俊久 小畑 真介 佐藤 嘉紀 竹内 一雄 山口 明夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1285-1288, 2013-12-31 (Released:2014-07-02)
参考文献数
11

症例は25歳の男性で,原因不明の急性腹症にて当院救急外来に紹介された。当院での問診にて,エアーブロワーによる経肛門的な高圧空気注入後からの腹部症状と判明した。来院時の腹部理学所見では腹部は全体に膨満し,腹膜刺激症状を認めた。腹部X線検査およびCT検査では遊離ガス像および小腸から全大腸におよぶ腸管拡張を認めた。また下部消化管内視鏡検査において,S状結腸粘膜は断裂し,数条の縦走潰瘍様所見を認めた。消化管穿孔および汎発性腹膜炎の診断で,緊急開腹手術を施行した。手術所見では,直腸S状部,S状結腸,脾弯部,肝弯部に漿膜損傷を認め,特にS状結腸部には腸管壁全層に及ぶ壊死所見を認めた。拡大左半結腸切除術およびdiverting ileostomyを施行し,術後39日目に退院した。経肛門的高圧空気注入による結腸損傷は極めてまれであるため,若干の文献的考察を加えて報告する。
著者
林 采成
出版者
Business History Society of Japan
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1_3-1_28, 2011 (Released:2014-09-10)

The purpose of this paper is to analyze the wartime transportation control of Japanese National Railways (JNR) and make it clear that the management of JNR reached the limit, as the lack of JNR's management resources and U.S. Air Force's raid became intense.Since the Sino-Japanese War broke out, JNR had to cope with the sharply increased transportation demand caused by the industrial development as well as the military operation. In addition to the demand increase, JNR was always requested to supervise and support other companies, especially colonial railways as not only a transportation enterprise but also a regulatory agency to transportation companies. However, JNR was not a passive existence but the one to secure human and physical resources aggressively to some degree in case of negotiations with other ministries as one of the government ministries. As far as the railroad operation was possible, the profit seeking was a subsidiary matter. The persistent cooperation of JNR with Japanese Government and Army was shown by maximum transportation capacity even when JNR had insufficient management resources. Especially, after the breakout of WWII, Japanese wartime economic management could be difficult without the land transportation of JNR which substituted for marine transportation. Nonetheless, JNR resisted Japanese Army's intention to seize the railroad management right, which led to the dissatisfaction of the Army until the end of war.As a result, an efficient railroad operation system was accomplished according to the evolution of wartime economy and military situation. But, it reached the limit because of the lack of JNR's management resources and U.S. Air Force's raid.
著者
小林 貴江 田上 和憲 中田 如音
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.133-140, 2022-06-20 (Released:2022-06-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【背景】食物アレルギー(food allergy:FA)ガイドラインの整備が進み,さらにアレルゲン早期摂取の取り組みによりFA児の環境は変化しており,保育園では安全かつ正確なFA対応が必要である.保育園でのFA対応は多岐にわたり,地域の専門医がFA対応の実態を把握し,現場と共に改善できる点を探ることが重要である.【目的】FA児の在園状況,誤食事故の発生状況等に関し実態調査を行う.【方法】春日井市内の全保育園の代表者に対し,2017年度から3年間FA研修会を行うにあたり,開催1か月前にアンケートを配布・回収した.集計した結果は研修会内で報告した.【結果】全保育園から回答を得られ,3年間でFA児は,低年齢で減少していた.誤食事故件数は研修会開始前2013~2017年の平均20.6件/年から,開始後の2018年は7件/年,2019年は8件/年に減少し,誤食事故はおやつの時間に多かった.【結語】春日井市全保育園に対し,FA研修会を取り入れることにより,誤食事故を減らすことが可能であった.
著者
嵐 洋子 倉林 秀男 田川 恭識
出版者
日本語教育方法研究会
雑誌
日本語教育方法研究会誌 (ISSN:18813968)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.34-35, 2019 (Released:2019-07-02)
参考文献数
4

In introductory or beginning Japanese classes overseas, teaching is often conducted in the learners' first languages. In Japan, teaching Japanese in English as an intermediary language has become more popular. However, little research on using an intermediary language in Japanese classrooms has been done. In this study, video data on beginning Japanese classes where teachers used English as an intermediary language was analyzed to consider approaches to using English more efficiently.
著者
小林 大祐
出版者
東洋学園大学
雑誌
東洋学園大学紀要 = Bulletin of Toyo Gakuen University (ISSN:09196110)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.63-78, 2021-02-15

本稿はドイツの住民投票制度を対象として、地方自治体の意思決定にどのような影響を与えているかについて検討するものである。まず、ドイツの住民投票制度について、日本の制度と対比しながら説明する。そのうえで、ドイツの住民投票制度を分析した先行研究を繙き、拒否権、地方自治体の政治構造、発議や住民投票の数ならびに要件が鍵となる要素であることが抽出される。これらに基づいて、具体的なドイツの住民発議と住民投票のデータを分析していく。その結果、住民発議の対象の広さが数に大きく作用すること、地方自治体の人口規模が数に大きく作用すること、また地方自治体の政治構造が強く作用しており、地方自治体における政治アクターが競争的であれば、住民発議の数が多くなることが明らかになった。
著者
林 承煥 吉田 浩
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.91-106, 2020 (Released:2020-09-30)
参考文献数
16

本研究では、幸福度に関するリサーチの結果(5,188サンプル)を用いて、まず世帯構成による幸福度を測り、将来人口予測に基づいて幸福度(0~10)の変化を推計してみた。その結果、単独世帯、夫婦のみの世帯、夫婦と子供の世帯、ひとり親と子供の世帯、その他の中で、単独世帯の幸福度が一番低いことがわかった。また将来の世帯構成の変動に基づいて、幸福度の変化推移を予測してみると、2015年の1世帯当たりの平均幸福度5.981ポイントは、2040年には5.952ポイントまで下がることが分かった。0.029ポイントが下落する。回帰分析の結果、世帯所得の100万円の増加が幸福度の0.038ポイントを上昇させる効果があるために、下落した幸福度を補うためには、1世帯当たり763,157円の世帯所得を増加させる必要がある。2040年の世帯数を考えると、約25兆6千億円の所得増加が必要であり、これを幸福度の減少による損失と言える。
著者
河野 正司 吉田 恵一 小林 博 三浦 宏之
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.764-769, 1987-06-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
7 3

Many TMJ patients who have occlusal interferences often complain of pains in the sternocleidomastoid muscle. The pain occurs mainly in the insertion of the muscle (SCM-I) rather than in the middle of the muscle (SCM-M). In order to investigate a causative mechanism of pain in the sternocleidomastoid muscle in relation to occlusion, the activities of sternocleidomastoid and masticatory muscles were studied by means of EMG during functions in relation to the occlusal contact on six normal subjects. EMG activities of temporal, masseter, SCM-I and SCM-M were recorded by surface and needle electrodes.EMG activity was recorded from SCM-I in accordance with the activity of the masticatory muscles during tapping, clenching, and mastication. On the other hand little activity was registered from SCM-M. The amplitude of the EMG of SCM-I increased as the occlusal force increased. During chewing the sternocleidomastoid muscle was functioning more actively on the working side than on the non-working side.
著者
今西 由華 林 陽子 金森 康和 犬飼 隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.261, pp.31-36, 2006-09-19
参考文献数
6

愛知県と岐阜県南部の方言には、「大根→ダェーコ」、「古い→フルィー」、「鯉→コェ」、などの母音「アイ、ウイ、オイ」が連続する位置で融合して変母音となる特徴があり、よく知られていたが、現在は急速に消滅しつつある。それらを良好な録音条件で収録し保存し、またその特徴を分析することは、方言という文化遺産を継承するのに重要である。しかし、具体的に音声から特徴を抽出し、詳細に分析した先行研究は見当たらない。そこで本研究では、世代による使用の変化も含め、名古屋弁の変母音の音声特徴を抽出した。よって得られた結果は名古屋弁を具体的に分析したという研究の先駆けとして、利用できるものである。
著者
小山 善哉 石飛 進吾 久松 徳子 松下 新子 山口 大樹 平田 あき子 山見 由美子 大井 久美子 林 善彦
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.243-252, 2012-12-31 (Released:2020-06-07)
参考文献数
15

【目的】 高齢者や頸部可動域に制限がある患者でも安全に実施しやすく,実際の食物嚥下動作に近似した口腔期・咽頭期の嚥下リハビリテーション手技として,われわれは栄養カテーテルチューブを用いた「蕎麦啜り様訓練」を考案し,表面筋電図を用い,嚥下リハビリとしての有効性を評価した.【方法】健常成人16 名(20~25 歳,平均年齢22.2 歳)を被験者とし,舌骨上筋群,舌骨下筋群,胸鎖乳突筋に双極電極を貼付し,① 空嚥下,② 開閉口,③ 頸部左右回旋,④ メンデルゾーン手技,⑤ シャキア訓練,⑥ 12 フレンチ(Fr)「蕎麦啜り様」チューブ吸い,⑦ 12Fr チューブ一気吸い,⑧ 8Fr「蕎麦啜り様」チューブ吸い,⑨ 8Fr チューブ一気吸いの各手技を実施させ,表面筋電位変化を記録した.得られた原波形は,平滑化時定数100 ms で二乗平均平方根(RMS)に整流化し,各被験者から得られた%MVC の平均値を,各筋群について,一元配置分散分析し,有意差が認められた場合はボンフェローニの補正による多重比較を行った.【結果】「蕎麦啜り様」チューブ吸いは,舌骨上筋群ではシャキア訓練に匹敵する高い%MVC を示し,舌骨下筋群ではメンデルゾーン手技より有意に大きく,シャキア訓練の値の2/3 に近い高い平均%MVC を示した.一方,胸鎖乳突筋では,空嚥下やメンデルゾーン手技と有意差なく,きわめて低い%MVC を示した. 【結論】チューブ吸い「蕎麦啜り様訓練」は,舌骨上下筋群に高い筋活動を認め,胸鎖乳突筋は低い筋活動しか認めず,頸椎症や高齢者など頸部運動に制限のある患者に対しても応用可能な,安全で簡便な口腔期および咽頭期の嚥下リハビリ手技として評価できる.
著者
坂本 信介 畔柳 聴 右京 里那 小林 郁雄 家入 誠二
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.99-105, 2019 (Released:2019-11-13)
参考文献数
17

牧場への野生動物の侵入をカメラトラップ法で調べる際に,カメラの設置位置や設置時期によって結果が大きく変わるかを調べるため,同一牧場内の様々な施設の内外に 1 年にわたり自動撮影カメラを 9 台設置し,飼養形態や利用方式が異なる施設ごとにまた季節ごとに野生哺乳類の出現状況を比較した.哺乳類の撮影頻度は施設間で大きく異なっており,相対的に乳牛舎内,肥育牛舎外,繁殖牛舎外では,食肉類の撮影頻度が高い傾向にあった.また,肥育牛舎,繁殖牛舎,倉庫では,動物の撮影頻度のうちわけが施設の内外で大きく異なっていた.イエネズミとノネズミのどちらもが施設外で撮影されたため,イエネズミの施設内外の移動と施設外での両者の直接的・間接的接触が懸念された.また各動物の出現頻度には季節性が見られた.以上の結果から,牧場内でカメラトラップ法を用いる際には,撮影地点や設置時期の選定が調査結果に影響を及ぼすと考えられる.
著者
竹下 博之 加藤 博和 林 良嗣
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第44回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.78, 2009 (Released:2009-10-30)

本研究は、鉄軌道線廃止後の代替交通網整備の検討方法について示唆を得ることを目的としている。2006年10月に廃止となった桃花台新交通桃花台線(愛知県小牧市)を対象として、その廃線前後の沿線における交通利便性変化を、土地利用を考慮した評価が可能なポテンシャル型アクセシビリティ指標を用いて評価した。その結果、代替公共交通網により名古屋市方面への交通利便性は維持されているものの、小牧市内へのそれは大きく低下していることが明らかとなった。この結果と、独自に実施した廃止に伴う住民の交通行動変化に関するアンケート調査結果とを比較したところ、おおむね合致していることがわかった。このことから、鉄軌道廃止後の公共交通網検討のための評価指標として、アクセシビリティ指標を用いることが可能であると考えられる。
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.A-AI30_1-24, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
61
被引用文献数
3

We propose bunsetsu-based layouts to improve the efficiency of eye movements in reading Japanese text. When reading text, people tend to direct their gaze toward the center of a word. This is called the optimal viewing position. The optimal viewing position results in the shortest gaze durations and fewest re-fixations. In the case of Japanese text, the eyes tend to fixate on each characteristic Japanese linguistic unit (bunsetsu). An electronic Japanese text reader that facilitates accurate control of eye movements to bunsetsu segments could increase the reading rateand result in more efficient eye movements. In this study, we develop new techniques to decrease inefficient eye movements when reading Japanese text. In Experiment I, we investigate the effectiveness of the layout with bunsetsu-based line breaking. A bunsetsubased linefeed layout breaks a line between bunsetsu segments, i.e., splitting a bunsetsu segment is prohibited. The reading speed for the bunsetsu-based linefeed layout was faster compared to the conventional text layout with line lengths of 5–40 characters per line. The improvements in reading speed were likely due to the optimization of eye movements near the edge of a line. In the case of 5–11 characters per line, the improvements in reading speed were likely due to an increase in the number of lines that can be recognized by a single fixation. These results indicate that the bunsetsu-based linefeed layout is an effective technique to improve reading efficiency. In Experiment II, we develop a new micro-vibration text reader with bunsetsu-based segmentation. The new reader vibrates each bunsetsu segment in a different phase to enhance boundary information for eye guidance. The reading speed for the micro-vibration text was approximately 7%–12% faster compared to the stable text with line lengths of approximately 11–29 characters per line. The improvements in reading speed were likely due to a reduction in re-fixations within a bunsetsu segment and an increase in the number of lines that can be recognized by a single fixation without horizontal saccades. Moreover, 76% of the participants did not experience illegibility or incongruousness with the micro-vibration text reader. These results indicate that micro-vibration is an effective technique to improve the efficiency of reading text with line lengths of 11–29 characters per line without an increase in cognitive load or a decrease in comprehension. In Experiment III, we develop a new stepwise incremental indent layout with bunsetsu-based segmentation and a vertical scrolling operation. The reading speed obtained by the proposed layout of 4.4 characters per line was comparable to the fixed-line length layout of 29 characters per line. This improvement is primarily achieved by a reduction in the number of fixations. Moreover, 85% of the participants did not experience illegibility or incongruousness with the stepwise incremental indent layout reading. These results indicate that this layout is an effective technique to improve the efficiency of reading text with line lengths of 5 characters per line without an increase in cognitive load or a decrease in comprehension. These experimental results indicate that the Japanese electronic text reader with these proposed techniques can improve the reading speed of text with line lengths of 5–40 characters per line without an increase in cognitive load or decrease in comprehension.

15 0 0 0 OA 台湾語発音心得

著者
林久三 編
出版者
盛文館
巻号頁・発行日
1903
著者
中村 和夫 小林 奈保子 谷本 守正
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.444-447, 2014-09-15 (Released:2014-10-31)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

食用きのこ12株のフスマ固体培養を行い,その抽出液の凝乳活性を測定した結果,ヤマブシタケ(Hericium erinaceum) NBRC 100328に高い凝乳活性を見い出した.さらにMAFF7株のヤマブシタケについて凝乳活性を測定したところ,4株について凝乳活性が存在した.これら5株について低温殺菌牛乳を用いたカードの作製を行った結果,5株全てにおいてカードの作製が可能であった.全凝乳活性およびカード収量が高かった,Hericium erinaceum MAFF 435060,MAFF 430234,NBRC 100328をチーズ作製に適した株として選抜した.
著者
江崎 治夫 安田 克樹 武市 宜雄 平岡 敬生 伊藤 利夫 藤倉 敏夫 矢川 寛一 林 雄三 西田 俊博 石丸 寅之助
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.1127-1137, 1983-09-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 5

広島での原爆被爆者からの甲状腺癌の発生を知るため研究を行った.対象は統計処理を容易ならしめるよう,性別,被爆時年齢別,被爆線量別にあらかじめ定められた固定集団である放射線影響研究所の寿命調査拡大対象を用い, 1958年から1979年までの22年間に診断,或いは剖検により発見された甲状腺癌を調べ,被曝放射線量との関係を明らかにした. 75,493人の中から125人の臨床的甲状腺癌が発生した.男15人,女110人で,人口10万人対粗年間発生率は男2.7, 女12.4で男女共,線量の増加と共にリスクが増加する.若年女性に特に,この傾向が著るしい.期待数に対する観察数の比(O/E)をみると,男女別でも,男女合計でも,線量の増加と共に甲状腺癌が増加する.線型反応についての検定を行うと,女性及び男女合計では線量効果がみとめられた.又年齢が若い程線量効果が明らかである. 50rad以上被爆した群の対照群に対する相対性リスクは4.2で,男女差はないが男性は数が少い為,女性にのみ有意である.年齢別では20歳末満のリスクが7.9と高く,統計的に有意である.統計的に有意な回帰係数が求められた20歳末満の女性の年間1 rad当りのリスクの増加は100万人対約3.4である. 同期間に剖検された4,425人中155人に潜伏癌がみられた. 50rad以上の群の相対的リスクは1.9で有意に高く, O/E比は男1.6, 女1.8でほぼ等しいが,女子にのみ有意であった.