著者
瀬尾 和大 小林 啓美
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.23-36, 1980-03-25 (Released:2010-03-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1

It has been frequently said that seismograms obtained in Tokyo contain rather long-period components in themselves. Authors pointed out the importance to make clear extensive and deep underground structure of the Tokyo Metropolitan area, based on the experience on simultaneous observation of earthquake ground motions under the different kinds of geological conditions.In this paper, results on the seismic prospectings in the southwestern part of the Tokyo Metropolitan area were presented. Outline of the interface between sedimentary layers and the uppermost layer of the earth's crust was shown in the form of “time-term”, along the line stations from Yumenoshima, Tokyo to Enoshima, Kanagawa. The length of this line was almost 50 kilometers long.From the distribution of those time-terms, it was made clear that the interface mentioned above changes its depth more remarkably and rapidly, in comparison with those which obtained in other parts of the Tokyo Metropolitan area by many researchers. Most of all, Enoshima and its vicinities were confirmed to be situated on the boundary which distinguishes inner sedimentary zone of the Kanto Plain from outer outcrop zone of firm substratum.From these results, the mechanism of formation and propagation concerning rather long-period earthquake ground motions can be expected to be elucidated.
著者
小林 映子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.961, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
4

妊婦への解熱鎮痛剤の使用について,NSAIDsは流産との関連性を示唆する報告や,胎児動脈管早期閉鎖との関連性によって妊娠後期は禁忌とされ,注意喚起されている.一方でアセトアミノフェンは,より安全性が高いとされ使用経験は多く,欧米では妊婦の半数以上に使用経験があるといわれている.妊娠後期の使用における胎児動脈管への影響との因果関係は認められていないとされているが,ヒトでの研究から胎盤を通過し長期間胎児の血液循環に残るとされる.近年,注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)との関連を示唆する多数の前向きコホート研究の結果が示され,欧米で大きな話題となった.さらにメタ解析によっても胎児曝露との有意な関連性を示した.妊婦の医薬品使用による胎児へのリスク評価については,倫理的視点から介入試験ができないことにより,観察研究の結果に情報が限定されるため正確な評価が難しい.ADHDやASDとの関連性に関するこれまでの研究も,ほとんどが母親の自己申告情報に基づくものであった.そこで今回,子宮内での胎児のアセトアミノフェン曝露による影響を明らかにする目的で,出生時の臍帯血漿中濃度と児の疾患診断との関連性について前向きコホート研究を実施した.特に,本研究は以前の研究で指摘されてきたエビデンスとして用いる上での制限や方法論的懸念に対応すべく研究デザインが設定された.その結果,ADHDおよびASDのリスクに有意な正の相関が確認され,用量反応性も認められたので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Dathe K. et al., BJOG, 126, 1560-1567(2019).2) Ystrom E. et al., Pediatrics, 140, e20163840(2017).3) Masarwa R. et al., Am. J. Epidemiol, 187, 1817-1827(2018).4) Ji Y. et al., JAMA Psychiatry, 77, 180-189(2020).
著者
阪本 州弘 若林 一郎 吉本 佐雅子 増井 秀久 勝野 眞吾
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.635-638, 1991-06-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

柔道や空手など古武道では冬期に川原で寒稽古を行い筋力の増強に努めている。運動と寒冷刺激がテストステロンおよび他のホルモンレベルにいかに影響するかを19才の男子,32名について検討した。自転車エルゴメータによる運動負荷(90watt)によりテストステロン(TS)濃度は20.8%上昇したが,黄体形成ホルモン(LH)はほとんど上昇しなかった。ノルアドレナリン(NA)のレベルは140.0%有意に上昇した。一方,冷水負荷ではTSは10.0%減少し,LHは22.1%上昇し,NAは23.8%減少した。個人で負荷によるホルモンレベルの変化量の関連性をみると運動負荷ではLHとTSとはr=0.40,またTSとNAとはr=0.48の有意の相関がある。冷水負荷ではTSとLHとではr=0.40,TSとNAとではr=0.43であった。これらの結果は,運動はLHとNAの血清濃度の上昇によりTS濃度を上昇させる。しかし冷水負荷ではこの傾向が見出せなかった。
著者
若林 秀隆
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.40-46, 2022-01-18 (Released:2022-04-13)
参考文献数
36
被引用文献数
1

運動耐容能は,低栄養,貧血,肥満,サルコペニア,サルコペニア肥満でも低下する.サルコペニアで運動耐容能が低下する一因として,呼吸筋サルコペニアとサルコペニア性呼吸障害が考えられる.運動耐容能の改善には,リハビリテーション治療が重要である.しかし,食事摂取量が不十分な場合には,積極的な持久性トレーニングなどのリハビリテーション治療を行うと,運動耐容能はむしろ低下する.そのため,栄養状態に問題のある患者の運動耐容能を最大限改善させるためには,リハビリテーション治療単独では不十分で,栄養療法の併用が必要である.運動耐容能低下の原因に見合ったリハビリテーション栄養を実践してほしい.
著者
林 岳彦
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.289-299, 2009 (Released:2017-04-20)
参考文献数
59
被引用文献数
4

性的対立とは、繁殖にかかわる事象を巡るオスメス間での利害の対立を指す。性的対立は繁殖形質における軍拡競争の原因となり、その結果として集団間の急激な繁殖隔離(種分化)を引き起こす可能性が示唆されている。本総説では、まず性的対立説についての概説を行い、次いで性選択理論としての性的対立説の特徴について古典的性選択理論(ランナウェイ説、優良遺伝子説)との比較をしながら整理を行う。さらに、性的対立説が引き起こす進化的帰結について理論的な観点から整理し、性的対立説と種分化の関係について議論する。
著者
石垣 賢和 竹林 崇 前田 尚賜 髙橋 佑弥
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.689-703, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
18

要旨:エビデンスレベルの高い介入研究を実施するためには,対照群を設定する必要があるが倫理的に容易ではない.本研究では,一般臨床のデータを後方視的に抽出することにより,214名の脳卒中後上肢麻痺における回復期の傾向スコア算出のためのデータプールを構築した.データの使用例として,過去に著者らが実施した,対照群を用いない前後比較試験のデータを介入群とした傾向スコアマッチングを行った結果についても併せて報告する.本研究のデータを多くの研究者や臨床家が対照群として使用することにより,臨床研究の質向上に貢献できると考える.
著者
若林 昌子 杉光 一成
出版者
日本テスト学会
雑誌
日本テスト学会誌 (ISSN:18809618)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.19-35, 2016 (Released:2019-05-25)
参考文献数
21

試験問題公開の是非の判断については,特に公的試験においては様々な考えがあり,試験に関わる立場や試験に対する価値観の違いを考慮して議論されることはあまりなかった.本研究では,わが国の公的試験の例として,情報公開制度において試験問題を対象とした複数の事例について調査し,俯瞰して考察することにより,試験問題公開の判断基準を得ることを目的とした.その結果,次の5つの観点が得られた. 1) 過去の試験問題の公開を透明性確保の必要条件とするかどうか,(2) 将来の試験のために,過去の試験問題を再利用するかどうか,(3) 過去の試験問題を活用した試験対策を許容するかどうか,(4) 新しい試験問題を開発するための労力増加を受容するかどうか,(5) 過去の試験問題の情報を管理しているかどうか.これらの観点においては,試験に関わる立場や試験に対する価値観の違いによって判断が異なっていることから,試験問題公開の判断基準になると考えられた.
著者
里内 美津子 若林 茂 大隈 一裕 藤原 啓子 松岡 瑛
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.31-37, 1993 (Released:2010-04-30)
参考文献数
18
被引用文献数
18 26 25

難消化性デキストリン (PF) の便通に及ぼす影響について検討する目的で, PF摂取後の糞便重量, 糞便水分量, 排便状態, 便性状, 胃腸症状等について調べた。1) PF10~60g摂取後の便性状は大半がバナナ状~半練状であり, 下痢発症のED50値は2.4g/kg体重と推定された。また, 臨床上問題となるような胃腸症状は認められなかった。2) PF35g/日, 5日の連続摂取で, 糞便重量, 排便回数の増加が認められたが, 糞便水分含有率は変化がみられなかった。3) PF5~10g/日, 5日の連続摂取で, 排便状態の改善が認められた。
著者
小林 由佳 井上 彰臣 津野 香奈美 櫻谷 あすか 大塚 泰正 江口 尚 渡辺 和広
出版者
公益財団法人 産業医学振興財団
雑誌
産業医学レビュー (ISSN:13436805)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.225-250, 2021 (Released:2021-01-01)
被引用文献数
1

多様化する産業保健上のニーズに応える能力として、産業保健専門職のリーダーシップが注目されている。本稿では産業保健専門職がリーダーシップをさらに向上させ、活動を展開していくための指針となる考え方を提案することを目的とし、リーダーシップ研究の文献レビューから産業保健専門職のリーダーシップにふさわしい概念を検討し、活動事例による例示を行なった。文献レビューでは、これまでの変遷から、近年提唱された「権限によらないリーダーシップ」に着目し、適応型および共有型リーダーシップの産業保健専門職への適用の有用性を掘り下げた。さらに事例検討から、両リーダーシップは産業保健専門職が日常的に発揮できるものであり、課題解決に有効となり得ることが示された。
著者
井上 紳 牧野 睦月 太田 秀一 酒井 哲郎 斉藤 司 小林 洋一 小川 玄洋 松山 高明
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.268-274, 2010 (Released:2011-02-03)
参考文献数
14
被引用文献数
1

心房細動の発生機序は,期外収縮の連発が心房受攻性を刺激することで誘発された機能的リエントリーであると考えられている.先行する期外収縮連発の機序としては肺静脈壁左房筋袖細胞からの撃発活動が有力視されており,一方の機能的リエントリーの基質としては左房後壁周囲の心筋構造の不均一性が想定されている.そのため,それぞれが高周波通電治療の対象になっている.肺静脈壁左房筋袖は4本の肺静脈で囲まれた左房後壁を構成する心房筋と発生学的に同一とされているものの,近年の遺伝子学的検討から本来の心筋組織とは異なる肺原基の中胚葉起源説が提唱され,潜在的自動能の保持や短い不応期など,心房のほかの部分とは電気生理学的性質が異なることが示唆されている.長い肺静脈筋袖は心筋配列が複雑だが,顕微鏡的観察では肺静脈末梢側で徐々に心房筋袖細胞が小型化し,その先端では洞結節細胞に類似したものがみられる.機能的リエントリーの基質が存在する左房後壁周囲に関しては,心内膜面の肉眼的観察では櫛状筋が目立つ右房と異なり全体が白く平滑で,僧帽弁前庭部と後壁や天蓋部との境界が不明瞭である.それに対し,心外膜面の肉眼的観察では肺静脈開口部周囲を冠静脈洞筋束やMarshall筋束,Bachmann束,一次および二次中隔が取り巻き,きわめて複雑な構造を示すことがわかる.特に冠静脈洞筋束は冠静脈洞内径の2~3倍の広さで分布しており,機能的リエントリーの発生に関与すると思われる.加齢とともに間質線維化や脂肪浸潤により組織不均一性は亢進するが,左房周囲の心房筋線維化には心房の発育・分化に伴うapoptosisも関与していることが予想される.現在の非薬理学的不整脈治療は,肺静脈心房筋袖や左房周囲の大循環系静脈筋袖の付着部をアブレーション・隔離することが主流であり,組織多様性の軽減がその本質と考えられる.
著者
藤林 真美 神谷 智康 高垣 欣也 森谷 敏夫
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.129-133, 2008-06-10
被引用文献数
3 21

現代人の多忙な生活の中で,簡便で即効性のある栄養補助食品が求められている。本研究では,GABAを30 mg含有したカプセルの経口摂取によるリラクセーション効果を,自律神経活動の観点から評価することを試みた。12名の健康な若年男性(21.7±0.8歳)を対象に,GABAとプラセボカプセルを摂取させ,摂取前(安静時),摂取30分および60分後の心電図を胸部CM<SUB>5</SUB> 誘導より測定した。自律神経活動は,心拍のゆらぎ(心電図R-R間隔)をパワースペクトル解析し,非観血的に交感神経活動と副交感神経活動を弁別定量化した。その結果,GABA摂取前と比較して,総自律神経活動は摂取30分後 (<I>p</I><0.01) および 60分後 (<I>p</I><0.05)に,副交感神経活動も摂取30分後 (<I>p</I><0.05)に顕著な上昇を示した。これらの結果から,30 mgのGABA経口摂取は,自律神経系に作用しリラクセーション効果を有する可能性が示唆された。
著者
髙橋 徹也 近江 晃樹 豊島 拓 齋藤 博樹 桐林 伸幸 金子 一善 菅原 重生 久保田 功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.734-740, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
8

患者は30歳代女性. 神経性食思不振症に伴うるい痩のため, 当院精神科に栄養管理目的に入院中であった. 入院後, 血圧の低下と肺野のうっ血を認めたため当科紹介となった. BNP値が3045pg/mLと上昇し, 低リン血症をはじめとした高度な電解質異常を認めた. 心電図では陰性T波が出現し, 心エコーではたこつぼ心筋症様の左室壁運動異常を認めた. うっ血性心不全として少量のカテコラミンおよび利尿薬を投与し, 致死性不整脈に注意しながら全身管理に努めた. また, 電解質を補正しながら緩徐に投与カロリーの増量を行った. その後, 電解質は補正され, 左室壁運動および心不全の改善を認めた. 低栄養状態にある患者の精神的ストレスや低血糖・疼痛による身体的ストレス, 低リン血症などの電解質異常が, たこつぼ心筋症とRefeeding症候群に伴う心不全の発症に関与している可能性が示唆された.
著者
小林 健二
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = National Institure of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.35, pp.55-80, 2009-02-27

劇中に登場する独武者の素性を解明する作業を通して、能《大江山》が酒呑童子諸本の中でも香取本「大江山絵詞」に拠って作られていることを確認し、その独武者が能《土蜘蛛》にも登場することから、能の世界で頼光物として連作されたことを考証した。さらに、「大江山絵訶」絵巻は室町将軍のもとで作成され、その周辺に伺候していた観世座の者によって《大江山》が作劇された可能性について考察した。By clarifying Hitorimusha's identity who appears in the Noh “Oeyama”, this paper proves that this Noh was created by Katoribon of “Oeyama-ekotoba” among various kinds of Shutendoji-monogatari's manuscripts. Since this Hitorimusha also appears in the Noh “Tsuchigumo”, I examine that these Nohs were written as series of Raiko-mono in the world of Noh. Then I consider that the picture scroll of “Oeyama-ekotoba” was made under the patronage of Ashikaga shogun, and there is a possibility that a certain person of Kanze school who was around Shogun composed the Noh “Oeyama”.
著者
岡嶋 恒 舘林 啓二
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.79-86, 2003-11-30

剣道と薙刀以外の運動競技においては、打突時に打突する部位(メン、コテ、ドウなど)を呼称することはない。剣道の有効打突の条件は「充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする」であり、打突部位を呼称しなければならないという項目は見当たらない。現在の「打突時における打突部位呼称」が、いつ頃から行われるようになったのか、その経緯についての知見を得ることを目的とした。流派が発生し、特徴ある修行方法や技術を作り上げていく過程において打突・斬突時に発声が行なわれており、そのことが打突部位呼称への発展に大きく関わっていく。江戸時代初期には、発声が打突・斬突を効果的にする働きがある要素として認識されていたことが推察できる。江戸時代中期には防具の改良が進み、「面」「籠手」と打突部の名称が確認できるが、各流派で打突時の発声や打突部位が統一されていないために打突部位の呼称が浸透しなかったことが推察できる。剣術の技が面、龍手、胴、突きに分かれ、その部位を打突する技の研究が進んでいく江戸時代後期が打突部位呼称の萌芽期と考えられる。直心陰流の榊原健吉は「オメーン、オコテー」と打突部位呼称を行なっていた。明治44年、剣術が中学校の正科教材に加えられることになり、文部省は武術講習会を催した。ここで剣術の指導の内容・方法の統一が図られ、打突時の発声方法や打突部位呼称が示された。打突部位呼称は、簡明適切で自然な発声方法として採用され、剣道指導を効率よく行う手段として定着していった。以後これに沿った形で剣道指導が展開されることになる。昭和27年、「全日本剣道連盟試合規則」が制定され、有効打突の条件に「打突の三要素」が組み込まれ、現在においては有効打突の必要条件として確立されている。
著者
河野 吉久 松村 秀幸 小林 卓也
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.206-219, 1994-07-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
18
被引用文献数
3

人工酸性雨の長期暴露実験を行うため, ミスト型降雨装置に代わる半自動走行式の雨滴落下型人工降雨装置を開発・製作した。本装置は, 直径約1mmの雨滴を発生し, 有効降雨面に対して1時間当たり2.5mmの降雨強度で運転が可能である。また, 降雨量の分布や繰り返し精度は10%以下であった。この降雨装置を用いて, 1991年から1993年の3年間に合計46種類の樹木を対象に人工酸性雨の暴露実験を行った。用いた人工酸性雨の組成は, 硫酸, 硝酸, 塩酸イオンの当量濃度比が5: 2: 3となるように, これら3種の酸を脱イオン水に混合して人工酸性雨原液を調製した。人工酸性雨原液を, 脱イオン水で容量希釈して, 人工酸性雨 (SAR) とした。SARの設定pHは, 5.6 (対照区), 4.0, 3.5, 2.5, および2.0であった。なお, SARは, 1週間に20mm (2.5mm×8hr) を3回の割合で暴露した。SARのpHが2.0の場合には, 供試したすべての樹種の葉に壊死斑点などの可視害が発現した。11種類の針葉樹の中では落葉性のカラマツだけがpH2.5以下で落葉したことから, 針葉樹の中ではカラマツが最も感受性であると考えられた。しかし, pH3.0以上のSARを3あるいは4ケ月間暴露しても針葉樹には可視害の発現は観察されなかった。SARのpHが3.0では, 常緑広葉樹14種のうち7種, 落葉広葉樹21種のうち14種に可視害が発現した。また, 落葉広葉樹の7種は, pH2.0の暴露終了時点でほとんど落葉し, 3種は枯死した。しかし, 常緑広葉樹の場合には, pH2.0でも全葉が落葉したり枯死した樹種はなかった。サクラ属のソメイヨシノやアンズは, pH3.0のSAR暴露によって, 早期落葉や壊死斑点部分が穿孔状態となった。しかし, 供試した46種には, pH4.0のSARを3あるいは4ケ月間暴露しても可視害の発現は観察されなかった。これらの可視害発現状況を指標にした場合, 広葉樹よりも針葉樹の方が酸性雨に対して相対的に耐性であった。また, 広葉樹の中では, 常緑広葉樹よりも落葉広葉樹の方が相対的に感受性であると考えられた。