著者
林 琢磨
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

子宮平滑筋腫(子宮筋腫)は、50歳以上の成人女性に罹患率70~80%で発症する良性腫瘍で、女性に発生する腫瘍で最も頻度の高い腫瘍のうちの一つである。従来はその大きさを基準に手術が行われてきたが、女性の晩婚化・高齢初産婦の増加などライフスタイルの変化により、40 歳代女性の妊孕性温存希望が強くなっている。故に、今日の子宮筋腫の治療方針ではこの社会的背景を考慮して、子宮を温存する方法が要求される。しかし、子宮筋腫に類似した悪性疾患である子宮肉腫がまれながら存在するため、多くの子宮筋腫患者の中で子宮温存の是非を決定する際、その除外診断が重要となる。残念ながら、現行の鑑別法は、手術摘出組織の外科病理診断であり客観性に欠けている。さらに、これまでに各国において臨床試験が行われているが、既存の抗癌剤では、子宮肉腫に対する顕著な延命効果が認められていない。そこで、子宮肉腫に対する新規治療法・診断法の確立に向け、子宮肉腫の生物学的特性を理解することが重要である。林らの研究グループは、蛋白分解酵素複合体プロテアソームの構成因子であるLMP2の欠損マウスにおいて、子宮肉腫が自然発症することを見出した(利根川 進 教授:米国マサチューセッツ工科大学の研究協力)。そこで、私達は、病理ファイルより選別された各種子宮間葉系腫瘍の生検組織でのLMP2の発現状況について免疫組織化学染色により検討し、特異的に子宮肉腫でLMP2の発現が著しく減弱することを報告した。提携の医療機関との連携の基、私達は、LMP2に着目したDNA MicroArrayの遺伝子プロファイリングを行い、子宮間葉系腫瘍の診断マーカーの候補分子の探索を行っている。本研究より、林らの研究グループは、カベオリン、LMP2、Cyclin Eなどの候補因子に対する子宮間葉系腫瘍の診断マーカーとしての可能性を検討した。
著者
平田 貴臣 呉本 尭 大林 正直 間普 真吾 小林 邦和
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.136, no.3, pp.348-356, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Since 1970s, linear models such as autoregressive (AR), moving average (MA), autoregressive integrated moving average (ARIMA), etc. have been popular for time series data analyze and prediction. Meanwhile, artificial neural networks (ANNs), inspired by connectionism bio-informatics, have been showing their powerful abilities of function approximation, pattern recognition, dimensionality reduction, and so on since 1980s. Recently, deep belief nets (DBNs) which use multiple restricted Boltzmann machines (RBMs) and multi-layered perceptron (MLP) are proposed as time series predictors. In this study, a hybrid prediction method using DBNs and ARIMA is proposed. The effectiveness of the proposed method was confirmed by the experiments using CATS benchmark data and chaotic time series data.
著者
竹井 誠 林 晃史
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.252-257, 1968
被引用文献数
4

ハエならびにナメクジ害防除に木酢液を使用し, 次の結果をえた.1)木酢液の成分中, 中性区, 塩基性区, フェノール区はハエに忌避されなかつた.前者の混合は, 単独の場合より強い効果を示した.この混合物を水産乾製品の製造時に使用したところ, 日乾中のハエ付着が少なくなり, 製品の品質には何ら害がなかつた.2)木酢液はナメクジに対し速効性の強い接触毒を示した.効果は有機酸区, カルボニル区に強く, フェノール区, 中性区, 塩基性区にもあつた.殺ナメクジ効果は, 木酢液のもつ強酸性が主因ではない.3)木酢液はナメクジに対し強い忌避効果を示した.
著者
小林 憲正
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.94-99, 2011-06-25
被引用文献数
1

土星最大の衛星のタイタンは,窒素・メタンなどからなる濃厚な大気を有し,紫外線,土星磁気圏に捕捉された電子,宇宙線などのエネルギーにより多様な有機物ともやの生成が観測されている.カッシーニ=ホイヘンス探査により,タイタン表面に液体エタンなどからなる湖沼の存在が明らかとなり,また地下にアンモニア水が存在することが示唆された.また,種々の地上模擬実験により,模擬タイタン大気から炭化水素,ニトリル等の有機物や,高分子態有機物「ソーリン」が生成すること,ソーリンの加水分解によりアミノ酸の生成が報告されている.これらの有機物と,液体メタン・エタンもしくはアンモニア水との相互作用により生命の誕生の可能性も議論されている.次期の土星系探査におけるタイタンの有機物・生命探査の可能性について議論する.
著者
三浦 美和 林田 りか 高尾 秀明 小野 孝二 松田 尚樹
出版者
Japanese Society of Radiation Safety Management
雑誌
日本放射線安全管理学会誌 (ISSN:13471503)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.46-53, 2013

From October to December 2010, just before the radiological accident at the Tokyo Electric Power Company Fukushima Daiichi nuclear power plant, 71 radiation professionals belonging to the radiation facilities in Japan were asked what they consider as a "safe" dose of radiation for themselves, their spouse, parents, children, brothers and friends. Although the "safe" dose varied widely from less than 1 mSv/y to higher than 100 mSv/y, the average dose was 35.6 mSv/y that was around the middle point between the exposure dose limits for annual average (20 mSv/y) and for any single year (50 mSv/y). Similar results were obtained from another surveys for the members of Japan Radioisotope Association (36.9 mSv/y) and for the Oita Prefectural Hospital (36.8 mSv/y). Among the family members and friends, the minimum average "safe" dose was 8.5 mSv/y for children, to whom 50% of responders claimed the "safe" dose less than 1 mSv. Gender, age and specialty of the responder also affected the "safe" dose. These findings suggest that the perception of radiation risk varies widely and that the legal exposure dose limit derived from the regulatory science may act as an anchor of safety even in radiation professionals. The different level of risk perception for different target groups in radiation professionals appears similar to those in non-professional whole population. The gap between these characteristics of real radiation professionals and the generally accepted picture of radiation professionals might take a part in a state of confusion after the radiological accident.
著者
小林 雅美 砂崎 博美 吉田 美由紀 侭田 ゆかり 伊藤 まゆみ
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.23-27, 2002-03
被引用文献数
1

皮膚科における電子メールを媒体とした相談内容の分析とセルフケア支援の展望について検討することを目的として, 1997年7月〜2000年1月までにアクセスのあった質問メール404件(のべ290名)について, 質問者の特性, 全疾患・代表疾患の相談内容を分析した。1.質問者は20歳代40%, 30歳代21%と若年者が多く, 質問者と相談対象の間柄は本人が75%であった。居住地域は国内外に及んだ。2.疾患では掻痒性疾患が最多で, 相談部位は顔面が多かった。病名記載ありが約7割, 受診経験ありが約6割を占めた。主な相談内容は, 治療法の検索(88件), 詳しい疾患の説明を希望(59件), 治療法の正当性(53件)についてであった。3.アトピー性皮膚炎では, 治療法の検索(21件), 薬の情報を希望(17件), 腫瘍では, 詳しい疾患の説明を希望(13件), 治療法の検索(10件), 毛包炎では, 治療法の検索(10件), 日常生活指導を希望(6件)が多かった。以上の結果から皮膚科外来におけるニーズの多様化が明らかになり, 電子メールを媒体としたセルフケア支援の展望が示唆された。
著者
林 倫子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.53-67, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
90
被引用文献数
2

宇治川電気株式会社(宇治電)による宇治川水力発電事業第一期工事では,初期の設計変更により水槽と水圧鉄管が平等院の宇治川対岸にあたる仏徳山(隣の朝日山含む,宮山とも表記される)の山腹に設けられることとなり,景勝地宇治の風致毀損が問題となったものの,本多静六による「風致復旧設計」により解決を見た.本研究では,同工事における風致対策の検討過程を明らかにした.その結果,宇治の風致対策として,本多案とは異なる方針や具体的手法が宇治電や地元保勝会より提案されていたこと,また大森鍾一京都府知事の意向が強く反映されて風致対策が決定されていたことが明らかとなった.
著者
小林 克己
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.838-842, 2009-08

学生のための手計算とSAS JMPによる生物統計学へのいざない。前臨床試験および一般生物統計に関する統計解析Q&A。質問189:毒性試験でWilliamsの検定を用いたいと思っていますが、Dunnettの検定の方が良いのりでしょうか?回答:Williamsの検定は、毒性試験のように用量依存性を示す場合に応用できると自信は述べています。閉手順を利用しています。これは高用量に有意差がなければ全ての用量群に有意差がないとします。従って、被験物質の影響が良くでている場合は高用量**、中用量*、低用量というアスターリスクの表示となります。用量依存性を考慮したWilliamsの検定は、毒性試験のみに使用することと述べています。
著者
松倉 規 小阪 真二 國澤 進 澁谷 祐一 岡林 孝弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.933-937, 2006-11-15 (Released:2008-11-04)
参考文献数
12

著明な好中球減少を伴う急性骨髄性白血病の治療前精査で胸部異常影を認め,手術にて肺非定型抗酸菌症と診断された症例を報告する.症例は55歳,男性.急性骨髄性白血病で血液内科入院中に左上肺野の腫瘤影を指摘された.気管支鏡検査では確定診断は得られなかった.画像上は肺癌や肺結核,肺真菌症などの感染症が疑われた.術前血液検査で白血球数1460/μl,好中球数226/μlと好中球減少が著明であった.白血病治療を早期に開始する必要があり手術を行った.術中針吸引にて肺非定型抗酸菌症と診断され左上区切除術を行った.術後G-CSFは使用せず,抗生物質はパニペネムと硫酸アミカシンの2剤を投与した.術後肺炎や創部感染などの合併症なく良好に経過した.
著者
渡邊 浩 平林 民雄
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

本研究では(1)二次元ゲル電気泳動法による群体間の質的な違いの検索、(2)イタボヤ二種における群体特異性の記載、(3)拒絶反応の組織・微細構造学的観察、(4)ホヤ被嚢の組織・微細構造学的観察についてそれぞれ以下の成果を得た。(1)についてはクローン株の間で易動度の異なる種内変異と判断されるタンパクを数種見つけることができたが、群体特異性とそのタンパク群との関連性は見いだせなかった。(2)最も進化した有性生殖(胎性)を行うイタボヤ二種(Botrylloides violceus,B.fuscus)はこれまで知られていなかった新しいタイプの群体特異性を示すことが明らかになった。また、本種では自己・非自己認織の場が被嚢(特に被嚢細胞)に限定されていることが示唆された。(3)拒絶反応は本質的には血球の1種であるmorula cellが被嚢内に浸潤し、これが崩壊して含有物を放出することと、被嚢内に壊死した組織と群体とを仕切るnew wallが形成されることであるらしい。(4)イタボヤ類の被嚢は特異な構造を持ったcuticle層が最外層を覆っているが、同様な構造は近縁の単体ホヤにも見られるため、この構造は群体特異性に直接は関与しないと思われる。被嚢中には種によって一〜三種の被嚢細胞が観察される。予報的な知見ではあるが、特にvacuolated tunic cellは被嚢内における自己・非自己認織と深くかかわっている可能性がある。本研究によって、イタボヤ類における群体特異性の進化や拒絶反応の詳細について深い議論が行えるようになってきたが、「認織」のステップについてはまだ不明確な点も多い。しかし(2)については自己・非自己認織の場について、(4)では認織担当細胞について議論してゆく端緒が得られてきている。今後(3)(4)の研究を発展させてゆくことによって、更に認織機構の実体に近づいていくことが期待される。
著者
藤田 修 平石 久美子 藤埜 三千代 杉信 義人 竹内 正保 楢林 勇 長谷川 秀夫
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.1709-1715, 1994-10-01
被引用文献数
2

1)MRI用経口造影剤として具備しなければならない条件は第一にT_1強調画像, T_2強調画像双方に対し適正な信号強度の造影効果を有し, しかもその効果が安定して得られる事, 第二に異なる静磁場強度のMR装置に対して適正な造影効果が得られる事, 第三に経口毒性がなく安全で飲みやすい事などが揚げられるが, B・Jは本研究の範囲内においてこれらの条件をすべて満たしていた.2)T_1強調画像で理想的な陽性造影効果を示し, T_2強調画像で濃度の選択によっては, 陽性造影効果から陰性造影効果までの巾広い造影効果が得られる事が確認された.3)B・Jは天然果汁を用いているため美味しく, 香りもあり飲みやすく, 食品を用いたこれまでにない全く新しいタイプの造影剤として有用であると思われた.
著者
西田 幸次 平林 哲雄 田中 健太郎 森田 秀幸 松葉 豪 金谷 利治
出版者
社団法人 繊維学会
雑誌
繊維学会誌 (ISSN:00379875)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.297-301, 2015-10-10 (Released:2015-10-10)
被引用文献数
4

Methylcellulose attains the water‐solubility by reducing the strong hydrogen‐bonding. The reduction of the hydrogen bonding is achieved by partially substituting hydrophobic methoxy group for hydroxy group in cellulose. However, the substitution gives double‐bladed property to the aqueous methylcellulose, namely, excessive substitution makes again methylcellulose insoluble in water. Therefore, the water‐solubility of methylcellulose is strongly affected by the degree of substitution and moreover the distribution of the substituents. In this study, however, for a commercially available methylcellulose we have modified the cloud point by the addition of various organic salts. Sodium styrene sulfonate (NaSS) showed a strong salting‐in effect, whereas the polymeric NaSS, i.e., sodium polystyrene sulfonate (NaPSS), showed oppositely a salting‐out effect.
著者
林 真二 脇坂 聿雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.59-68, 1956
被引用文献数
3

In the present paper, the results of the experi-ments on the relation between oxidation-reduction potentials, Fe<sup>..</sup> and H<sub>2</sub>5 contents in soils, and the submersion tolerance or excess-moisture injury of the fruit-tree roots are reported with special reference to fig, peach, pear, apple, persimmon and grape. The results are summarized as follows.<br> 1. The growth of fruit-tree shoots were stopped by excess-moisture or water-lodging in the soils having following values of Eh<sub>6</sub><br> Fig 360_??_370m. v.<br> Peach 330_??_350m. v.<br> Pear and Apple 260_??_280m. v.<br> Persimmon 200m. v.<br> Grape 170_??_180m. v.<br> Shoot growths of pear, apple, persimmon and grape were inhibited gradually from the neigh-bourhood of ca. 300m. v.<br> 2. Fe<sup>..</sup>-formation in soils increased as the oxi-dation-reduction potentials failed, and the amount of Fe<sup>..</sup> extracted by HCl (pH 3) solution was ca. 20mg at 300m. v., ca. 30mg at 200m. v. and 60_??_70mg at 100m. v., per 100g. dry soil. There-fore, the root system of fig or peach was impeded mainly by oxygen-deficiency before Fe<sup>..</sup> was formed abundantly in soil. On the other hand, the impediment of root system in the case of pear or apple was derived from a large amount of Fe<sup>..</sup> formed by remarkable reduction in soils, and moreover, when approximately 30 mg Fe<sup>..</sup><br>was formed in soils on persimmon or grape.<br> 3. When the soils were water-lodged, the higher organic matter content in soil, the more rapid Eh falling and more the amounts of Fe<sup>..</sup> and HsS formed. Accordingly, the more high organic matter content in soil, the more remarkable the injury of root system of fruittree caused by excess-moisture.<br> 4. Fig and peach were susceptible, pear was middle and grape and persimmon were resistant. Parallelism between resistance of root system to Fe<sup>..</sup> and H<sub>2</sub>S, and submersion tolerance of root was found. And it was suggested that the differ-ence of resistance to excess-moisture injury was caused by the difference of oxidation power of root towards the exterior.
著者
山崎 鉄也 高 云燕 韓 愛鴻 林 静容 村田 靖次郎 小松 紘一
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.324-324, 2004

C60を側鎖に有するポリチオフェンの前駆体として、ドナー性を強めたターチオフェン部分と、メチル基またはシアノ基を骨格上にもつアクセプター部位となるフラーレンが、エチニル基あるいはヘプチニル基で連結した化合物を合成した。これら4種類のターチオフェン-C60連結体は、ターチオフェン由来の非可逆な酸化波とC60部分の三段階の可逆な還元波を示した。特にシアノ付加体は、その電子求引効果によりC60とほぼ同程度の高い電子親和力をもつことが判った。これらを3価の鉄酸化剤を用いて化学的に酸化したところ、赤紫色の固体が得られ、MALDI-TOF MS分析により10量体までのオリゴマーが生成していることが明らかとなった。こうして生成したオリゴチオフェンの電気化学的性質などについても報告する予定である。