- 著者
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菅波 盛雄
斉藤 仁
廣瀬 伸良
中村 充
林 弘典
増地 克之
- 出版者
- 日本武道学会
- 雑誌
- 武道学研究 (ISSN:02879700)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.1, pp.1-12, 2005-07-31 (Released:2012-11-27)
- 参考文献数
- 20
IJFは2001年までは「判定方式」,2002年からは「ゴールデンスコア方式」を採用している。本研究は,2000年から2003年までの4年間に国際柔道連盟が主催した4大会を対象として,試合終了時に両試合者のスコアが同一であった試合の分析を試みた。2000年世界Jrナブール大会と2001年世界選手権ミュンヘン大会,全1,356試合の中で「判定」によって勝敗が決したのは73試合(5,4%)であった。2001年世界Jr済州島大会と2003年世界選手権大阪大会,全1,285試合の中で「GS」によって勝敗が決したのは42試合(3.3%)であり減少がみられた。「判定」によって勝敗が決した73試合を施技ランクB,Cおよび組み手主導権の3項目で比較した結果,審判員の判定が3対0の時にプラスポイントが確認された選手が勝ちとなったのは73,8%であった。一方,2対1の時はプラスポイントでの勝ちが41.9%と減少がみられたことから,全員一致の判定の困難さが窺える。同様の手法で「GS」に入る前の試合分析から,「GS」への移行が妥当と判断されたのは11試合(26.2%)であり,残りの31試合(73.8%)は項目比較によって優劣に差がみられた。「GS」導入によって試合時間は「判定方式」に比べて長くなるが,「判定」に対する「GS」の試合時間比は4分の試合で1.43倍増に対して,5分では1.28倍と減少が認められた。「GS方式」の導入によって,試合終了時に同一スコアとなる試合が激減した。また,実質上の試合時間を抑制する傾向が窺え,延長時間の問題も許容範囲であると言える。「GS」による試合は,罰則よりもポイント取得によって勝敗が決する方向にあり,勝負判定の客観化を推進するためには有効な改正であった。