著者
田中 尚 藤森 裕二 貝戸 清之 小林 潔司 安野 貴人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.329-341, 2010

浄水場施設のアセットマネジメントにおいて,コンクリート版に対する維持管理が重要な課題となっている.短・中期間を対象とした中性化速度式では,中性化深さが経過年数の平方根に比例するという仮定(以下,「ルート<i>t</i>則」と略す)が採用されている.しかし,アセットマネジメントの対象となる長期間に及ぶ中性化過程に関しては十分な知見が蓄積されていない.本研究では,浄水場施設のコンクリート構造物を対象に,長期にわたって蓄積された中性化深さの測定データに基づいて,長期的な中性化過程を解析するための加速劣化ハザードモデルを提案する.さらに,ルート<i>t</i>則に関する統計的仮説検定の結果,少なくとも対象とした長期間のデータに関してルート<i>t</i>則は棄却され,現実の中性化過程はルート<i>t</i>則より,加速して進行することが判明した.
著者
鈴木 一良 塚林 功
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育学会年会物理教育研究大会予稿集
巻号頁・発行日
no.22, pp.114-115, 2005-08-06

「理科嫌い」を克服しようと多くの試みがなされている.工学部進学者であっても「理科嫌い」は多い.本学で,この数年,基礎物理の履修者,合格者が激減している.この激減傾向は本学だけのものではないであろう.この原因を学生の学力不足などの問題ととらえてしまえば,問題は現代社会の子育て・教育全般に拡散してしまう.確かに,学力不足は問題に違いないが,学力不足が生ずる原因は「理科嫌い」にあるのではないだろうか.というのは,「理科嫌い」の学生には,「量」,あるいは「量」と「量」の関係に対する極めて基本的な認識に欠陥があるように思われるからである.児童・生徒・学生が,驚き,感動し,自ら試し,測定し,データをプロットし,楽しめる素朴な実験セットが提案されている.実験は真空バズーカ砲,空気の重さの測定,自分の呼気で自分をリフトアップするなど一組として行う.本実験は,小中高どの段階で行っても,物理量を体験させるという意味で有効と思われる.
著者
Rufus M. CLARKE 小林 繁
出版者
International Society of Histology and Cytology
雑誌
Archivum histologicum japonicum (ISSN:00040681)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.133-150, 1975 (Released:2009-02-20)
参考文献数
11
被引用文献数
4 7

ラットの空腸を分離 切断し, その先端は縫合され, 後端は腹壁に開口する袋を手術的に作製した. 次いで この袋の先端近くより, 量と成分の知られている種々の試験液を注入し, 粘膜の細胞学的変化を光線顕微鏡と電子顕微鏡を使って経時的に研究した.ポリエチレングリコール4000 (PEG) の等張液 (16.8%) を注入したものでは, 腸絨毛の上端部の腸細胞はすみやかに損傷された. しかし杯細胞と基底果粒細胞には変化が認められなかった. 等張PEG注入後6-72時間後に採取された標本では, 腸絨毛の上端に杯細胞と基底果粒細胞よりなる帽子状の細胞塊が形成されていた. 1% PEGと5.1%ブドウ糖の混合液を注入したものでは, 注入液が直接注ぐ袋の先端部の粘膜には変化がみられないが, 袋の中間部と後部では, 等張PEGを注入したときと同様の著明な変化が認められた. 蒸溜水の注入も, 腸細胞を損傷したが, このさいの粘膜の変化はPEG注入によるものとは 明らかに異っていた. 等張ブドウ糖液の注入では 粘膜の形態はまったく正常であった. PEG注入による腸粘膜の損傷は, PEG注入を止めてのち, 等張ブドウ糖液を6時間注入することによって正常に回復した.以上の結果が, 腸絨毛を被う上皮細胞の絶えざる更新の問題との関連において考察された.
著者
大山 ゆりあ 相澤 章仁 小林 達明
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.97-102, 2012-08-31
被引用文献数
1

都市域の小・中規模緑地を含む「地区スケール」における鳥類群集の種組成の構造的特徴を明らかにすることを目的とし,千葉県松戸市を対象として鳥類調査を行った。各地区における β 多様性の高低および群集の入れ子構造の有無から調査地区は β 多様性が低く入れ子構造がある 1 地区,β 多様性が低く入れ子構造がない 3 地区,β 多様性が高く入れ子構造がある 2 地区,β 多様性が高く入れ子構造がない 2 地区に分類された。nMDS 法を用いた各調査地点の群集構造と環境要因の分析から,地区の鳥類種組成構造が地形や土地利用の多様性などの景観要素と関連していることが示唆された。
著者
林 陵平 苅山 靖 吉田 拓矢 図子 浩二
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.15101, (Released:2016-08-19)
参考文献数
26

The purpose of this study was to identify the ground reaction force and joint kinetics in the lower extremity during the catch phase of the clean exercise through comparison with the pull phase. Eleven male track and field athletes performed the power clean from the floor with loads of 30%, 60%, and 90% of 1RM (One Repetition Maximum). Kinetic data were collected from data recorded using a Vicon motion system (250 Hz) and force platforms (1,000 Hz). The results of the analyses were as follows:  1) In the catch phase, force development was similar to that of the pull phase because the peak ground reaction force was not significant during the two phases.  2) The joint kinetics in the ankle and knee joints were larger during the catch phase than during the pull phase.  3) During the power clean, force development was achieved mainly by concentric muscle contraction during the pull phase and by eccentric muscle contraction during the catch phase.  4) The ground reaction force and joint kinetics were significantly different during the catch phase.  These results show the differences in load characteristics in the lower extremity between the pull and catch phases during clean exercise. Therefore, not only the pull phase but also the catch phase should be considered when performing the clean exercise in weight training.
著者
野林 正路
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-29, 2002-01-01

隣接科学の一部に「単一の標準特性では対象を確定指定できない」とする見方がある。語は,その使用者たちが他の選択可能性を排して標準化した対象の特性(の束)を語義に引きつけている。したがって類語による対象指示は,「家族的類似性の網目」状の錯綜を示す。この錯綜が語彙論の未開,広くはコミュニケーションにおける共約可能性の壁になってきた。だがこの稿では,その錯綜が,実は,秩序であることを論証する。具体的には(まえかけ)類を例に,話者たちの語の指示用法を行列に描き,「網目」の秩序が類義の2語(視点)の交差・複合で編成された中間分節構造,「複用語彙」の反復でつくられている事実を明らかにする。この形式は基本的には,対象を4種の論理的に可能,必然の「意味の野」に確定指定する働きをもつ。本稿では,話者たちがこの形式を用いて伝達系・モノ離れの実用言語を,認識系・モノ絡み,世界像構成の連関言語に還元(逆も)し,開放している事実を考証した。

2 0 0 0 OA 一茶叢書

著者
[小林一茶] 著
出版者
古今書院
巻号頁・発行日
vol.第4編 上巻, 1930
著者
筒井 幸 神林 崇 田中 恵子 朴 秀賢 伊東 若子 徳永 純 森 朱音 菱川 泰夫 清水 徹男 西野 精治
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-50, 2012-01-15 (Released:2015-08-26)
参考文献数
42

近年,統合失調症の初発を想定させる精神症状やジスキネジア,けいれん発作,自律神経症状や中枢性の呼吸抑制,意識障害などの多彩な症状を呈する抗NMDA(N-メチルD-アスパラギン酸)受容体抗体に関連した脳炎(以下,抗NMDA受容体脳炎と略する)の存在が広く認められるようになってきている。若年女性に多く,卵巣奇形腫を伴う頻度が比較的高いとされている。われわれは合計10例の抗NMDA受容体抗体陽性例を経験し,これを3群に分類した。3例は比較的典型的な抗NMDA受容体脳炎の経過をたどり,免疫治療が奏効した。他の7例のうち3例は,オレキシン欠損型のナルコレプシーに難治性の精神症状を合併しており,抗精神病薬を使用されていた。また,残り4例に関しては,身体症状はほとんど目立たず,ほぼ精神症状のみを呈しており,病像が非定型であったり薬剤抵抗性と判断されm-ECTが施行され,これが奏効した。
著者
上林 葵 カンバヤシ アオイ Kanbayashi Aoi
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.14, pp.53-66, 2016-03

本稿は、2015年度に京都府宮津市において実施した言語意識調査の報告を行うものである。調査では「自身のことばに対する認識」「関西人としての意識の有無」「近隣地域のことばに対する認識・評価」の3点を明らかにすることを試みた。その結果をまとめると以下のようになる。A) 宮津地区・日置地区のインフォーマントともに自身のことばをそれぞれの地区独自のことばであると認識する傾向にある。前者は[宮津弁]という認識を持つことで共通している一方、後者は自身のことばの呼び名に複数のバリエーションを持つ。B) 宮津地区・日置地区に共通して関西人としての意識を持っているインフォーマントが目立った。関西人であることを自身のアイデンティティとして強く感じている者から、宮津の地理的見地を踏まえて客観的に関西人であると判断した者などがおり、いくつかのレベルが認められた。C) 宮津市では養老ようろうや栗田くんだが、京丹後全体では舞鶴まいづるや加悦かや、峰山みねやまのことばに違いを感じるインフォーマントが宮津地区・日置地区を通して目立った。宮津市については出身地区によって、回答にやや異なりが見られた。
著者
小林 敬典 山下 肇 吉川 東 鈴木 敦 小口 真一 船木 新壽
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, 1992-08-01

DSAの撮影条件を設計する簡便な手段としてHowlett chartを利用し, その測定法, 有用性について検討した.その結果, 測定者の視覚特性を把握するためにdata収拾する前に, 数回の練習を行うことが必要であった.sample数については20imageでも濃度変化による測定誤差は少なかった.また本法は種々の撮影条件の組合せを同一尺度でplotできるため, 複数の画質評価に有効であった.以上のことから本測定法は, DSAの画像評価に有用であった.
著者
山下 純一 松本 宏 小林 和弘 野口 和春 安本 三治 上田 亨
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical & pharmaceutical bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.2287-2292, 1989-09-25

A practical synthesis of 3'-O-benzyl-2'-deoxy-5-trifluoromethyluridine (1), a candidate antitumor agent for clinical testing, was developed from 2'-deoxy-5-iodouridine (3). Benzylation of 2'-deoxy-5-iodo-5'-O-trityluridine (14) with benzyl bromide and sodium hydride in tetrahydrofuran gave the 3'-O-derivative (16). Benzoylation of 16 afforded the N^3-benzoyl derivative (17). Coupling of 17 with trifluoromethylcopper, prepared from bromotrifluoromethane and copper powder in the presence of 4-dimethylaminopyridine, gave the 5-trifluoromethyl derivative (19) minimally contaminated with the 5-pentafluoroethyl compound. Deprotection of 19 furnished 1.
著者
藤村 明子 小林 鉄太郎 森田 光
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報文化と倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.720, pp.7-12, 2002-03-08

刑事事件の真相を解明していくには、市民から寄せられた情報が大きく役立つ場合がある。ところが現在は、情報提供した市民のプライバシが十分に保たれていないため、情報を提供することに躊躇する市民が増加し、捜査機関は十分な情報等が得られず、犯罪事実の解明が困難になっている。本稿では、市民が自らの匿名性を確保したまま捜査機関に対して情報を提供し、必要な場合を除いては、その個人情報が開示されることがない仕組みを提案する。
著者
菅波 盛雄 斉藤 仁 廣瀬 伸良 中村 充 林 弘典 増地 克之
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-12, 2005-07-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
20

IJFは2001年までは「判定方式」,2002年からは「ゴールデンスコア方式」を採用している。本研究は,2000年から2003年までの4年間に国際柔道連盟が主催した4大会を対象として,試合終了時に両試合者のスコアが同一であった試合の分析を試みた。2000年世界Jrナブール大会と2001年世界選手権ミュンヘン大会,全1,356試合の中で「判定」によって勝敗が決したのは73試合(5,4%)であった。2001年世界Jr済州島大会と2003年世界選手権大阪大会,全1,285試合の中で「GS」によって勝敗が決したのは42試合(3.3%)であり減少がみられた。「判定」によって勝敗が決した73試合を施技ランクB,Cおよび組み手主導権の3項目で比較した結果,審判員の判定が3対0の時にプラスポイントが確認された選手が勝ちとなったのは73,8%であった。一方,2対1の時はプラスポイントでの勝ちが41.9%と減少がみられたことから,全員一致の判定の困難さが窺える。同様の手法で「GS」に入る前の試合分析から,「GS」への移行が妥当と判断されたのは11試合(26.2%)であり,残りの31試合(73.8%)は項目比較によって優劣に差がみられた。「GS」導入によって試合時間は「判定方式」に比べて長くなるが,「判定」に対する「GS」の試合時間比は4分の試合で1.43倍増に対して,5分では1.28倍と減少が認められた。「GS方式」の導入によって,試合終了時に同一スコアとなる試合が激減した。また,実質上の試合時間を抑制する傾向が窺え,延長時間の問題も許容範囲であると言える。「GS」による試合は,罰則よりもポイント取得によって勝敗が決する方向にあり,勝負判定の客観化を推進するためには有効な改正であった。