著者
坪田 有史 西村 康 大祢 貴俊 深川 菜穂 橋本 興 小林 和弘 野本 理恵 平野 進 福島 俊士
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.225-235, 2004-07-25
被引用文献数
4

レジン支台築造において,間接法を採用することによりレジン築造体を装着前に加熱処理を行うことが可能となる.そこでクリアフィルDCコア(DC)およびクリアフィルフォトコア(PC)の支台築造用コンポジットレジンに対して,各種加熱処理による物性の影響を検討した結果,以下の結論を得た.1.DCにおいて,100℃30分の加熱処理により圧縮強さ,圧縮比例限,ダイアメトラル引張強さ,3点曲げ強さ,曲げ弾性係数が有意に向上した.2.DCにおいて,加熱処理によりヌープ硬さは増加しなかった.3.DCにおいて,化学重合のみと化学重合と光重合で硬化させた試料間では吸水量以外の物性に有意な差は認められなかった.4.PCは,DCと比較すると加熱処理による影響が少ないことが示唆された.したがって,DCで製作したレジン築造体を加熱処理することによって,いくつかの物性が向上し,臨床的意義があることが分かった.
著者
平林 茂 平澤 忠 奈須 郁代 中西 敏 三宅 裕昭
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.665-679, 1984-09-25
被引用文献数
29

可視光線重合型コンポジットレジンの硬化体内部のかたさの変化および残留モノマー量の変化を測定し, その重合の不均一性を検討した.その結果, 試料の深さ方向では, レジンの重合率は, 光照射面直下でやや低く, 表面下0.5mm付近で最大となり, 以後深くなるに従い低下する傾向が認められた.また, 試料の水平方向では, 中心部が最も高く, 中心部から離れるに従い低下する傾向が認められた.この重合の不均一性は, 照射時間の延長, および光源をできる限り近づけて照射することによりある程度改善された.化学重合型コンポジットレジンのかたさ(レジンの重合率)を基準とした可視光線重合型コンポジットレジンの臨床的に有効な硬化深さは, 一般に言われる見かけの硬化深さの約30〜40%程度と推察された.光透過性の良い無機質フィラーの含有量の多いコンポジットレジンほど, 残留モノマー量は少なかった.
著者
門林雄基 山口 英 宮原 秀夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.822-829, 1996-05-15
被引用文献数
3

Internetが商用化され ネットワークに関する専門知識を持たない一般ユーザによる広域ネットワークの利用が進むにつれて セキュリティをはじめとする様々な問題が表面化している. 今日のInternetでは このような一般ユーザからのアクセスを支援する機構が求められている. 本論文では 広域ネットワークにおける資源アクセスの複雑な部分を隠蔽し LAN環境における資源と同様に簡単に扱うことを可能とする「アクセス装置」を提案する. NFSに基づく分散ファイルシステム上にアクセス装置を実現し 実装に基づいてアクセス装置の有効性を確認した.The commercialization of the Internet promoted the use of wide area networks by naive users without networking expertise, which exposed various problems, typically in the security aspects. In today's Internet, some mechanisms are needed to solve these problems by supporting naive users. This paper proposes "access engine", which hides complex access procedures in wide area networks, thereby enabling simple access to resources in wide area networks. We implemented access engine in our NFS-based distributed filesystem, through which we confirmed its effectiveness.
著者
中尾 周 清水 美希 松本 英樹 千村 収一 小林 正行 町田 登
出版者
獣医循環器研究会
雑誌
動物の循環器 = Advances in animal cardiology (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-10, 2007-06-01
被引用文献数
1

犬における心房細動(AF)の発生にかかる形態学的基盤について明らかにする目的で,生前にAFを示した犬5例の心臓について,心房筋および洞結節を中心に組織学的検索を実施した。症例1は雑種,10歳,僧帽弁および三尖弁閉鎖不全症例であり,AFは死亡前の4カ月間持続した。症例2はマルチーズ,14歳,僧帽弁および三尖弁閉鎖不全症例であり,AFは死亡前の10日間認められた。 症例3はゴールデン・レトリーバー,雌,2歳,右室二腔症および三尖弁異形成を有しており,AFは死亡時まで6カ月間持続した。症例4はゴールデン・レトリーバー,5歳,孤立性AFであり,交通事故により死亡するまで4週間持続した。症例5はゴールデン・レトリーバー,10歳,孤立性AFであり,心不全により死亡するまで36カ月間持続した。肉眼的に,症例1および2では左心房の重度拡張ならびに右心房の中等度拡張,症例3では右心房の重度拡張がみられたが,症例4および5の心房に著変は認められなかった。心房の組織学的変化は,顕著な変化が認められなかった症例4を除く4例に見いだされた。心房病変はいずれの例においても間質性心筋線維化に総括されるものであり,種々の程度に心筋線維の伸長・萎縮・脱落を伴っていた。間質性線維化の程度(ごく軽微±~重度+++)は,症例1:左心房(+++)/右心房(++),症例2:左心房(+++)/右心房(++),症例3:左心房(±)/右心房(+++),症例5:左心房(+)/右心房(+)であった。なお,全例において洞結節に著変は認められなかった。以上の検索結果から,小型~中型犬では心房の拡張がAFの発生要因になるが,心房が一定以上の容積を有している大型犬の場合は心房に器質的変化がなくてもAFは発生しうること;AF症例の心房にみられる間質性心筋線維化はAFの結果として生ずるものではないこと;AFの発生に洞結節の器質的変化は必須要件ではないことなどが示された。
著者
芝山 雄老 松本 和基 大井 玄 中田 勝次 筧 紘一 清水 修 茂在 敏司 榊原 茂樹 佐藤 久夫 小林 茂保
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.208-216, 1983

ヒトβ型インターフェロン(HuIFN-β)投与肝細胞癌の一症例を経験した.症例は62歳男,会社役員.入院時すでに肝右葉全域および左葉の一部に肝細胞癌が認められ,手術不可能と判断し,HuIFN-βの大量投与(筋注総量4,671×10<SUP>4</SUP>IU,静注総量2,866×10<SUP>4</SUP>IU,肝動脈内注入250×10<SUP>4</SUP>IU)が行われた.肝動脈内注入直後一過性にα-Fetoprotein値の低下が認められたが,筋注および静注では著効を示さず,癌は徐々に増大した.病理解剖学的には多核巨細胞化した癌細胞および原形質が泡沫化した癌細胞の出現および癌細胞の壊死に陥る傾向の乏しいことが注目された.これらの所見はHuIFN-β非投与肝細胞癌例にも多少認められるので,HuIFN-β投与による特異的変化であるとは言えないが,それらの程度が著しく高度であったことよりHuIFN-β投与と何らかの関係が存在するのではないかと考えられた.本症例では臨床的にも病理解剖学的にも肝細胞癌に対するHuIFN-βの著しい治療効果は認められなかった.
著者
小林 敦友
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (工学) 学位論文・平成24年3月23日授与 (甲第6063号)
著者
村田 厚生 林 和也 森若 誠
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.127-138, 2011-08-15 (Released:2011-10-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

視線入力インターフェースの研究が行われているが,実用化には,視線入力における優れたスクロール操作方法の提案が必要不可欠になる.スクロール位置とスクロール速度の関係を非線形化したスクロール方法の提案がなされていない,ブラウザでのスクロール領域の位置の影響が明らかにされていないといった課題がある.本研究では,ウェブページでの情報検索を想定した課題を用いて,スクロール方法(スクロールアイコン法,オートスクロール法,オートスクロール改良法)のパフォーマンス,使いやすさの主観評価を比較し,最適なスクロール方法を明らかにした.その結果,スクロール領域でのカーソル位置とスクロール速度の関係を非線形にしたオートスクロール改良法(2次式組み合わせ),オートスクロール改良法(2次式)の作業完了時間が短く,エラー率が低く,操作性の主観評価も高いことが示された.
著者
高安 克已 小林 巖雄 森田 浩史
出版者
島根大学
雑誌
Laguna : 汽水域研究 (ISSN:13403834)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.103-110, 1996-03
被引用文献数
2

A vital marking experiment was carried out to examine the process of micro-growth striations of Corbicula japonica Prime from Lake Shinji. Samples were cultured in aquarium and in Lake Shinji for about one month. During culturing they were marked two to three times by tetracycline hydrochloride solution. The fluorescent lines showing the time of marking are observed remarkably well, especially in the samples marked during day time. In addition to these lines, strong stress bands are observed in whole samples in concurrence with the markings. This fact suggests that the process of marking experiment itself arrested the growth of shell. The pattern of micro-growth striations in between the marked lines of each sample show neither cyclicity nor regularity. 13; On the other hand, the micro-growth striations in the samples cultured in Lake Shinji show tendency of higher frequency per day than those in aquarium. From these results, the formation of micro-growth striations is assumed to be influenced by complex changes in the brackish-water environments as well as by their physiological rhythm and its individual variation. 13;
著者
安細 勉 田中 敦 小林 邦勝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題
巻号頁・発行日
vol.97, no.218, pp.15-22, 1997-07-31

近年のコンピュータネットワークの発達に伴い, そこで扱われる情報の量は増々増大している. そのため通信や保管の際に情報の圧縮が行なわれるのが一般的であり, 情報圧縮の技術は重要な意味を持ってきている. 特に情報量の多い画像の圧縮に関しては, フラクタルの利用をはじめとして様々な圧縮法が提案されているが, 本稿ではマップによるカオスを用いた可逆圧縮法について提案する. 本圧縮法はカオス的な系列を利用して元のデータを符号化するものであり, 既存の圧縮法とは異なる冗長さのとらえ方により, 他の圧縮法では圧縮できないデータを圧縮することが可能となり, 新しい可逆圧縮法として期待されるものである.
著者
内島 豊 小林 信幸 諏訪多 順二 中目 康彦 吉田 謙一郎 斎藤 博
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.447-451, 1989-03

1987年1月より同年12月までに尿道炎あるいは前立腺炎で受診した55症例についてC. trachomatisに対する抗原および抗体価をそれぞれクラミジアザイム(EIA法)とIFA法で測定した.1)未治療の非淋菌性尿道炎症例において抗原の陽性率は44.4%であり,既治療の非淋菌性尿道炎症例での陽性率は20%であった.2)未治療の非淋菌性尿道炎症例においてIgG抗体価の陽性率は59.3%であり,既治療の非淋菌性尿道炎症例のIgG抗体価の陽性率は61.5%であった.3)非淋菌性尿道炎症例での陽性一致率は66.7%であり,陰性一致率は54.2%であった.4)未治療の前立腺炎症例では抗原の陽性率は9.1%であり,抗体価の陽性率は53.8%であった.5) IgG抗体価は治療と相関しない傾向があった.6) IgG抗体価は,治療開始後3ヵ月を経過しても正常化しなかった
著者
清水 昌 片岡 道彦 小林 達彦
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

(1)土壌より分離した糸状菌Mortierella alpina 1S-4をグルコースを主炭素源とする培地で培養すると、菌体中に著量のアラキドン酸含有油脂を蓄積することを見いだした。本菌を用いてアラキドン酸含有油脂の蓄積量増大に関する培養条件の検討を行った。炭素源としてグルコースと共にオリーブ油、パーム油などのオレイン酸含有油脂を併用すると、菌体油脂中の不飽和脂肪酸の割合が著しく上昇することを見いだした。また、培養時間の延長、窒素飢餓条件下でグルコースなどの炭素源の添加は、アラキドン酸含量の上昇に寄与した。最適条件下でのアラキドン酸生産量は約5g/lに達した。(2)本菌のアラキドン酸生合成経路の解明を行った。その結果、本菌ではグルコースから生成したステアリン酸が不飽和化と鎖長延長を繰り返してアラキドン酸へ至ることを生合成経路の各中間体を単離することにより明らかにした。(3)アラキドン酸生合成に関与するΔ5不飽和酵素反応について検討を加え、本反応の特異的阻害剤が天然物中に存在することを認めた。ゴマ種子、ウコンの抽出物から阻害剤の単離を試み、それぞれセサミン関連リグナン化合物、クルクミンを単離・同定した。(4)上記のゴマ種子抽出物またはウコン抽出物を本菌の培養液中に共存させて培養を行うと、Δ5不飽和化反応が抑制され、アラキドン酸の前駆体であるジホモ-γ-リノレン酸が蓄積することを認めた。最適条件下での生産量は3.2g/lであった。
著者
小林 秀二
巻号頁・発行日
2011

筑波大学博士 (経営学) 学位論文・平成23年10月31日授与 (甲第5924号)
著者
宮崎 滋 石田 美恵子 久保 善明 中川 高志 川村 光信 松島 照彦 林 洋 片岡 亮平 内藤 周幸
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.803-812, 1983

両側副腎皮質結節性過形成によるCushing症候群に,左副腎褐色細胞腫を合併した症例を経験した.この2疾患の合併の報告はこれまで見られていない.症例は46才,女性.主訴は皮疹,高血圧で,満月様顔貌,中心性肥満を認めた.内分泌学的検査では, ACTHは測定感度以下, cortisolは高値で, cortisol,尿中17OHCSはdexamethasone大量にて抑制されず, metyrapone, ACTHには過剰反応を示した.副腎シンチで両側とも描出され,副腎静脈撮影で円形の血管圧排像が見られた. CTで左副腎の腫大を認め, 1979年10月左副腎を摘出し,皮質結節性過形成に褐色細胞腫の合併が判明した. ACTHとcortisolとの間には逆相関がみられ,術後一旦cortisolが低下するとACTHは増加し,それに従つてcortisolが上昇するとACTHは低下した.このことは下垂体と副腎との間に二元支配の存在を疑わせるもので,相互に刺激・抑制を繰り返しながら徐々にnegative feedbackの作動点が上昇し,結節性過形成を生じるのではないかと考えられたが,視床下部・下垂体だけではなく副腎自体にも何らかの異常が存する可能性もあると思われた. ACTH分泌抑制の目的でbromocriptineを投与し, ACTH・cortisolは一旦低下し臨床症状も改善したが, 1年後には悪化した. Cushing症候群と副腎褐色細胞腫の関係は,術後ACTHの上昇を認めたので異所性ACTH症候群ではないと思われ,多発性内分泌腺腺腫症としての2疾患の合併の可能性も考えられず,現在までのところ明らかではない.
著者
林 篤裕
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.25-34, 1991-05-21

潜在クラス分析は,顕在行動を支配する潜在概念を数学的にモデル化し解明する方法として開発され,検討されてきた.この手法はすべての設問項目に対する2値応答に基づいて対象集団をいくつかの潜在クラスに分割する. 本論文では,設問項目の全体から一定数の項目を選択して調査されるデータに対するクラス分析法について検討する.この項目の選択方法に関しては,選択順位を有する場合と有しない場合の2通りを考慮する.これらについて,それぞれの定式化とそれに基づく解法を与え,数値検証を行う.
著者
小林 章
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.27-51, 1939

1. 京都帝大農學部附屬農場の室内葡萄ブラック•ハンブルグ種 (10年生)を使用し, 8, 9, 10, 11月の4ヶ月間に亘り, 室の東西兩側に於ける葉の一日の同化作用を2時間毎に測定比較し, 同時に各側に於ける葉の受光状態, 室温,葉温, 葉の含水量, 氣孔の開度を測定し, 前者との間に於ける相關關係の有無を觀察した。<br>2. 單位時間に於ける同化物質の集積並に消費は, 晴天日曇天日共に西側の樹が東側の樹に比し大であつた。但し, これは單に1日の環境差に基く結果のみでなく, 更に積年の環境差に由來する樹自體の現在の個體差が關與したものと思はれる。<br>3. 同化曲線は, 晴天日 (特に9月以降) には大體東側は午前8-10時と正午-午後2時に高値を有する双頂曲線となり, 西側は午前10時-正午にのみ高値を有する單頂曲線となつた。然るに雨天日には兩側共に午前10時-正午に高値を有する單頂曲線となり, 兩者の間に量的以外の顯著な相違は認められなかつた。<br>4. 葉の1日の受光状態 (9月中旬) は東側樹は午前7-11時に大體その全面に日光の直射を受け, 午後1時以後は日陰となつた。反對に西側樹は午前11時まで日陰であり, 午後1-5時に全面に直光を受けた。即ち室の東西兩側に於ける葉の受光状態は正午を中心として相反してなた。<br>5. 葉の受光状態と同化曲線を對比すると, 東側にては午前10時-正午即ち直光の強烈な時期が同化の不適期であり, 午前8-10時即ち直光の左程強烈ならざる時期, 及び正午-午後2時即ち散光の強き時期は適期であつた。西側にても東側同樣午前10時-正午の強き散光時は同化適期であり, 正午-午後2時の強き直光時は不適期であつた。要するに東西を通じて, 強き散光か, 或は左程強からざる直光は同化に好適であるが, 反對に強き直光は有害であつた。<br>6. 室温を比較するに, 晴天日には午前中は東側が高くその差の最も著しいのは午前8-10時で, 午後は反對に西側が高くその差の著しいのは午後1-2時であつた。室の中央部の氣温は, 午前7時-正午には東西兩側の中間に位し, 正午-午後2時には東西何れよりも低く, 午後2時以後には何れよりも高温を示した。曇天日には東西兩側に於ける差異は殆んどなかつた。<br>7. 東西兩側に於ける葉温を觀るに, 晴天日 (10月27日) には午前 (8-11時) は東側が高く, 例へばその平均温度は東側樹 (陽葉) 19.9°C, (西側樹 陰葉)16.9°Cであり, 午後 (1-4時) は反對に西側が高く丙側樹 (陽葉) 23.4°C, 東側樹 (陰葉) 21.9°Cであつた。即ち日光直射の有無に伴ひ, 正午を中心にして東西に於ける葉温は相反し, この場合東西の葉温差は午後よりも午前に著しく大であつた。曇天日 (10月29日) には葉温は主として氣温に一致し, 且つ東西に於ける差異は殆んどなかつた。而しで上述實驗の範圍内に於ては, 葉温と同化曲線との間には, 晴天日曇天日共に密接な關係を求めることは出來なかつた。<br>8. 單位葉面積當の平均含水量は, 西側の樹が東側の樹に比し常に大であり,且つその一日に於ける變化の状態は, 前者が後者に比し甚だ複雜であつた。併し, 含水率(含水量の生體重に對する百分比)は, 反對に東側が西側に比し大であつた。これは, 葉の含水率が, 主として同化量の多少に支配され變化した結果に依るものである。含水量と同化曲線との間には決定的な關係を認めることが出來なかつた。<br>9 氣孔の開度は晴天日 (9月21日) には, 1日の時間的變化が著しく,且つ東西兩側に於て明な差異を認めたが, 曇天日 (10月11日) には, 1日の變化が乏しく且つ東西に依る差異は殆んどなかつた。而して, 氣孔の開度と同化曲線との間には曇天日晴天日共に密接な關係を求めることは出來なかつた。<br>10. 斯くて, 日照の有無に伴ひ著しく變化する室温, 葉温, 葉の含水量, 氣孔の開度の何れもの一つが, 同化曲線を決定する主要制限要素とは認め難く, 結局一日中に於て, 午前8-10時の直光, 及び正午前後2時間の散光が同化に最も有效な條件を誘導し, 反對に正午前後2時間の直光が逆な條件を與へた事となる。<br>11. 而してこの事實は, 晩秋の晴天日に野外に於ける葡萄の葉の上表面をパラフイン紙を以て輕く覆ひ直光を遮ぎりたる場合に, 同化の機能が著しく促進された結果と稍通じてなて頗る興味がある。