著者
渡邉 尚子 岩田 滉一郎 中尾 國明 松本 正廣 松本 裕子 籏原 照昌 太田 裕彦 平林 寧子 高橋 和明 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.80-84, 2003-02-25
被引用文献数
5 5

従来本邦ではE型肝炎は輸入感染症として軽視されがちであったが, 最近本邦を含む非流行地からの国内発症例の報告が相次いでおり, 我々も1例経験したので報告する. 症例は62歳男性. アルコール歴・ビタミン剤と生薬の服用歴あるも, 海外渡航歴・輸血歴・動物の飼育歴はなく, 特記すべき性交渉歴もなかった. 2000年11月初旬より全身倦怠感・褐色尿・微熱・食思不振を訴え, 職場の健康管理室を受診. 急性肝炎の疑いで同年11月21日に当科外来を紹介され, 同日入院となった. 入院時には全身倦怠感・皮膚及び眼球結膜黄染・軽度肝腫大・肝逸脱酵素上昇を認め, 急性肝炎と診断した. 安静のみで経過観察したが, 劇症化あるいは遷延・慢性化することもなく, 約20日間で軽快退院となった. 入院時より第29病日まで血清HEV-RNAが持続陽性で, 且つ第57病日の回復期血清中にHEV抗体を認めたことより, E型急性肝炎と診断した. 本患者より分離されたHEV株(JRA 1)のゲノム塩基配列の特徴に鑑みて, 本症例は「日本に土着化したHEV株」に感染して発症した急性肝炎であると考えられた.
著者
林 真樹 北出 崇 渡辺 昌俊 宮 和行 加藤 修 本間 光一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム
巻号頁・発行日
vol.97, no.134, pp.25-30, 1997-06-24
被引用文献数
11

筆者らは次世代移動通信システム(FPLMTS)に向けてW-CDMA/TDD方式に基づくシステムを提案し, 計算機シミュレーションおよび実験装置による特性評価を行ってきた. W-CDMA/TDDシステムでは, 上下回線の伝搬路の可逆性を活かして, 基地局における送受信スペースダイバーシチやオープンループ制御での送信電力制御を容易に実現することができる. 今回, 提案システムの新たな実験評価装置を開発しフェージングシミュレータを用いた室内実験を行い, 送信電力制御誤差, 平均BERはシミュレーション結果とよく一致することを確認した. 最大ドップラー周波数200[Hz]程度まで, 送受信スペースダイバーシチ, およびオープンループ送信電力制御が有効に機能し, 等2波レイリーフェージング環境下で平均Eb/No=3〜4[dB]で平均BER=10^<-3>を実現することを確認し, 提案システムの実用性を実証した.
著者
小林 克弘
出版者
日経BP社
雑誌
日経ア-キテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.642, pp.116-121, 1999-06-14
被引用文献数
1

「2週間に一度のペースで公団と一緒に技術面などの詰めを行っている。ここまで公団が本気になってくれるとは,正直なところ,考えてもみなかった」と小林氏は言う。 二直角等辺五角形の戸建て住宅ブロックは,早ければ再来年春,東京・多摩ニュータウンの一角に姿を現す。発端は,住宅・都市整備公団多摩ニュータウン事業本部が昨秋仕掛けたコンセプトコンペだった……。
著者
吉田 いつこ 小林 敏生 寺岡 幸子 虫明 悦生 Kongsap AKKHAVONG Amphoy SIHAVONG Dalaphone SITTHIDETH Bang-on NISAYGNANG 門司 和彦
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.109-120, 2011 (Released:2011-07-25)
参考文献数
24

The purpose of this study is to clarify the effectiveness and significance of the health education method through using traditional folk song “Lam” in Lao PDR.The study was conducted at a village in Vientiane city with 48 participants. Firstly we collected quantitative data by questionnaire survey and then conducted group interview after listening “Lam” for HIV/AIDS prevention. The qualitative data was analyzed by basic procedure of KJ method.The result showed that the participants with older than 20-year old (p<0.05) and lower education (p<0.05) tended to prefer “Lam”. Through the qualitative analysis, eight categories were extracted ; 1) Interest for Lam talking about HIV/AIDS, 2) Perception for a risky sexual behavior, 3) Knowledge on the HIV/AIDS infection routes, 4) Commitment for HIV/AIDS prevention, 5) Needs for the health education methods, 6) Suggestion for HIV/AIDS education, 7) Consortium with people living with HIV/AIDS, and 8) Characteristics of Lam and its advantages. After listening Lam, the participants received knowledge about HIV/AIDS and formed attitude for HIV/AIDS prevention. This process was influenced by the characteristics of Lam and its advantage such as entertainment, educational function and traditional communication.These result suggested that Lam which has entertainment and educational function can be utilized as an effective media for Lao people to improve knowledge and promote better attitude and behavior. In addition, the educational method through using traditional communication media such as Lam might be effective for the people to memorize and communicate information.
著者
大林 太良 山下 晋司 秋道 智彌 杉田 繁治 竹村 卓二 佐々木 高明 船曳 建夫 石川 栄吉
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

1987年6月までに整理された資料に基づき, 100項目の文化項目, 150民族についてクラスター分析を行なった結果, 次のような東南アジア, オセアニア諸文化の分類の樹状図が得られた. この地域の文化は大きく東南アジアマクログループとオセアニアマクログループに2分される. 東南アジアマクログループは, インドシナ=核島嶼群と, アッサム=辺境島嶼部群に分かれる. 更に, インドシナ=核島嶼部群は, インドシナ=華南亜群と東南アジア高文化亜群に分かれる. アッサム=辺境島嶼部群は, 東南アジア穀物栽培民亜群と, 周辺根菜民亜群に分かれる. 他方, オセアニアマクログループは, オセアニア栽培民群と採集狩猟民群に2分される. 後者は主としてオーストラリア原住民より成り, 顕著な下位区分は示していない. ところが, オセアニア栽培民群は, メラネシア栽培民亜群とミクロネシア=ポリネシア栽培民亜群に分かれる. 次に, 同じ資料を用いて因子分析を行なった結果, 4個の因子を認めることができた. 概して因子分析の結果は, クラスター分析の結果を支持しており,ことに東南アジア対オセアニアという二分の傾向, 穀物栽培民対根菜民の対照等を浮き彫りにしている. その後, 1988年1月までに回収された資料に基づき, 238民族のクラスター分析を行なったが, その結果は上述の150民族についての分析とほぼ同様な分類を示している. また, 238民族についても因子分析を実施中である. この他, 文化項目を単位としていかなる項目のクラスターが見られるかについても分析中であり, これらの結果はまとめて正式報告書に発表される予定である. 東南アジア, オセアニア全域にかけての文化分類については, 従来は主観的な分類がもっぱら行なわれていたが, 本研究によってはじめて統計的処理によるほぼ妥当な分類が呈示されたのである.
著者
森兼 啓太 小西 敏郎 阿部 哲夫 阿川 千一郎 西岡 みどり 谷村 久美 野口 浩恵 小林 寛伊
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.139-144, 2000-05-18
被引用文献数
7

消化器手術後の手術部位感染 (SSI) サーベイランスを米国のNNISシステムに従って施行した.対象は当科で9ヵ月間に施行された消化器外科開腹手術症例364例とした.感染制御チームを結成し, 巡回により基礎データを収集しSSIを拾い上げ, 外科医が創を観察しCDCの基準に従ってSSIか否かを判定した. 一方でCDCのSSI防止ガイドラインのうち現状を改善することが可能と思われる対策を講じ, 介入を行いつつサーベイランスを継続した.まず, 初めの4ヵ月間の創分類III, IV (汚染, 感染創) の症例ではそれぞれ9例中5例 (56%), 10例中9例 (90%) と高率にSSI発生を認め, 全体のSSI発生率に対する大きな撹乱因子となると考え, 以下の検討から除外した.創分類I, II (清潔, 準清潔創) の症例におけるSSI発生率は全体で35/323 (10.8%) であり, 術式別に分類しても, またrisk index score別にみてもNNISのデータより約3-5倍の高率であった.しかし, 米国では後期SSI発生症例を遺漏している可能性がある. 全例に術後30日のサーベイランスを遂行できた我々のデータとCDCのデータとの単純な比較はできないと思われた.サーベイランスの施行に並行して介入を行い, 主として抗生物質の術前投与が徹底された.しかし本研究期間内にSSI発生率の低下はみられなかった. 今後も継続的にサーベイランスを施行していく必要があると考えられた.

1 0 0 0 OA 海国兵談 16巻

著者
林, 子平
出版者
巻号頁・発行日
1791
著者
小林 茂雄 槙 究 乾 正雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.68, no.568, pp.25-31, 2003
被引用文献数
11 3

This study has examined the attributes of safe-feeling street lighting through an experiment that used a scale model of residential streets. The results found in the experiment are summarized below. ・The intensity of lighting required for streets that does not give the feeling of insecurity was higher in scale with women compared to men. ・The intensity of lighting can be reduced in streets with good natural surveillance such as low fences and lights coming through windows. The effect of low illuminance by lights coming through windows was more prominent with low fences than high fences. ・ Footlights can keep the illuminance and luminance of the street down compared to pole lights on the whole. In addition, footlights are more energy efficient in streets with good monitoring properties, and pole lights are more energy efficient in streets with less monitoring properties.
著者
小林 朗子
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (学術) 学位論文・平成24年3月23日授与 (甲第6260号)
著者
半藤 保 小林 正子 久保田 美雪
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.21-28, 2007-04

大学生381人(男子100人,女子281人)に無記名アンケート方式により,性行動,性感染症に対する現況と知識,および意識について調査した。その結果,以下の点を明らかにした。1)初交年齢のピーク:男子16歳,女子17歳。2)18歳までの性交経験率:男子78.9%,女子76.1%。3)複数人の性パートナーをもつ割合:男子52.7%,女子56.4%。4)性感染症(STI)の種類について回答者の50%以下しか知らなかったもの:性器ヘルペス,淋病,B型肝炎,C型肝炎,尖形コンジローマ。5)性交時,必ずコンドームを装着するもの:約2/3しかなく,1/3は「ときどき」あるいは「全く」装着しなかった。しかも,装着は避妊目的であって,STI予防を目的としたものは約20%にしか過ぎなった。6)STI予防のためコンドーム装着の必要性を自覚するもの:男子55%,女子80%。7)STI罹患疑いのとき,性パートナーともども病院を受診するとしたもの:39%。
著者
林 満 石畑 清武
出版者
日本熱帯農業学会
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.79-83, 1991-06-01
被引用文献数
14

ダイジョ(Water yam, Dioscorea alata L.)のソロヤム品種では, 塊茎の肥大生長が基本栄養生長性よりもむしろ環境的要因によって支配されている可能性が示唆された.本研究は, 塊茎の肥大生長を誘起させる環境的要因を明らかにするために, 日長と温度の影響について検討した.生育初期の幼植物では, 9時間日長で30回以上の短日処理によって塊茎の肥大生長が誘起され, 短日処理の回数が増加するにしたがって塊茎の重量は大となった.しかし, 15時間日長と自然日長は無効であった.生育中期では, 11時間日長で10回の短日処理によって塊茎の肥大生長が誘起され, 生育の進行に伴う加齢効果が認められた.しかし, 12時間日長で30回の処理ではほとんど効果が認められなかった.夜間の低温には, 塊茎の肥大生長を誘起させるような作用は全く認められなかったが, すでに肥大生長を開始していた塊茎に対し低温はその生長を促進した.以上の結果から, 短日はヤムイモの塊茎の肥大生長を支配する主要因であり, この肥大生長を誘起させる要因としての低温の単独効果は認められなかった.
著者
宮脇 昭 ステファン マアス ヨヒム クリュガー ゲハルト ワグナー アンケア ヤンセン ハソオ モエスター パウル ミュラー 藤原 一絵 村林 眞行 青木 淳一 奥田 重俊 MULLER Paul
出版者
横浜国立大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

新しい都市生態系の科学的研究法を, 国際的視野から生態工学的に確立し, 相互の現地調査による良好な都市環境の保全, 積極的な創造についての比較研究の成果や実績の討議を行うことによって, 日本ならびに世界の都市環境の保全, 創造について科学的な基礎と指針を提供することを目的としている.都市生態系と自然環境の診断, 回復研究の対象都市域として西ドイツザールランド州の州都ザールブルッケン地区と日本の横浜地区を中心に, さらに東京沿岸域を主な研究対象地区に選定した. ザールブルッケン地区では, P.ミユラーグループの長い間にわたる都市環境指標として有効な生物を使った環境モニタリングの現地協同研究を行った.また横浜地区では研究代表者らが10数年来実施し, 国際的にも広く評価されはじめている潜在自然植生図を基本とした環境保全林形成による都市生態系回復状況について, ヨーロッパ各地の研究例との比較考察が現地で行われた.ザールブルッケン地区ならびに浜横をはじめ東京湾岸沿いの両大学の現地協同調査・研究の結果は, 1988年2月23ー24日横浜国立大学で実施された「都市域における人間生存環境の回復と創造」で集約されたように多面的に新知見が得られている(研究発表参照).とくに西ドイツの研究者によって最初にその理論が発表された潜在自然植生(Tuxen,R.;1956他)の概念を空間的に具現した潜在自然植生図は, 従来ヨーロッパでは, 田園景観域を対象に研究, 図化されていた. 従って応用面でも利用が農林地, 牧場などの潜在生産性の判定, アウトバーン沿い斜面の環境保全林, 保全緑地に限定されてきた憾みがあった.今年(1987)度にヨーロッパの都市域の潜在自然植生の判定, 図化の研地協同研究の結果, 日本ですでに東京湾沿いの照葉樹林帯はもとより, 北海道の夏緑広葉樹林帯から沖縄まで潜在自然植生図化と, その基礎に形成された郷土林;環境保全林の創造, その後の生長実績からヨーロッパ各地の都市域での潜在自然植生図化が十分に可能であることが明らかにされた.また生物モニタリングシステムによる都市域環境の診断については, 日本でも, より本格的に, いわゆる"ミュラーシステム"の適用のための今後の研究推進の必要性が確認された.
著者
原 涼子 奥出 祥代 林 孝彰 北川 貴明 神前 賢一 久保 朗子 郡司 久人 常岡 寛
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.107-111, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
11

目的:心因性視覚障害は、視力障害や視野障害の他に色覚異常を訴えることが多い。今回、心因性視覚障害と診断され、片眼の色感覚が消失した1例を経験したので報告する。症例:16歳、女児。右眼で見た時の色感覚の消失を自覚し、近医を受診。2009年6月に東京慈恵会医科大学附属病院眼科へ紹介受診となった。症例は高校生であり、部活動に加え生徒会や学校行事など、学校生活の中で様々な役割を担っており忙しい毎日を過ごしていた。矯正視力は右眼(1.5)、左眼(1.5)であり、右眼のGoldmann視野は、V/4イソプターのらせん状視野、I/4からI/1イソプターの求心性視野狭窄を呈した。色覚検査として、仮性同色表、New Color Test、色相配列検査を片眼ずつ行い、いずれの検査も右眼のみ強度の色覚異常が検出された。特にNew Color Testでは有彩色と無彩色を分けることが難しく、主訴と一致する結果であった。全視野刺激網膜電図における杆体反応・錐体反応の潜時・振幅は正常範囲内であった。頭部MRIに異常所見はなかった。心因性視覚障害と診断し、経過観察していたところ、2010年2月に、色覚が改善したと本人から報告があり、2010年5月に再度色覚検査、視野検査を行ったところ、結果は全て正常であった。経過中、左眼の視機能異常は検出されなかった。結論:心因性視覚障害と診断されたのが、文化祭の実行委員になった直後であったことから、ストレス等による環境的・心理的要因がその背景にあると考えられた。
著者
鶴田 茂之 木下 健太郎 中林 竜也 岸田 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.93-97, 2011-04-11

新規の不揮発性メモリやスイッチング素子として期待されるCB-RAM (Conducting Bridge Random Access Memory)において,従来用いられてきた固体電解質をCMOSプロセスへの親和性の高い酸化物に置き換えた場合でも類似のスイッチング現象が生じることが報告された.しかし,酸化物を用いたCB-RAMのメモリ特性に関する報告はまだ少ない.本研究では,Cu/HfO_2/Pt構造の電気特性及びデータ保持特性を評価した.バイポーラ型の抵抗変化が確認され,動作電圧は±1 V程度と固体電解質系のCB-RAMに比べて高く,ノイズマージンの確保に十分な値が得られた.データ保持エラーは主に低抵抗が高抵抗に変化することで生じることから,熱拡散による金属フイラメントの断裂がエラーの主要因と考えられる.低抵抗状態の抵抗が低いほど,即ち,フィラメントの太さが太いほどエラーが起こりにくいことも示された.
著者
小林 正佳 今西 義宜 石川 雅子 西田 幸平 足立 光朗 大石 真綾 中村 哲 坂井田 寛 間島 雄一
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.986-995, 2005-10-20
被引用文献数
5 9 3

嗅覚障害の治療としてステロイド薬の点鼻療法が一般的に行われているが, 治療が長期にわたる症例も多くその副作用が懸念される. ステロイド薬点鼻療法長期連用に関してその安全性を有用性と比較して検討した報告はない. そこで今回は当科嗅覚味覚外来で同療法を施行した患者を対象にこの比較検討を施行した.<BR>0.1%リン酸ベタメタゾンナトリウム液 (リンデロン液®) の点鼻療法を施行した62例中42例 (68%) に点鼻開始後1~2カ月で血清ACTHまたはコルチゾール値の低下が出現したが, 異常な理学的所見や自覚的症状は認められなかった. 点鼻療法を中止した8例は全例1カ月後にそれらの値が正常範囲内に回復した. 一方, 同療法を継続した34例中4例で開始後2~5カ月で自覚的な顔面腫脹感, 顔面の濃毛化というステロイド薬のminor side effectが出現したが, 中止後1カ月ですべての症状が消失した. 同療法のみを3カ月以上継続した23例の治療効果は, 自覚的嗅覚障害度, 基準嗅力検査上ともに統計学的に有意な改善がみられ, 日本鼻科学会嗅覚検査検討委員会制定の嗅覚改善評価法でも78%例で何らかの改善判定が得られた.<BR>ステロイド薬点鼻療法の長期連用は軽度で可逆的な副作用を生じ得る. 一方, 嗅覚障害の治療効果は高い. よって同療法は有用な嗅覚障害の治療法であり, 臨床的必要性に応じて十分な注意の下に長期連用することは可能と考えられる.
著者
天野 実 森 英昭 松川 俊一 前田 潤平 宮田 昭海 林田 政義 入江 準二 冨岡 勉
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.2452-2456, 1991-09-01
被引用文献数
5

膵外に発育した非機能性膵島腫瘍の1例を経験した.症例は56歳男性で,定期原爆検診で左上腹部腫瘤を指摘され,著者らの病院に入院した.膵内分泌ホルモン過剰分泌による症状は認められなかった.腫瘤は膵尾部より膵外に発育しており,膵の一部を含めて腫瘤を摘出した.大きさは13.6×11.8×9.4cm,900gで,病理組織診断は疑悪性の非機能性膵島腫瘍であった.術後3年半後の現在,再発の所見もみられず健在であるが,なお経過観察中である.