著者
小山 諭 森 直治 LJUNGQVIST Olle FEARON Ken SOOP Mattias DEJONG CHC
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 : 日本静脈経腸栄養学会機関誌 = The journal of Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.723-735, 2011-03-25
参考文献数
80

手術や外傷に伴うストレス反応は、生体にとって本来、有益な現象であるが、制御を失うと有害なものとなる。患者を手術から早期に回復させ、手術アウトカムを最良のものにするために、侵襲を最小限にし、栄養管理をはじめとする集学的な周術期管理を行うことが重要である。ERAS (Enhanced Recovery After Surgery) プログラムと呼ばれるこのモダンな周術期管理は、術前絶食期間を最短として炭水化物の負荷を行い、術前腸管のプレパレーションや術後経鼻胃管留置を回避し、胸部硬膜外ブロックや非オピオイド性の鎮痛薬投与による鎮痛、早期経口摂取・早期離床の励行、適正な周術期の輸液・血糖管理、術前低栄養の是正等を行うことにより、術後の回復に有害な種々の生体反応、インスリン抵抗性や腸管麻痺を軽減し、手術侵襲からの早期回復と良好な手術アウトカムをもたらす。
著者
森戸 雅子 小田桐 早苗 宮崎 仁 岩藤 百香 渡邊 朱美 三上 史哲 難波 知子 武井 祐子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.285-296, 2021

本研究の目的は,自閉スペクトラム症(ASD)児と家族と支援者の情報共有を容易にする感覚特性サポートアプリケーションの開発である.2014年より多職種連携チームクレマチスにおいて,アプリ開発を手掛け,ASDに多いとされる感覚特性について,各感覚特性について分類・保存・検索の機能を保持できる iPad用のアプリケーション「YOUSAY」を開発した.しかし,iPad用に開発したYOUSAYは,ASD児の家族が専門職と短時間に情報共有するには課題があった.そこで,ASD児のライフステージに応じた感覚特性の変化を視覚的に提示でき,感覚のバランスの悪さを視覚的に捉えやすくした「YOU チャート」を新たに考案し,スマートフォン用アプリとしてYOUSAYを開発した.結果,ASD児が日常生活で経験する感覚特性にともなう困難や苦痛を日常的に家族が保存,分類,整理を容易にすることと,緊急時や災害時に医師,臨床心理士,学校教員,保健師などの専門家や支援者との情報共有の際に優先項目の検索を可能にした.開発アプリを活用することで,地域で暮らすASD児と家族にとって,多くの関係専門職や支援者と継続的な連携を容易にすることが示唆される.
著者
岡森 博和 柳本 朋子 本間 俊宏 西谷 泉 金谷 博史
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C5)教科教育 05 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.p131-148, 1984-12

第2報では,数学教育におけるコンピュータ・プログラミング,とくにLOGO言語による指導について,小学校・中学校・高等学校での実践を通して,その可能性と方向について論じた。この小論では,小学校における図形教育の中でのLOGO言語の活用,とくに子どもにとって価値のある作業-天守閣の測量・カブトの作成・万華鏡模様の作成-の中での実践を通して,子どもの学習へのかかわり方について考察する。
著者
朴 〓用 小森谷 清 金子 真 大野 武房 谷江 和雄
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.283-290, 1987-08-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
14

分布型触覚センサの重要な機能の一つに, 形状認識機能がある.この機能を実現するには, 対象との接触によってセンサ面に生ずる変形 (押込み量) を検知する必要がある.本論文では, こうした変形を検知し得る分布型センサを光導波板を用いて構成することを試みた.大気中に置かれた透明な板の側面より光を照射すると, 透明板・大気箋界面において, 照射光はその入射角が臨界角以内の時, 全反射して透明板中を進行する.この透明板に, 下面に凹凸のある白色弾性シートを接触させ, それに荷重を加えるとシートの凸部が圧縮されて透明板上に密着する.この密着部分では全反射の条件が満されず, 白色弾性シート表面で, 臨界角以上の角度方向へ光が散乱する.密着面の大きさが白色弾性シートに加わる圧力・変位により変化するように構成し, 散乱光を透明板のシート密着面の反対側から観測するようにすれば, シートに加わる圧力分布や変形状態を散乱光量の分布として検出することができる.本研究ではアクリル製透明板, 円錐状の突起をもつ白色弾性シート, フォトトランジスタマトリクス, プラスチック製光ファイバ, 光源からなるセンサを試作するとともに, 散乱光強度からセンサ面の押込み量を推定する関係式を導出した.またセンサ出力をマイクロコンピュータで処理するシステムを構成し, 上記関係式をもとに数種の物体形状を視覚表示出力として再現する実験を行った.対象の形状の絶対値を求めるには問題があるものの, 形状の幾何学的特徴を抽出するには満足なセンサ出力が得られることが実験的に確認された.
著者
小森 克俊 奥口 文宣 金塚 東 小林 正 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.165-172, 2013 (Released:2013-04-05)
参考文献数
22

2型糖尿病患者1184例にピオグリタゾン(以下PIO)を5年間投与したときの体重推移と増加に影響する因子をレトロスペクティブに検討した.HbA1cはPIO投与前8.0 %から5年後には7.1 %と平均0.9 %低下(p<0.001)し,体重は67.6±13.2(M±SD)kgから70.4±14.5 kgと平均2.8 kgの増加を認めた(p=0.001).体重はPIO投与後12ヶ月まで増加し以降はほぼ不変であった.PIO単独群と比べると,SU薬併用群,SU薬+BG薬併用群では体重増加は有意に大きく,個々の併用糖尿病薬の有無別にみるとSU薬併用では体重増加の助長,αGI薬併用では体重増加の抑制がみとめられた.重回帰分析では,女性,投与前のHbA1cと肥満度,SU薬,αGI薬併用の有無がPIO投与後の体重増加と有意に相関していた.一方,動脈硬化のリスクファクターであるHDL-Cは改善していた.
著者
森 朋子 三ヶ尻 智晴 田崎 智宏
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.13-24, 2020 (Released:2020-02-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究では,近年,普及が進んでいるインターネットを通じたリユース (以下,ネット型リユースという) に着目し,その利用経験が不用衣服の排出行動に及ぼす影響を分析した。衣服の購入が多い 15 ~ 49 歳の女性を対象にウェブアンケートと統計分析を実施した結果,ネット型リユースの利用を経験すると,リユースショップのような従来型のリユースルートよりもネット型リユースの活用を好むようになることがわかった。また,ネット型リユースを現在利用していなくても,過去に利用した経験があれば,不用衣服をごみとして廃棄する行動は抑制され,リユースショップ等に出す行動が促進されることも明らかとなった。これらの結果より,ネット型リユースの利用経験が,リユースの具体的な方法を学んだり,不用衣服のリユース品としてのポテンシャルを認識したりすることに役立っていることが示唆された。
著者
森 裕二
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.321-331, 1982-04-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
44
被引用文献数
11 13

This article describes the asymmetric inductions in the intermolecular asymmetric Diels-Alder reactions. The reactions are classified into three groups : 1. Reactions of chiral dienophiles with dienes.2. Reactions of chiral dienes with dienophiles.3. Reactions catalyzed by chiral catalysts.The relationships between the absolute configuration of the chiral reagents and that of the products is discussed.
著者
森 葉子 植田 康次 櫻井 有紀 青木 明 岡本 誉士典 神野 透人
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.162-165, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
7

食品中のシアン化合物の簡便,迅速な測定法を確立する目的で,日本産業規格(JIS)工場排水試験法で採用されている通気法を参考に,小型インピンジャーを用いる前処理について検討を行った.その結果,シアン化物イオンとして10 ppmに相当するアミグダリンをビワ種子粉末に添加して実施した分析法の性能評価では,真度83.9%,併行精度1.18%,室内精度4.67%の良好な結果が得られた.本法を用いて,市販されている食品中のシアン化合物を調査した結果,10食品中のビワ種子粉末3食品において10 ppmを超えるシアン化合物が検出された.
著者
森岡 祐貴 安田 寛二 上村 治 中島 務
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.308, 2018 (Released:2021-01-21)

症例 40代女性。出生時異常なし。6か月から発語が遅く、発育の遅れを感じていた。30代になりパーキンソンニズムが出現。2015年WDR45の異常を認め、βプロペラタンパク関連神経変性症(以下、BPAN)と診断された。家族内には同疾患発生を認めない。 入所時所見 発語なく意思疎通は不可能。嬉しいときには笑顔を見せることあり。音がする方向へ視線を向ける。2015年まで1−2mの手引き歩行が可能であったが、肺炎で入院したのを機に歩行困難となり、寝返りをうつことが不可能な状態。胃瘻造設あり。食事は経腸栄養。前医よりレボドパ、ロチゴチンが処方されていた。 経過 2016年7月当センターに入所。ロチゴチンを増量し、レボドパは継続投与していた。2017年2月両側気胸のため、近医救急病院へ搬送。転院先ですべての薬剤を打ち切られ22日後、再入所。再入所後49日、表情が硬いため、レボドパ再開。6月血中亜鉛濃度の低下を認め、 酢酸亜鉛水和物を投与したところ、表情が穏やかとなった。11月にレボドパを中止しているが症状の悪化を認めない。その後DHA、グルタチオンをサプリメントで摂取し、表情豊かで眼球運動がスムーズになった。 結論 BPANはWDR45の異常により進行性ジストニア、パーキンソンニズム、認知障害を呈する神経変性疾患である。根本的な治療薬はなく、パーキンソンニズムに対して、パーキンソン病治療薬が投与される。パーキンソン病治療薬はハネムーン期間を過ぎると増量をしなければならず、長期服用によりwearing off現象、ジスキネジア、精神症状などを起こすことが知られている。BPANは小児期から20代に発症することが多く、服用期間は長期間になる。脳内での鉄代謝異常のメカニズムは解明されていないものの、神経変性症に対して亜鉛治療や8−OH−quinolineを基にした除鉄剤が開発されつつある。BPANのように患者数が少ない病気は治療薬の開発が難しいが、オーソモレキュラー的アプローチにより症状の緩和、改善への寄与が期待される。
著者
森脇 良一 林 健治
出版者
Japanese Society of Steel Construction
雑誌
鋼構造論文集 (ISSN:18809928)
巻号頁・発行日
vol.2, no.8, pp.1-12, 1995-12-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
17

In order to establish the ultimate state design, it should be veri fied the mechanical properties of tension members as well as compression members in the ultimate state. In this paper, resting on this viewpoint, tension tests on notched plates were carried out to investigate the influence of mechanical properties of materials and stress concentration on the plastic deformation capacity, and to clarify the mecanical characteristics of tension members. And a practical formula is proposed to evaluate the plastic deformation capacity of tension members. Moreover, it is also clarified the parameter to control the plastic deformation fields of tension members in the ultimate state.
著者
梅本 大地 柴田 曜 森 仁 進藤 克郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.537-542, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
3

破傷風は土壌に存在する破傷風菌が体内に侵入することで発症する感染症である.当院が診断した破傷風11症例について先行外傷や治療経過など臨床経過について検討した.発症時の平均年齢は68歳であり,7例で集中治療管理を要した.先行外傷には明らかに汚染を伴う例もあれば,非常に軽微あるいはない例もあり,先行外傷の程度と重症度に相関はなかった.初診医が破傷風と疑えたのは11例のうち4例のみであり,開口障害や頸部の筋緊張亢進など典型的な症状を呈していても外傷が軽微,またはない場合には見逃される傾向にあった.破傷風を疑う際には生活歴に至るまでの病歴聴取および適切な神経診察を行い診断・治療を行う必要がある.