著者
森田 英利 坂田 亮一 加藤 行男 久松 伸
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5/6, pp.176-181, 2003-03-31

亜硝酸ナトリウム(NaNO_2),塩化ナトリウム(NaCI)あるいは数種類の抗生物質で処理したベロトキシン産生大腸菌(VTEC)O157:H7の3株から,ベロトキシン(VT)1型と2型の放出量を定量した。VTEC O157:H7のうち,2株がVT1型とVT2型の両者を産出し,1株がVT2型のみ産出した。VTEC O157:H7をNaNO_2(最少発育阻止濃度である6,000mg/L)で処理したがVT1型およびVT2型の放出量は増加しなかった。NaNO_2由来の一酸化窒素(NO)の抗菌メカニズムを明らかにするために,NaNO_2で処理したVTEC O157:H7の細胞を77Kでの電子常磁性共鳴吸収(EPR)法に供した。その結果,g値2.035と2.010のEPRシグナルを検出し,細胞内に鉄硫黄タンパク質とNOが反応して形成されたジニトロシル鉄硫黄錯体が存在した。またATPの合成も阻害されていた。このことから,NaNO_2出来のNOは細胞内に入り,呼吸鎖に関与する酵素を不活化したものと考えられた。
著者
松澤 宏朗 田中 靖浩 森 一博
出版者
日本水処理生物学会
雑誌
日本水処理生物学会誌 = Journal [of] Japan Biological Society of Water and Waste (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.129-136, 2010-09-15
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究では、ウキクサ根圏より分離した11種の菌株のウキクサ根への付着性を検討し、その中から3菌株を用いて、それら菌株の環境水中におけるウキクサ根圏での残存性を検討した。まずウキクサ根への付着性に関して、無菌ウキクサ根圏へ11種の菌株を導入し、根圏で優占的に生息する菌株について検討した結果、<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G株が菌株導入後7日目において最優占種となった。また、この菌株はボルテックス処理(3000 rpm, 3 s)による剪断圧の負荷にも抵抗可能なウキクサ根への付着能を有していた。その後、<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G株を含む3菌株に、カナマイシン耐性を有するpBBR122をマーカープラスミドとして導入し、得られた遺伝子組換え菌株の無菌ウキクサ根への定着性を検討した。その結果、他の2菌株と比較して<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G:pBBR122株は非常に多くの生菌数を無菌ウキクサ根圏において維持可能であることが明らかとなった。その後、環境水中の複数の微生物共存下における3菌株のウキクサ根圏での消長を調べた。その結果、7日間の実験期間にわたって、いずれの遺伝子組換え株もウキクサ根圏に汚染物質の浄化が可能な生菌数で残存可能なことが明らかとなった。特に、<i>Asticcacaulis</i> sp. RS59G:pBBR122株は、残存性試験初期において非常に多くの生菌数でウキクサ根圏に生息可能であった。
著者
森田 直賢 清水 岑夫 竹崎 孝行
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1277-1280, 1968-10

A new glycoside (I), C_<24>H_<26>O_<18>・11/2H_2O, mp 274-275°, was isolated from Chrysosplenium grayanum MAXIM. (Japanese name"Nekonomeso"), and a glycoside (II), C_<24>H_<26>O_<12>・2H_2O, mp 175-176°, from C. flagelliferum FR. SCHM. (Japanese name"Tsurunekonomeso"). I was determined as oxyayanin-A (5,2', 5'-trihydroxy-3,7,4'-trimethoxyflavone)-2'-glucoside, and was named chrysosplenoside-A , and II as pendulin (5,4'-dihydroxy-3,6,7-trimethoxyflavone-4'-glucoside).
著者
森本 轟
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.18-58, 1990-12

中世のイングランド北東部に所在したダラム司教座聖堂付属修道院(Durham Cathedral Priory)は、聖ベネディクト会派に属す修道院であり、修道院解散時に至るまで役職員組(Obedientiary System)を維持していた。当該修道院の役職員の中では会計収支を統轄していた「出納掛」(Bur sarius,Bursar)がもっとも重要な存在であったが、歴代の出納掛の会計報告書は、比較的良好な形で連続性を保ちつつ、ダラム大学古文書学部において保存されている。われわれは、これまでの一連の研究において、主として出納掛会計報告書のシリーズを根本史料として使用しつつ、当該修道院の一四世紀から一五世紀前期に至る時期の経済生活について考察してきた。そこで、本稿では、一五世紀後期における当該修道院の経済生活の実態を理解するための一つの試みとして、ワインの需要と購入について考察してみよう。中世のイングランドにおいて、ワインはいうまでもなく重要な輸入商品であったので、ワイン貿易の推移に関しては、周知の如く、すでにサージェント(F.Sargeant)、ベァードウッド(Beardwood)、ケァラス"ウィルソン(E.M.Carus-Wilson)およびジェームス(M.K.james)の諸研究があり、それぞれがすぐれた研究成果を公けにしている。とくに、ジェームス女史は、一五世紀におけるワイン貿易に関する研究を、一四世紀のそれにひきつづいて行なったのち、一四ー五世紀を通じてのイングランド・ガスコーニュ・ワイン貿易の変遷が、イングランドの主要諸港の経済に如何なるインパクトを与えたかを、関税記録などからきわめて詳細に論証している。したがって、われわれのここでの考・察は、ジェームス女史の研究成果に基づいて行なわれることはいうまでもないが、同女史の国内におけるワインの需要分析が地域的にも時期的にもムラがあるという欠陥を、たしかに北東部といった限定された地域においてであるけれども、諸データの時系列的処理で以て補完することができる、といった点に意義を見出すことができよう。
著者
森 芳郎 菅沼 彰
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.197-201, 1975-03-10 (Released:2009-10-21)
参考文献数
6

Under an assumption that particle size x follows log-normal distribution in its parent population, any population mean particle size defined byΓ= {∫∞0xa+bƒ(x)dx/∫∞0xbdx} 1/cor Γ=exp {∫∞0 (lnxe)ƒ(x)dx} can be estimated by the following Hatch-Choate formula.gH=exp (Aμ+Bô2) μ=n∑i=1yi/n, ô2n∑i=1 (yi-μ) 2/ (n-1) yi=lnxi(A, B) = {a/c, a2+2ab/2c} or {e, 0} This estimate gH, which may be called sample mean particle size by Hatch-Choate, follows asymptotically log-normal distribution, that is, h=ln gH follows asymptotically normal distribution N {Ω, D2 (h)}.Ω=lnΓD2 (h) = (A2/n) σ2+ {2B2/ (n-1)} σ4So far as sample size n is larger than about 100, the distribution of h= ln gH can be approximately expressed by N {Ω, D2 (h)}. Owing to this conclusion, some of statistical tests and inference about population mean particle sizes become possible with a numerical table of t-distribution.
著者
森井 昭顕
出版者
広島経済大学経済学会
雑誌
広島経済大学研究論集 (ISSN:03871444)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.p85-107, 1989-12
著者
二宮 皓 石井 明 森泉 豊栄 江藤 一洋 長谷川 淳 谷口 吉弘 木村 裕
出版者
広島大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2001

本研究はポスト留学生10万人計画において、どのような留学生施策を講ずるべきかについて、諸外国における動向も参考にしながら、調査研究を行ってきたものである。途上国支援、途上国の人材育成支援、あるいは平和・親善友好の増進、などの留学生政策目標をレビューし、本研究では、わが国の国際競争力、とりわけ大学の国際競争力や研究力を著しく改善するための留学生政策・施策のあり方を中心とする研究とすることとした。そこで優れた大学において大学院を担当する教授を文橡とし、そうした観点から「優れた留学生」の特性(能力・資質)や属性に関する意見を調査し、どうすれば「優れた留学生」をひきつけることができるか、について研究してきた。また大学院で学ぶ留学生自身の優秀性に関する自己評価などに関する調査を行った。その結果、わが国も、留学生政策・施策を「戦略的」に構想する必要があり、ある意味でODA型留学生交流の推進に加えて、ODAを超えたわが国の国際競争力を高める留学生交流のための特別な施策を講ずる必要があることを明らかにしている。また同時に「質の高い留学生受入れ」という観点から留学生の満足度を規定する要因についての分析も行い、顧客ニーズに応える質の高い留学生受入れ施策のあり方を研究してきた。こうした成果をまとめて報告書で公開すると同時に、平成15年12月6日には、東京で「21世紀の留学生戦略シンポジウム」を開催し(200名以上の参加者)、中央教育審議会留学生部会中間報告を基礎とする基調講演をお願いし、パネルディスカッションとして、21世紀の留学生戦略について討議を行った。そうした一連の研究や成果の公開活動をふまえて、「21の提言」として留学生施策における戦略的方策に対する総合的な提言を行った。主としてODA事業や高等教育における留学生施策の意義や役割をふまえた提言、留学生の生活支援や教育・研究活動に関する提言、教育の貿易という観点からみた留学生施策の戦略に関する提言などを行った。
著者
吉村 美香 長野 宏子 辻 福美 Anh To Kim 大森 正司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.603-610, 1998-10-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

(1) 酸肉にはいずれの試料においても,LBSもしくはTATACのどちらか,または両方の培地に生育が見られた.また,ポテトデキストロース寒天培地においては全ての試料で生育が普遍的に見られた.層そして,DHL寒天培地において多くの試料で生育が見られた.(2) 一般成分を分析した結果,豚肉のpHは5.61で,酸肉(ネムチュア)のpHは3.81と低かった.また,乳酸の生成が顕著に見られた.(3) 遊離アミノ酸は,酸肉(ネムチュア)の方が多く含まれ,特に旨味成分のグルタミン酸が多く,次いでアラーン,ロイシンなどが多く含まれていた.これは,豚肉のタンパク質の自己消化による変化とほぼ一致した.(4) SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びペプチドパターンの分析の結果,発酵によって肉タンパク質が分解し,低分子タンパク質やペプチドの生成が認められた.
著者
山崎 浩之 森川 嘉之 小池 二三勝
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.708, pp.199-210, 2002-06-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
4

サンドコンパクションパイル工法は, 密度増加による代表的な液状化対策工法である. 同工法の設計, すなわち圧入率あるいは置換率 (以下本論文では圧入率とする) とよばれる砂杭面積の原地盤に対する占有率の設定は, 原地盤N値, 細粒分含有率, 改良目標N値を用いる設計法で行われることが多い. 本論文では, 港湾・空港において行われた同工法の液状化対策としての実績を集め, 圧入率と改良後の杭間N値を調べ, 既存の設計法の妥当性を検討した. その結果, 実測値は圧入率が同一であれば改良前の原地盤N値が小さい方がN値の増加が大きくなっていたが, 既存の設計法はこの傾向を逆に評価することがわかった. そこで, 同工法の改良メカニズムについて繰返しせん断効果を考慮した方法を導入し, 圧入率設定のための新しい方法を提案した.
著者
伊達 久 森田 行夫 北村 知子 山城 晃 綿引 奈苗 渡邉 秀和 滝口 規子 堤 祐介 岩永 浩二 千葉 知史
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.238-243, 2018-10-25 (Released:2018-11-07)
参考文献数
13

【目的】慢性疼痛に対しトラマドール含有製剤(以下,トラマドール)が広範に使用されるようになった.そこで日常診療においてトラマドールを長期投与した症例について投与量,効果,副作用などの推移を調査することとした.【方法】当院の診療録を後方視野的に検索し,トラマドールを3年以上長期に投与した症例の投与量,痛みの程度,副作用などについて集計することとした.【結果】トラマドールは2,656例に投与され,そのうち,3年以上継続投与された症例が50例あった.平均年齢は約61歳,痛みの内訳は運動器疾患(腰背部痛)24例,運動器疾患(頸部上肢痛)14例,運動器疾患(下肢痛)7例,帯状疱疹後神経痛4例などであった.痛みの程度については,開始時の視覚アナログスケール(VAS)が平均70.7 mmであったが,投与後3カ月以降はおおむね40 mm以下に推移し,投与後約3年時には平均33.6 mmまでに改善した.おもな副作用はめまい・傾眠・倦怠感,悪心・嘔吐,便秘で,投与期間別に発現頻度をみると,開始後3カ月までの発現率が高かった.【結論】トラマドールを3年間以上継続投与した症例では重大な副作用はなく,トラマドールは患者の観察を行いながら注意深く使用すれば長期に使用できることが確認された.
著者
上羽 貴之 和田 一郎 田中 明夫 森本 信也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.45-50, 2015

今日,理科教育では平成 27 年度全国学力学習・状況調査の結果を受けて,「科学的な思考・表現」能力の育成が叫ばれている。本研究では,その育成に必要な能力として挙げられている問題解決能力の「推論(resoning)」に着眼した。理科学習を通じた推論と捉えられる「科学的推論」を育成するには,その成立過程及び教授学習モデルが明らかとなっていることが要請される。しかし,科学的推論を成立させるための要素や手立て等,詳細な研究が十分なされているとは言い難い。そこで,本研究では,科学的推論の育成を促す授業デザインの提案を目的とした。その際,タイトラーらが体系化した科学的推論と表象の関連を示したモデルと和田らが提案している表象ネットワークモデルを援用し,表象の視点に立脚することで学習モデルを模式化した。また,タイトラーらが明らかにした大別された2つの推論過程に位置付く推論活動を基に教授モデルを模式化した。これらのモデルを基に,実証的に理科授業を分析することで「科学的推論」の成立過程の内実を具体的に明らかにした。