著者
渡邊 貢次 高橋 裕子 森田 一三 坪井 信二 中垣 晴男 榊原 康人
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告 教育科学 (ISSN:0587260X)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.35-39, 2006-03

愛知教育大学の男子大学生306名,女子大学生411名(合計717名)を対象とし,自覚的健康と医療10科のイメージ(印象)についての調査を行った。その結果,次のようにまとめられた。1)健康状態を大変よい+ややよい+よいの合計でみると,男子約80%,女子約85%となり,女子の方が健康状態ではやや良好という自己判断を示していた。2)「痛み」のイメージでは,内科,外科,精神科,小児科,耳鼻咽喉科,歯科の6科で男女間に有意差がみられた。6科いずれも女子の方がスコア平均値は高かった。「大切さ」のイメージでは,内科,外科,整形外科,精神科,小児科,耳鼻咽喉科,皮膚科の7科で男女間に有意差がみられた。産婦人科を除いた9科において男子の方が高スコアを示した。「身近さ」のイメージでは,外科,整形外科,産婦人科,眼科,皮膚科,歯科の6科で男女間に有意差がみられた。評価については男女間で分かれた。3)健康状態と,イメージとの関連性では,男女とも「痛み」と相関がみられ,また,女子では「身近さ」とも相関がみられた。4)イメージからみた医療10科間の類縁性を検討した。男女とも共通して大きく3つのグループに分けられた。①内科・眼科グループ,②精神科・小児科・耳鼻咽喉科・皮膚科グループ,③外科・整形外科・産婦人科・歯科グループである。全体より,イメージの形成は受診経験が大きく影響しているのではないかと推察した。
著者
山口 響子 森口 徹生 山下 大介 大西 丘倫 金子 貞男 的場 亮 鄭 漢忠 近藤 亨
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.94-103, 2019-03

最も悪性度の高い脳腫瘍の1つであるグリオブラストーマ(GBM)は,標準治療(外科手術および化学放射線療法)を施しても平均生存期間中間値(約15か月)が極めて短い難治性疾患である.この難治性の原因の1つは,腫瘍細胞の強い組織浸潤能と増殖能により神経症状発症時には摘出不可能な範囲に腫瘍細胞が拡散しているためである.つまり,簡便かつ検出感度の高いGBM診断用バイオマーカーがあれば,早期腫瘍摘出が可能となり,予後の改善が期待できる.分泌小胞体エクソソームは,その産生細胞が発現しているmRNA,microRNA (miR),タンパクなどを含み,様々な体液中に安定に存在することから,新たなバイオマーカー探索の標的としてその解析と利用が注目されている.今回,私たちはGBM患者と健常人の血漿中のエクソソームに含まれるmiRを比較分析することで,診断マーカーとなりうるmiRの同定を目的として解析を行った.GBM患者6人の凍結血漿8検体(同一患者の再発術前1検体と術後1検体を含む)と健常人2人の凍結血漿を用いて解析を行った.凍結血漿から調整したエクソソーム内miRについて,RNA-seqを用いた網羅的な解析を行い,GBM患者血漿エクソソームに多く含まれる34種のmiRと健常人血漿エクソソームに多く含まれる47種のmiRを同定した.GBM患者血漿エクソソームに多く含まれていたmiRの中で,エクソソームバイオマーカーとして報告のないmiR-186とmiR-20aについて,定量PCRを用いてGBM患者と健常人血漿エクソソーム内miR量を検討した.その結果,miR-20aはGBM患者と健常人間で有意な差は認められなかったが,GBM患者5人中4人の血漿エクソソームにmiR-186が豊富に含まれていることを確認した.加えて,術後患者ではmiR-186量が健常人レベルまで減少していることを発見した.さらに,標準治療を行った再発例においても,術前血漿エクソソーム内miR-186の上昇を認めた.これらの結果は,血漿エクソソーム内miR-186がGBMの病状に即した新規バイオマーカーである可能性を示唆している.
著者
岩森 光
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-22, 2016-03-31 (Released:2017-03-20)
被引用文献数
1

Earth’s mantle constitutes the largest sub-system of the whole Earth system, involving 70% of the total mass, ~80% of the heat capacity, and more than 50% of the internal heat generation by radioactive decay. Therefore, the mantle and the inherited dynamics may control the whole system to a great extent, e.g., in terms of convective motion (including plate motion as its surface expression) and heat transport from the core to the surface, regulating the core cooling and dynamo that eventually affects the surface environment and life. First the basic structures and dynamics of the mantle convection are described, which demonstrate that the surface cooling dominantly drives the convection, creating buoyancy of several to 10 times greater than that generated near the core-mantle boundary. This estimate for the much larger role of near-surface cooling is consistent with the seismic tomography. Then various types of observations on the structures and dynamics of mantle, particularly three boundary layers (i.e., the near-surface, mid-mantle around 660km discontinuity, and core-mantle boundary) have been reviewed and are compared with the simple estimation. Of these, the ’geochemical probe’ approach, which utilizes composition (in particular the isotopic composition) of young basalts that fingerprint geochemical nature of the mantle materials, has been reviewed in conjunction with convective regimes. The latest result of high spatial resolution has revealed that the mantle can be divided into the eastern and western hemispheres, in terms of an anciently (several hundred million years ago) subducted fluid-component. The spatial pattern is strikingly similar to the hemispherical seismic structure of the inner core. Based on these observations, a model for ‘top-down hemispherical dynamics’ is introduced, as a result of focused subduction towards the supercontinents that existed mostly in the eastern hemisphere from ~900 to 250 million years ago (i.e., Rodinia, Gondwana and Pangea). The cooled domain of mantle may absorb heat from the eastern hemisphere of the core, resulting in faster growth and velocity of the eastern half of the inner core. Such ‘top-down’ dynamics is consistent with the various types observations and arguments (made in the first half of this paper) on mantle convection.
著者
鳥居 秀成 栗原 俊英 世古 裕子 根岸 一乃 大沼 一彦 稲葉 隆明 川島 素子 姜 効炎 近藤 眞一郎 宮内 真紀 三輪 幸裕 堅田 侑作 森 紀和子 加藤 圭一 坪田 欣也 後藤 浩 小田 真由美 羽鳥 恵 坪田 一男
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は屋外環境に豊富にある360-400 nmの光(バイオレット光、以下VL)に着目し、VLを浴びたヒヨコの近視進行が抑制され、VLを浴びたヒヨコの目でEGR1が上昇していることを発見した。また臨床研究において、VLを透過するコンタクトレンズを装用している人の方が、VLを透過しないコンタクトレンズや眼鏡を装用している人よりも眼軸長伸長量が少なかった。さらに現在我々が使用しているLEDや蛍光灯などの照明にはVLはほとんど含まれておらず、眼鏡やガラスなどの材質もVLをほとんど通さないことがわかった。即ち現代社会においてはVLが欠如しており、これが近視の世界的な増大と関係している可能性がある。
著者
森 達也
出版者
政治哲学研究会
雑誌
政治哲学 (ISSN:24324337)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.91-100, 2019 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10
著者
森 裕司
出版者
THE SOCIETY FOR REPRODUCTION AND DEVELOPMENT
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.j155-j157, 1995 (Released:2010-10-20)

動物行動学とは,動物の示す様々な行動の多様性と統一性を明らかにし動物の行動原理を解きあかそうとする学問領域であり,行動の発現機構や,行動の機能すなわち動物が生存し繁殖していく上でその行動が持つ意味,あるいは行動の発達や進化などについて実に様々な視点から研究が展開されている.本稿では,動物行動学の成り立ちとその発展の経緯について概説し,畜産学や獣医学といった応用動物科学分野における動物行動学の現状と今後の課題について考察する.
著者
野明 俊道 平岩 賢志 森 光正
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.83, pp.151-158, 2001-09-06
被引用文献数
1

近年のインタネットの急速な普及によりネットワークサービスはさらにグローバル化しつつあるが、こうした動きの中で車社会の進展のあり方の1つとして自動車が携帯端末に続く情報端末になろうとしている。 このような背景の中で自動車の安全運転をめざす走行支援サービス及びこれに付随する種々の情報提供サービス実現のために、走行環境での情報通信ネットワーク技術(スマートゲートウエイ)の確立が必要となり国家プロジェクトによる技術開発が進められている。本稿では、スマートゲートウエイにおける高信頼通信を実現するためのモバイルネットワーク・プラットフォームを提案する。さらに、モバイルネットワークのアクセス方式として専用狭域通信(DSRC: Dedicated Short Range Communication)を利用する路側システムにおいて、自律分散制御により複数無線通信ゾーンを論理的なサービス提供セルとして連続通信サービスを提供し、広域IP網とのインタワークによりIPサービスを車載端末に提供するためのゲートウエイ方式を提案する。The recent rapid proliferation of the Internet has been promoting global development of network services. One of the features of the development of our vehicular society is that on-board vehicle terminals are becoming a successor to the human-carried cellular phones. Technological development is being carried on as a national project in Japan to establish information and communication network technology which supports user mobility (called "Smart Gateway" for the future vehicle-road communication system) to implement a variety of information services aimed at safe vehicle driving. This paper proposes a mobile network platform to implement highly reliable communications. The authors propose a mobile access node system by ADS (Autonomous Decentralized System) control to provide multiple radio communication zones as logical service providing cells. This system allows "continuous communication services" (uninterrupted and seamless services using short-range communication among microcells) and provides on-board vehicle terminals with IP services by interworking the public/wide-area IP network using DSRC (Dedicated Short Range Communication) for mobile access. For the gateway system, IP gateway management is described. This function manages the IP address given to each on-board vehicle terminal to provide the wide-area IP services to on-board vehicle terminals. Finally, the functional mapping for ITS mobile network platform is described.
著者
稲村 征之 森下 知晃 Milusi Ibrahim MILUSI Ibrahim
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 (ISSN:13486543)
巻号頁・発行日
vol.2011, 2011-09-05

アルバニアには南北に伸びるオフィオライトが分布しているが、その火山岩の地球化学的特徴は東西で異なり,東側は島弧的火山岩類,西側は中央海嶺的火山岩類特徴を示す(Dilek et al., 2008).本研究では西側北部に位置するゴムシケ、プーカ岩体を研究対象としている。プーカ岩体は主に斜長石を含む変形を受けたかんらん岩とガブロ脈が分布している一方,ゴムシケ岩体は輝岩脈,ガブロ脈,数十cm~10m程度の脈状のダナイトを伴うレールゾライトが分布している.ゴムシケ岩体のレールゾライトの鉱物化学組成は中央海嶺かんらん岩と似ており,部分溶融度が低いことを示している.ゴムシケ岩体にはスピネルのCr#[=Cr/(Cr+Al)原子比]に大きな違いがある二種類のダナイトが存在する.一つはCr#が0.3程度,もう一つは0.7程度である.前者は中央海嶺で採取されたダナイト,後者は前弧域ダナイトの化学的特徴と類似している(Arai, 1994).このことからゴムシケ岩体は中央海嶺的セッティングで形成された後に,島弧的セッティングに移行する際の影響を受けている可能性がある.
著者
小寺 浩二 濱 侃 齋藤 圭 森本 洋一
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.237-249, 2014-08-30 (Released:2014-10-21)
参考文献数
12
被引用文献数
2
著者
藤田 恭久 幸田 剣 田島 文博 木下 利喜生 箕島 佑太 橋崎 孝賢 森木 貴司 川西 誠 児島 大介 上西 啓祐 梅本 安則
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.95, 2011

【目的】 リハビリテーション(リハ)においては,たとえ重篤な症例であっても,医学的に患者の全身状態を悪化させる安静臥床を避ける必要がある.そのため出来る限り離床を進め,運動負荷を加えることがリハの基本である.今回,原因不明の多臓器不全と診断され、肺炎と無気肺を合併したために約2カ月間の人工呼吸器管理となった症例に積極的なリハを施行した。その結果、人工呼吸器離脱と同時に歩行自立を達成したので、その工夫を含めて報告する。<BR>【方法】 症例は37歳,男性,身長180cm,体重180kg,BMI 55.5kg/_m2_.今回,多臓器不全・肺炎により当院に緊急搬送,ICUで人工呼吸器管理となり,廃用予防・呼吸循環機能改善目的で入院2日目よりリハ開始となった.リハ開始時現症は,意識レベルJCS 300(鎮静下),人工呼吸器管理(経口挿管,APRV,FiO2 0.6,PEEP(high/low) 20/0),TV 500ml,SpO2 95%,血液ガス分析はPaO2 76.6mmHg,PaCO2 50.9 mmHg,P/F比128,AaDO2 287 mmHgであった.ROM制限は無く,自発運動は認めなかった.重度の肥満があり,体位ドレナージは当初より困難であった.ICU入室15日後,気管切開され,抜管のリスクが低下したため,端座位・立位訓練開始.この時,鎮静は実施されておらず,意識は清明であり,MMT両上肢3,両下肢2レベルであった.多臓器不全・肺炎の治療に長期を要し,ICU入室31日後,一般病棟へ転棟.その後もベッドサイドで人工呼吸器装着下(CPAP,FiO2 0.6,PEEP 8)で,端座位・立位訓練を継続した.<BR>転棟25日後,病棟で呼吸器離脱に向け,日中はT-tube(O2 8L,FiO2 0.8)を開始されたが,時折SpO2低下を認めたため,夜間は呼吸器管理を継続された.画像所見では,両肺に無気肺・スリガラス陰影を認めた.血液ガス分析はPaO2 77.6 mmHg,PaCO2 39.8 mmHg,P/F比172,AaDO2 193mmHgであった.肺炎が沈静化しておらず,酸素化能の低下には無気肺の影響もあると考えられた.検討の結果,人工呼吸器を持ち運び可能なHAMILTON-C2に変更し,リハ室へ出棟することとした.歩行訓練やハンドエルゴメーター(20W 20分)を中心とした運動負荷を積極的に行い,換気量を増加させることに努めた.リハ来室時の状況は,人工呼吸器(CPAP,FiO2 0.3,PEEP 6),安静時SpO2 97%,HR115回/分,TV600ml,呼吸数18回/分であった.歩行訓練後はSpO2 94%,HR132回/分,TV1200ml,呼吸回数25回/分となった.この時,HAMILTON-C2の支柱を自ら把持し軽介助レベルで歩行可能であった.<BR>訓練中に呼吸困難感が生じた際は,リハDrによりPEEPやPSなどの呼吸器設定を適宜変更しながら運動負荷量を増加させていった.<BR>【説明と同意】 本症例と家族に対して発表の趣旨について説明を行い,情報の開示に対し同意を得た.<BR>【結果】人工呼吸器を持ち運び可能なものに変更し,リハ室で1週間運動療法を施行した結果,人工呼吸器を完全に離脱でき,T-tube(O2 5L,FiO2 0.3)へ移行できた. T-tubeの状態でも運動療法を推進した結果,酸素が不要となり,退院前には気切閉鎖できた.血液ガス分析はPaO2 68.1mmHg,PaCO2 40.6mmHg,P/F比324,AaDO2 23.8mmHgとなり,画像所見で無気肺の改善を認めた.体重は135kgに減量し,MMT上下肢4レベルとなった.ADLでは歩行が歩行器からT字杖歩行,独歩可能,身の回り動作が自立できた.<BR>【考察】気管切開後も人工呼吸器管理であったため,当初はベッドサイドでの立位訓練や車いす移乗までしか行えなかった.主治医より呼吸器離脱に向けた無気肺の改善を求められたが,重度の肥満があり,病棟での体位ドレナージは施行困難でリハ以外は臥床傾向であった.そこで今回,人工呼吸器を持ち運び可能なものに変更し,リハDrの付き添いのもと行える環境を設定したことで,運動負荷時に呼吸困難感が出現した際の対応も可能となった.そのため積極的な運動療法を安全に施行できたと考える.<BR>リハ室で訓練を行う事で日中の臥床傾向を減少させ,更に運動負荷を強める事で換気亢進が惹起され,無気肺の改善に寄与したと考えられる.その結果,P/F比・AaDO2も改善し,呼吸器の離脱が可能となったと思われる.また,歩行訓練のみならず,全身調整運動を欠かさず続けた結果,BMI 41.7kg/_m2_まで減量することができ,歩行能力を含めたADL向上が得られたと考える.<BR>【理学療法学研究としての意義】人工呼吸器管理下では積極的なリハを敬遠しがちであるが,リハDrの付き添いのもと,持ち運び可能な人工呼吸器を使用することが,人工呼吸器装着患者に対して安全かつ効果的な運動負荷を実施するための選択となると考えられる.
著者
小森 佑美 笹井 由利子 須原 伸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.178, 2008

【はじめに】<BR>現在、当院では、顔の清拭を朝と夕方に蒸しタオルにて行っているが、眼脂が残っていることがあり、眼の清拭が不十分だった。布団を掛け臥床している患者にとって、顔は第一印象となる。しかし、長期臥床患者は自己にてケアすることができず、眼脂の多い患者は、点眼薬を使用し続け悪循環となる。また、点眼薬に関する研究は数多くされているが、眼清拭に関する研究はほとんど見あたらず、関心の低さが伺えた。そこで、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭を取り入れた結果、洗浄や点眼を使用しなくても眼脂が減少し、効果が得られたので、ここに報告する。<BR>【研究方法】<BR>1.研究期間:2007年7月~9月 2.研究対象:当院長期療養型病棟入院中65歳以上の寝たきり患者 3.方法:_丸1_2%ホウ酸水コットンを作り、朝・昼・夕方に眼清拭をする。_丸2_点眼薬使用者は、医師の許可を得て、ケア期間中点眼薬の使用を中止し、すべての患者を同じ条件にて行う。_丸3_手洗い後、又は手袋を使用し眼脂の少ない側から拭く。拭く時は、まず初めに目頭部分の眼脂を拭き取り、コットンの面を変えて目頭から目尻にむかって拭く。 評価方法:スケール表を個別に作成し、両眼計30点で1週間ごとに3回評価する。<BR>【研究結果および考察】<BR>眼脂は、眼清拭実施前も眼清拭実施後も朝に多くみられた。また、眼脂は目頭側に一番多くみられ、続いて目尻側に多くみられた。点眼薬未使用者だけでなく眼清拭実施前点眼者(以後点眼者とする)も、眼清拭実施後どの時間帯にも眼脂の量は減少した。分析の結果、有意差があり(p<0.00)眼清拭が効果的だったと言える。また、点眼者に対しても有意差があり(p<0.05)、眼清拭は効果的だったと言える。そのため、現在も点眼薬を使用せず経過している。しかし、眼清拭実施後、眼脂の量はある一定量まで減少したが、分析の結果、有意差はなく眼脂量が減少しつづけているとは言えなかった。眼脂は夜間閉眼していることや、ケアをしない時間が長いことで朝に多くみられたと考えられる。そのため、夜間のケアを導入すれば、もっと眼脂の減少につながると思われるが、患者の睡眠を配慮すれば、必須とは言えない。評価方法に関しても、個別のスケール表を使用したが、有る無は分かっても、量的な評価に関しては難しさを感じた。眼脂が目頭側に多く見られたのは、目頭には鼻涙管があることが考えられ、一般的な拭き方では、眼脂を広げることになる。そこで、初めに目頭側の眼脂を拭き取ってから、コットンの面を変え目頭から目尻に向かって拭くことが眼脂の減少につながったのではないかと考えられる。また、結果から目尻側を最後にもう一度拭き取る清拭方法を見直すことが、より効果的だったと考えられる。<BR>【結論】<BR>高齢で長期臥床患者の眼脂は、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭をすることで減少した。しかし、消失することはなかった。
著者
森 邦夫 高松 成亮 渡辺 明
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.52-60, 1989 (Released:2008-04-16)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

フッ素ゴム加硫物と金属板を一定荷重下で接触させておくと, ゴム層破壊が生じるほど高い固着強度が発生することが明らかとなった. フッ素ゴム分子の金属への吸着による初期の固着は, フッ素原子と金属表面のOH基の間で水素結合が生成した結果であると推測した. 引き続き界面で化学反応が起こり, 両者間に一次結合が生成するためゴム層の破壊が起こるほど強い固着強度が発生した. 界面の反応は加硫時に生成したフッ素ゴム主鎖の不飽和基及び側鎖の活性な官能基と金属表面のOH基の間で起こる反応を主な内容としている. したがって, 固着強度は加硫系の影響を強く受ける. 固着を防止する目的で, ブルーム法と表面処理法によるフッ素ゴム加硫物の表面改質を行った結果, 反応性シリコンと塩化白金酸のアセトン溶液で表面処理する方法が固着防止に特に有効であった. 反応性シリコンは数個のSiH基をもち, これがフッ素ゴム加硫物表面の不飽和基や活性な側鎖と反応し, 生成したシロキサンの薄膜が上記の界面反応を防止するためシリコン処理が固着防止に有効であることが明らかとなった.
著者
武藤 泰敏 大森 正英 園田 隆也 石川 淑郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.545-556, 1975 (Released:2007-12-26)
参考文献数
41

アルコールの量-反応関係 (dose-response relationship) にもとづいて, アルコール性肝障害の発生を検討した. そのさい総アルコール摂取量 (total alcohol intake: TAI) と血清γ-GTP活性を指標とした. 肝疾患既往のない飲酒者 (social drinkers) ではTAIと血清γ-GTP活性とは正相関4)を示すが, 一方, 慢性アルコール症患者 (chronic alcoholics) においては逆に負相関 (r=-0.4999, P<0.001) が観察された. そこで, TAIと血清 γ-GTP 活性との関係から, 慢性アルコール症患者を"good"と"poor" responder とに類型化し, しかも両型の主な臨床的特微をあげた. そしてアルコール性肝障害の発生をアルコール摂取に対する個体反応の差 (personal sensitivity) から観察することの重要性を強調した.
著者
森 大徳
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (ISSN:18817165)
巻号頁・発行日
vol.255, pp.115-127, 2013-02-28

千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第255集『子どものための哲学教育研究』山田圭一 編"Studies of Philosophical Education for Children" Report on the Research Projects No.255
著者
森 覚
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は、仏教絵本の表現に反映された近代仏教研究の学術的知識を読みとるというテーマのもと、1970年代の仏教絵本が表現したブッダの表象について、「変容」という観点から考察した。また、新たな着眼点として、近代文学との関連性、キリスト教からの影響といった点を視野に入れながら、古代インドの仏教説話であるジャータカ(本生譚)を題材とした絵本をとりあげ、それらの作品が近現代におけるブッダの表象形成に果たした役割を、実証主義的な歴史思想研究が創りあげたブッダ像とは異なる系譜の流れとして探究した。当初の計画では、日本真理運動本部が1950年に刊行した『佛敎聖典おしゃかさま』等の諸作品から、絵本のブッダ像に反映されたプロテスタント自由主義神学と近代仏教の影響関係、キリスト教の聖画を典拠とする仏教絵本の図像表現といった、近代における仏教とキリスト教の結びつきを浮かびあがらせようとした。しかしながら、『こどものくに別冊 おしゃかさま』に見られるキリスト教からの影響については、すでに昨年度、形の文化会機関誌『形の文化研究』第10号へ論文「仏教絵本『こどものくに別冊 おしゃかさま』にみるブッダのイメージ」を掲載することができた。そこで今年度は、日本の仏教絵本に表現されたブッダのイメージから読みとれる近代西洋仏教学の影響を明らかにするというテーマを別視点から取り組むため、仏教保育・口演童話・仏教日曜学校といった児童伝道の領域に考察範囲を設定し、仏教絵本で表現されるブッダ像の「変容」に着目した。また、仏教の教主である釈迦が、小国の王子としてこの世に生まれる以前の前世で為した善行功徳を伝えるインド説話であるジャータカの絵本で表現されたブッダの表象についても読解し、現在の近代仏教史研究で特にクローズアップされる歴史学的観点から捉えるブッダとは異なるイメージが存在していることを指摘しようと考えた。