著者
柏木 智一 横山 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会
雑誌
東北理学療法学 (ISSN:09152180)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.33-41, 2017-08-31 (Released:2017-09-15)
参考文献数
18

腰部脊柱管狭窄症の術前と術後3カ月の間欠性跛行とQOLの関連性について調査した。当院において手術を施行したLSS患者20例(男性7例,女性13例,平均年齢72.1±6.7歳)を対象とした。評価項目は,連続歩行テスト(歩行距離と歩行時VAS)とQOL評価としてMOS Short-Form 36-Item Health Survey日本語版ver.2(以下:SF-36)と日本整形外科学会腰痛評価質問票(以下:JOABPEQ)とした。評価は術前と 術後3カ月に実施した。手術内容は全例部分腰椎椎弓切除術であった。術後の理学療法は3,4週間の入院 期間中のみ実施した。術前では連続歩行距離とJOABPEQの歩行機能において,術後3カ月では連続歩行距離とSF-36のPF,BP,GH,SF,JOABPEQの疼痛関連,歩行機能,心理機能において有意な相関が認め られた。術後3カ月において連続歩行距離の重要性が示唆された。
著者
横山 貴司 石川 博文 坂本 千尋 渡辺 明彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2612-2617, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
14

S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻を5例経験した.平均年齢68.4歳,男性3例女性2例で,5例中3例は他院にて大腸癌あるいは膀胱癌と診断され,1例は人工肛門を造設されていた.主訴は4例で糞尿あるいは気尿を認め,1例は腹痛,腹部膨満感のみであった.5例中3例において,注腸検査,膀胱鏡,MRIにより結腸膀胱瘻が描出可能であった.全例で大腸憩室症の既往があったこと,画像上,腫瘤形成を認めないことから,憩室炎に伴う瘻孔と診断し,S状結腸切除,膀胱部分切除術を施行した.術後経過は全例良好であった.結腸憩室炎による結腸膀胱瘻は比較的稀な疾患であり,自験例5例とともに15年間の報告例を集計し,以前の本邦報告例と比較し,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
有本 梓 横山 由美 西垣 佳織 臺 有桂 馬場 千恵 新井 志穂 村嶋 幸代
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.43-52, 2012-03-31 (Released:2017-04-20)
被引用文献数
5

目的:訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点を明らかにする.方法:重症児のみを対象とするA訪問看護ステーションの訪問看護師6人を対象に,2007年9月にグループ面接を行った.質的記述的分析を参考に,訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点についてコード化し,類似したコードをまとめてサブカテゴリーを,類似したサブカテゴリーをまとめてカテゴリーを作成した.結果:訪問看護師が在宅重症心身障害児の母親を支援する際に重要と考えている点は,支援するうえで重要ととらえている情報と支援姿勢に二分された.重要ととらえている情報は,【母親のケア能力】【母親による子の受け止め方】【母親の性格】【母親の心理状態】【母親の身体状態】【子の身体的状況】【子の能力】【在宅療養への家族のサポート体制】【家族の訪問看護に対する気持ち】【母親と訪問看護師との関係】からなっていた.訪問看護の支援姿勢として,【母親のペースに合わせて段階的にかかわる】【子と家族の生活のなかで子育てを共有する】【長期的なケアを見込み母親と社会をつなぐ】が明らかになった.結論:在宅重症児への訪問看護では,(1)母親の心理状態や生活状態の理解,(2)子や家族の状況に応じた母親のケア能力と家族のサポート体制の強化,(3)母親のペースでの関係構築,(4)長期的視点での関係機関と母親との関係構築が重要と考えられた.
著者
藤本 真代 横山 和輝
雑誌
オイコノミカ (ISSN:03891364)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.1-15, 2016-03-01

本稿の課題は,家族の絆に関する変数(合計特殊出生率,離婚率,婚姻率,自然死産率)が男女別の自殺率にどのような影響を与えているかについて統計的に検定することである.2001 年から2013 年の都道府県レベルのパネルデータを用いて,男女それぞれの自殺率を被説明変数とする連立方程式の同時推定を行なう.合計特殊出生率と婚姻率は,ともに男女の自殺率と負の相関関係にある.反対に自然死産率は男女の自殺率と正の相関関係にある.一方,離婚率は女性の自殺率にのみ負の効果が観察された.自殺抑止において家庭およびビジネス両面での対人関係が重要である,という主張に対し,本稿は定量的な根拠を提示するものである.
著者
深海 雄介 木村 純一 入澤 啓太 横山 哲也 平田 岳史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.272, 2010 (Released:2010-08-30)

IIIAB鉄隕石と石鉄隕石のパラサイトメイングループ(PMG)は化学組成や酸素同位体組成により、その起源について強く関連があると考えられている。本研究ではこれら隕石の金属部分のタングステン安定同位体組成をレニウム添加による外部補正法を用いて多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計により測定した。また、W濃度の測定を同位体希釈法により行った。IIIAB鉄隕石のW安定同位体比には質量に依存する同位体分別による変動幅が存在し、また、W安定同位体比とW濃度の間には強い相関が見られた。これらは母天体上での金属核固化過程に伴う同位体分別である可能性が示された。PMGの金属相のW安定同位体組成からはPMGの起源がIIIAB鉄隕石の母天体と関連があることが示唆される。
著者
横山 真理
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.61-70, 2010 (Released:2018-10-01)

アリス・テグネールは、子ども期特有のものの見方、感じ方や生活や遊びの世界を反映した膨大な数の歌を創作し、「子どもの歌」の概念の形成に寄与した。テグネールによる子どもの歌が20世紀前半までの初等教育における音楽科の授業に与えた歴史的意義は、礼拝で扱う賛美歌が主な教材であった時代に、 宗教教育に従属した音楽の授業の目標から音楽的感受の形成という教育による人間形成を目指す目標への転換を促す実践的な力となり、新しい目標を実現し得る音楽的環境 (教材を構成する子どものための文化的素材) を学校内外で用意した点にある。本稿で分析した音楽教科書は、編纂過程、曲目の分類や配列、題材、民間伝承歌の集成、押韻詩による音楽的特質、構図や挿絵の効果等、幼児学校用音楽教科書として画期的な特徴を持ち、民衆学校制度発足以降の変遷をたどった音楽の授業における教材の歴史の到達点がそこに表れていると意義づけられる。
著者
横山 隆明 樋口 健
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-16, 2007 (Released:2007-06-14)
参考文献数
24

安全着実な月面着陸のためには,着陸時に着陸脚が月の砂地盤から受ける反力を事前に算定し,着陸脚設計に生かす必要がある.本研究では,地球上での実験から月面着陸時の衝撃力を算定する実験的方法について検討した.また,SPH法を利用した解析的方法についても検討し,実験結果とよい一致を示した.
著者
西尾 孝治 横山 豊 小堀 研一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.47-53, 2005 (Released:2008-07-30)
参考文献数
15

自由曲面を表現する手法の一つに濃度関数モデルがあるが,計算コストが大きく対話性が損なわれるなど,実用に供していないという問題がある.そこで,本稿では三次元グラフィックスボードを用いてCAD・CG分野で用いられている濃度関数モデルを高速に定義する手法を提案する.これにより,ユーザの待ち時間の短縮や,高速に目的形状を生成することによる作業の効率化が期待できる.また,形状の定義に用いるプリミティブとして,球に加えて多角柱を用いることにより,柔軟なモデリングを可能とした.本手法では,濃度関数をもとにあらかじめ生成したテクスチャを保持し,グラフィックスボードのテクスチャマッピング機能とαブレンディング機能を用いて濃度分布を求める.また,実際に本手法を用いて製品形状を作成し,実験を通じて本手法の有効性について検証したのでその結果を報告する.
著者
河田 雄輝 須藤 恵理子 横山 絵里子
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1961, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】高度肥満者は治療が困難で,重篤な合併症や心理・精神的問題を有することが多く,治療法の選択に注意を要する。本邦ではBody Mass Index(BMI)30以上の肥満は欧米諸国に比べ少なく,BMI59以上ではリンパ浮腫を呈しやすい。今回高度肥満を契機に両下肢リンパ浮腫を生じ,両大腿内側にソフトバレーボール大の巨大な腫脹を来した症例を経験した。重篤なリンパ浮腫に対する圧迫療法は困難を極めたが,圧迫方法を工夫し,多職種と連携しながら取り組んだことにより,減量とリンパ循環障害の改善を認めたので報告する。【症例紹介】症例は36歳の男性,高度肥満症,脂肪性続発性両下肢リンパ浮腫,2型糖尿病,睡眠時無呼吸症候群,変形性股関節症,変形性膝関節症と診断された。現病歴は中学時60kg,高卒時140kg,20歳代190kgであり,2009年に減量目的でS病院に入院し234kgから200kgまで減量した。その後,運動不足や過食によりリバウンドかつリンパ浮腫の増悪が生じ,活動量の低下を来たしたため2013年当センターに入院した。入院時,身長169.7cm,体重234.7kg,BMI81.5であり,リンパ管が圧迫され両下肢リンパ浮腫International Society of LymphologyGrade(ISL)病期分類III期を呈し,右下肢に象皮症を生じ,両殿部~大腿内側にソフトバレーボール大の腫脹(大腿を含む腫脹最大周径150cm以上),リンパ漏や乳頭腫も認めた。屋内歩行はT字杖で自立していたが,息切れや心拍数の上昇により耐久性15mだった。【経過】肥満症の治療として,Nutrition Support Team(NST)介入による食事療法(1100kcal),看護と連携し毎日の体重変化を記載したグラフ化体重日記による行動療法,理学療法(PT)および作業療法(OT)による運動療法を入院翌日より開始した。並行してリンパ循環障害に対するスキンケアやリンパドレナージ,両下腿に対する圧迫療法,圧迫下での運動療法を組み合わせた複合的理学療法を施行した。また病識低下,意欲低下を認め,心理面に配慮しながら,肥満やリンパ浮腫の教育指導も行った。その結果,入院1ヶ月後には210kgまで減量したが,その後の減少は停滞した。入院3ヶ月後,リンパ漏や乳頭腫は軽減したが,両大腿部にリンパ液が貯留し,腫脹の硬結が悪化した。両大腿腫脹部の圧迫療法により貯留しているリンパ液を中枢へ還流する必要があると判断された。当初はロール状スポンジと弾性包帯にて圧迫を施行したが,重力や姿勢の変化,歩行動作で圧迫が外れやすく難渋した。OTと連携し,大腿部の形状に合わせて伸縮性のあるネオプレーンを用いたベルクロ付き圧迫帯を作製し,大腿全体を覆い固定した。看護師,OTと情報交換しつつ,日中を中心に時間を調整して圧迫療法を試みた。この結果,徐々に大腿部のリンパ液が中枢へ循環され,入院5ヶ月後の退院時には体重172kg,BMI58.8へ改善し,リンパ浮腫はISL病期分類II期,大腿を含む腫脹最大周径は圧迫開始時144cmから99cmまで縮小した。腫脹の縮小によって,徐々に運動量は増加し,T字杖歩行は耐久性100m以上に向上した。【考察】リンパ浮腫に対する圧迫療法は,高いエビデンスレベルにあるものの,不適切な圧迫は逆に浮腫を悪化させる可能性がある。本症例の腫脹に対する圧迫療法は,入院後3ヶ月間不良な皮膚状態であり困難を極めたが,その後の2ヶ月間は体格に合わせた圧迫帯を用いて適応できた。本症例ではリンパ浮腫の重症度に応じた介入が,リンパ循環障害の改善と体重の減量,歩行耐久性の向上をもたらしたと推察される。肥満やリンパ浮腫に対する教育指導はリンパ浮腫の改善のみならず,ADLやQOLの改善にも有効であった。【理学療法学研究としての意義】合併症や精神的問題を有する高度肥満症には,リンパ浮腫の重症度に応じた対応,患者個人に合わせた工夫を多職種と綿密に連携することが有効であると考えられた。また,心理状態に配慮しながら肥満や合併症への患者教育を行うことも効果的である。