著者
宮本 進生 大西 綾乃 武内 良男 前山 利幸 長谷川 晃朗 横山 浩之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J105-B, no.9, pp.710-718, 2022-09-01

近年,アンテナから収集した電磁波のデータに対して機械学習により無線通信の信号を分類する研究が注目を集めている.一方で,工場等の製造現場で産業機器等から発生する電磁ノイズは発生源となる機器により発生頻度やパターンが異なるため,これらを機械学習により分類しようとすると,限られた時間で収集した学習データに含まれない未知のパターンが運用中に発生する可能性が高い.それらを既知のパターンに分類すると,発生源の異なる電磁ノイズを混同し,取るべき対策の検討において誤りを生じさせる恐れがある.未知のパターンを見つけ出す方法として機械学習の新規性検出を利用することが考えられる.しかし実際の運用では,製造現場の限られた計算資源で,学習データに基づく電磁ノイズの分類と新規性検出のための機械学習を同時並行で実行するのは負担が大きい.そこで本論文では,分類の際に得られる事後確率値から未知のノイズを検出する方法を提案する.この手法が計算資源の消費を押さえつつ,未学習のパターンを高い精度で検出可能であることを,実測データを用いて実証する.
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 小手森 綾香 野藤 悠 清野 諭 西 真理子 天野 秀紀 成田 美紀 阿部 巧 新開 省二 北村 明彦 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.665-675, 2022-09-15 (Released:2022-09-10)
参考文献数
36

目的 食品摂取の多様性得点(DVS)は,日本人高齢者の食品摂取の多様性を評価する指標として,疫学研究や公衆衛生の現場において幅広く活用されている。一方,本指標は1990年代の開発以降,見直しが行われておらず,現在の日本人高齢者の食生活の実態を必ずしも十分に反映できていない可能性がある。本研究では,構成食品群の改訂による改訂版DVS(MDVS)の試作および妥当性の評価を行うことを目的とした。方法 鳩山コホート研究の2016年調査に参加した357人(年齢:76.2±4.6歳,男性:61.1%)を対象とした。DVSおよびMDVSは,各食品群の1週間の食品摂取頻度をもとに,ほぼ毎日食べる食品群の数を評価した。DVSの構成食品群は肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜類,果物,海藻類,いも類,油脂類とし,MDVSの構成食品群は平成29年国民健康・栄養調査における65歳以上の食品群別摂取量のデータをもとに,主菜・副菜・汁物を構成する食品群の摂取重量および各栄養素の摂取量に対する各食品群の寄与率をもとに,その他の野菜,乳製品を追加することとした。栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票を用いて調べた。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で推定平均必要量が定められている14の栄養素について,必要量を満たす確率およびそれらの平均を算出した。DVS,MDVSと各指標との相関分析および相関係数の差の検定を行った。結果 MDVSとたんぱく質エネルギー比率,脂質エネルギー比率,食物繊維,カリウム摂取量,改良版食事バランスガイド遵守得点との有意な正の関連がみられ(偏相関係数の範囲(r)=0.21-0.45),炭水化物エネルギー比率との有意な負の関連がみられた(r=−0.32)。また,MDVSと14の栄養素の必要量を満たす確率の平均との有意な正の関連がみられた(r=0.41)。これらの関連の程度はDVSとMDVSで同程度であり,相関係数の差は有意ではなかった。結論 栄養素摂取量や食事の質との関連からみた妥当性はDVSとMDVSで同程度であった。DVSの改訂にあたっては全国の大規模集団を対象に精度の高い食事調査を用いたさらなる研究が必要である。
著者
越沢 徳美 岡田 稔 横山 祥
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.1220-1223, 1959-08-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8

パルプの塩素処理に際して起るセルロースの不均一系酸化崩壊に対して, パルプ中に含有されるリグニンの及ぼす影響と,塩素水溶液に微量のアンモニア化合物を添加した場合の効果とを論じた。ブナサルファイト未晒パルプおよびそれを亜塩素酸ソーダで段階的に脱リグニンして調製したパルプについて,種々の条件で,普通の塩素処理とアンモニア化合物を添加した塩素処理とを行い,各場合の挙動を比較検討した。パルプ中に含まれるリグニンはその塩素化反応速度が速いために有効塩素を優先的に消費し,セルロースの酸化崩壊を緩慢にして保護的作用を示す。またアンモニア化合物を添加して塩素処理すると,セルロースの酸化崩壊が著しく抑制され,効果的に脱リグニンし得ることが確認された。
著者
横山 紘子 斉藤 康秀 二瓶 直子 澤邉 京子 津田 良夫 小林 睦生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第58回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.22, 2006 (Released:2006-06-07)

蚊の吸血嗜好性は疾病媒介能を評価する上で重要な形質である。近年、わが国へのウエストナイル(WN)ウイルスの侵入・定着が危惧される中、PCR法を中心に野外捕集蚊の吸血源動物種が推定されてきているが、実験的に吸血嗜好性を評価する試みは全く行われていない。そこで我々は、わが国においてもWNウイルスを媒介する可能性の高いと思われる、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカの3種類の蚊の吸血嗜好性を、ほ乳類と鳥類の2者選択実験により詳細に検討した。実験は、三連結した30cm立方アクリル製箱の左右それぞれにマウスとウズラを一定時間保定し、中央から放した蚊50頭がどちらに移動するかを観察、吸血蚊からはDNAを抽出し吸血源動物種の同定を行った。その結果、ヒトスジシマカはマウスを、チカイエカはウズラを多く吸血したが、アカイエカでは特定の傾向は見られなかった。次いで、麻布大学構内の動物舎で捕集した吸血蚊の吸血源動物種を、チトクロームbおよび16S領域のPCR産物から得た塩基配列をもとに推定したところ、アカイエカ(89%)とチカイエカ(71%)は鳥類を、ヒトスジシマカ(100%)はほ乳類を吸血していたことが判明した。2者選択実験と野外捕集蚊における吸血源動物種特定の結果を総合すると、ヒトスジシマカとチカイエカでは両結果はほぼ一致し、前者は「ほ乳類」を、後者は「鳥類」を好む傾向にあることが示された。一方、アカイエカでは、野外捕集蚊は鳥類を多く吸血していたが、2者選択実験では繰り返しによってよく吸血される動物種が異なった。アカイエカの吸血嗜好性は柔軟性が高く、環境条件に依存して容易に吸血源を変えることができると考えられる。実験に供した3種を比較すると、WNウイルスのヒトへの媒介種としてはアカイエカがより重要な役割を果たすであろうことが示唆された。
著者
横山 裕 櫛田 裕 広松 猛 小野 英哲
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文報告集 (ISSN:09108025)
巻号頁・発行日
vol.434, pp.21-30, 1992-04-30 (Released:2017-12-25)
被引用文献数
1 2

This paper presents some knowledge of vibrations caused by actions of a large audience during concert is given. Firstly, full investigation was made into relationships between vibrations, actions of audience and music programme of a concert. From this investigation, it was made clear that main cause of the vibration was "TATENORI" action "TATENORI" action was done by audience when rhythms of performed music became quick (about 2-3 Hz). Secondly, from the relationships between experimental and analytical investigation, exciting force of "TATENORI" action was estimated. One time history curve was obtained as the exciting force, which was composed of triangular pulses.
著者
橋爪 正 神田 大周 久保田 隼介 一戸 大地 横山 拓史 山田 恭吾 松浦 修
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.18-25, 2019-03-30 (Released:2019-07-13)
参考文献数
23

術後高血糖は大腸手術の手術部位感染(SSI)リスク因子である。1990~2009年の初回開腹腸切除 2,099例を対象として,全例に SSI予防バンドルを施行し,1990~1999年(前期)は血糖目標値200mg/dL,随時インスリン皮下注(SCI)法を行った。前期の糖尿病患者の創部 SSI率は17%と高かった。2000~2009年(後期)は目標血糖値を150mg/dLに変更し,一部の糖尿病と耐糖能異常に5%または7.5%糖濃度の維持輸液を投与し,術後 48時間まで持続インスリン静注(CII)法を行うきめ細かな血糖管理を前向きに実施した。CII法は SCI法に比べてすみやかに高血糖を改善し,血糖変動が少なく,術後 2~4時間で血糖値は安定した。著しい低血糖の発生もなかった。後期糖尿病患者の創部 SSI率は10%まで改善した(非糖尿病9.3%)。150mg/dLを目標とするきめ細かな血糖管理は大腸手術 SSI予防に有用と確認された。最近の SSIガイドラインは血糖目標値 150~200mg/dLを示しているが,今後も周術期血糖管理に関して詳細な検討が必要と思われる。
著者
北仲 千里 横山 美栄子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学術論文の著者の定義/範囲について、国際的な議論と基準の設定がなされているにもかかわらず、日本の科学者はあまりそれを意識していない。日本の自然科学系の研究者へのアンケート調査とインタビュー調査から、国際基準とは異なる考え方にもとづいて、彼らの考える「正しいオーサーシップ」が実践されていることがわかった。例えばそれは「資金を提供した人が入る」「研究室の長が入る、(実験室等の研究環境を整えた人として)」「研究の材料の提供者」「テクニシャン」「何らかの形で”手を動かした”人はすべて」などであった。
著者
北仲 千里 横山 美栄子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2020年度は、以下の点について研究の進展があったが、研究成果の公表にまでは至っていない。(1)調査対象となる全国すべての国公立大学医学部歯学部の教員のサンプリングを行い、他学部とは大きく異なり、教員の大部分を占める人数が助教であり(とりわけ臨床系分野)、臨床の現場で働く医師と大学教員との区別が比較的緩やかであることがわかった。(助教については、教員数にはカウントしているものの、教員名簿には載せていない大学も、私立大学などでは見られた)したがって、本調査が対象としている研究者、研究組織としての大学教員とは少し異質な「大学教員」がかなり含まれている可能性がわかった。(2)2000年ごろ以降、欧米でも「職場のいじめ」研究の文献が多くなり、その中にはアカデミックな場でのいじめについて取り上げているものもあることがわかった。しかし、本研究が目指すような研究組織、研究集団やアカデミック・ミスコンダクト、オーサーシップに焦点をあてた議論がどの程度あるかどうかは確認できなかった(むしろ、これまでの研究で確認してきたように、研究不正に関する論文や議論において、オーサーシップは積極的に議論されている)。引き続き文献収集と検討が必要である。(3)コロナ禍で大学教員が大学に来ているかどうかの状況が不明(理系は文系よりは来ていると思うが)、また、臨床の医療現場はひっ迫していることが考えられ、アンケート調査を送付して依頼することが不適切であることなどを考え、アンケートの送付や回収が実施できなかった。